近年は、各社自動車メーカーも新車購入時に選択可能なオプション用品としてのラインナップにも見られる様になった、下回りの防錆塗装、防錆コーティングと言ったメニューがあります。

元々、サブフレームなどは比較的塩害に強いシャシーブラックで塗装されていたりしますが、これだけでは心配と言う方はホームセンターなどで買ったスプレー缶や、塗装屋さんで後から追加で吹き付けてもらう事も出来ますし、より強力な保護を希望する人は、スリーラスターノックスドールなどの定評ある強力防錆コーティングなんかも売ってますよね。

実際、ディーラーで施工するのもこう言った商品の中から、各メーカーが推奨する防錆塗料を塗ってくれると言うものなので、自信があれば自分で塗料を買ってきて庭先で施工する事も可能です。

ですが、面積も広いし、庭先でジャッキアップして下回りを塗装するなんて結構大変な作業なので、大人しくお任せした方が良いですよ~(笑)

ただ、こう言った防錆塗装が本当に必要なのか?どの程度の効果が見込めるのか?何かデメリットはないのか?

車のサイズにもよりますが、平均相場で4~5万円も払って後悔したくないと言う人のために、どんな物なのかちょっとご紹介しましょう。

◆防錆塗装の施工範囲は?

◆防錆塗装は必要?効果はあるの?

◆防錆塗装のデメリット

■防錆塗装の施工範囲は?

オプションの防錆塗装をお願いした場合、施工範囲はどんな感じになるのか?

実はこれ、結構アバウトな感じ(笑)

…と言うのも、実際には下回りを万遍なく塗って綺麗に仕上げるのが理想なのだと思いますが、オプションの場合は金額が決まっている事からも分かる通り、塗料の量が決まっていますよね。

スプレー缶で何本なのか刷毛塗り用の缶で何リットルなのか、正確な使用量は不明ですが、足りる範囲内で塗るしかないと思うので、ある程度マニュアルなどで施工範囲や塗装の手順は決まっているのだと思いますが、後は作業者の熟練度やセンス、性格によるとしか言えません(笑)

施工車のドアにはノックスドールのステッカー

ちなみに使用される防錆塗料の例では、トヨタ系はスリーボンド社のスリーラスター、マツダではオーソン社のノックスドールを扱っており、稀に店舗によって防錆塗装サービスの取り扱いがなかったり、独自の塗料を使用している場合があるそうなので、気になる場合はお世話になっている店舗に直接確認してみてください。

さあ、施工後の仕上がりには多少のバラつきが見られるものの、主な施工箇所や範囲はどんな感じになるのか、実際にノックスドールを施工してもらったマツダ2の下回りの例を見てみましょう。

要は比較的錆び易い場所や路面からの飛び石によるキズが付き易い場所を保護すれば良いと言う考えなので、ボディの塗装とは異なりそれ程シビアな物ではありません。

下回りなので、普段は見える位置でもないため、やや大雑把なのは仕方がないかな?と。

まずはサブフレームや、アンダーコートの施工されていない骨格部分など、比較的平らな部分が主な施工箇所となっています。

下回り全面が真っ黒に塗装されるわけではありません。

こちらは実際に施工中の様子を見たわけではないですが、塗り斑や刷毛筋の様な痕も多く見られるため、缶の塗料を刷毛で塗っているのかもしれませんね。

オプションカタログの様に平滑で艶のある仕上がりとは程遠いですが、頑張って塗った感じが伝わってきます(笑)

先程も言った通り、アンダーコートが貼られている部分はそもそも塗装面や金属が剥き出しにはなっていないので、キズや錆には強く、ここに防錆塗料を塗る必要はないため上塗りはされていません。

その他分かり難い施工箇所ですが、説明を受けた範囲では赤丸で示した様な袋状になっているフレームの内側に、サービスホールからスプレーノズルを突っ込んで噴射塗装を行っているそうです。

鉄板同士の繋ぎ合わせ面や溶接個所など、水分や融雪剤などの影響で錆が発生し易い場所を塗装でガードする様です。

ここについては中を覗き込む事が出来ないため、隅々まできちんと塗られているのかはわかりませんが、ガッツリ吹いておけば安心感は得られるのではないでしょうか。

当然ですが、排気管やブレーキライン、シャフトなどの加熱部や可動部は施工されていません。

また、必要な場所はアンダーカバーまで取り外して施工されている様なので、そこそこ高価になるのも頷けます。

これを庭先でやろうなんて愚かな事は考えない方が良いかも。。。(笑)

結構細かい部分まで塗られていますが、見掛け上は中途半端で大雑把な感じに見えてしまうのはこう言う部分。

タイヤハウスの内側の方など、側面はアンダーコートが貼られていますが、下方は塗装面が剥き出しの部分もあり、そう言った部分には腕を突っ込んで頑張って塗ったんだろうなって感じが見て取れますね。

ただ、ここから更に奥のエンジン周辺などにはさすがに手が届かないと思うので、実際の施工は”完ぺきではない”と言う事がわかると思います。

しかし、ここまで必要か?と言うと、当然施工されていた方が確実だとは思いますが、本当に錆び易いのは通常の洗車では水洗いが難しいフロア下やサイドシル周りなので、施工範囲としては十分すぎるくらいでしょう。

ちなみに、施工料は4~5万円となりますが、ノックスドールの例ではスプレータイプ刷毛塗り用の1L缶も1本2500~3000円前後で販売されており、スプレー缶(500ml)での目安はコンパクトカーで10~12本程度、少し大きめの車で12~15本程度で1台分が施工できる様です。

単純計算だと、工賃は1.5~2万円程度と予想出来ますね。

少しでも安く仕上げたい方は挑戦してみます?(笑)


■防錆塗装は必要?効果はあるの?

降雪地区で錆を完全に防ぐ事は難しいかもしれませんが、施工していた方が被害を最小限に、または腐食の進行を遅らせる事は出来るのではないかと思いますが、正直に言うと、かなり判断の難しいところです。

例えば、私の様に九州南部の雪とは全く無縁の地区に住んでおり、融雪剤などが散布されるような場所だったり、車高を下げている都合上、未舗装路などの悪路は避けて通ると言う用途だと、今まで所有した車で下回りの防錆など全く意識した事がありませんでしたが、錆など全く経験した事がありません。

もちろん薄錆くらいはありますが、腐食と言う様なダメージはなく、ネジが錆びで固着する様な事も稀です。

対して、東北地方などでは何をしても錆びると聞きますし、単なる錆と言うより、グスグスに朽ち果てる感じになるみたいですよね。

降雪地区で防錆塗装を施工した車と未施工の車を同条件で長期の比較テストでもしない限りは、効果の程度を見極めるのは困難なので、本当に必要かどうかは何とも言えないところですし、少なくとも雪の降らない九州南部の地区であれば不要かな?と。

事実、メーカーも施工をオススメするユーザーの例に、融雪剤を散布する地区に住んでいる方や悪路の走行、高速道路の利用が多い方などと言っている事からも、雪の降らない地区でタウンユースに限定した使い方であれば施工の必要性は低いと考えている様です。

ただ、スリーラスターノックスドールは完全乾燥後も柔らかい軟質塗料の様なので、飛び石などで剥離は起き難く、施工箇所は長期に渡って保護されるのは間違いないと思いますので、少しでも長く程度を保ちたいと考えるのであれば、九州でも防錆と言うよりはピッチキズ対策として施工するのも一つの選択肢かもしれませんね。

いずれにせよ防錆塗装を過信せず、施工する場合は錆び易い箇所を重点的に保護し、まめな洗車と組み合わせて考えるのが良いでしょう。


■防錆塗装のデメリット

通常の用途であれば、施工費用がちょっと高いと言うコスト面を除いては、仮にメリットらしいメリットを感じられなくてもデメリットもないと思います。

ただ、車の用途や、整備する側の立場になった場合にデメリットとなり得る特徴は見られます。

まず第一に、サーキット走行で1/1000秒を削ると言った世界に於いては、重量増と言うデメリットが頭を過ります(笑)

その程度で一体どれくらい変わるんだよって思うかもしれませんが、カーペット下のメルシートを剥がしたり、ネジ数本を間引いたりなんて痛々し…あ、いや、涙ぐましい努力をする人もいるくらいですから、塗料の重量って意外とバカにならないですよね。

もう一つは、やはり整備上のデメリットです。

下回りのサブフレームなどもそうですが、意外と触れる頻度の多そうな部分もこんな感じですよ。

ナックルやショックアブソーバーを固定するボルト・ナットまで防錆塗料で綺麗にコーティングされちゃってます(笑)

サーキットを走ろうと思ったら、遅かれ早かれ足回りを交換する人は多いと思いますが、交換作業がちょっと面倒になります。

何かしらの作業で下回りのサブフレームのボルトなどを取り外す場合も同様の事が言えますが、塗料の厚みが影響して工具が掛からないんですよ。。。

マイナスドライバーでガリガリと塗料を剥がしたり、余計な手間が増えるんですよね。

塗料を剥がしても工具がしっかり挿し込めなかったり、ソケットレンチメガネレンチプラハンで叩き込んだりすると、外したナットがソケットにハマっちゃって取れなくなったりと結構大変ですし、ネジ山に塗料が噛み込むせいでスムーズに回らなかったりと、倍以上の時間を要します。

最悪なのはこう言うパターンで、スタビリンクなどの様に六角レンチで回り止めが必要な構造など、穴の中に塗料が詰まっているせいで工具が差し込めず、古くなって固着でも起きようものなら切り飛ばすしか外す術がなくなる恐れがあったり。

もし、サーキット走行やドレスアップ用途で着脱の予定があるなら、防錆塗装を施工する際にこう言った部分への施工は避けてもらう様に、ダメ元で伝えておいた方が良いかもしれません。

ダメ元でと言うのは、ディーラーによっては店舗で施工せずに本社などの拠点でまとめて作業している場合もあるため、営業担当者に伝えてもきちんと伝わらない可能性もありますので、防錆塗装のオプションを施工する際はある程度覚悟はしておきましょうと言う事です(笑)

販売店もマニュアルに沿って作業しているでしょうから、原則施工箇所となっていれば施工する可能性の方が高いので、1日に何十台も作業していれば細かすぎるオーダーまでは処理できない可能性は十分にあります。

店舗で施工している場合はある程度融通も利くと思いますので、あとは相談で。。。