スポーツ走行に於いて、軽量化は加速やコーナーリングはもちろんの事、減速にも有利とメリットが非常に多い。

もちろん、極端な軽量化にはデメリットもありますし、大幅に前後バランスを崩すような偏った軽量化は乗り難くなる事もありますが、並の軽量化であればメリットの方が大きいので、出来る範囲でやっておくべきです。

特にエアコンを撤去したり、座席を取り外したり、アンダーコートを剥ぐと言った方法は美観を損ね、快適性・利便性も大きく損なう事となるばかりか、車両を手放す際には査定額への影響も大きいため、どちらかと言うと軽量化の最終手段として手を出すべき部分であり、手軽に軽量化出来る場所の例を挙げると、ボンネットをカーボンやFRPの様な軽量素材に変更したり、軽量なホイールに交換したりと言った方法が挙げられます。

しかし、軽量パーツは高額な物も多く、なかなか手を出せないから重量物を毟り取ってしまおうと考えるユーザーも少なくはないはず(笑)

でも、コストを抑えつつ、簡単に、そして効果的に軽量化出来る部分があるんですよ。

そう、バッテリーです!

追記(2022.12.14)
アイドリングストップ車のバッテリー小型化と、アイドリングストップ機能の完全キャンセルについては以下の記事をご覧ください。

関連記事:キャンセラー不要のアイドリングストップ完全解除 バッテリーの軽量化まで可能にする方法

◆バッテリーのサイズ選択について

◆実際に交換してみる

◆取り付け時の注意点やコツ

■バッテリーのサイズ選択について

バッテリーの軽量化と言うと、高価なリチウムイオンバッテリードライバッテリーへの交換をイメージする方も多いかと思いますが、安価な普通のバッテリーを単純に小型化するだけでも考えている以上に軽くなるのです。

今回はNDロードスターバッテリーを小型化する例となりますが、まずはどの車にも当てはまる注意点について。

まず、小型化すると言う事は、おおよそ容量の低下を意味します。

そこで多くの方が気にして選ぶのが”性能ランク”だと思いますが、実はこれ、目安にはなるものの、直接容量を表した数値ではないので、同じ性能ランクでも原則としてバッテリーサイズが小さいほど容量は少なく、大きい程容量は多いと考えて差し支えありません。

もちろん一概には言えませんが、あくまでも同サイズ以上で比較した場合に限り、性能ランクが高い方が大容量と言う事になるわけです。

例えば、今回の交換例であるNDロードスターの場合は、純正バッテリーが「46B24L」と言う型となっていますが、先頭についている「46」の部分が性能ランク。

末尾の「L」は端子の方向を示している物で、同寸法のバッテリーでもLとRの2種類があります。

そして、バッテリーの寸法は「B24」の部分となります。

Bの他、Dなども良く見掛ける主流のサイズだと思いますが、アルファベットの部分は規格で決まっており、幅と高さの寸法なので、原則としてこの部分を変更しなければ大体ポン付け交換が可能です。(スペースの問題があるため、サイズアップする場合は除く)

また、単純な寸法だけでなく、BサイズとDサイズを入れ替える場合は端子のサイズも変わるため、端子サイズの変換アダプターなどが必要になりますし、バッテリーの幅が変われば固定用のステーも変更しないとしっかり固定出来なくなる恐れがあります。

気軽に交換したい場合は、原則アルファベットの部分は同じ物を選びましょう。

そしてアルファベットの後に記載されている数字がcm単位で奥行の寸法を示している。

ちなみに今回、46B24Lから46B19Lに交換する予定ですが、24と19でどれくらい違うかと言うと。。。

見掛けでもこんなに差があるんです!

数値の通り、奥行きの寸法が約5cmも違いますが、幅と高さ、端子のサイズは共通となっています。

重量は純正バッテリーが約11.5kgに対して、1サイズ小さいバッテリーは約9kg。

なんとその差は約2.5kgとなっている。

この重量差ですが、最近の車ではリスクを承知で安全装備であるエアバッグを1つ2つ撤去した程度では精々同等かそれ以下の軽量化にしかなりませんし、10万円以上もするカーボンボンネットに交換しても、元々アルミ製で軽量なロードスターボンネットでは1kgも軽くなるかどうかと言ったところなので、この効果がいかに大きいかわかると思います。

おまけにリスクは低くコストも安く、交換時期を迎えたバッテリーをメンテナンスついでに小型化するのであれば、実質タダみたいなモンである。

先程も説明した通り、サイズが小さくなると容量も少なくなるのが一般的であるため、始動性を示すCCA値や時間率(Ah)で記載されている他、容量そのものを示すRCと言う値があるので、こちらを目安にサイズ選択をする事になると思います。

今回の例では、純正バッテリー(46B24L)はCCA 325A・20時間率 45Ahとなっているのに対し、交換したバッテリー(46B19L)はCCAの記載がなく不明で、時間率は5時間率表記で34Ahとなっていました。

いずれも単純に数値が大きい程高性能と考えて差し支えありませんが、時間率が異なる場合は換算して目安を比較する事はできます。

20時間率を5時間率に直したい場合は0.87程度を掛け、5時間率を20時間率に直したい場合は1.15程度を掛けると求められるそうです。(サイズによって係数に差はある様ですが、±0.02程度)

今回の例では、純正バッテリーの5時間率を確認したいので、45×0.87=39.15と言った感じで、交換後のバッテリーでは5時間率で5Ahほど性能が落ちると言う事がわかりますが、極端な差ではありません。

ちなみに、同製品の同じサイズでも性能ランクの低い40B19Lのラインナップがあり、こちらを選択した場合は更に1kgも軽いですが、5時間率が28Ahとなっているため、純正バッテリーとの差は10Ah以上となるので少々不安ですね。

1サイズダウン程度であれば、バッテリーに厳しい冬の寒冷地でもない限りそれ程シビアに考える必要はないかもしれませんが、なるべく標準装備されているバッテリーの性能を下げ過ぎない様に配慮しておいた方が無難です。

単純な電力不足のリスクと言う理由だけでなく、オルタネータが常時稼働していた従来の車と異なり、最近の充電制御車は一定のバッテリー残量の範囲内でオルタネータを休止させてエンジンの負荷を軽減しています。

燃費云々はそれ程気にならないにしても、少なくとも加速性能に於いては、オルタネータ負荷によるパワーロスが大きいと数kg程度の軽量化によるメリットなど数馬力の損失として消えてしまうので、極端に性能を落とす様なサイズ選択は得策とは言えません。

尚、定評あるパナソニックのCaosシリーズなど、1サイズ上と同等かそれ以上の性能を有する高性能バッテリーもあるので、軽量化の定番として人気がありますが、色が青くて目立つと言う理由に加え、同サイズでも性能ランクは高いですが500g重いと言う理由から、私は同社のCirclaの方を選びました(笑)

高性能なバッテリーは同サイズに大容量を詰め込んでいるので、金属板の枚数や液量などが多く、重くなる傾向にある様ですね。

軽量化はそこそこに性能低下を最小限に抑えるか、ギリギリまで性能を落として重量を削ぎ落とすか、最終的にはユーザーの価値観や用途次第になると思います。


■実際に交換してみる

バッテリーの小型化で少し気懸りなのが、最近の車は何事にもシビアであると言う点。

特にアイドリングストップ機能などが付いている車では、バッテリーの監視が厳しく、サイズを変更したら警告灯が点灯しましたなんて話も珍しくはない。

私のNDロードスターにその様な機能は付いていないが、交換してみるまでは不都合が生じるのかどうかは判断が出来ない。

では、実際に交換して確認してみましょう!

まあ、バッテリー交換は”見掛けのわりに重たい”と言う点を除いては、特に気を付ける事もなく、ショートさせない様に注意する程度ですが。

まずはバッテリー端子固定用のステーのナットを緩めて取り外します。

ロードスターの場合は全て10mmのソケットレンチでOKです。

初めて作業する方のために注意点を伝えるとすれば、マイナス端子を先に取り外し、プラス端子を取り外す際は周辺の金属部品に工具が接触しない様に十分注意しておきましょう。

そのまま取り外せない事もないのですが、掴み難いのでバッテリーインシュレーター(保温カバー)を真上に引っ張って引き抜きましょう。

ただ被せているだけなので、引っ張れば簡単に外れます。

これで掴み易くなったので、両手でガシッと掴んで持ち上げましょう!

ただ、何度も言いますが、作業姿勢が悪い場所に加えて見掛けのわりに重たい(測定値で約11.5kg)ので、たかが10kg前後だとナメていると腰を痛めたり、手を滑らせて車がボコボコになんて事もあり得るので、十分注意しておきましょう。

まあ、NDロードスターは比較的楽な位置なので、片手で鷲掴みにして取り出せない事もないんですがね(笑)

バッテリーを降ろしたら、新たに取り付ける小さいバッテリーを載せてみましょう。

プラス端子側は可動範囲に余裕がないので、トレーの後方に押し付けてセットする事になります。

まあ、むしろ好都合な位置だとは思いますが。

ご覧の通り、バッテリーの幅は同じなのでトレーにピッタリ収まり、前方のスペースが広くなったのがわかると思います。

続いて、先にインシュレーターを被せてから端子を取り付けし、ガタがない様に位置を再度確認しておきましょう。

端子を取り付けた後ではインシュレーターが取り付け出来ませんので順番を間違えない様に。

最後にステーでしっかり固定しれやれば取り付け完了ですが、ちょっとステーについての注意点があるので、次項で合わせてご紹介します。


■取り付け時の注意点やコツ

バッテリーの交換は無事に済んだと思いますが、サイズを変更した事によって少し注意しなければならない事があるので確認してみましょう。

まず、バッテリーのサイズなのですが、今回の例で約5cmも奥行きが小さくなっています。

これによって何が起こるのかと言うと、単純計算ですが、プラスとマイナスの端子間距離も5cm狭くなっているって事です!

それ自体は特に問題はないのですが、固定用ステーの形状によってはちょっとした問題、または不安な要素が出てきます。

こちらを見て頂きたいのですが、NDロードスターのバッテリーを46B24Lから46B19Lに変更し、そのまま純正のステーを使用して固定した場合、端子とステーが接触する恐れがあります。

ご覧の通り、実はギリギリかわしてはいるものの、微妙な個体差だったり、固定が甘かった場合に振動で少しでもバッテリーが動けば干渉する可能性があります。

可能であれば、市販の汎用バッテリーステーの中から、なるべく小振りな物を選んで交換するのが良いでしょう。

ご覧の通り、全く干渉の心配も無くなり余裕が出ましたね!

可動範囲にも余裕が出来たので、これでバッテリーを更に5mmほど後方に押し付ける事が出来ます。

車種によっては元々写真の様な貧相なステーが標準装備されている場合もあるので、同じ幅のバッテリーであれば他車からの流用でも問題なく使えます。(デミオやランサーエボリューションなど、ステーのオフセットが左右逆の場合があるので注意)

ちなみに、私が今回ロードスター用に準備したのは、MeltecのH型バッテリーフレーム F-5と言うタイプ。

何より他車の純正部品などを探すより楽で安いと言うのも理由ですが、見掛けのわりにガッチリしていて使用には差し支えありません。

酸化被膜?か何かだと思いますが、表面が未塗装で虹色に光るので、私はこれを黒く塗装しました(笑)

固定用のロッドやナットは車に付いている物を再使用するため、ステー部分だけ使用します。

そしてもう一つオススメなのがこれ!

お気付きだと思いますが、サイズが小さくなっているので、元々付いていたバッテリーインシュレーターは少し大きく、気になる場合は切り貼りしてサイズ調整をする必要がありますが、見た目も悪くなっちゃいますよね。

こちらはトヨタの純正部品ですが、B19サイズ用バッテリーインシュレーター(品番:28899-74150)があるので、こちらを準備すれば無加工でピッタリサイズです♪

マツダ用は覗き窓の様に刳り貫かれていますが、トヨタ用は片方の側面が大きく開いているので、液面チェックもし易いですね。

これが気に入らないと言う場合もあると思うので、純正インシュレーターを加工するか、トヨタのB19用インシュレーターを使うかは、あくまでもお好みで。

そもそも、このカバー要るの?って意見もありますが、なんとなく、純正装備されているから付けといた方が良いんじゃね?くらいの感覚です(笑)

さあ、これで全ての交換作業が完了しました!

後はバッテリー容量の低下による始動性への影響がないか、許容範囲なのかをチェックしておきましょう。

始動性に問題がなく、バッテリー容量も十分で車両側が劣化と判定を返さなければ警告灯が点灯する事はありません。

もし何か警告灯やエラーメッセージが表示される場合は、サイズを小さくし過ぎたか単純な充電不足だと思うので、しばらく走らせてからリセットをしてみて、警告が消えるかどうか再確認してください。

どうしても消えない場合は、諦めてバッテリーサイズを大きくしましょう!

ちなみに、今回私のロードスターでは不具合も発生せず、無事にバッテリーの軽量化に成功しました。

念のため、庭先で3回連続でエンジン始動・停止を繰り返してみましたが、その程度では電力が不足する心配はなさそうです。

最後に、みなさんが最も気になるであろう挙動やフィーリングの変化なのですが、これ本当に凄いですよ!

加速に減速、ハンドリングに至るまで、違いが全く分かりません!!(笑)

う~ん…、悪くはなっていないと思うので、きっと小さな差がラップタイムの結果に現れるだろうと信じて走りましょう。。。