マツダ2に車高調を取り付けてから1年10ヶ月ほど経ちました。
走行していても特に振動やガタつきなどは感じませんが、フロント周辺からゴトゴト…と異音がするんですよね。。。
私が使用しているのはクスコのSPORT_Rと言う車高調で、フロントにはキャンバー調整式のピロアッパーマウントが採用されています。
実は半年を過ぎた頃、1年も経たない内からカタコトと異音が気になり始めたのですが、いくらピロボールとは言ってもそんなに早くヘタるとは思いもせず、最初はスプリングシートの緩みや各部の増し締め点検、ハブベアリングなどを疑っていましたが消える気配もないので、試しにアッパーマウントのピロにグリスを吹き付けてみたところ一時的に異音がしなくなる事を発見。
この時点でピロが原因である疑いは濃厚でしたが、特に不具合を感じるわけでもなく、交換も面倒なので異音が再発する度にグリス塗布で誤魔化す事を繰り返していた。
しかし最近になっていよいよ誤魔化しも通用しなくなってきたので、重い腰を上げ修理する事に。
■補修部品のピロボールについて
中には分解が困難だったりピロボールが圧入されていたりと、庭先では対応出来ない製品、容赦なくAssy交換となる製品もある様ですが、クスコやテイン、オーリンズなどなど、主流の大手メーカーの車高調は補修部品としてピロボール単体が販売されている物が多いです。
ちなみにこのピロボール、ピロボールベアリングなどと呼ばれている部品なのですが、どのメーカーもほとんどがミネベア社の製品を使用していて、サイズも数種類程度で共通な物が多い。
正式名称はスフェリカルベアリングと呼ばれる部品です。
どのメーカーの補修部品もほぼ同価格だし、直接ミネベアのスフェリカルベアリングを探してみても価格の差はほとんどないので、サイズさえ間違えなければどこで買っても同じである。
ただ気になるのは、クスコのアッパーマウント用に販売されている補修用のピロだけ他メーカーに比べて価格が倍ほどする事。
結構気になっている方も多い様ですが、互換性のある同寸法のピロでも2種類が存在し、例えば今回私の車高調に採用されているピロの型は「MBWT-18」となっているが、廉価版と称して販売されている物に「MBWTD-18」と言う型が存在する。
2つの型番を調べてみると、MBWT-18はMBWTD-18の約2倍の価格となっており、一体何がそんなに違うのか?やはり高価な方が高性能なのか?と疑問に感じたため詳しく調べてみた。
どうやらクスコのアッパーマウントに採用されているのは高価なMBWT-18の様だが、テインやオーリンズは安価なMBWTD-18を採用している。
車高調メーカーが正式に採用しているのだから、安価だからと言って品質や性能が劣ると言うわけではなさそうだ。
それに、私はテインのピロアッパーマウントを使用した事はないが、同じく安価なピロを採用しているオーリンズの車高調では使用経験があり、使用開始から4~5年が経過するまで異音など発生していない点も気になる。
たった一度の例で決めつけるのはやや乱暴だが、高価なピロで1年も経たない内にガタが出たのに、安価なピロの方が長期間耐えたのには何か理由があるのかもしれない。
■MBWTとMBWTDの違いと特徴
MBWT-18とMBWTD-18は寸法も材質も全く同じなので完全に互換性があるが、2倍も価格差がある理由は何なのか?
それは、ピロのケースとボールの摩擦面に採用されている”ライナー”の材質である事がわかりました。
ライナーは金属同士が直接触れない様に仲介している緩衝材とでも言えば良いのでしょうか。
このライナーが潰れてきたり、削れたり剥がれたりするとガタが生じたり、直接金属同士が摩擦する事で異音が発生すると言うわけ。
このライナーの材質が、MBWTの方はテフロン(フッ素系樹脂)を採用しているのに対し、廉価版などと言われているMBWTDの方はダクロン(ナイロン系)となっていて、この違いが価格差の理由となっている。
単純に値段が高い安いではなく、それぞれのライナーの材質には特徴があって、用途や狙いによって適切に選ぶ必要がある。
テフロンは被膜が硬く低摩擦、油脂や薬品耐性に優れると言うメリットがあるが、圧力や衝撃に弱く割れやすい、剥がれやすいと言うデメリットがある。
対してダクロンは柔らかくテフロンに比べると摩擦は大きいが、圧力や衝撃に強く潰れても弾力によって復元力に優れると言うメリットがある。
この特徴を比較すると、アッパーマウントに採用するには安価なダクロン仕様の方が適材と言えそうであるが、クスコの車高調に高価なテフロン仕様を採用するのは、耐久性を犠牲にしてでも低摩擦やダイレクト感を優先したいと言う考えに基づく選択の可能性もあるので、必ずしも間違っているとも言い切れない。
そもそも競技用と謳っている事もあり、頻繁に点検やメンテナンスをするのは当然とも言えるので、耐久性に劣る事など承知の上で使うべきなのかもしれない。
ただ、これがどのくらいフィーリングに影響を与えるのか、違いが感じ取れるのかと言うと、ハッキリ言って違いはわからない(笑)
なので、我々の様な並のユーザーは安価なダクロン仕様のMBWTDを選択した方がメリットが大きいのではないか、と言うのが私の意見です。
と言う事で、これから長期の検証となりますが、今回交換用に使うのは標準採用のMBWT-18ではなくMBWTD-18の方を選択してみました。
■アッパーマウントのピロ交換
念のためですが、製品によってピロアッパーマウントの分解方法は若干異なります。
スナップリングなどで固定されていたり、ケースがネジ留めされている物、圧入されている物などありますので、交換作業の前に構造を確認して道具や作業環境の準備しておく事をおすすめします。
今回は、クスコ製のキャンバー調整式ピロアッパーマウントの分解方法とピロの交換例となります。
当然ですが、まずは車高調を車から取り外さなければアッパーマウントを分解出来ません。
取り外した車高調Assyからアッパーマウントを分離するには、矢印で示したロッドのナットを取り外します。
スパナなどでロッドの回り止めをしてからメガネレンチを使用するのが好ましいですが、どうしても外せない場合はあまりおすすめはしませんがインパクトレンチを使うと良いでしょう。
もしスプリングにプリロードを掛けてある場合は、程度によってはナットを外した瞬間に弾く恐れがあるので、事前にスプリングシートを緩めてプリロードを抜いておく事も忘れずに。
後からまた組み立てるので、分解したついでにダンパー側の清掃もしておくと良いです。
アッパーマウントが分離できたら、キャンバー調整用のプレートを固定しているボルトを取り外しましょう。
下段に位置するプレートは二重構造になっていて、このプレートでピロボールを挟む形で取り付けられています。
分解は赤丸のボルトを取り外せばOK。
それ程固くはありませんが、六角レンチでなめやすいので注意!
プレートを開くとピロボールとご対面です。
これは裏側から指で押さえてやれば、大した力も必要なく簡単に抜ける構造になっています。
見た目は綺麗なモンですし、初めて触れる人なら実際に触ってみても何が悪いのか、本当にガタがあるのか判別するのは難しいくらい、本当に僅かなガタですし、くるくるスムーズに回るのも当たり前の様に感じちゃうかもしれません(笑)
意識して確認しないと判別できないくらい僅かなガタでも、大気中を伝わる音の様な疎密振動と違い、ボディを介して車内へ伝わって来る個体伝導の音は、マンションなどで隣や上階の生活音が気になると言う例からも分かる通り相当煩いのだ。
言い換えれば、媒体となるボディと音の発生源の間に音を減衰する物があれば低減出来るので、車高調を取り付けた後に気にする人の多いスプリングのツイスト時に発生する音など、アッパーマウントとストラットタワーの間に薄いナイロンのシートを挟むだけでもかなりマシになる。(純正アッパーマウントにはナイロンシートが取り付けられている例も多い)
ピロボールを抜いたら、分解したアッパーマウントの部品を丁寧に清掃しておきましょう。
水洗いする程ではないと思いますが、パーツクリーナーとウエス、ナイロンブラシなどを使って砂埃などを取り除きます。
交換用のピロボールは新品なので大丈夫だと思いますが、軽くウエスなどで拭いて埃や砂を取り除いておきましょう。
圧入しなくても軽い力で取り付け可能ですが、プレートの穴はかなり高精度で僅かなクリアランスもないので、僅かな角度のズレや糸くず1本でも挟まれば入りません。
上手く嵌らない場合は無理に押し込んだり叩いたりせず、角度を変えながら軽い力で慎重に差し込みましょう。
端さえ上手く嵌れば、後はピロボールの自重で勝手に滑り込むくらい簡単に取り付け出来るはずです。
無事にピロボールの交換が済んだら、分解した時と逆の手順でアッパーマウントと車高調Assyを元通りに組み立て、車に取り付ければ交換作業は完了となります。
同時にスプリングの変更などをしていなければ車高や減衰力等も変化はないと思いますので、そのまま試走して異音が消えた事を確認しておきましょう。
問題がなければ次回の交換作業は数年後だと思いますが、その前にダンパーのオーバーホールかもしれませんね(笑)
他社の車高調も多少分解方法は異なるかもしれませんが、メーカーから供給されている補修部品か、直接ピロボールの寸法を確認して同寸法の物を用意すれば交換修理ができますので、ゴトゴトと異音に悩まされている方は参考にされてください。