今日はマツダ2(DJデミオ)のスパークプラグを交換してみましょう。

以前、NDロードスターに話題のNGK Premium RXを取り付ける話でプラグ交換の手順は紹介済みなので、内容はかぶるのですが、先日SNSで締め付けトルクを誤って大事になったと言う話題を見掛けたため、改めて注意点など再確認してみましょう。

プラグの交換作業はネジを緩めて、再びネジを締め付けるだけの簡単作業…なのですが、よ~く考えてみてください。

仮にもエンジン本体のネジ穴に太いネジを締め付けると言う作業ですので、もし”万が一”が起こってしまった場合は、最悪エンジン載せ替えなんて事になる可能性もあるちょっと怖い作業だって事は頭に入れておいた方が良いです(笑)

冗談ではなく、実際に壊したと言う話しや、中古車を買ったら前のオーナーがやらかしてたなんて例もある様なので、くれぐれも慎重に。

◆Mazda2/DJデミオのスパークプラグ交換

◆勘違いし易い締め付けトルクについて

■Mazda2/DJデミオのスパークプラグ交換

さあ、それでは改めてスパークプラグ交換の作業を確認してみましょう。

今回はマツダ2の例となりますが、基本的に交換手順はどの車種もほぼ同じですので、あとは各メーカーの適合表を確認して必ず適合したプラグを使用しましょう。

ネジ径などサイズが明らかに異なるプラグはもちろんの事、ネジのサイズが同じでも長さが違えば正常に点火できなかったり、長過ぎて燃焼室内に飛び出せばピストンと激突して大事になる恐れもあるので、サイズの違うプラグの使用は絶対NGですよ!

必要な工具はこんな感じ。

15~20cm前後のエクステンションバーと、スピンナーハンドル or ラチェットハンドルのどちらかだけでもOK。

使用するソケットは通常のソケットとは異なり、ちょっと特殊な磁石付きのプラグレンチ(プラグソケット)を組み合わせて使用します。

マツダ2(DJデミオ)のプラグは14mmのプラグレンチが対応しますので、サイズの合った物を用意してください。

締め付けトルクの注意点で詳しく説明しますが、指定された締め付け回転角で取り付ける方法もあるので必ずしも必要ではありませんが、プラグの締め付けに適した低トルク向きのトルクレンチを用意するのが理想です。

また、今回のマツダ2も含め、最近の車はダイレクトイグニッションが多いので、IGコイルを固定しているボルトを外すためのソケットも必要に応じて準備しておきましょう。

マツダ2(DJデミオ)の場合は8mmのソケットが対応します。

最近の車なので、まずはエンジンカバーを取り外します。

これは真上に引っ張れば簡単に外れます。

写真の様にヘッドカバーに固定されているのがIGコイルです。

まずは四角い枠で囲んだコネクタを引き抜き、赤丸のボルトを外します。

あとはIGコイルを掴んで真上に引き抜けばご覧の通り、簡単に取り外す事が出来ると思います。

古い車など、ディストリビューターやIGコイルからプラグコードで接続されている場合は特にネジ留めなどされていないと思うので、そのまま引っ張ってやれば簡単に抜けるはずです。

ただし、ダイレクトイグニッションは順番に並んでいて分かりやすいので気にしなくても構いませんが、旧式の場合、点火順序を理解していない方は一気に全部引き抜かずに1本ずつ交換作業を進めていきましょう。

プラグコードの繋ぎ方を間違えると、始動性の悪化やアイドル不調、加速中の息継ぎ症状などの原因となりますよ。

プラグホールにアクセス出来る様になったら、プラグレンチを使用してスピンナーハンドルで緩めてやりましょう。

この際、絶対に片手で作業はせず、片手はスピンナーハンドルのグリップに、もう片方の手は緩める際にプラグレンチの軸がぶれない様に、レンチのヘッド部を支えておきます。

プラグレンチが傾いたりすると、プラグやネジ山を痛める原因となりますので徹底しておきましょう。

緩んでしまえば簡単に回りますので、後は穴の中で落下させない様に慎重に引き抜いてやれば取り外しは完了です。

無事に古いスパークプラグを取り外したら、新しいプラグをプラグレンチにセットします。

磁石でくっ付いていますが気を付けないと外れて落下する事もあるため、慎重にプラグホールへ挿し込みましょう。

先端が着地したのを感じたら、軽く捻じ込んでみます。

この際に指先の軽い力だけで回らない場合はネジ山が斜めに掛かっている可能性があるので、無理に締め込まず向きを整えてください。

問題が無ければ、このまま指の力だけで締め込める所までしっかり締め込みましょう!

仮留めが済んだらトルクレンチの登場です。(持っていない場合は後述します)

マツダ2(DJデミオ)のスパークプラグは15~20N・m(1.5~2.0kgf・m)で締め付ける様に指示されていますので、指定の締め付けトルクにセットしてください。

弱過ぎはもちろんですが、締め過ぎは絶対NGですので注意してくださいね!

指定トルクに設定したら、トルクレンチを使用して増し締めを行います。

一気に締めず、ゆっくり回してカチンッと言ったところで締め付けは完了です。

写真では撮影のため片手で締めている様に見えますが、締め付け時も必ずレンチのヘッド部分を片方の手で支えておきましょう。

ちなみに、プリセット式の場合は厳密にはカチンッと言った時点でオーバートルクなので、気になる場合は指定トルクの上限値より少し低めにセットして使用してください。

尚、トルクレンチを持っていないと言う場合は、指定の回転角で締め付ける方法でも増し締め可能です。

マツダ2(DJデミオ)の場合は手で締まるところまで締め付けた後、ラチェットなどを使用して1/2回転(古いプラグを再使用する場合は1/12回転)と指定されていますので、レンチのハンドルがちょうど180度回るところまで締め付けてやればOKです。

あとは残りのスパークプラグも同じ様に作業を進めましょう。

全てのスパークプラグの交換が完了したら、IGコイルをしっかり差し込んでボルトで固定し、忘れずにコネクタをしっかり接続しておきましょう。

最後にエンジンを始動して、問題なく始動する事とアイドリングが安定している事を確認したらプラグ交換の作業は終了です。

最近の車は長寿命プラグが使用されているので交換する機会はほとんどないと思っている人も多い様ですが、電極摩耗は点火回数や燃焼室内の環境にも左右されますので、10万km対応を謳うプラグでも高回転・高負荷域を多用するサーキット走行の頻度が多い方だと、2~3万kmで交換時期を迎える事も珍しくはありません。

頻繁に取り外してまで確認する必要はありませんが、車検の前後など、時々チェックしてあげましょう!


■勘違いし易い締め付けトルクについて

さて、適切なスパークプラグの締め付けトルクは何kgf・mでしょうか?

ぶっぶー!残念!不正解です。

ホイールナットなどの締め付けトルクもそうですが、ネジのサイズや着座面の形状などによっても差がありますよね。

高校や大学などで、機械について学ぶ機会の多い工業系に進んだ方なら知る機会もあるかもしれませんが、機械とは無縁だった私は昔、ネジは力いっぱい思いっきり締め付けた方が良い物だと思っていた時期がありました。。。

最近は習うのかどうか知りませんが、自動車学校で緊急時のタイヤ交換を習った人もいるでしょう?

ホイールレンチを足で踏んで締めろとか聞きませんでした??

今考えると有り得ない締め方ですけど。。。

鵜呑みにして、何度かハブボルトをへし折った事があります(笑)

スパークプラグのサイズや形状にも色々と種類があって、主にはネジ径で決まっている様ですが、適切な締め付けトルクは種類によって異なります。

そんなの毎回調べるのは大変じゃん!って思うかもしれませんが、そうなんですよ、大変なんですよ(笑)

しかし心配無用!

マイナーな外国のメーカーなどはわかりませんが、少なくとも良く知られるNGKデンソーなどの国産スパークプラグなら外箱にしっかり記載されています。

例えば、今回使用したNGKのPremium RXでは、マツダ2用の締め付けトルクは15~20N・m(1.5~2.0kgf・m)、締め付け回転角では1/2回転としっかり記載されていますので、取り付けの際は記載されている指定トルク(または回転角)を守って締め付ければ問題ありません。

…と言うと、注意点は”外箱の記載をしっかり読め”と言う話で終わってしまうわけですが。

少数ながら中には読まずに勘でやっちゃう方が本当にいる事や、問題なのは予備で保管していたプラグや点検で取り外した古いプラグを再使用する場合など、既に外箱を捨てちゃって確認出来ない場合などです。

前者はどうしようもないのですが、外箱や説明書がない場合、今時ならインターネットで調べるのが手っ取り早いですよね。

私のサイトも偉そうな事は言えませんが、素人さんが勘や思い込みで誤った情報を伝えている場合もあるので、この手の情報はメーカーの公式サイトで確認するのが確実です。

NGKであればこちら(NGK公式サイト:プラグの正しい取り付け方)のページを見れば、プラグの品番毎の情報や、ネジ径やガスケットタイプ別の締め付けトルクなどが全て記載されています。

しかし、情報を確認しても”勘違い”する方がいるので、ここからが注意するポイントです!

まず、回転角で締め付けを行う場合、新品と再使用プラグでは締め付け角が異なるので、ここは表を見間違えない様に注意しておきましょう。

締め付けを行うと着座面に付いている金属製のガスケットが潰れて密着する構造です。(コニカルシートタイプを除く)

そのため、一度取り付けたプラグはガスケットが既に潰れてしまっているので、新品と同じ回転角で締め付けるとオーバートルクとなってしまいます。

また、新品・再使用プラグ問わず、トルクで管理する場合も表の見方に注意が必要です。

例えばプラグのネジ径φ14mmの締め付けトルクは25~30N・m(2.5~3.0kgf・m)と記載されています。

ここで勘違いする人が多いのですが、表に記載されているのはプラグの”ネジ径”です!

一例を挙げると、NDロードスターDJデミオ用のスパークプラグは14mmの”プラグレンチ“が対応していますが、これを”14mmのネジと勘違い”して締め付ける人が意外と多い点は無視できません。

そう、プラグレンチのサイズではなくプラグのネジ径なので、DJデミオ用のネジ径はφ12mmである事に注意しておきましょう。

まあ、20N・mで締めるところを30N・mで締め付けた場合にエンジンブロックのネジ山が壊れるかと言えば、その程度のオーバートルクなら致命的な損傷には至らないかもしれませんが、最近のエンジンはアルミ製が多いので、考えている以上にあっさりと言う事も十分にあり得ます。

仮に見掛け上は問題がなくても、ネジ山が伸びたり潰れたりして着脱時に妙な抵抗を感じたり、走行に差し支えない程度でも軽度の圧縮漏れが起こってパワーダウンなどの原因となる可能性もありますので注意が必要です。

また、エンジン側にダメージがなくても、オーバートルクはスパークプラグ本体をねじ切ったり碍子を割ってしまったりと言うトラブルの原因になったり、トルク不足は走行中の振動による電極破損の原因にもなるそうなので、改めて考えると結構怖い作業なんだなって事が良くわかると思います。

たかがプラグ交換と甘く考えず、適切な工具を使用して正しい締め付けトルクを守って作業しましょう。