マツダ2で不満なくサーキットを走れる仕様を目指して、まずは要となるブレーキ交換作業を行います。

ミニサーキットを数周とか、ジムカーナくらいであればノーマルパッドでも対応温度を極端に上回る事はないと言う意見もありますが、以前マツダスピードアクセラをそのままミニサーキットに持ち込んだら、ブレーキパッドが炭化して砕け散った事もありますので、安全を買う意味でも対応温度の高いスポーツパッドに交換しておいた方が良いでしょう。

また、単純な効きの強さや対応温度だけでなく、前後バランスを好みに合わせられるのも社外ブレーキパッドを選ぶメリットの一つと言えます。

…とは言っても、今回作業するマツダ2(DJデミオ)の日本仕様はリアがドラムブレーキとなっているため、交換用のブレーキシューはほとんどのメーカーが「スポーツシュー」と言う一括りで選択肢がない場合が多いですが。。。

選べたとしても、対応温度の高いスポーツシューか、ジムカーナ向けのメタルシューの二択と言った感じで、いずれにせよ選択肢はそんなに多くはありません(笑)

とりあえず、交換するなら前後一緒に、なるべく同じメーカーで揃えておいた方が良いかもしれませんね。

では、早速ブレーキ交換に挑戦してみましょう!

◆フロント編 ブレーキパッド交換は楽々♪

◆リア編 ドラムブレーキ分解でドキドキ

◆ドラムブレーキの組み立てと調整

■フロント編 ブレーキパッド交換は楽々♪

まず、ブレーキパッド交換に必要な物を揃えましょう!

じゃーん!ブレーキパッドです!

…って、当たり前なんですが、ブレーキパッドを用意せずに交換を始めちゃう人もたまにいますので(そんなヤツはいない)

今回は、プロジェクトμTYPE HC-CSとドラムブレーキ用のスポーツシューを用意しました。

多少形状が異なったりボルトサイズの違いはありますが、パッドの交換作業自体はRX-8ロードスターも同じなので、以前投稿した記事でより詳しく解説していますから、ここではざっくりといきます。

まずはフルードタンクからブレーキフルードを少し抜いて液面を下げておきましょう。

新しい内に交換すれば溢れる事はないかもしれませんが、後でピストンを押し込んだ際にブレーキライン内のフルードが逆流してタンクから溢れる恐れがあるため、事前に少し減らしておくと言うわけです。

リアも同様の手順を踏んでから作業を開始しましょう。

ジャッキアップしてホイールを取り外したら、14mmのメガネレンチを使用して、ブレーキキャリパーをキャリパーサポートから分離します。

実際には分離しなくても下側のボルトを外すだけでキャリパーを回転させる様にずらせるのですが、やけにブレーキホースが短くて曲げると負担が大きそうな事と、単純に作業性が悪いので私は完全に分離する派です。

ボルトを外せばパカッとあっさり外れるので、あとはパッドを手で掴んで引っ張ってやればOKです。

こちらが取り外した古いブレーキパッド

こちらのパッドからシムプレートだけ取り外して交換用のパッドに移植しましょう。

シムプレートを取り付ける時は異音防止にパッドグリスを薄く塗布するのが一般的ですが、サーキット走行では燃える事があるため、私はいつも塗りません。

まあ、塗り過ぎでなければ問題ないと思いますが。。。

プレート表面に痕が残っているのでわかると思いますが、内側外側がありますので、キャリパーにパッドを取り付ける際は間違えない様に注意しておきましょう。

ブレーキパッドをキャリパーサポートのガイドに合わせて取り付けたら、キャリパーのピストンを押し込んでから元通りに組み立てて終了です。

ウォーターポンププライヤーなどで挟んでピストンを押し戻す事も可能ですが、ブーツを痛めたり、キャリパーにキズが入るのを避けるため、可能であれば専用の工具を使用するのが望ましいです。

取り付け後は、ブレーキペダルの踏み応えが固くなるまで何度か踏んでおきます。

パッド交換のみであれば通常はエア抜きの作業は不要となりますが、馴染むまでは効きが悪い場合があるので、普段より車間距離を広めに取って様子を見ましょう。


■リア編 ドラムブレーキ分解でドキドキ

ハッキリ言ってフロント側のディスクブレーキなんて、何度か交換作業をした事のある人ならどうって事はない簡単作業なんですよ。

問題なのはドラムブレーキなんですよね。

単純な慣れや構造の理解度と言った問題だけでなく、ある程度”勇気”や”力”が必要な部分があるので、本当に無理!って人もいます(笑)

そんな私も、実はドラムブレーキの交換作業を教わったのは20年ほど前の話ですし、過去に2回しか触れた事もなく、最後に触ったのは14年前となる。

良く覚えていないが、まあ開いて構造を見ればわかるだろってノリで作業を開始しましたが、正直言って自信がないと言う方には本当におすすめ出来ない作業なので、内容を見てご判断ください。

まずはジャッキアップしてホイールを取り外したら、ドラムのカバーを取り外します。

この時点では、まだサイドブレーキを引いたままにしておく事をおすすめします。

車種によって固定方法に違いがある可能性もありますが、マツダ2(DJデミオ)の場合は正面からプラスネジ2本で固定されていますので、気合を入れてナメない様に取り外しましょう。

対応するドライバーは3番となりますので、間違ったサイズのドライバーで回さない様に!

ショックドライバーが推奨されますが、ここで私がオススメするのは六角シャフトの貫通ドライバー

私が愛用しているのはKTCの工具ですが、六角シャフトのドライバーメガネレンチを掛けて回す事が出来るため、この手の作業でネジをナメ難いです。

ホンダ車を始め、RX-8ロードスターなどのブレーキローターもネジで固定されていたりするので、結構やらかす方が多い様ですが、ドライバーの頭をハンマーで軽く一撃加えた後にメガネレンチでドライバーを回してやればナメずにあっさり回るので、2番3番辺りを1本ずつ持っておくと便利ですよ♪

カバーのネジが無事に外せたら、サイドブレーキを解除しておきます。

先程取り外したカバーのネジを、サービスホールに捻じ込んでやれば裏側でネジの先端がハブに当たってドラムのカバーが浮きます。

後は両手でしっかり掴んでホイールを外す様に手前に動かしてやればOKです。

稀に固着して外れ難い場合があるので、その場合はプラハンでカバーの上下左右を軽打してやれば緩み易いと思います。

無事にカバーは取り外せましたか?

ご覧ください!これがドラムブレーキの内部構造です!

原始的な仕組みですが、各部品がパズルの様に噛み合って複雑に見えますね。

これを分解して元通りに組み立てられるの?と不安を感じた方は、この時点でカバーを取り付けてお店に駆け込む事をおすすめします(笑)

引き返せるのはここまでですよ!よろしいですか!?

コイツを外したら後戻りはできない!

一番上に付いているリターンスプリングと言うメインの大きなバネですが、見掛けによらずかなり固いですよ。

実のところ取り外しはそこまで問題にならないが、組み立てて最後に取り付ける際に地獄を見る恐れがあるので、個人的にはドラムブレーキの作業で最も厄介なのがこのスプリングだと思っています。

ブレーキシューの交換と言うより、私はコレをやりたくないのでドラムブレーキになるべく近付かない(笑)

その他は慎重に確認しながら作業すればなんとかなると思います。

ちなみに、写真撮影用に演出していますが万が一バネが弾くと危ないので、実際に取り外す際にはタオルで正面を押さえながら引っ張っています。

スプリングフック(先端だけ写真に写っている道具)と言う工具を使って引っ張ってやれば、比較的簡単に取り外しは可能です。

リターンスプリングを取り外したら、左右のシューを固定しているピン(シューホールド)をフリーにしましょう。

ここの固定金具の形状は車種毎に結構違いがある様に思いますが、板バネ状のプレートにT字のピンが引っ掛けてあるだけです。

取り外す際はピンの先端をプライヤーで摘まんで捻ってやればバチンッと簡単に外れますが、取り付け時はプレートを押さえて縮めてやらないとピンの先端が届かないのでちょっと大変です。

ちなみに、ピンは裏側に抜け落ちる事があるので紛失に注意してください。

ここまで取り外したら、あとは内部の構成部品が丸ごとゴッソリと取り外せますので、アジャスターの付いている方はバラバラにならない様にしっかり掴んで引っ張り出しましょう。

ハブに隠れて見えませんが、左右のシューを下で繋いでいるバネがあるので取り外してやれば、左右を分離できます。

とりあえずアジャスターが付いている前方のシューは、構造を確認出来る様に分解せずにそっと置いておきます。

後方に位置するシューの方にはサイドブレーキのワイヤーが接続されています。

留め金のカシメてある先端が引っ掛けてあるだけなので、溝に沿って捩じる様に動かしてやれば簡単に抜けるはずです。

これで、まずはブレーキシューの取り外しが完了となります。


■ドラムブレーキの組み立てと調整

さあ、分解はなんとかなりましたが、問題なのは組み立ての方ですよね。

単純に枠に嵌め込むだけのブレーキパッドと違い、微妙な位置合わせや細かい部品の多いブレーキシューの交換は作業工程も多いので、慣れないと結構時間も掛かるので諦めそうになる方も多いと思います。

でも、分解しちゃった以上は組み立てるしかないので、気合を入れて後半戦に突入ですよ!

分解済みのバックプレートは実にシンプルです。

今回は新しい車でそれ程汚れていなかったため、パーツクリーナーを吹き掛けたウエスで簡単に拭き上げた程度の清掃ですが、クラッチ交換時のベルハウジング内部の様に削れた粉がびっしりと堆積している事もあるので、汚れが酷い時はマスク保護メガネを着用するなど、粉塵を吸い込まない様に注意しておきましょう。

カバーの方も清掃を忘れずに!

内部の清掃が終わったら、写真に赤丸で示した部分にドラムブレーキグリスを少量塗布します。(古いグリスは綺麗に拭き取ってください)

使用するグリスはブレーキ周辺に使用可能なシリコンタイプのマルチグリスでも代用可能と聞きますが、一応ドラムブレーキ専用グリスと言った物もあるので、なるべくなら専用グリスを使用するのが良いでしょう。

ちなみに一番上に付いている左右に先っちょの飛び出した部品は、ディスクブレーキで言うところのキャリパーピストンに相当するホイールシリンダーと言う部品で、無暗に押したり引いたりするとフルードが吹き出す恐れがあるので必要以上に触らない様に(笑)

このホイールシリンダーの先端部分にもグリスを塗布する方が多い様ですし、私が過去にドラムブレーキの交換作業を教えてもらった際にもそう聞いた記憶がありますが、標準では塗布されていない様だったため今回は塗っていません。

塗っても塗らなくても特に問題はないと思いますが、もしグリスを塗布するのであれば周囲がゴム製のブーツとなっているため、ゴムを痛めないラバーグリスを使用しましょう。

下準備が完了したら、取り外した時と逆の手順でブレーキシューの組み立てを行います。

まずは後方のサイドブレーキのレバーが付いたシューから取り付けますが、当然ですがサイドブレーキワイヤーを忘れずに取り付けてからシューを嵌め込みます。

写真ではシューホールド(中央の固定金具)を嵌め込んだ際にズレてしまっていますが、上下の赤丸の部分の溝にシューの端が嵌る様に取り付けてから、シューホールドでシューを固定します。

シューホールドは、板バネ状の金具を強く押さえながらピンを通して回してやれば固定できます。

不慣れな方や不器用な方が苦戦する可能性があるのは前方のシューで、アジャスターがバラバラにならない様に取り付けるのがちょっと大変です。

アジャスターは最も短い状態に調整しておき、写真の様に組み立てたらバネの引っ掛かっているプレート状の部品が外れない様に指で押さえながら、且つアジャスターの両端の溝が左右のシューの切り込みに嵌る様に取り付ける必要があるのですが、これが驚くほどあっさりとバラけてしまうので難易度はやや高め。

おまけに見慣れていないと正常に取り付け出来ているのかどうか分かり難いので、ついつい確認のつもりで指でグイグイ押さえてしまって外れてしまうなんて事も(笑)

軽く押さえて裏側に脱落しない様であれば、後からプレートがアジャスターの爪にしっかり引っ掛かるので、気になってもとりあえず自分を納得させて後回しにしましょう。

案外大丈夫なので(笑)

尚、左下に写っているバネは左右のシューを下側で繋ぐバネなので、取り外す時と同じ様に予め引っ掛けた状態で取り付けた方が楽です。

斜め上からシューを捩じる様に取り付ければ、下段はバネのテンションが掛かってガッチリ固定されます。

ただし、この状態で手を離すと裏側のアジャスター毎バラけて手前に飛び出してくる事があるので、シューホールドで固定するまでは手で押さえておきましょう。

写真は撮影用にテキトーに仮組みした状態なのでバネが掛かっていませんが、ここまでの組み立て手順が問題なく完了していれば赤線で示した位置にバネが通っている状態になっていると思います。

さあ、それでは最後の難関となります。

最初に取り外したアイツと戦う時間がやってきましたよ!

塗装がズタズタになっているのは私のせいではありません。

プロジェクトμの塗装の品質に問題があるだけです(疑)

メインのリターンスプリングをスプリングフックで引っ張りながら、力技で溝に引っ掛けます…と言いたいところなのですが、って言うか私はそうしたのですが、整備士の方に後から聞いたらどうやら工具の使い方を間違っているみたい。。。

もしかすると、そんなに力は必要ないのかもしれませんね。

写真の例では左側からスプリングフックの先端を穴に差し込み、フックのシャフトにバネを引っ掛けてから梃子を使って起こしてやればスプリングが滑り込む様に嵌るそうです(笑)

私の様に引っ張って取り付けた場合は、スプリングフックの先端形状によってはバネがしっかり嵌っていない事もあるので入念に確認しておきましょう!

先端の返しがしっかり穴に引っ掛かっていれば大丈夫ですが、中途半端な状態だと走行中に外れた場合は大変な事になります。

もう1つ注意点なのですが、私もそうですが下手な方がこの作業をすると、バネを強くひっぱるためにホイールシリンダーを強く押し込んでしまい、ブーツからブレーキフルードが滲む事があります。(写真では左側のブーツから少し滲んでいるのがわかります)

上手な方や、力に自信のある方であればシューが動かない様に片手で抑えながらバネを引っ張ったり、効率良くあっさりと取り付ける様ですが、弾いたら怖いと言う恐怖心があったり、非力で上手くバネを引っ張れないと言う場合はシューを上手く押さえられないと言う事も良くある話。

もしブレーキフルードが滲んでしまったら焦らなくて良いので、まずはパーツクリーナーウエスで漏れたフルードを流した後、組み立て完了後にエア抜き作業を行いましょう。(カバーまで取り付けて完全に組み立てが終わるまではペダル操作厳禁なので注意!解放状態でブレーキペダルを踏むと、最悪の場合は構成部品が全部吹き飛びます)

上手に組み立てが出来た場合はエア抜きは必要ありません。

組み立てが完了したら、取り付け状態を改めて良く確認した後、最短位置になっているアジャスターを手動でざっくりと調整しておきます。(写真は組み立て作業と逆側のブレーキなのでアジャスターが逆になっています)

マイナスドライバーの先端で奥へ押し込む様に少しずつ回しましょう。

恐らく、少し回したところで「カチッ」と音がして、先程まで正常に取り付けられているのかどうか心配だったアジャスター裏のプレートが、アジャスターの爪に引っ掛かるのが確認出来ると思います。

この状態になれば自動調整機構が働く様になるので、そのままカバーを取り付けても構いませんが、時間短縮のためにアジャスターのネジ山が1山程度見えるまで回して伸ばしておきましょう。(縮める方向には回らないため回し過ぎに注意)

最後に、カバーを取り付けてから踏み応えが固くなるまでブレーキペダルを数回踏み、続いてサイドブレーキを4~5ノッチで手応えが固くなるまで何度も引いてください。

もし10回以上引いてもサイドブレーキの引き代が全く変わらない様であれば、アジャスターが正常に動いていない可能性があるため、再度カバーを開いてアジャスターをもう少し回してやるか、組み付け状態に問題がありそうなら再度分解して組み立て直しましょう。

無事にブレーキのペダルタッチとサイドブレーキの引き代が正常になれば、ブレーキシューの交換作業は完了となります。

フロントのブレーキパッド交換と同様に、馴染むまでは効きが弱かったりフィーリングが悪い場合がありますので、しばらくの間は十分な車間距離を取って様子を見ながら運転してください。