スポーツ走行をする方は、ブッシュ類を強化品に交換する人も多いと思います。
アッパーマウントやサスペンションアームのゴムブッシュを高硬度のゴムに変更したり、エンジンマウントやミッションマウントを硬くするなどなど。
しかし、こう言った部品って、実際に調べてみればわかりますが結構高いです。
まあ、そもそも純正のブッシュも高価と言った場合も多々ありますが、強化エンジンマウントなんて2~3個セットが何万円もするなんて事も珍しくはありません。
ブッシュの強化はしたいけど、高くてなかなか手が出せないと言う若い方、車はチューニングしたいけど金は掛けたくねえ!と言うケチな方(笑)
そう言った層に昔から流行っている貧乏チューンの定番ですが、純正のゴムブッシュに靴底補修材やコーキング剤を充填して固め、安価に強化品を自作しちゃおうって原始的な方法があります。
それって簡単に作れるの?本当に効くの?と言う疑問の答えを探るべく、実際に作って試してみました。
■強化マウントを作ってみよう!
マウントブッシュを強化するのに最適な充填剤は何だろうか。
少し調べてみると、最近ではマウント強化剤などと言った名称で2液混合タイプのウレタンやエポキシ樹脂などが売っているみたいです。
しかし、結構高い物が多いので、高価な専用品を使っていては貧乏チューンとは言い難い(笑)
って事で、今回私が用意したのはコレ。
近所のホームセンターでも600~700円前後で売っており、容易に入手可能なバスコークだ!
硬化後も伸びるので柔らかいと思っている人も多い様ですが、塊を指で押さえてみれば分かる通り、圧縮方向には強い抵抗があり、かなり硬くなります。
また、用意したエンジンマウント…なんですが、実際にはミッションマウントと言った方が正しいかも。
マツダ・アクセラ用のマウントです。
実はアクセラの持病と言われている症状で、普通に走っている分には全く何ともないのですが、サーキットを走行していると高回転を多用している際にシフト抜けを起こす事が多く、運転に支障が出ます。
リンクワイヤーを介しシフトノブを伝ってくる感じで、トランスミッションが前方に引っ張られている様な感触があるため、ミッションマウントを固めたら改善出来るかもしれないと考えました。
マウントブッシュの隙間にバスコークを充填して固め、完全なゴムの塊にしてしまおうと言うわけですよ。
すごいシンプルな方法でしょう?
作業を始める前に、パーツクリーナーでブッシュ表面を洗っておきます。
続いて、コーキングの作業に移りますが、硬化前のバスコークには流動性があるので、ブッシュの穴が貫通している場合は裏面に流れ出ない様にテープで蓋をしておきましょう。
実際には、裏側まで流れてしまう程柔らかくはありませんが、念のためです。
後は隙間を埋めて、表面をヘラなどで均してやり、硬化するのを待つだけです。
バスコークを充填する際は、ノズルをなるべく奥の方まで差し込んで注入しましょう。
表面に塗り広げるだけでは内部が埋まりません。
表面を綺麗に均すにはコツが要りますが、少々見た目が悪くても気にしなくて良い(笑)
表面は4~5時間ほどで指で触れる程度に硬化しますが、内部まで完全に硬化するには24時間以上を要します。
厚塗りしていると硬化は遅いので、2日くらい置くつもりで待ちましょう。
裏側まできちんと充填できている事は稀なので、硬化したら裏側からも同様の作業を繰り返してください。
この通り、作り方は非常に簡単ですが、硬化を待つ時間の方が長いですねえ。
■アクセラに取り付けてみた
アクセラのミッションマウント(エンジンマウントラバー No.1)の交換作業も難易度は低いです。
ただ、庭先だとジャッキアップしてリジッドラックに載せる必要があるので、結構面倒くさい。
また、ボルトが固くて外せないと言う可能性もあるので、車体の下に潜って強く揺さぶったりしない様にご注意ください。
必要な工具は17mmと19mmのソケットだけ。
強いトルクで締まっているので、長めのスピンナーハンドルがあると緩める時や増し締めに便利ですが、最低限のジャッキアップで工具を使って回し難い場合に備えて、短めのスピンナーハンドルや、ラチェットもあると便利です。
ミッションマウントは、底を覗き込めば思いっきり見えているので迷う事はありません。
ミッション側から緩めて行きましょう。
赤丸のボルトは緩めておくだけでOK。
その他の4本のボルトは取り外してください。
ミッションに接続された銀色のブラケットにあるボルト3本は19mm、マウント側の2本は17mmのソケットで対応します。
説明するまでもなく、見えているボルトを外せば簡単に外れるので、新しいマウントと入れ替えてボルトを締め直すだけで交換完了です。
幸いにもボルトの固着などもなかったので、交換作業自体は10分程度で終わりました。
明らかに、車を持ち上げてリジッドラックに載せるまでの方が時間が掛かりますね。。。
■お手製強化マウントの効果をチェック
無事に交換が済んだら、いよいよ実走行で効果をチェックしますよ!
まず、エンジン始動~アイドリングは、この部分を強化した程度では車内が煩くなる様な事はありませんでした。
むしろ、振動や騒音が減って快適になった印象を受けます。
劣化したエンジンマウントを新品に交換すると、不快な振動や騒音が消えるのに似ていますね。
続いて路上へ出てみますが、ハンドルが少し重くなり、アクセルを踏んだ際の反応が良くなった印象を受けます。
乗っていて少しシャキッとしっかり感が出た感じがして、全ての操作に対して反応がワンテンポ速い。
大袈裟に言っている様に聞こえるかもしれませんが、シフトの不具合を確認する前に”おまけ”の効果が予想以上に大きいです。
RX-8のエンジンマウントを強化した時は煩くなっただけで、メリットなどほとんど感じませんでしたが、アクセラのミッションマウントはウィークポイントなのでしょうか。
加工前の写真を撮り忘れてしまいましたが、取り外した古い方のマウントがこちら…。
ブッシュの切れなども見られなかったので、同様の方法で固めてみましたが、今回取り付けた新しいマウントとはちょっと異なる様です。
ブラケットの裏側にプレート溶接の補強が入っており、ゴムブッシュの穴の面積も狭いので、一見すると固そうに見えるのですが、指でブッシュを押さえるとぐにゃぐにゃと簡単に動きました。
これだけぐにゃぐにゃのブッシュを固めたら、効果は大きいのかもしれません。
また、横置きエンジンですから、前後方向への強化は結構効く印象。
ちなみに、今回の交換目的であるシフト抜け対策については、指で押さえただけでもブッシュが簡単に1cmほど動くので、走行中はミッションが前後方向に大きく揺れていた可能性がありそうです。
ミッションが動けば、リンクワイヤーを介してシフトレバーが引っ張られる。
シフトレバーが引っ張られると、アクセルオン・オフの瞬間にバックラッシュのタイミングでシフトが抜ける事がある、と言った感じでしょう。
毎回、必ず発生するわけではないので症状の確認が難しいのですが、1速や3速は抜けません。
抜けるのは決まって2速や4速。
コースを走行していると高確率で、特に低速コーナーなど、思わずアクセルを離したり踏み直したりと言う操作が多いシチュエーションで起こります。
街乗りの試運転では不具合が改善されたのか確認する事は難しいですが、マウントを強化する前は、シフトノブに手を添えたまま強めにブレーキを踏んだ際に、シフトレバーが前方に引っ張られる様な感触がありました。
実際に目視していると、ブレーキを踏んだ瞬間に、僅かにレバーが前に動く。
レバーが直接ミッションに繋がっているFRに乗っていると、程度の違いはあれど”こんなモン”と思ってしまうのですが、FFはそうではない様です。
事実、強化後はこのレバーが引っ張られる様な感触が完全に消えました!
また、シフトノブを介して感じる振動が明らかに減っているのですが、これは車自体の振動が減っているので、ミッション云々ってわけではないかもしれません。
これは期待度大ですが、元々、必ず抜けるわけではないと言う点が厄介で、発生頻度は抑えられても完全に直ったかどうかは判断が難しいです。
不具合が解消されたかはわからないが、改善は出来たようだ、と言うのが今回の検証結果となるでしょうか。
また、耐久性については長期的に検証する必要があるので、数ヶ月後、数年後に追記でレビューしたいですね。
覚えていたら、ですが(笑)