先日、ロードスターのバッテリーを小型化する話題を投稿していますが、あちらは単純に小さなバッテリーに載せ替えてしまえば良いだけなので、昔から定番のシンプルな方法です。

しかし、最近の車に多いアイドリングストップ機能が装備されている場合はそう簡単にはいかない。

実際に試した事のある人の多くは、普通のバッテリーに交換した場合はもちろん、アイドリングストップ車対応バッテリーでも、サイズダウンすると容量不足と判定されて警告灯の点灯に悩まされている様です。

エラーを出さずにアイドリングストップの機能を完全停止させ、バッテリーを小型化する方法はあるのでしょうか?

◆キャンセラーでは完全解除できない!

◆アイドリングストップを完全機能停止させる方法

◆必要な部品を揃えよう

◆バッテリー小型化の作業手順とコツ

■キャンセラーでは完全解除できない!

最近の車に装備されているアイドリングストップの機能は、普通に乗っていれば特に気にする必要はないものの、駐車場などで切り替えしなど行っている最中にエンジンの停止や始動が度々繰り返される様な事もあったり、減速中にストンとエンストの様に止まって不快に感じる人も多いと思います。

以前に比べればある程度状況に応じてコントロールしてくれる様にはなってきているみたいですが、登場してから約50年、未だに違和感が完全に消えるには至っていません。

しかし、単純にアイドリングストップの機能を停止させようと思えばON/OFFスイッチがあるので、苦手な方はいつでも任意に機能停止は可能です。

マツダ2(DJデミオ)の例ですが、ボタンを押せば写真の様にi-stopのインジケーターが点灯して、停車してもエンジンは動いたままとなります。

しかし手動でエンジン停止後、再始動する際には再び機能が自動的にONで復帰するため、車に乗る度に毎回ボタンを押す必要があるのは少々煩わしいのも事実。

この問題を解決する便利アイテムにアイドリングストップキャンセラーなる商品がありますが、これは毎回ボタンを押すのが面倒に感じる方向けのパーツで、スイッチの回路にリレーなどを組み込む事で、IG電源が流れた瞬間に”内部的に”自動でスイッチを押してくれると言う物。

少なくとも2022年12月現在、アイドリングストップのキャンセル自体に保安基準上の問題はないそうで、アイドリングストップするのが嫌だと言うだけであれば、キャンセラーの装備でおしまいと納得して終わりなのですが、この機能の本当のデメリットは勝手にエンジンを止める事ではない!

最大のデメリットは、ボタンを押したりキャンセラーを装備してアイドリングストップの機能を停止しても”システム”の制御は残っており、それに付随するデカくて重いバッテリーが搭載されていると言う点である。

システムが完全停止していない以上、キャンセラーを取り付けてもバッテリーの監視は続いているため、小型な物に交換すれば車はすぐに異常と判定して警告灯が点灯してしまう。

お節介を通り越して大迷惑!

イラネー・オブ・ザ・イヤー50年連続最優秀賞受賞のクソ機能である。


■アイドリングストップを完全機能停止させる方法

ボタンを押したり、キャンセラーを取り付ける事でアイドリングストップ機能を停止しても、システムが残っているためバッテリーの監視は続いています。

なので、バッテリーを小型化してもエラーが出ない様にするには、アイドリングストップのシステム自体を停止(完全解除)してやれば良いと言う事になります。

そんな事が出来るの!?

車種にもよるので一概には言えないのですが、ほとんどの車で完全解除が可能です。

実はアイドリングストップする条件がいくつかあり、その内の1つにボンネットを開いた状態ではバッテリー状態やインジケーターの点灯有無に関わらず、アイドリングストップしないと言うもの。

これは整備上の都合で、エンジンの動作確認や冷却水の交換作業などを行う際に勝手に止まったりすると困るためだと思うのですが、どう言うわけかボンネットが開いているとアイドリングストップ機能が停止するだけでなく、バッテリーをアイドリングストップ非対応の物に替えてもエラーが発生しないと言う好都合な特徴がある。(実際にはバッテリーの監視が止まるわけではないと思います)

ならば、ボンネットを閉じている状態でも開いていると誤認させる事が出来れば、アイドリングストップ機能を完全に無効化できるのではないか。

多くの場合、ボンネットのアンカー辺りに開閉確認をするセンサーが取り付けられています。

今回はマツダ2(DJデミオ)の作業例となりますが、まずはアンカー周辺のカバーを取り外してセンサーの有無を確認してみましょう。

カバーは赤丸で示した穴にマイナスドライバーの先端を差し込んで、外側に向かって開く様に捻ってやれば爪が緩んで簡単に外せます。

※車種によってはボンネットが開いている事を知らせる警告が表示される場合があるため、作業開始の前にボンネットを開いて警告の有無を確認してください。また、直接走行に支障が出る例は聞きませんが、一部車種ではキーレスドアロックリモコンエンジンスターターなどが無効になると言う報告もあるため、ボンネットを開いた状態で動作確認をお勧めします。

はい、ありました!

ちょっと写真では分かり難いですが、アンカーの爪に密着する様に取り付けられているのが、ボンネットの開閉を確認しているセンサーです。

プラスネジで固定されていますが、さすがにこの狭いスペースで普通のドライバーは使えないので。。。

スタッビドライバー板ラチェットなど、少スペースで使える工具を使用してネジを外します。

こちらが取り外したセンサーですが、単純なスイッチ式の様で、ボンネットを閉じて左側のレバーが押されると本体側のボタンを押さえる様になっているみたいです。

確認出来る範囲にはカプラーが見当たらないので、どこか邪魔にならない場所に上手く固定する必要があります。

私は結束バンドベースを貼り付けて、そのまま結束バンドで固定しました。

バンパーを取り外せば隠れた位置にカプラーがあるかもしれませんが、万が一何か不具合が発生した場合に復帰し易いので、特に理由が無ければセンサーは取り外さずに残しておいた方が良いと思います。

センサーを邪魔にならない位置に固定したら、カバーを元通りに取り付けてやればOKです!

この際にセンサーとカバーが強く干渉する様なら位置を調整しましょう。

どうやら大丈夫そうなので、これでアイドリングストップの完全解除が完了となります。

では、実際に動作確認をしてみましょう。

ご覧の通り、異常を示す警告灯はもちろん、アイドリングストップOFFのインジケーターも不点灯のままアイドリングストップしなくなりました。

この状態で3回ほどエンジンの始動と停止を繰り返してみたり、通常走行から全開走行まで試してみましたが、エラーはもちろん、フェイルセーフの様な制御も掛からず全く問題ありませんでした。

ただ安上がりに、キャンセラーを使用せず機能停止させたいだけの方はこれで終わりとなりますが、今回のネタはここからが本題となります。

本当にバッテリーを小型化してもエラーが出ないのか?完全解除されているのか?

それでは実際にバッテリーを小型化してみて、不具合が出ないか確認してみましょう。


■必要な部品を揃えよう

アイドリングストップ車には、非装着グレードや同クラスの車種と比べてもとにかくデカいバッテリーが装備されています。

マツダ2(DJデミオ)の例では、急速充電に対応したQ-85と言う型が搭載されており、これは普通のバッテリーで言うところのD23サイズとなっている。

ちなみに、全車標準装備のDJデミオと異なり、先代のDEデミオにはアイドリングストップが装備されているグレードと非搭載のグレードが存在しますが、アイドリングストップ車にはDJデミオと同じQ-85が搭載されているのに対し、非搭載車はB24となっています。

非搭載車の場合はNDロードスターの純正バッテリーと同じサイズと言うわけで、アイドリングストップの機能を使わなければ、そのくらいの容量で十分に足りると考えても差し支えなさそうです。

って事で、今回は先日のロードスターと同じく、思い切って46B19Lに大幅サイズダウンを行います。

こうやって並べてみると、その大きさの違いが良くわかりますね。

左が交換予定のB19、右が標準搭載されているQ-85ですが、重量はQ-85が約17.5kgに対してB19は約9kgと約半分に!

8kg以上なんて、ボンネットをカーボンに替えた程度ではまず届かない重量差ですよ!

アイドリングストップを使わないのであれば完全に無駄な重りとなっているので、これを見ちゃうとアイドリングストップ機能の本当のデメリットと言うのも頷けると思います。

それでは作業を開始する前に、サイズ変更に必要な物を揃えましょう。

 

必要な物その1 端子サイズ変換アダプター

しかし、前回の記事でも触れましたが、BサイズとDサイズのバッテリーでは単純な大きさだけでなく、端子のサイズが全く違うので、このままバッテリーだけをポン付けで載せ替える事はできません。

この端子のサイズを変更するか、車両側のターミナルをバッテリーの端子サイズに合わせて変更する必要があるわけですね。

それを可能とする部品に端子変換アダプターと言う便利な物がありますので、今回はこちらを使用して対応しましょう。

小さい端子を大きい端子に変換するアダプターの他、逆にサイズアップしたい場合は大きい端子を小さい端子に変換するアダプターもあるので、用途に応じて選択します。

詳しくは後述しますが、今回はプラス側の変換アダプターは使用しませんでした。

プラス側は端子の根本が分離できる構造だったため、Bサイズ用の端子に取り換えて、アダプターを使用せずに直接バッテリーの端子に固定出来る様に細工をしました。(次項を参照)

 

必要な物その2 バッテリー固定ステー

バッテリーの幅が全く異なるため、Dサイズ用のステーで押さえているだけではしっかり固定出来ない可能性があります。

並の走行であれば特に問題はないと思いますが、今回の軽量化の目的はサーキット走行などの激しい動きを想定したものなので、Bサイズ用のステーを用意しましょう。

こちらは使えなくはないものの、ちょっとゴテゴテして見た目が悪いのでボツとした物ですが、ロードスターでも使用したMeltecのH型バッテリーフレーム F-5に、汎用ステーで固定用のロッドを通す穴の位置合わせを行った物。

バッテリートレーをそのまま使用する場合はDサイズ用のステーに合わせた寸法となっているため、穴位置の延長が必要になります。

ちょうど良い物が見付かる場合は、バッテリートレーをBサイズ用に変更すればステーの延長加工は不要で済むと思います。

Dサイズ用のステー(上)とBサイズ用のステー(下)ではこんなに幅が違うので、穴の位置が全く合わないのです。

下のステーはDYデミオ用を左右のオフセットに合わせて曲げ加工した物で、CT系ランサーエボリューション用などそのまま使用可能なステーもあります。(車種は無関係に、穴位置のオフセットに注意すればBサイズ用のステーが流用可能です)

そのまま使用可能とは言っても、片側だけ汎用ステーで穴位置の延長は必要ですが。。。

実際の使用例は作業内容の説明で後述します。

 

お好みで準備する物 バッテリーインシュレーター

これは元々付いているインシュレーターを切り貼り加工する、または使用しないと言う選択肢もあるのでお好みですが、B19サイズに合わせてトヨタ用のバッテリーインシュレーター(品番:28899-74150)をお勧めします。

これなら見た目も悪くならずに、被せるだけのポン付けとなりますので、必要な場合は準備しておくと良いでしょう。

さあ、これで作業に必要な物が揃ったので、実際にバッテリーの小型化を試してみましょう!


■バッテリー小型化の作業手順とコツ

準備が整ったらいよいよデカいバッテリーとおさらばして、大幅な軽量化を実現しましょう!

何度も言いますが、アイドリングストップ対応のバッテリーは本当にデカい。

重量はQ-85サイズで17~18kgと、たっぷり入った灯油のポリタンク並の重量となっている。

なんだか、あまりの重さに車が傾いて見えますね。(妄想)

バッテリーを載せ替えるまでは通常の交換方法と変わらないので、サクサクと端子とステーを取り外しましょう。

初めて作業する方で良くわからないと言う方は、以前投稿したこちらの記事を参考にしてください。

この作業では1点だけ、プラス側の端子を取り外す際に矢印で示した部分の端子根元のナットを緩めておきます。

結構固いので、バッテリーのステーを取り外す前の方が緩め易いです。

バッテリー交換自体は全て10mmのソケットレンチで作業出来ますが、プラス端子の根元のナットのみ12mmとなっています。

通常はこれでOKですが、マツダ2(DJデミオ)の場合はストラットタワー付近に接続されているアース配線が引っ掛かってバッテリーを持ち上げられないので、赤丸で示したボルトを取り外して配線を邪魔にならない位置に動かしておきましょう。

続いて、インシュレーターを剥がしたらバッテリーが丸見えになるので持ち上げて取り除くだけですが、これが本当に重いので要注意ですよ!

先程も言いましたが、作業姿勢が悪い場所である事に加え、このサイズのバッテリーは平均で17~18kgの重量となっているため、甘く考えているとケガをする恐れがあります。

可能であれば誰かに手伝ってもらうのが良いでしょう。

無事にデカいバッテリーを降ろせたら、蹴りを入れたい気持ちを抑えて交換用の小さなバッテリーに載せ替えます。

先程の重量に比べたら、これでキャッチボール出来そうなくらい軽いですねー!(注意:9kg)

今回使用する端子変換アダプターの都合もあるので、右端に寄せてセットします。

インシュレーターを使用する場合はこの時点で被せておきましょう。

続いて、プラス端子側は変換アダプターを使用せずにBサイズの端子に取り換えますので、先程緩めておいたナットを取り外して付け替えます。

ちなみに、端子はプラス側とマイナス側で大きさが異なるので、準備する時は間違えない様に!

マイナス端子側は、車両側の端子に電流センサーが内臓された特殊な物となるため、取り換えではなく変換アダプターを使用します。

写真の様にBサイズの端子に固定してやれば、車両側のDサイズ用の端子がしっかり取り付けられる様になると言うわけです。

取り付けたアダプターにマイナス端子を接続するとこんな感じ。

なんだかカッコイイですねー♪

もっと安価に済ませようと思ったら、端子に被せるタイプの簡易アダプターもありますが、一度買えばずっと使えるので、しっかりした端子をお勧めします。

プラス側の端子は先程Bサイズの端子に取り換えてあるので、そのまま取り付けてやればOK!

この方法であれば、プラス側の絶縁カバーもそのまま閉じる事が出来ますので、見た目もスッキリして良い感じですよ♪

もしプラス側にも変換アダプターを使用する場合は、追加の絶縁カバーをしっかり取り付けておきましょう。

端子を取り付けたら、用意しておいたBサイズ用のステーを使ってバッテリーをしっかり固定すれば取り付けは完了です。

ご覧の通り、元々Dサイズのバッテリーが載っていたバッテリートレーを再利用しているため、Bサイズ用のステーでは穴位置がロッドに全く届きませんので、汎用ステーを利用して延長しています。

ちょっと後付感が出ちゃうのが欠点ですが、かなり小さくなってスッキリしました!

バッテリーを小型化してから50kmほど走らせてみましたが、警告灯が点灯する事もなく、全く問題ない事が確認出来ました。

さすがに8kg以上もフロントが軽くなっているので、普通に走らせているだけでも結構違いがわかります!

ハンドルを深く切り込んで曲がる時の動きの軽さは気持ちが良いですね~

念のためマツダコネクトの車両ステータスでも確認してみますが、ご覧の通り異常は出ていません。

問題があれば、ここにi-stopシステム異常とバッテリー管理システムの異常を知らせる警告が出ますが、どちらも表示されていないので、アイドリングストップの完全解除とバッテリーの小型化に成功と考えて問題なさそうです。

固定用のステーを細工したり、端子サイズを変更したりと言う一手間は加わりますが、アイドリングストップ車でも機能を完全にキャンセルしてバッテリーの小型軽量化は問題なく可能だと言う事がわかりました。

キャパシタを使うのでi-stopとは別系統ですが、i-ELOOPが搭載された車両での動作は不明となるものの、他のマツダ車はもちろん、他メーカーの車種でも大体同じ方法でキャンセルは可能です。(試験的にダイハツ・ムーヴニッサン・ルークスで同様の結果を確認済み)

正直言って、バッテリー交換は早くても精々2年に1度程度の頻度だと思うので、メンテナンスのコスト云々はそれ程メリットには感じないものの、大きなバッテリーを買う時は確かに高いので、半額以下で交換できるのは嬉しいですね。

警告灯が点くから…と諦めていた方は、是非試してみてください!