さあ、車を乗り換えたり、新しい車を買ったなら儀式みたいなもんですよ(笑)
今日は4月に納車されたNDロードスターの足回り交換作業にチャレンジしてみたいと思います。
車種によって足回りの構造やサスペンション周りのスペース、またフロア側の作りにも大きな違いがあるので、交換作業が難しい車や簡単な車など難易度を一概に語れない部分です。
でもご安心ください!
過去にアクセラの作業も少し紹介した事がありますが、力技が必要だったりするアクセラとは大違い(笑)
比較的簡単なマツダのFR車の中でも、NDロードスターは群を抜いて簡単な印象を受けました。
ただ、足回りの作業なので取り付け後の入念な点検を怠らない様にしましょう。
■部品のチェックと車高調の組み立て
中古で買った車高調や、メーカーによっては組み立て済みで届く物も多いですが、組み立てが必要な車高調も多く存在します。
中には見掛け上組み立てられていても、各部の増し締めが必要な物もありますし、増し締め済みと書かれていても念のため締め付け状態などはチェックしてから取り付けましょうね!
手の力くらいでは回らない事もあるので、工具を使ってしっかり点検しておきましょう。
まずは内容をチェックしてみます。
さあ、今回買ったのはオーリンズR&T(DFV)と言う車高調です。
有名なメーカーなので語るまでもないと思いますが、安くはないが、今時だと特別高いわけでもない中堅クラスの価格帯でしょうか。
フェンダーの隙間からチラリと見える金の脚で「あ!オーリンズだ!」って誰にでも認識される圧倒的知名度、ドヤ顔で見せても恥ずかしくないブランド力もあるので、競技車両からドレスアップカーまで幅広い意味でカテゴリーを選ばない究極の選択とも言えるかも?
車にあまり興味のない一般層の頭の中には、ショックはビルシュタインとオーリンズの2社しか存在しないので、どちらかを選んでおけば間違いないのです(笑)
以前アクセラでお試しに買ってみたラルグスの車高調でも梱包に問題はありませんでしたが、やはり価格帯が上がるとパッケージもしっかりしています。
オーリンズは過去に乗ったNBロードスターやRX-8でも愛用していましたが、当時はショック毎に個装まではされていなかった様な…?
ある意味過剰梱包とも言えるかも。
オーリンズは届いたらすぐに使えるフルセットのコンプリートキットと、スプリングレスキット、ショック単体のラインナップがあるので、用途に応じて選択できます。
コンプリートキットは前述の通りフルセットですが、ショック単体はシリンダーカートリッジ部分と車両のアームに固定するためのブラケットがセットになった物で、スプリングやアッパーマウントを別で用意する方向けの安価なセット。(減衰ダイヤルとフックレンチ、マニュアルは付属)
スプリングレスキットはスプリングのみ別で用意する方向けで、専用アッパーマウントも付属しています。
車種によってピロボールタイプと強化ゴムマウントが選べる物、どちらか一方の物、専用アッパーマウントが設定されていない物など多少の差はあります。
例えば、RX-8用はリアのアッパーマウントは純正を再利用するタイプだったり、NDロードスター用については強化ゴムマウントしか設定がありません。
今回はスプリングレスキットを購入しているので、スプリングは別で用意しました。
ところで、スプリングには2種類あるってご存知でしたか?
ハイパコか、それ以外か。
かなり強気のメーカーですが、これマジで広告に書かれていたハイパコのキャッチフレーズです(笑)
スウィフトスプリングを愛用していましたが、軽い車にはハイパコでしょ!なんて意見をもらったので使ってみる事に。
実物の構造を見ると直感で理解できますが、スウィフトに比べて線径が太くて巻き数の多いスプリングです。
つまり、同レートなら同じ荷重で同じだけ縮む事に違いはないけど、レングスを伸ばした時の特性に似て、線径が細くて巻き数の少ないスプリングに比べて伸びが穏やかって事になります。
スプリング自身が減衰力を持っているかの様に跳ね難いと言われる理由は、品質と言うより構造の影響が大きいかも?
材質による何らかの特徴があるのかもしれませんが、見掛けの構造ならベステックスやアイバッハもハイパコと似た特性かもしれません。
ちなみに、スプリング自体の品質はともかく、少なくとも塗装の品質は私が今まで知る中では最低レベルです(笑)
ラルグスに付属の訳の分からないスプリングでさえ触った手が黒くなる事はなかったのに、ハイパコを触ると手が青くなるので、ちょっとその点は心配ですよね。
尚、コンプリートキットの場合は、標準で黄色いアイバッハのスプリングが付属しており、特に理由がなければわざわざ他メーカーのスプリングを用意する必要はないです。
部品が揃っている事を確認したら組み立て作業を開始しましょう。
組み合わせる順番はマニュアルにも記載されているのでざっくりと、ショック本体にダストブーツを取り付けたら、スプリング、ワッシャー、アッパーマウント、ワッシャーと言う順番で組み立てます。
正しい順番で組み立てた事を再確認して、問題がなければロックナットで締め付けましょう!
ある程度締め付けると、後半はロッドが供回りする事があるので、六角レンチでロッドを抑えながら増し締めしましょう。
構造上、ソケットタイプのトルクレンチでは確認し難いので、ナットからのロッド突出し量で左右の締め付け具合が適正になっている事を確認しておくと良いでしょう。
この際、スプリングに遊びがない事も確認しておきます。
組み立てが完了するとこんな感じに。
車種にもよりますが、ショック単体だとパッと見で前後の区別が付かない物もあるので、取り付け時に間違えないように注意しましょう!
ショックのブラケットにもラベルで記載はされていますが、NDロードスターの場合は幸いにもアッパーマウント形状が前後で違うので見た目で判別可能です。
ただ、アッパーマウントが付いていなかったら、良く確認しないと間違う可能性もありそうですね。
ちなみに、今回買ったオーリンズについては、ブラケットのロックシートは固定されていますが、スプリング側のロックシート2枚は仮留めされているだけなので、スプリングに合わせて再調整した後、しっかり増し締めする必要があります。
このままだと締め難いので、車に取り付けた後に締めると良いですが、後日作業する場合などは忘れてしまう可能性があるので要注意ですよ!
■NDロードスターの足回り交換 リア編
それでは車高調Assyが組み上がったところで、車両へ取り付ける作業へ進みましょう!
前述した通り、車種によっては足回りの構造が違ったり、フロア側のパネル着脱の難易度が高い車種などもありますので、作業を開始する前によ~く観察しておきましょう。
NDロードスターの場合、推奨するわけではありませんが、足回り交換の初心者さんでも一人で交換出来ちゃうくらい簡単な部類に入ると思います。
過去に交換した事のあるRX-8やNCロードスターと基本構造は共通しており、作業手順もほぼ同じ。
しかし、大きな違いはRX-8などは強いテンションが掛かっている事に加えてリアのアッパーマウントの構造上全長が長いため、それなりの腕力と、ショックを知恵の輪の様にして抜かないと交換できませんでした。
難しいわけではないが、1人作業だと片手でハブを押し下げながら、もう片方の手でショックを支えると言うのは結構疲れる作業である。
なんと、NDロードスターにはその心配がない(笑)
まずはジャッキアップして、リアから作業を開始します。
トランクを開き、内装パネルを全て取り外します。
RX-8に比べるとクリップの数自体は多いのですが、固い爪で留められていたり、差し込む角度を合わせないとパネルが浮いたりと言った心配はない構造で、全てクリップで留めてあるだけです。
写真では参考に3つだけ写っていますが、見えているクリップをクリップリムーバーなどで外してやれば、全部簡単に外れます。
内装を外せばリアのアッパーマウントが確認出来るので、2本のナットを取り外してください。
ちなみに、私はたまたま良い角度のメガネレンチを持っていたのでこのまま作業しましたが、手前の銀色のプレートが取り外せる構造なので、作業性が悪いと感じた場合はプレートを外すと工具を掛け易いかもしれません。
また、後から純正アッパーマウントをショックAssyから取り外す予定のある方は、この時点でロッドのナットを緩めておくと良いかと思います。(間違ってもナットを完全に外さないように)
アッパーマウントを固定しているナットと違って固いし、卓上では緩め難いので…。
尚、左側も作業内容に違いはありませんが、給油口からの燃料ホースなどを保護するプレートがあるので取り外しましょう。
表から見えている5本のボルトを外せば簡単に外れます。
アッパーマウントのナットを外したら、後はナックルに留めてあるボルトを外すだけで終わりです。
マジで(笑)
ケガをしない様に軍手などを装備して、片手でショックを奥に向かって軽く押しながら、ブレーキキャリパー辺りを掴んでグッとハブ全体を下に向かって押し下げてやりましょう。
…は?って思わず口に出してしまうくらいあっさり外れます(笑)
後は両手でショックを支えながら、フェンダーに当たらない様にアッパーマウントをかわしてから外へ引き抜いてやればご覧の通りです。
透明なので写真では分かり難いですが、純正アッパーマウントに付いているフィルムを車高調のアッパーマウントへ移植しておきましょう。
浸水防止だとか異音防止だとか言われていますが、どの程度の効果があるのかは不明。
ただ、これを付けなかった人の話によると、走行中にキュッキュッとかコトコトと言った不快な音が出るそうで、半信半疑のまま取り付けてみたら異音が消えたなんて例を聞いたので、少なくとも異音に対しての効果はある様です。
後は取り外しと逆の手順で車高調Assyを車体へ取り付けるだけですが、基本的にはノーマルショックより全長が短いのであっさり取り付けできると思います。
この時点で、スプリングシートを増し締めしていない場合はプリロードを好みに調整してから、フックレンチでしっかり締めておきましょう。
取り付けが完了したら、最後にハブを持ち上げて1G相当量ストロークさせてからブッシュ周りの本締めをしておきましょう。
ショップなどでは当然の様に行われる1G締めと呼ばれる作業で、大きく捩じれが生じていない限りは、普通に乗る分にはフィーリングへの大きな影響はないものの、ブッシュの寿命などには結構違いがあります。
また、足回りの構造によってはこの作業をやるかやらないかで車高が大きく変わったりする事もある(ブッシュ自体の弾性による)ので、仮に違いが良くわからなくてもやらないよりはやっておいた方が良いでしょう。
ブッシュが変形して変なクセが付く前に、特に新しい内はね。
ちなみに、減衰調整機構が付いているショックの場合、多くの物はロッドの頭に付けたダイヤルで調整する構造です。
リアの場合、フロントと違って内装に隠れてしまうため、調整の度に内装を剥がさなくても済む様に延長ケーブルが付属、またはオプションで設定されていたりします。
組み立てた延長ケーブルのダイヤル部分はロッドの先端に取り付けて、ケーブルは内装パネルを隔てたトランクフロア内に引っ張り出しておきます。
構造によっては内装パネルへの穴開けが必要な車種もありますが、NDロードスターの場合は内装パネルの上部に隙間があるので、そこからケーブルを出しておけば穴開けなどの作業は不要です。
■NDロードスターの足回り交換 フロント編
基本的な作業はリアと同じですが、フロントは構造がやや異なり、外さなければならない物が少し多いです。
まずはジャッキアップしてボンネットを開くと、左右に見えるストラットタワーにショックの頭が覗いているのが確認出来ると思いますので、アッパーマウントのナットを取り外しておきましょう。
今回はSスペシャルパッケージの例ですが、グレードによっては純正タワーバーが取り付けられているので、先にタワーバーを取り外す必要があると思います。
フロントの作業は、ショックの付け根のボルトがナックルではなくアームに付いていますが、基本的にやる事に違いはありません。
ただし、リアと違ってスタビリンクを外してやる必要があります。
スタビリンクを外すと言うのは、構造上スタビが利いてテンションが掛かっているためと言う理由もあるのですが、車高調に交換して車高を下げる場合、純正のスタビリンクでは長すぎるため、この機会に合わせてショートスタビリンクへ交換しておくと良いでしょう。
袋に入っているのでちょっと見え難いかもしれませんが、左が取り外した純正スタビリンクで、右側がホンダ・S2000のフロント用純正スタビリンク。
品番:51320-S2A-003(右用)
品番:51321-S2A-003(左用)
頭の角度が同じなので、ネジサイズも共通なのでポン付け流用が出来ますが、ご覧の通り結構長さが違います。
社外品のショートタイプも安価に売られていますが、やはり純正部品の品質には敵わないでしょうから、滅多に交換する物でもありませんし、ここはケチらずにしっかりした物を選んでおきましょう。
ちなみに、こちらはリアのスタビリンクの写真ですが、リア側を交換しないのは構造上、取り付け位置の関係です。
ご覧の通り、元々レバー比の関係でかなり短く、メンバー側の支点に近いので車高の変化に対してスタビの持ち上がる量が小さいため、特に交換の必要性は感じません。
さあ、フロントの作業に話を戻しますが、ショックの付け根のボルトとスタビリンクを取り外したら、次はアッパーアームに固定されている車輪速センサー(ABSセンサー)のステーを外してケーブルをフリーにしておきましょう。
フロントのショックを取り外す際に、アッパーアームの支点を一度外す必要があるため、ハブAssyの重さで傾いた際に、ハーネスを断線させてしまう恐れがあるためです。
尚、後方に付いているブレーキホースは長さに余裕があるのでそのままで構わないと思いますが、心配な方は一緒に外しておきましょう。
続いてアッパーアームの支点にあるボルトを外します。
これは前方のボルトですが、後方にもあるので、2本外す必要があります。
リアと違ってインパクトレンチを使うスペースは無いので、ここは大人しくメガネレンチで緩めてからラチェットを使う事になるかと。
作業難易度自体は大した事ないですが、ちょっとリアに比べると手間が掛かりますね。
ボルトが外れてアッパーアームがフリーになると、ハブの重さで手前へ倒れてくる場合があります。
ご覧の通り、ショックがあるので一気に倒れてくる心配はないと思いますが、ハブAssyの様な重量物が膝などに当たると危ないので、十分注意して作業してくださいね!
ここまで外れると後はショックを奥に向かってグッと軽く押してやるだけであっさり外れてしまいます。
リアと同様に、片手でアームを支えながら、もう片方の手でショックを傾けてやれば車両から完全に取り外す事が出来ます。
後は逆の手順で取り付けるだけなので、アッパーマウントのフィルムの移植と、1G締めを行って仕上げれば完了となります。
これが初めての作業と言う人は少々時間が掛かるかもしれませんが、足回り交換の作業経験があれば、私の場合で単純な着脱作業だけなら40分程度でした。
1G締めをしたり、車高やプリロードの調整と言った細かい作業の方が時間が掛かります。
大体の車の場合、いくらハブを押し下げてもテンションが強く掛かっていて簡単に外れないとか、分離は出来たけど、どうやってフェンダーの外へ引き抜けば良いのかわからないなんて苦労が多いので、NDロードスターの場合はその点かなり楽な車だと思いますよ♪
■おまけ 車高比較
ちなみに、こちらがノーマルの車高。
カタログの写真とは比べ物にならないくらいフェンダーアーチの隙間が広い(笑)
人が乗れば下がるから!なんて意見も聞きますが、カタログ写真は未乗車でもっと低いし、現実として街中を走っているノーマルの車高は高いしね(笑)
カタログが物語る通り、メーカー自身もちょっと下げているくらいがカッコイイと内心認めてはいるのでしょうけど、実用性や道路事情を考慮すると市販車ではそうもいかないと言った感じでしょうか。
写真ではちょっと分かり難いですが、前後ノーマル比-3cmくらい。
ちょうどカタログ写真くらいでしょうか。
吊るしのレートで全長は未調整のまま、ただ取り付けただけの車高だとこんな感じです。
オーリンズのマニュアルでは、これを基準に調整幅が±15mmって事にはなっていますが、構造的に下げる方向には3cm以上いけるので、レバー比的にはフロントは5cm弱、リアも3.5cmくらいはまだ下げ幅が残ってるって事ですよね。
まあ、限界まで下げると保安基準に引っ掛かるので無茶はできませんが、スプリングを硬くして車高が上がってしまっても、レート差を埋める程度の十分な調整幅はありますね!