ELM327のOBD2アダプタを接続して、Torqueなどのアプリを使用している方も多いと思います。
かなり便利なツールで、特にこれと言った配線も不要で追加メーター機能を使用したり、ダイアグノシスでエラーチェックしたりと重宝しますよね。
しかし、このOBD2にちょっと欠点があって、常時電源が通っているのが気になるところです。
スイッチ付きのアダプタも販売されており、そちらであれば不要な時は電源をOFFにする事も可能なのですが、使用する度にON/OFFしなければならないし、スイッチの入れ忘れ、切り忘れと言う問題も発生します。
まあ、大した消費電力ではないので、毎日車を使用する方ならバッテリー上がりなどの心配はないのですが、自動でON/OFFしてくれるなら、それに越した事はないはずです。
例えばオーディオなど、エンジン始動時に自動で起動する装置には、ACC電源(アクセサリ電源)やIG電源(イグニッション電源)が接続されていて、キーに連動して通電するようになっています。
つまり、常時電源を供給せず、代わりにこれらの電源に接続してしまえば、アダプターの起動がキーに連動する様になるというわけです。
■予備知識 ACCとIGの違い
良く質問で見掛けるそれぞれの違いについては、ACC電源はエンジンを始動(キーをスタート位置)まで回さなくても起動し、IG電源はイメージとしてはエンジンが掛かっている状態で通電する回路。
使い分けとしては大凡2通りの考えがある様ですが、カスタムなどを行うお店では主にIG電源、整備士の方だと主にACC電源を推奨する場合が多い様です。
主にと言うのは、結局のところ人によると言う事と、何の電源に使うのかで選択されるものですが、ACC電源はエンジン始動時の負荷軽減のために、セルを回す間は一時的に遮断されてOFFになる仕様。
この際に一度起動したオーディオや室内照明などの一部が再びOFFとなり、エンジン始動後に再起動すると言った症状が発生するのですが、これらの点いたり消えたりがスマートでないと考える場合に”演出的”にIG電源を選択する場合がある様です。
また、メーカー自体が配慮して、そうしてある物も見られます。
どちらも走行中には通電していますので、消費電力の大きな物でなく、バッテリーの劣化もなければ、どちらでも構わないと思います。
ただ、今回の場合はOBD-IIと言う都合上、ACC電源を推奨します。
ディーラーで点検する際は直接車両のコネクタを使うので、どちらでも構わないと言えば構わないのですが、アプリでエラーチェックなどをする時に、いちいちエンジン始動しなければならないのは煩わしいので、ACC電源で起動する方が良いかと思います。
■OBD-IIアダプタの改造手順
それではOBD2アダプタの電源を加工してみましょう。
OBD2の各ピンの信号などを説明しても構いませんが、そもそもそんな事を知っても特に役には立たないので、今回は電源供給のピンのみに注目してください。
小型のタイプはやたらと固くて分解出来なかった事と、仮に開けてもスペース的に作業性が悪そうなので、分かりやすい様に大きめのタイプを分解してみました。
大きめの物はOBD2コネクタに直接挿しっぱなしだと運転に支障が出るので、延長ケーブルと併用してダッシュボード裏などに収める事をお勧めします。
尚、基盤の違いや、空中配線になっている場合もある様ですが、基本的に改造方法は同じです。
さて、今回探すのは16番のピンです。表から見ると写真で示している赤丸のピンが16番です。
OBD2の電源は、この16番ピンに供給されています。
大体、コネクタの中を覗き込めばピン番号が振ってありますが、端しか書いていない物や、そもそも番号の記載がない物もありますので、写真を参考に位置を覚えておいてください。
それでは作業を開始しましょう。
1.ケースを分解する
まずは分解しなくてはお話になりませんので、穴開けやピン折りなど、後戻り出来なくなる行程を”やってしまう前に”ケースを開いてください。
2.裏から16番ピンを確認
ケースを開いたら裏側から16番ピンを確認します。
この時、当然表と裏では位置が反転しますので、良く確認して間違えない様に注意してください。
今回の場合は、基盤にも番号が振ってあったので分かり易い例ですが、必ずしも記載があるとは限りません。
3.配線をはんだ付けする
目当ての16番ピンに、電源接続用の配線をはんだ付けします。
それ程間隔は狭くありませんが、広いとも言えないので、隣接するピンとくっ付いたり、配線を斜めに付けてしまってショートの恐れがある様な取り付けにならない様に注意してください。
ここまで成功すれば、もう何も怖がる作業は残ってません。
事実上、完成です(笑)
4.ケースを加工する
加工と言うと大袈裟ですが、このままでは電源配線をケースの外に出す穴がありませんので、ケースの一部を切削します。
ドリルで穴開けでも構いませんが、特に気にする部分でもないのでニッパーでサクッとカットしました。
5.内部の配線処理
後は加工した穴から配線を外に出すだけですが、このままでは何らかの原因で配線が強く引っ張られた際にはんだ付けした部分が折れてしまったり、断線の恐れがあります。
ケース内で配線を軽く1回結んでおけば、結び目がつっかえになってはんだ部分に負荷が掛かるのを防げます。
6.ケースを組み立てる
配線の処理が済んだら、ケースを閉じて元通りに組み立ててください。
外観上は写真の様になり、この配線をACC電源に接続してやるだけと言う事になります。
最後にもう1行程、重要な作業が残っていますので、このまま取り付けしない様に!
6.最終処理
最後に16番ピンを根元から折ります。
基盤裏から16番ピンにACC電源が供給されますので、表の16番ピンが不要になります。
と言うより、この16番ピンがコネクタに差し込まれると、常時電源が入力されてしまうので、供給を遮断してやる必要があります。
その方法が、少々乱暴ですがピン折りと言う作業です。
折るのが難しければ、マイナスドライバーなどで押さえて折り曲げると言う方法でも構いませんので、ピンがコネクタに刺さらない様に加工してください。
以上で改造が終わりました。
後は延長ケーブルを使用してアダプタをダッシュボード裏に収め、アダプタから取り出した電源配線を、オーディオコネクタなどのACC電源にエレクトロタップで割り込ませてやれば取り付け完了となります。
これでキーONと同時にアダプタが起動し、OFFにすれば自動的に電源も切れる仕様になりました。
他のOBD機器も電源が16番ピンに違いはないので、必要に応じて同様の加工でキー連動の電源に改造する事が可能です。
ただし、お約束ですが失敗しても責任は取れませんので、改造は自己責任でお願いしますね!
はんだ付けに使うはんだごては、100均などでも300~500円コーナー(ダイソーなど)にはんだごて単品で置いている場合もあるので、他に使う用事が無ければ使い捨てのつもりで安価な物を使用しても特に問題なく作業できます。
今後も使う可能性がある人は、この機会に少し良い物を買っておくと今後の工作で役に立つと思います。
1万円以上するプロ向けのはんだごてもありますが、家庭用であれば2000円程度でもスタンドやはんだ、替えの小手先など一通り揃ったセットもあり、私も使用しています。
他の電子工作用に検電器をお持ちでない方は、それらもセットになった物が3000円程度で入手可能なので、1セット持っておくと良いかもしれませんね!
以下に一例を紹介しておきます。
尚、実際にOBD2アダプタを活用した追加メーターやエラーチェックの方法は、以下の記事をご覧ください。