最近はスペアタイヤを積んでいない車が増えてきました。
オプションで設定のある車種はまだまだ多いですが、NDロードスターの様にオプションの設定すらない…と言うより、そもそも純正タイヤ1本すらトランクに入らない様な車もあるわけで(笑)
JAFに加入しなくても、自動車保険に付帯のロードサービスが普及しているためか、使用率の低さから一度も使用されないまま廃棄となるスペアタイヤも多いそうで、中には自分でホイールの着脱が出来ないと言う方も少なくはない様です。
さすがに、サーキットを走る様な方でスペアタイヤに交換出来ないと言う人は稀だと思いますが、パンク修理となるとどうですか?
穴に詰め物するだけだろ?簡単だぜ!
…本当にそうでしょうか?(笑)
全くパンク修理経験のない人が、いざと言う時に本当にパンク修理が出来るのでしょうか?
それでは実際に試してみましょう!
■パンク修理キットってどんな物?
スペアタイヤを積んでいない最近の車であれば、標準でパンク修理剤が車載されていたりしますが、空気入れと液体の補修材がセットになった物、または、液体の補修材と圧縮空気が封入されたお手軽なスプレータイプが多いですよね。
しかし、これを使用するとタイヤの内部は充填した補修材でベトベトになり、もちろんホイールの方も汚れますので、液体補修材の使用歴があるとタイヤ屋さんでタイヤ交換をする際にあまり歓迎されないみたい。。。
とは言え、携帯電話も通じない山の中で立ち往生などした場合は最終手段として使用せざるを得ない事もあり得るわけですが、タイヤ屋さんなどでパンク修理をお願いした際にはそんな物は使用せず、外側から詰め物をして修理するのを見た事がありませんか?
ホームセンターやカー用品店のメンテナンスコーナーに行けば、タイヤ屋さんが使用している様なパンク修理キットは市販されています。
もし”アレ”を素人が簡単に扱えるのであれば、液体補修材の代わりに修理キットと空気入れを車に積んでおく事で、いざと言う時にスマートにパンク修理ができちゃうんじゃない??
って考える人も多いのか、それなりに売れているらしいのですが、パンク修理キットを持っているだけで本当に安心しても良いのかと言うと少々疑問が残ります。
パンク修理をした事がない素人に、本当にパンク修理が出来るのでしょうか?
プロ用のキットと市販のキットがどの程度違うのかわかりませんが、修理方法と穴埋めの理屈自体は非常に簡単なので、使用方法を理解していれば素人にもパンク修理自体は可能です。
ですが、コツが掴めないと実は結構難しい(笑)
私が今回購入したのはメルテックのパンク修理キットで、もしこれが簡単に扱える物であれば車載しておくのに便利な収納ケースが付いているので好都合だと思ったからです。
メーカーによって詰め物にいくつか種類がある様ですが、塞ぎ方に大きな違いはないので好みで良いでしょう。
実際の修理には刺さった釘を抜くためのプライヤーや、修理後のはみ出したラバースティックをカットするカッター、空気の充填に使用する空気入れなどが必要になるので、車載道具として使用したい場合はそれら一式も一緒に積んでおかなければならない事に注意しておきましょう。
ちなみに、パンク修理キット自体は1000~2000円程度です。
タイヤ屋さんにパンクの修理を依頼すると、お店によって差はありますが平均して1本当たり1500円前後が相場の様ですので、通常であればわざわざ修理キットを買ってまで修理するメリットはありません。
あくまでも、出掛け先でパンクしてしまった時の応急処置用品として持っておく物だと考えておきましょう。
道具を見れば初めて作業する方でもなんとなく使い方の想像くらいは出来ると思いますが、一応修理方法の手順もパッケージに記載されているので、全くわからないと言う方でも説明を読めばすぐに理解出来ると思います。
頻繁に使用する道具ではないので、心配な方は説明の部分を切り取って収納ケースに入れておくと良いでしょう。
パンク修理キットの実物を確認すると、穴を広げて整えるためのスクリュードライバー(ドリルの様な道具)と、詰め物を穴に押し込むためのインサートドライバー(ミシン針の様な道具)が主に使用する道具。
それに加えて、犬のおやつの様なラバースティックが詰め物の本体、詰め物を接着するための接着剤(ラバーセメント)がセットになっています。
使用方法を要約すれば、穴を整えて、接着剤を塗り付けたラバースティックを突っ込む!
それだけなので、確かに何一つ難しい事はなさそうです。
問題なのは作業のコツだったり、それなりに力も必要だと言う点でしょうか。
■実際にパンクを修理してみる
実際にパンク修理に挑戦してみたいと思っても、そもそもパンクを経験する機会が少ないとは思いませんか?(笑)
冒頭でも言った通り、スペアタイヤの使用率が低いと言う事からも答えは明らかであり、年間のパンク件数となればそれなりの数になるのかもしれないが、車の所有者1人当たりの平均パンク件数となると相当少ないのではないかと思われます。
私も20年以上車を運転していますが、パンク修理を一度もやった事がない理由の一つに、そもそもパンクした事がないのです。
タイヤに釘が刺さってパンクするなど、都市伝説だと思っている。
もし、普通の道を走っているだけなのに年に何度もパンクすると言う方は、呪われているか、狙われている可能性が高いと考えた方が良いでしょう(笑)
さあ、そんな私もついにタイヤのパンクを経験する事となりました!!
なんとかモーターと付き合いがあるわけでもないのに、なんとタイヤに釘が刺さっていたのです。
不自然なくらいど真ん中に刺さっていますが、自分でやったわけじゃないですからね。念のため(笑)
実はこの1週間くらい前から速度に比例して”チッチッチッ…”と小さな異音が聞こえていたのですが、どうやらこれが原因だった様です。
空気が抜けているわけではなさそうなので、貫通はしていないかも?
…なんて思って、不用心にそのまま釘を引き抜いたところ、シュー!!っと(笑)
通常なら、タイヤ屋さんに修理をお願いした方が安いし確実で安心なのは間違いありませんが、滅多にないこの機会にパンク修理に挑戦してみよう!と閃いたわけです。
釘を抜くのはパンク修理の直前の方が良いそうですが、私の場合は数日前にこれをやっちゃったので、修理当日はタイヤの空気が完全に抜けてしまいました。。。
あ、そうそう。タイヤに刺さった釘を抜くのって結構難しいですよ。
プライヤーなどをタイヤ表面に押し付けながら、釘の頭を上手く掴んだら、グリグリと捩じる様に引っ張り出してやりましょう。
なんとか数ミリ出てくれば、後は横からガシッと掴んで引き抜くだけです。
修理を始める前に、私と同じ様に既にタイヤの空気が抜けきってしまった場合は、空気入れを使用して1.0~1.5kg/c㎡程度補充してから作業を開始しましょう。
ある程度タイヤが張っていないと、後から道具を刺し込む時にタイヤが潰れて作業性が悪くなります。
1つだけ、タイヤ屋さんに聞いた注意点なのですが、もし空気が抜けた状態で走行してしまったタイヤのパンク修理をする場合は、サイドウォールに擦り傷などがない事を確認しておきましょう!
タイヤが潰れた状態で走行してしまった場合は、タイヤ側面のカーカス(内部構造)が切れて強度が低下している可能性があり、そのまま空気を充填すると最悪の場合はタイヤが破裂して大事故に繋がる恐れがあります。
プロのタイヤ屋さんでも破裂したタイヤによる死亡例があるくらいですから、たかがパンク修理と思って甘く考えない様に。
不安な場合はタイヤ屋さんに診せて相談しましょう!…と言うより、本来ならパンク修理もですが(笑)
さあ、それではいよいよパンク修理に挑戦です!
まずはスクリュードライバーのシャフト部にラバーセメントを塗り付けます。
ケチらずちょっとたっぷり塗るくらいが良いでしょう。
そして、スクリュードライバーの先端をパンク穴に刺して、右回りに捩じりながら根元まで押し込みます。
最初はちょっとキツいですが、捻じ込んでいる間に段々と動きが軽くなってくると思います。
続いて、根元まで捻じ込んだスクリュードライバーを、右回りに捩じりながらシャフトの半分くらい引き抜く。
そして、再び右に回しながら根元まで捻じ込む…と言った作業を何度も繰り返します。
この作業は、パンクした”穴を広げる”事が目的なので、何回繰り返すと言った決まりがあるわけではなく、目安としては手応えが軽くなるまで何度も繰り返す必要があります。
私も最初は、この作業を行う理由が良くわかっていなかったので、2~3回で止めて詰め物を押し込もうとしたら、固すぎて全然刺さらないなんて大失敗をやらかしました(笑)
とにかく、怖がらずに”穴を広げる”って事を意識してみてください。
広げ過ぎはまずいですが、この辺りが素人向けの道具の仕様なのか、スクリュードライバーのシャフト自体が細めなので、捩じらずに抜き差し出来る程度になっても十分に塞がる様です。
後から見せてもらったプロ用はもっとシャフトが太いので、その様なタイプであればある程度加減が必要になると思います。
十分に穴が整ったら、タイヤの空気が抜けてしまわない様にスクリュードライバーを根元まで刺しておきます。
この間に次の手順の準備をしましょう。
いよいよ穴を塞ぐ道具の登場ですよ!
インサートドライバーの先端はミシン針の様に何かを通す穴が開いています。
ここに、犬のおやつの様なラバースティックを差し込んでセットします。(赤丸で示した部分)
ラバースティックが左右均等になる様にセットしたら、表面にたっぷりとラバーセメントを塗り付けましょう。
これもケチらずたっぷり塗っておく方が滑りも良くなって刺し込みやすくなりますよ!
んで、先程も言いましたが一度失敗しましたのでね(笑)
刺し込んでいたスクリュードライバーを引き抜いたら、その穴にインサートドライバーを刺し込むだけなのですが、もし穴を十分に広げられていなかった場合は固くて刺さらない事があります。
こんな時は無理をせず、もう一度スクリュードライバーで穴を広げる作業を行いましょう!
たかがゴムだと思っていましたが、固くて刺さらない物は刺さらないので無理はしない様に。
この時点で空気が抜けちゃってタイヤが潰れてしまうと言う場合は、再度空気の充填も行いましょう。
さあ、それでは改めて。
穴を広げ直したら、インサートドライバーをパンク穴に向かって、捩じらず真っ直ぐに刺し込みましょう。
根元まで刺し込めるのが理想ですが、これも結構固いですからね。。。
体重を掛けながら軽く勢いを付けてグッと押し込んでやるイメージだそうですが、私の様に体重が軽め…か?いや、平均体重よりちょっと軽いくらいか(笑)
体重は57kgくらいですが普段はデスクワークで非力なので、力が必要な作業となると結構ツラいです。。。
更に体重が軽く力も弱い女性の場合は、この作業をするのは結構難しいんじゃないでしょうか?
おまけに、刺し込んだ後はインサートドライバーを引き抜く必要がありますので、これも結構力が必要です。
引き抜く時も、捩じらずに真っ直ぐ引き抜きましょう。
多少、グリグリやるくらいは大丈夫だと思いますが。。。
上手く差し込めたら、インサートドライバーを引き抜くと先端からラバースティックが抜けて、写真の様にパンク穴を塞いだ状態で残ります。
なんとか無事に塞がった様で空気は漏れなくなりましたが、この作業を簡単と言えるかどうかと聞かれたら、簡単!楽々!とは言い難い。
何より刺し込む方はかなりしんどいですよ!
まあ、私の様に頭脳明晰なら、力がなくても刺し込む事くらいわけないんですがね。
…ん?なに?ハンマー?
ちょっと何の事を言ってるのかわかりませんが、頭を使って難なく刺し込みましたよ。
無事に穴が塞がったら、はみ出しているラバースティックを3~5mm程度残してニッパーやカッターなどでカットすれば修理完了です。
空気を適正空気圧まで充填して、心配なら石鹸水などを掛けてみて空気の漏れがないかチェックしましょう。
この状態では少々見た目は悪いですが、車に取り付けて少し走れば勝手に摩耗して目立たなくなりますので気にしなくても大丈夫ですよ。
実際に車に取り付けて2日で50kmほど走行しましたが、問題なく塞がっている様で空気圧の減少も見られませんので大丈夫でしょう。
修理痕もほとんど目立たなくなっているのがわかります。
■やってみて感じた修理の難易度や注意点は?
今回、はじめてタイヤのパンク修理に挑戦して辿り着いた結論ですが。。。
○素人にパンク修理は可能か?
作業方法自体は単純ですぐに理解は出来るため、パンク修理経験がない素人にも修理は可能である。
ただし簡単とは言い難く、特にコツとそれなりに力が必要である事から、非力な方(特に女性など)には難しく、いざと言う時に上手く修理出来ない可能性が高い。
○自分で修理するメリットはあるのか?
難なく修理出来るのであれば、タイヤ屋さんへ持ち込む手間や、出掛け先でJAFの到着を待つ時間を省けると言うメリットはある。
コスト面では、1度の修理のために修理キットを買う金額でパンク修理が十分に可能なのでメリットはないが、頻繁に使用する場合はラバースティックとラバーセメントの単価は安いので1度の修理につき1000円程度の節約にはなる。
○注意点は?
これを緊急用の車載道具として車に載せておく場合は、修理キットだけではパンク修理が出来ない事に注意が必要。
タイヤの着脱に使用するジャッキやクロスレンチ、釘を抜くためのプライヤー、空気入れ、はみ出したラバースティックをカットするためのカッターの他、ベトベトしたゴミを片付けるためのごみ袋や手を拭くウエスなども必要になるので、これら一式を積んでおかなければただの荷物である。
パンク修理自体は単純ですが、考えているほど楽ではない作業で意外と難しいので、いざと言う時は大人しくJAFか自動車保険付帯のロードサービスの利用をオススメします(笑)
また、急激に空気が抜ける様なパンクはそもそも修理不可と言うパターンが多く、何かが刺さっていると言う場合はとりあえず空気を入れてみて、走行可能なら最寄りのガソリンスタンドやタイヤ屋さんに駆け込むのが正解でしょう。
ただ、機会があればパンク修理を1度は自分でやってみてほしいです。
タイヤ屋さんの凄さと、修理工賃の安さに驚くはずですよ!
私なら5000~1万円は取りたいと思うか、むしろそれでも二度とやりたくないレベルです。マジで(笑)