今までに短期間しか乗らなかった車もあれば、長期間乗った車もありますが、自分で何らかのチューニングを施した車は、いずれも前後コイルオーバー式のショックアブソーバが採用された車種ばかりでした。

FFではホンダ・シビック(EG6)やトヨタ・セリカ(ZZT231)、FRはニッサン・シルビア(S15)やマツダ・RX-8などがありますが、どれもショックアブソーバ単体で見れば、ダンパーとスプリングが一体化した同じような構造をしているわけですよ。

そんな中、初めて触れる事となったのが、リアのダンパーとスプリングがセパレート構造となっていたマツダ・アクセラ(BK3P)です。

アクセラの足回り構造

別にこの構造が珍しいと言うわけではなく、たまたま私が今まで一度も引かなかったと言うだけで、多くのミニバンや軽乗用車、コンパクトカーなどはもちろん、スズキ・スイフトスポーツニッサン・フェアレディZなどのメジャーなスポーツカーでも、ダンパーとスプリングがセパレート構造になっている車種は結構多いです。

セパレートタイプとコイルオーバータイプはどちらも一長一短あるので、単純に比較した場合にどちらが優れていると言い切れる物ではないのですが、車高を下げたり、スプリングレートを上げたりすると少々使い難いのがセパレートタイプの欠点と言えるかもしれません。

どう使い難いかと言うと、以前アクセラの車高調を交換した際に、車高の決定権がスプリング全長に委ねられる問題について話し、ハイレートで短いスプリングを使用するとショックの全長も短くしないとスプリングに遊びが生じて走行中に脱落する恐れがあると説明しました。

無理をすればヘルパースプリングも使えない事はありませんが、スプリング同士の接続部分が溶接でもされていない限り、何らかの弾みで分解してしまう可能性もありますし、何より構造上長いスプリングを収めるスペースが確保し難いです。

これがダンパーに直接固定されたコイルオーバー式なら、そう言った心配もなく、セッティングの自由度も増します。

◆コイルオーバー化に必要な物を揃えよう

◆車高調を改造してみよう

◆コイルオーバー化を検討する際の注意点

■コイルオーバー化に必要な物を揃えよう

コイルオーバー化の前に、ちょっと気になる車検の問題などについて。

足回りの構造が変わるので保安基準に引っ掛かるのではないかと心配になりますが、確認してみたところ「コイルスプリング」から変更するわけでもなく、コイルオーバー化に伴う車体側の改造(穴開けやブラケット溶接など)が無い場合、ショックアブソーバAssy自体は指定部品となるため全く問題ないそうです。

車高調整機能が無いショックをアジャスト構造の付いた車高調などに変更しても、構造変更の申請が不要である事に似ています。

強いて言えば、車高によって生じる最低地上高や灯火類の高さなどに気を付けてください。

また、リーフスプリング(板バネ)をコイルスプリングに変更する場合は別の話なので注意!

それではコイルオーバー化に必要な物を確認してみましょう。

まずはリアのセパレート構造をご覧ください。

見ての通り、ダンパーとスプリングが別々の位置に付いています。

ピンと来た人もいるかもしれませんが、それぞれに働くレバー比が異なりますので、スプリングの位置がダンパーの位置に移設された場合、ダンパー側のレバー比が効いてくるため、そのまま移設しただけでは固くなります。

また、それなりにいじって、行き詰ってコイルオーバー化を検討されている方の場合、既にスプリングが短くなっているパターンが多いと思いますので、そのまま使うには自由長が短過ぎる可能性があります。

私のアクセラの場合、自由長178mmの12kgf/mmのスプリングを使用していますが、レバー比はスプリングの位置で1.18、ダンパーの位置で1.09となっているので、スプリングレートは10kgf/mm辺りでほぼ同等と言う計算になります。

また、ダンパー側のスプリングシート上限位置からアッパーマウントまでの距離を測ってみると、最低でも220mm程の自由長が必要となるので、9~10インチのスプリングを準備しなければなりません。

ちなみに、メリット・デメリットの1つがこの部分になるわけですが、長いスプリングが”使える”と考えるか”使わなければならない”と考えるか。

材質なども近く、同レートと仮定した場合、長いスプリングの方が弾き返す動きは緩やかなので、マイルドなフィーリングで乗り心地は良くなりますが、言い換えれば鈍いと感じる場合もあるので何とも言えないところです。

少し話が逸れましたね(笑)

続いて、ダンパーのシリンダー径を測ります。

ここにロアスプリングシートを取り付ける必要がありますので、対応するスプリングシートとロックシートのネジサイズを確認します。

どこから持って来るかと言う問題ですが、大体の場合はフロント側とサイズが共通である場合が多いので、車高調メーカーの補修部品でなんとかなりますね。

コストの問題もあるので、そうそう理由が無ければわざわざサイズを変えて共通で使えない部品を増やす例は少ないでしょう。

とは言え、念のためにフロント側を測定しましょう。

バッチリ!アクセラ用のラルグスの車高調の場合は、同じ50mmとなっています。

合わせて、ネジピッチを確認しておきます。

前後とも同じ1.5mmとなっているので、補修部品にあるフロント用のスプリングシートを買えば、リアに流用可能です。

まだありますよ!

アッパーマウント側にスプリングが取り付け可能か確認する必要があります。

残念…。

この構造ではスプリングが取り付けられそうにありませんね。。。

ちょっと待った!

ここでシャフト径を測ってみましょう。

アッパーマウントに直接スプリングが取り付け出来なくても、スプリングアッパーシートと言う部品があります。

使うスプリングの内径(今回はID65)と、アッパーシートを取り付けるダンパーのシャフト径がわかれば、後は適合するアッパーシートを買うだけです。

アクセラ用のラルグスの車高調は、シャフト径が12mmだとわかりました。

以上の情報から、コイルオーバー化に必要な上下のスプリングシートのサイズがわかるので、必要な物を買い揃えましょう。

こちらがロアスプリングシートとロックシート。

車高調メーカーの補修部品として購入できる物が多いです。

ラルグスの補修部品で約1万円となりました。

ちなみに、ラルグススプリングシートの場合は対応スプリング内径がID62となっているので、ID62-65変換アダプターも準備しました。

価格は3000円程度。

そしてこちらが、測定したシャフト径に対応するアッパーシート

今回はクスコの対応スプリングID65、対応シャフト径φ12mm用を2枚。

価格は7000円ほどとなります。

あとは、使用するスプリングを用意すれば、コイルオーバー化の準備完了です!


■車高調を改造してみよう

さあ、それでは揃えた部品を確認してみましょう!

たったのコレだけです!

改造と言えば複雑な印象を受けるかもしれませんが、実のところ何か加工をしたり、取り付けが複雑になると言うわけでもなく、凄くシンプルな話なんですよ。

ダンパーに上下のスプリングシートを付けてやればスプリングが取り付け可能な構造となるので、遊ばない程度の長さのスプリングを取り付けてやれば良いだけです。

実際に見てみましょう。

こちらが取り外したリアダンパー。

部品を取り付けるためにアッパーマウントを取り外します。

部品の順番を間違えない様に、ロックシート、ロアスプリングシートを捻じ込んで、スプリング、アッパーシートの順に組み立てたら、アッパーマウントを取り付けて完成です!

写真の状態ではそれぞれの部品が確認し易い様に緩めていますが、ロアスプリングシートを巻き上げて、スプリングの遊びがない様に固定してやれば、フロントと同じコイルオーバータイプに変身です♪

あとは、これを車体に取り付けてやればコイルオーバー化は完了と言うわけですよ。

簡単でしょう?(笑)

セッティングなどの話は別問題となるので、ここでは触れませんが、車高に関してはバネのプリロードなどを気にする事もなく自由に調整が可能となりますし、必要に応じてヘルパースプリングなどを安全に組み合わせる事も可能となりますね。

ところで、取り付け状態の写真は無いの??って声が聞こえてきますが。。。

それは…、それは…えっと…。


■コイルオーバー化を検討する際の注意点

実のところ、BK系アクセラのリアはコイルオーバー化できません(笑)

こうなる事も想定した上で、案の定ダメでしたって話なので、単純にブログネタとして用意しただけってオチになるのですが。。。

おいおい、ちゃんと部品も組み立ててコイルオーバー化出来てるじゃないの!どうして?

これには理由があるのですが、コイルオーバー化を検討するにあたり注意しなければならない事に、取り付けスペースの問題があるのです。

ちょっとこちらの図を見てほしいのですが、これはセパレートタイプの構造です。

緑色の筒がダンパー、赤いのがスプリングですね。

誰がどう見ても車体に見える部分と、誰がどう見てもタイヤに見える部分が描かれた、非常にリアルなイラストですが、お気付きでしょうか?

では、続いて以下の図をご覧ください。

先程の足回りを、セパレートタイプからコイルオーバータイプに改造した例です。

ダンパーの上下にスプリングシートが付き、そこへスプリングが取り付けれています。

もうお気付きですね?

ダンパーの位置は変わっていないのに、コイルオーバー化した事によってタイヤ側や車体側のクリアランスが相当厳しくなっているのがわかると思います。

タイヤの方はホイールサイズを変更したり、ホイールスペーサーを取り付ける事でクリアランスを確保する事は可能ですが、車体側は叩いて凹ませるなど、かなり無茶をしなければ決まったクリアランス以上のスペースを確保する事は困難です。

強いて言えば、もっと外径が細くなる様にID65をID60にするなど、細身のスプリングを使用すると言った方法もありますが、これにも限界があります。

また、ギリギリでなんとか取り付けが出来たとしても、ストロークする際にダンパーAssyが動く事も考慮していないとどこかに干渉する恐れがあります。

倒立式のダンパーであれば、見掛け上、上下が逆になるのでスプリングは下方に付きますから、ホイールとの干渉だけ注意しておけばあっさり取り付け可能だったりしますが、正立式の場合は今回の例で示した通り、クリアランスは相当シビアなものになります。

なので、コイルオーバー化を検討する際は、スプリングシートやスプリングの外径に対して、取り付け部分周辺に十分なスペースがある事を確認しておく必要があります。

一部コイルオーバー化が定番となっている車種を例に挙げると、フェアレディZなどはスペースの問題をクリアしていますし、スイフトスポーツなどはコイルオーバー式をラインナップしているメーカーは倒立式を採用しています。

アクセラには十分なスペースがなく、ラルグスの車高調も正立式となっているため、少なくともポン付けは不可能と言う結果になったわけです。。。

コイルオーバー化を検討している方は、くれぐれもご注意ください(笑)