車のヘッドライトは夜間の走行には必須の装備で、当然ながらこいつが点かなくなると夜間の走行が困難になるばかりか、自車の存在を周りに認識させる事が出来ず大変危険です。
また、前方の歩行者や障害物を早めに認識出来る必要がありながら、対向車の視界を妨げない様に明るさや色、光軸の高さなど細かい規定がある重要な保安部品。
車のライトはファッション性も担っているので、明るい蒼白色のライトに変えたり、イベント専用の展示車両なら赤や青などのカラフルなライトに変更すると言うのもありだと思いますが、通常は白や淡黄色で明る過ぎず暗過ぎず、まあ早い話、純正部品や車検対応の純正同等品を使用するのが無難です。
しかし、保安基準に従って正しく使っているにも関わらず、ある日突然、交通法上NGな色に勝手に変わってしまうなんて事があったらどうだろうか?(笑)
そんなバカな!って事が、実際に起こるのでご紹介しましょう。
■HIDが寿命を迎えると赤くなる?
今でも採用されている車種はまだまだ多いですが、一世代前の主流だったハロゲンランプは、寿命を迎えるとフィラメントがブツッと切れて不点灯となるので分かり易いです。
ウィンカーランプやブレーキランプなどに多いウェッジ球なども、フィラメントが切れてしまえば点灯しなくなります。
対して、ディスチャージやHIDと呼ばれるキセノンランプは蛍光灯に似た発光の仕組みで、フィラメントがありません。
電極間に生じるアーク放電による発光を利用した電球がHIDです。(厳密には放電によって活性化したガスの発光現象)
バラストやイグナイタが故障する事もありますが、主にはバーナー(電球)の寿命による不点灯で交換となる事が多いです。
しかしHIDの場合、寿命を迎えた際に単純に不点灯とならない事があります。
噂には聞いた事があったのですが、末期になると赤色化する事があると言うものです。
百聞は一見に如かずと言いますし、見てもらった方が早いですね(笑)
わかりますか?
地面を照らしたライトの色ですが、右側は気味の悪いくらい赤いです。
今まで一度も見た事がない人には冗談だと思われるかもしれませんが、加工などしていない、撮影したそのまんまの写真です。
正面から見るとこんな感じ。
これは凄く恥ずかしい…(汗)
この前日までは全く何ともなかったのですが、この日はライトが少し暗くなった様な気がしたので最初は切れたのかと思っていましたが、停車中に前の車に反射する様子を見る限りは両方点灯しています。
それから少し走っている間に、白線やガードレールが少し赤み掛かって見える事に気が付いたのですが、周りの光の影響なのか、自分の目がおかしいのか。
そして、車から降りて確認すると「なんじゃこりゃ!?」と、こんな状態と言うわけです。
これを見てふと思い出す事があるのですが、街中でも片方だけ赤いライトの車って時々見掛けますよねえ?
コテコテに改造した車だと、良くわからないセンスで何らかのこだわりがあるのだろうかと思うところですが、何の変哲もない普通の乗用車などが左右色違いのライトだと違和感が凄いですよね。
恐らく、それらもHIDが寿命を迎えた症状ではないでしょうか。
この症状が出てくると、そう遠くない内に点かなくなる様ですが、ビジュアル的にも難ありですし、何より夜間走行の視界に影響すると危ないので、さっさと交換しましょう。
■HIDバーナーの交換方法
まずは適合するバーナーの型を確認しましょう。
メーカーのサイトや店頭に置いてある適合表から探すのは面倒なので、こんな時こそ車に付属のマニュアルを確認しましょう。
多くのユーザーは、こんな時くらいしかなかなかマニュアルを開かない(笑)
サービスデータの項目に指定のオイル粘度やらヒューズなどなど、日常点検や一般整備に関するデータは全部載っているので是非活用しましょうね!
当然、このデータの中にウィンカーやルームランプに至るまで、適合する電球の型が載っており、ヘッドライトのHIDバーナーもすぐに適合する型がわかるはずです。
と言う事で、今回は純正に比べて安価な社外品を買いました。
フィリップスのアルティノンと言う純正交換用HIDを選びました。
BK系のアクセラは「D2S」と言う型になる様です。
フィリップスは有名なメーカーで、純正のバルブなども製造しているメーカーなので信頼性は高いですよね。
色温度は6000K、明るさは2500lmの車検対応となっていますが、元々付いている純正の色や明るさが良くわからないので、交換後にどれくらい変わるのかは不明。
車検対応でしっかり視界が確保出来れば、何でも良いです(笑)
さあ、交換を始める前に改めて確認してみましょう。
左側のライトは正常な白色ですが、右側はご覧の通り、明るい昼間に見ても明らかに赤色だと認識出来る状態です。
凄い色…(汗)
HID自体がハロゲンに比べて長寿妙な傾向にあるので、車を買ってから手放すまで、こんな状態を見る事がないって人も結構多いのではないかと。
私も初めて見たので、ちょっと驚いています。
さあ、それではさっさと交換修理といきましょう!って思ったのですが、ちょっと待って!!
矢印で示したカバーを外して、中身を引っ張り出す必要があるのですが、どう見てもそんな作業スペースがありません!
助手席側はヒューズBOXを取り外せば良さそうですが、その作業も周辺のエアクリーナーBOXを取り外す必要があったりと面倒な作業になりそう。
そして何より、運転席側はウォッシャータンクの給水口が邪魔になるのですが、ウォッシャータンクを取り外そうと思ったらフロントバンパーを外さないと無理。
つまり…
フロントバンパーを取り外して、ライトユニットを引っ張り出した方が早いって事になる(笑)
難しい作業ではないが、ライトの球交換のためにわざわざバンパーを外すなんて相当面倒臭い作業ですよね。
でも、最近の車はわりと多いとか…。
BKアクセラのフロントバンパーの外し方は、以前書いた汎用リップの取り付けの記事で紹介しているので、そちらをご確認ください。
バンパーを外してしまえばライトは簡単に外せます。
まずは正面のボルトを一本。
続いてフェンダー側にもボルトがもう一本。
後は上から見てフェンダーに留めてあるクリップと、既に外していますが右上の赤丸の位置にボルトが1本。
これらを取り外したら、ライトAssyを車体の前方に向かって引っ張れば簡単に外れます。
尚、写真は運転席側ですが、助手席側も対称の位置にボルト3本とクリップ1本があるので同様の作業で取り外してください。
ライトユニットを引っ張り出せば、後は特に難しい作業はありません。
裏側のカバーを反時計回りに回すと蓋が開きます。
中に入っている金属製のソケット構造の部品がイグナイタです。
これも少々硬いですが反時計回りに回すと外れます。
イグナイタが外れたら、後はバーナーを留めてあるクリップをフリーにしてやればバーナーを引き抜く事が出来ます。
クリップは指で押さえながら矢印の方向に広げてやればロックを外す事が出来るので、特に難しい事はありませんが、車種にもよりますが、稀にクリップが外れる事があるのでライトレンズの中に落としたり、紛失させない様に注意して下さい。
取り外したバーナー(上)と新品(下)を比較してみます。
同じD2S型のはずですが、少し形状が異なる様ですね。
ちなみに古いバーナーの赤丸の部分は写真では分かり難いですが、中央の膨らんだ部分の中が白く濁っており、見た目からも正常ではない感じが伝わってくる。
新品の方は透明です。
取り付けの方法は外した時と逆の手順となりますが、バーナーを嵌め込む時は注意が必要です。
ハロゲンバルブなどと同様に、ガラス管部分に直接指で触れない様にご注意ください。
台座側の突起と、バーナーの鍔の部分にある切欠きが合う位置を確認して真っ直ぐ差し込みます。
クリップのバネの力だけで固定されるので、忘れずに!
クリップは外した時と逆に、指で奥に向かって押さえながら矢印の方向へ動かしてやればロック部分の爪に引っ掛かります。
確実に固定されている事を確認しましょう。
意外と作業後に不点灯だとか、外れたなんて話を聞くのがイグナイタです。
これは特に難しい事はなく、バーナーの鍔に付いている突起とイグナイタ側の切欠きが合う位置で差し込み、時計回りに回してやるだけで固定されるのですが、やや手応えが固めな事と、少し回すと一度”硬くなる”位置が存在するのでそこで止めずにもう一山超えてやる感じで少し回してみてください。
ガコッと固定された感じの手応えがあれば大丈夫だと思いますが、取り外す際にイグナイタの角度を良く覚えておけば締め付け不足は回避できると思います。
アクセラの場合はこんな感じ。
角度にして30度くらい?回った位置で固定されます。
後は蓋を取り付けてやれば交換作業は終了です。
ライトユニットやバンパーを取り付ける前に、ライトだけ仮付け状態で点灯確認をしておきましょう。
確認作業はどんな作業にも当て嵌まる事ですが、全部元通りに組み立てた後に、万が一不点灯だとか何らかの不具合があった場合はまた色々と分解する必要があるので、元に戻す前の確認を忘れない様に!
ご覧ください、真っ赤に変色していたライトが正常な白色になりました!
やはりバーナーの不具合で間違いなかった様ですね。
ちなみに、正常に見える助手席側のバーナーも交換していますが、ご覧の通り運転席側と同様に中身が白く濁っています。
バーナーを別の物に交換する際はもちろんの事、交換時に同じバルブを使用する場合でも片方が寿命を迎えていたらもう片方もそう長くは持たないと思うので、基本的には同時交換が望ましいです。
尚、交換後の夜間走行ですが、純正バーナーに比べて結構明るい様に感じます。
パッケージ裏に記載されている通り、さすがはフィリップス。
カットラインもハッキリしていて配光性も良いので、視認性の良いライトだと思いますよ。
安いだけのライトだと高光量を謳っていても配光性能が悪く、ぼんやりとした感じになってしまう物が多く、最悪の場合は車検に通らないなんて事もある(検査時は集光・配光されたカンデラ値が基準となる)ので、記載のルーメン数(光源の総光量)に惑わされず、しっかりしたメーカーの製品を選びましょう。
今回購入したフィリップスのやPIAAなどの有名メーカーは、確かにノーブランドの2000~3000円台の物を見てしまうと割高に感じるかもしれませんが、純正同等品の実勢価格は2個セットで6000~7000円台とそれ程高価なわけではないので、後から後悔しないためにもケチらない事をお勧めします。
2万円以上もするようなファッション性の高い商品は、余程拘りがなければ不要だと思いますが(笑)
追記(2022.08.19)
HIDバーナーやバラストが寿命を迎えた場合、最近では思い切ってLEDバルブに変更すると言う選択肢もあります。