ボディ補強の定番パーツと言えば、まず1番に思い付くのはタワーバーではないでしょうか。
ボディ剛性アップなんて聞くと凄く良さそうに聞こえますが、何でもかんでもガチガチに固めれば良いってものでもないので、付けた方が良いのかどうかは現時点ではわかりませんが、ちょっと試してみようと思ったわけです。
しかし、ご存知の通りNDロードスターはNR-AとRSを除いて標準装備ではありません。
でも、タワーバーの取り付けなんてそんなに難しい事ではないので…と思ったら、色々と交換しなければならない部品が多くて意外と面倒くさいと言う事に気付きます。
今回は純正部品を取り付ける作業となりますが、社外品のタワーバーでもS系のグレードは同様の作業が必要となるため、どうしたら良いの?と言う人のために作業手順をお伝えしたいと思います。
■ワイパーアームとカウルの取り外し方
DIY慣れしていないユーザーにとって、恐らく今回の作業で最も難易度が高いのがこの作業だと思いますが、落ち着いて作業すればほとんど「ネジを外すだけ」の作業となるので、そう恐れる事はありません。
まず、バルクヘッドのカウルパネルをタワーバー用のブラケットが追加された物に変更する必要があるので品番「N244-56-49ZA」のパネルを注文しておきましょう。
部品が手に入ったら、以下の手順で交換を行います。
1.カウルのネジを外す
作業のためにワイパーアーム下のカウルを取り外す必要があるので、運転席側・助手席側の各1か所ずつのネジを外します。
ホールカバーが付いているので、カバーを開けてからドライバーで取り外せばOKです。
ホールカバーの取り外しに便利な道具は以前のエアコンフィルターの記事で紹介していますので参考にされてください。
2.ワイパーアームの取り外し
取り外しの作業を始める前に、ワイパーアームを元通りの角度で取り付けられる様に、マスキングテープなどを使ってフロントガラス面に目印を付けておきましょう。
準備が整ったらボンネットを開き、アーム根元のキャップを引っ張って開きます。
少々硬く感じるかもしれませんが、キャップは指で掴んで真上に引っ張れば簡単に外れます。
続いて、矢印で示したアーム根元のナットを14mmのソケットで取り外してください。
アームの根元はスプラインで圧入されており、ナットで固定されているだけですので、アーム本体を少し浮かしながら根元付近を垂直に引っ張れば簡単に引き抜けます。
3.ウェザーストリップを取り外す
ワイパーアームを取り外したら、バルクヘッド上に横一直線で取り付けられているウェザーストリップを取り外しましょう。
これは丸で示した様に数か所がクリップで固定されているだけですが、無理に引っ張ると折れてしまう恐れがあるので、裏側から指触れて確認しながら1本ずつ慎重に、爪を摘まんで真上に押して抜く様なイメージで作業を進めてください。
万が一クリップが折れても大した値段ではありませんし、ウェザーストリップ自体も1000円程度で買えますが、再利用できるに越した事はありません。
4.ウォッシャーノズルのホースを分離する
運転席側と助手席側にそれぞれ、ウォッシャーノズルに繋がるホースのジョイントがありますので、引き抜いて分離しておきます。
単純にカウルを取り外すだけなら助手席側はそのままでも問題ありませんが、分離しておいた方が作業性は良いです。
5.カウルを取り外す
カウルは運転席側と助手席側に分かれた2ピース構造となっており、中央は助手席側が上に被さる様に取り付けられていますので、助手席側から取り外してください。
カウルの前方を両手でつかみ、手前に向かって引っ張ると簡単に取り外せます。
6.外れました!
無事に取り外す事ができたら、ご覧の様にバルクヘッドのカウルパネルが直視出来る状態となります!
この付近を分解する作業はそう滅多には行わないと思いますので、この機会に気になる汚れを掃除したり、ワイパーの周辺部品を点検しておくのも良いかと思います。
また、写真では外気導入口にエアコンフィルターが装備されていますが、通常、ロードスターには標準装備されていません。
社外の後付けパーツですがオススメですので、興味のある方は以前の紹介記事をご覧ください!
■バルクヘッドのカウルパネルを交換
カウルが外れたら、次はバルクヘッドに取り付けられたカウルパネルを、タワーバー用のパネルと交換する作業を行います。
この作業はなぜかワイパーモーターやリンクまで取り外さなければいけないと思っている人が多い様なので、もっと簡単な方法をご紹介します。
適切な道具を選択すれば、ワイパーモーターを取り外す必要はありません!
1.バルクヘッドのボルトを外す(運転席)
交換対象のカウルパネルはエンジンのヘッド後方を覆う様に取り付けられており、この部分だけ黒い鉄板となっているので分かりやすいと思います。
まずは運転席側からですが、丸で示したボルト2本と、ブレーキブースター(マスターバック)に接続されているパイプのステーを固定しているナットを取り外してください。
いずれも10mmのソケットが対応します。
パイプのステーをフリーにする理由は後述します。
2.バルクヘッドのボルトを外す(助手席)
続いて助手席側も同じ様に作業を行いますが、まずはパイプのステーを固定しているナットを取り外して、パイプを自由に動かせる様にしておきます。
次にボルト2本を取り外しますが、矢印で示した下段のボルトはパイプをずらす事によって作業性が良くなるはずです。
ただ、メガネレンチでもこのボルトの取り外し自体は可能なので、パイプをフリーにする理由は別にあり、ワイパーモーターを取り外さなくてもカウルパネルに追加されているタワーバー用のブラケット部分を避けて差し替える事が可能となります。
3.バルクヘッド裏のボルトを取り外す(助手席)
このまま助手席側のバルクヘッド裏を除いてみてください。
カウルパネルを固定しているボルト2本が直視出来るはずですので、このボルトを取り外します。
4.バルクヘッド裏のボルトを確認(運転席)
取り外せるなら、そのまま気にせずに助手席側と同じように取り外してしまって構いません。
ここでワイパーモーターを取り外したがる例は、先程言ったカウルパネルの差し替えが寸法上困難だと思っている人の他、ワイパーのリンクが邪魔で真上からソケットレンチが差し込めないので、青丸で示したボルトが取り外せないと思っている人に多い印象を受けます。
それらの人の共通点が、お言葉ながら100均やホームセンターの安価な工具セットを使用している傾向が強い様に見受けられ、便利な「ユニバーサルジョイント」の存在、もしくは使い方をご存知でないのかな?と…(汗)
まさか!とは思いますが、その”まさか”の様な気がします(笑)
5.ユニバーサルジョイントを使ってボルトを外す
基本工具セットには大体入っていますが、安価な工具セットでは付属していない事も珍しくはないユニバーサルジョイント。
ステアリングシャフトやプロペラシャフトなどの連結部にも同様の構造が使われていますが、エクステンションバーの亜種と言った感じで、ソケットレンチに組み合わせる事で少々角度が付いていてもネジを回せる便利なジョイントです。
ご覧の通り、写真の様な角度からシャフトを差し込んでも、先端のソケット部分はボルトの頭に対して垂直に差し込む事が可能です。
持っていないと言う方は是非買っておきましょう!!
あると便利…と言うより、無いと不便と言った方が正しいです。
6.外れました!
ご覧の通り、適切な手順で適切な工具を使用すれば、ワイパーモーターには一切手を触れずにカウルパネルを取り外す事が出来ます。
続いて、タワーバー用のカウルパネルを逆の手順で取り付けるわけですが、この際はワイパーモーターの下にカウルパネルの後方を差し込み、ブレーキブースターの配管を上に持ち上げながら追加のブラケット部分を避ければバルクヘッドに密着させる事が出来ます。
7.タワーバー用のカウルパネル(おまけ)
こちらが標準とタワーバー用のカウルパネルの比較です。
下に写っているのがタワーバー用となりますが、赤丸で示した部分にタワーバーを接続するスタッドボルト付のブラケットが付き出しているのが分かると思います。
ブレーキブースターのパイプはこのパネル本体とボルトの間を通るため、ワイパーモーターを取り外してパイプの下を潜らせるか、パイプ側を動かしてこのボルトの高さを越えさせてやる必要があると言うわけです。
当然、ワイパーモーターを取り外すより、パイプを動かした方が作業工程も少なく、難易度も低いです。
■サスタワーのブラケットを交換
さあ、バルクヘッドのカウルパネル交換が済めば、サスタワーのブラケットの交換となりますが、カウルパネルに比べたら大した事はありません。
しかし、こちらの作業もなぜかバッテリーBOXまで取り外したりする人がいますが、まあちょっと落ち着いて良く確認してみましょう!
もちろん周辺のスペースが確保出来れば作業性が良くなる事は間違いありませんが、そんな事をしなくても簡単に交換できます。
尚、タワーバー用ブラケットの品番は、運転席側が「N270-56-49YA」助手席側が「N270-56-49ZA」となっています。
1.ECUのステーのナットを取り外す
運転席側は特筆すべき事などないので、作業を躊躇させる原因の1つとなっている助手席側から見てみましょう。
アッパーマウントのナットで共締めされているブラケットがそのまま取り外せると良いのですが、このブラケットにECUのステーが取り付けられています。
着地していれば簡単に動く事はありませんが、アライメントへの影響を最小限にするため、この時点ではアッパーマウントのナットには手を出さず、あくまでもECUのステーのナットだけを取り外してください。
10mmのソケットが対応します。
2.噂のボルトを確認する
バッテリーBOXとECUの隙間から下を覗き込むと、ECUのステーの下段を固定しているボルトが確認できます。
このボルトがバッテリーBOXを取り外さないと緩められないと噂されているボルトですが、見たところ、私はそうは思いません(笑)
3.噂のボルトを取り外す
このボルトなんですが、真上からしか見ていないのでしょうか…?(笑)
スロットル側から、工具を持った手を斜めに差し込めば普通にアクセス可能ですよ!
試しに長めのエクステンションバーとユニバーサルジョイントを組み合わせて真上からの作業を試してみると、こちらも普通に回せてしまいます。
よほど腕の太い方だと隙間から緩めたボルトの回収が困難なのかもしれませんが。。。
まあ、それでも平均的な体型の方であればバッテリーBOXを取り外さなくても、問題なく作業可能だと思いますので、まずは試してみてください!
4.アッパーマウントのナットを取り外す
ご覧の通り、ECUのステーを固定していた3つのネジが外れたら、ステーごとECU全体が動かせるので、ブラケットから分離しておきます。
この状態になって初めて、赤丸で示したアッパーマウントのナットを取り外します。
あとはタワーバー用のブラケットと入れ替えて、逆の手順で元に戻すだけです。
5.助手席側のブラケットを比較
運転席側の作業へ移る前に、助手席側のブラケットを比較してみましょう。
タワーバー用のブラケットには通常、サウンドエンハンサー用のステーが付いていますが、除去してあるため、既製品の仕様とはちょっと異なりますが、赤丸で示した部分にスタッドボルトが追加されているのが確認出来ると思います。
このボルトでタワーバーを固定する事になります。
6.運転席側のブラケットを交換する
助手席側と違い、運転席側のブラケット交換は特筆する様な事はありません。
赤丸のパワステCPUのステーを固定しているナット2つを取り外し、矢印で示した部分の配線のクリップを外してやれば、ステーごとパワステCPUを分離出来ます。
あとはアッパーマウントのナット3つを取り外して、タワーバー用のブラケットと入れ替えるだけ。
実にシンプルですね。
7.運転席側のブラケットを比較
こちらも助手席側と同様に、タワーバー用のブラケットには赤丸の位置にスタッドボルトが追加されています。
ただ、写真では左下に位置する部分にもう1本スタッドボルトが追加されているのが確認出来ますが、こちらのボルトは何のために追加されているのか不明です。
尚、ここまでに交換した部品は、タワーバーが標準装備されているNR-A及びRSには当然ながら元々装備されており、S系のグレードでも純正オプションのマツダスピード製タワーバーを選択している場合は取り付けられた状態で納車されるはずですので、上記の交換作業を行わなくても社外タワーバーがそのまま取り付け可能です。(サスタワーのブラケットを入れ替えるタイプの物は例外)
■バー本体の取り付け(おまけ情報あり)
ここまでの準備が完了すれば、後は特に説明しなくても問題ないと思いますが、取り付け作業の前に改めて確認しておきましょう。
純正タワーバー一式の品番リストは以下の通りです。
カウルパネル:N244-56-35X
ブラケット(R):N270-56-49YA
ブラケット(L):N270-56-49ZA
ストラットバー(R):N243-56-48XB
ストラットバー(C):N243-56-48Z
ストラットバー(L):N243-56-49XA
ナット:9994-00-803B(必要数:6)
金額は合計で約10000円程度です。
さあ、それでは仕上げにタワーバー本体を取り付けましょう。
こちらが純正タワーバーの本体ですが、3分割式となっており、エンジンのヘッドの上は通らずにサスタワーからバルクヘッド側に接続される構造となります。
真ん中の短いバーは、バルクヘッドのカウルパネルを補強する目的でしょうか。
取付方法は至ってシンプルな話で、先程取り付けたブラケットのスタッドボルトにナットで固定します。
ナットは左右のブラケットに各2個ずつ、バルクヘッド側に2個の、合計6個です。
14mmのソケットが対応します。
左右のバーを間違えない様に、こんな感じでブラケットのボルトとカウルパネルのボルトに引っ掛けておきます。
左右のバーを載せたら、その上からカウルパネルの補強バーを被せる様に載せます。
ご覧の通り、ボルト径に対して穴の径がかなり広いので、果たして本当に効果があるのだろうか?とちょっと心配になりますよねえ。
ちなみに、左右のバーの裏側には凹んだ部分がありますが、万が一の正面衝突でフロントが潰れてしまった場合に折れ曲がる事で、タワーバーが車室内へ突き抜けて来ない様にと、安全に配慮した設計になっているそうです。
あとはナットで締め付けて、ガッチリ固定してやれば取り付けは完了です!
なんだかスポーツカーらしくなりましたね♪
まあ、個人的にはタワーバーの付いていない方がスッキリしていて好きですが、見るからにガッチリしていてちょっと期待しちゃいますよね(笑)
これでタワーバーの効果を検証するための準備が整ったので、これから実走行で比較テストを行い、結果をレポートにまとめたいと思います。
ちなみに、おまけ情報なのですが…
私が愛用している車高調は、オーリンズのR&T(DFV)です。
NDロードスター用のR&Tは、純正タワーバーの装着は不可と記載されており、減衰力調整ダイヤルが干渉する恐れがあるのかな?と思ったのですが…
実際に取り付けてクリアランスを確認してみると、多少の個体差を考慮しても十分なスペースがあり、問題なく取り付け出来る様です。
この状態では、真上からダイヤルを回す事は出来なくなりますが、一応、隙間から指先で減衰調整は可能です。
当然、バー装着状態では調整の作業性が良いとは言えませんが、出来ないレベルではありません。
気になっていた方は参考までに。