車を買ってサーキットを走らせるにしても、色々と準備が必要…なんて言う人もいますが、実際のところきちんとメンテされていれば、それ程緊急で何かを用意しなければならないと言った物はないです。

まあ、200km/hオーバーなんて速度域で走る大きなサーキットにノーマルのブレーキパッドでは危ないので、せめてスポーツ走行向けのパッドに替えるとか、エコタイヤなどを装備しているのであれば、ハイグリップとまでは言いませんがスポーツ走行向けのタイヤに履き替えるなどと言った変更程度で走れます。

足回りを交換するだとか、吸排気をチューニングするだとか、そんなものは後々タイムを詰めて行く上で考えれば良い事であって、必須装備と言うわけではないので、買った車をそのまま持ち込んでも全く問題ありません。(コースの規約や競技など、レギュレーションの制約がある場合を除く)

ただね、必須ではないにしても、私が個人的に急ぎで導入を勧めたいのが操作に直結する部分です。

ハイスピードでコーナーリングをすれば、一般道ではまず体験しない様な旋回Gが掛かりますし、身体を支えるのに精一杯でシフトやハンドルを上手く操作出来ないなんて事になっては、どんなに高性能な車を走らせても満足に走らせる事なんて出来ません。

まあ、本当に始めたばかりの初心者の方だと、なかなか強烈なGを感じる程のコーナーリングスピードで走るのは難しいと思うので、いきなり導入と言う程でもないと思いますが、中級・上級者はもちろん、初級者の方でも少し車に慣れて来た頃には検討しても良いかと思います。

ただね、バケットシートって結構高いのよ(笑)

公式競技ではFIAやJAF公認が必須となりますが、走行会や一般走行枠で走りに行く場合などはそれらの制約もないので、しっかりした製品は後々購入するとして、とりあえず資金繰りに頭を抱える学生さん達の様な層でも手の出し易い、ノーブランドの安価なシートでマシな物があれば、応急として選択肢に加えるのもありなんじゃないでしょうか?

と言う事で、今回は実際に激安シートを買ってみてレビューしてみました。

◆激安バケットシートの評判は?

◆バケットシートの取り付け

◆実際の激安シートのクオリティは?

■激安バケットシートの評判は?

実は私も車の趣味を始めて間もない頃、シートがそれ程重要と言う認識もなく、まず追加メーターを付けたり、マフラーを替えてみたりと言った車のいじり方から始まりました。

若い内は雑誌などで「10馬力UP!」「フィーリング向上!」などと書かれていたら、ついつい雀の涙程の給料でも無理して買いたくなるってもんです(笑)

んで、数年後にバケットシートに憧れて、当時3万円程で売っていたノーブランドのシートを購入したのが、初めてのフルバケットシートでした。

…が、これがグニャグニャなんですよね(笑)

この時点では比較する指標も持たないため、それが粗悪な商品と言う事にさえ全く気が付いていないのですが、後にレカロのSP-G(正規品)を買った時に衝撃を受けました。

すごいガッチリしていて、取り付けた状態なら少々蹴飛ばしたくらいではビクともしません。

こんなしっかりしたシートでサーキットを走れば、活かせるかどうかは別としても、当然違いはハッキリ分かるもので、こんなに運転し易くなるのかと感動しました。

20年近く前の話ですが、当時の安物シートは値段相応のなんちゃってパーツと言った感じで、実用に適した商品とは言い難いものだったわけです。

しかし、最近の商品はそうでもないらしいと言う噂があり、実際にクヌギランナーの走行会に参加した方が装備しているノーブランドのシートなどを触らせてもらっても、結構しっかりしているんですよね。

やや生地の質感が安っぽかったり、縫い目の処理が荒かったりと言ったクオリティの低さは見られるものの、バケットシートとしての機能は十分に満たしている印象の商品が多いです。

最近はインターネットの通販でもレビューなどが売り上げに与える影響も大きく、昔の様に安かろう悪かろうと言った商品は淘汰されていく傾向にあるためか、価格以上の満足度を与える商品が増えてきた気がします。

…と言う事で、私もアクセラ用にノーブランドのバケットシートを実際に買ってみる事にしました。

シートレールブリッドの製品を使用しますが、シートは1脚25000円前後(送料込)で売られている激安商品です。


■バケットシートの取り付け

バケットシートの取り付けは、シート本体は汎用となるため、車内が狭い車には幅広のシートが使えないなどと言った問題がある程度で、寸法に注意すれば基本的には車種を問わず装備できます。

そして、車種別専用設計となるのはシートレールです。

単純にロードスター、シビックなどと車種記載があっても、型式によって形状が異なる場合もありますし、極端な例では同型式でも年式によっては形状が異なると言った車種もあるので、適合するレールをしっかり確認して準備してください。

セミバケットシートの場合は底留め、フルバケットシートの場合はサイド留めが多いので、フルバケットを取り付ける場合はサイドステーが別途必要になる場合もあります。

一概には言えないのですが、レールを車体に固定するボルトは車に付いている物を再利用。

シートレールサイドステーを固定するボルトやシートベルトのバックルを固定するためのボルトはレールに付属している場合が多く、バケットシート本体をレールに固定するためのボルトはシートに付属している例が多いです。

ただ、中古で買った場合はもちろんの事、新品でも付属していないと言う場合もあるので、いざ取り付ける時に慌てない様に付属品はしっかり確認しておきましょう。

組み立ては簡単なもので、シートにサイドステーを取り付け、レールにサイドステーをネジ留めするだけで組み立ては完了します。(レールにサイドステーを取り付けてからの方が楽な場合もある)

組み立てたシートAssyはこんな感じになります。

赤丸の部分はシートベルトのバックルですが、これは通常、純正シートなど、車両に元々装備されている物を取り外してシートレールへ移設します。

ただ、バケットシートは優れたホールド性を得られる反面、車の乗降性を著しく悪化させるため、乗用用途で使用する車に取り付けると乗り降りが面倒だったり、そうでなくともノーブランドのシートの場合は車検に合格できない場合があるため、必要に応じて取り換えを行う事が事前に想定される場合、これらの部品の面倒な移設作業を毎回行う必要があります。

私は普段はノーマルシートで乗りたいので、この手間を省くためにシートベルトのバックルは別で準備しました。

車種にもよりますが、アクセラの場合は5000円程で購入できます。

バックルをレールに取り付ける際の注意点ですが、シートの脇から数cm短い位置にバックルが来る様に注意しましょう。

3点式のベルトを装着した際に、腰のベルトが緩くなってしまうと、万が一事故を起こした際に大変危険ですので、もし純正のバックルが長すぎる場合は短めの車種から流用するなどの方法で位置を調整しておく事をお勧めします。

4点式のベルトを取り付けるから大丈夫!と言う方も、サーキットは問題ないにしても、原則、公道では4点式ベルトの使用は一部を除いて道路交通法上、使用不可(シートベルト未着用扱い)となりますのでご注意ください。

シートAssyが準備出来たら、ノーマルシートを外して入れ替えるだけなので、それ程難しい作業ではありません。

とりあえず、シートをスライドさせて後ろへやっておきましょう。

車種によってはいきなりボルトが見える場合もありますが、高級車だったり、最近の車では軽自動車でもカバーなどが付いて綺麗に隠されている例が多いです。

隙間にクリップ外しマイナスドライバーを突っ込んで、軽く浮かせてやれば簡単に外れる物が殆どです。

軽く浮かせてみてヤバそうなら、他の角度から試してみてください。

物によっては爪で引っ掛かっているだけではなく、前後にスライドして着脱するタイプなどもあるので、特に元に戻す可能性がある場合は力任せで無理に外そうとしない様に(笑)

シートレールは大体14mmまたは17mmのボルトで留めてあります。

アクセラの場合は14mmのボルトで固定されているので、こいつを外してやりましょう。

結構硬く締まっていると思いますので、ブレーカーバーなど長めのレンチが楽です。

リアも同様に作業しますが、アクセラの例では右側だけディープソケットエクステンションバーがないと回し難いです。

レールを固定しているボルト4本を取り外せばシートが外れますが、不用心に引っ張ってシート下のハーネスを断線させない様に注意してください!

アクセラの場合は赤丸の様にちょっとゴツイ集合型のカプラーで接続されていますが、マツダスピード・アクセラの場合はシートベルトのカプラーのみしか配線は来ていません。

車種によって、助手席側にもシートベルトのセンサー用配線が付いている物もありますし、シートエアバッグや電動パワーシート、シートヒーターなどなど、シートに機能満載の車種程接続されている配線の数や種類は多いです。

それぞれが個別のカプラーになっている場合もあるので、見落とさない様に注意しましょう。

アクセラのカプラーは黒いレバー構造のロックの内爪を浮かせてレバーを起こしてやれば簡単に引き抜けます。

こんなにゴツイのに、ご覧の通りシート側からはシートベルトの配線しか来ていません(笑)

ここまで完了したらご覧の通り、完全にシートを車から取り外す事が出来ます。

後はバケットシートAssyと入れ替えてしまえば取り付け完了ですね。

シートレールのボルトを締める際は注意して欲しいのですが、国産のレールであっても所詮は社外部品だと言う事を忘れてはなりません。

純正シートの様に位置決めのピンなどはありませんし、微妙な個体差に合わせてある様な親切設計ではないため、微妙にボルト穴がきつかったりします。

とりあえず前後どちらからボルトを取り付けても構いませんが、まずは指で仮留めだけしてボルト4本がきちんと取り付けられる様に微調整をしながら作業してください。

問題なくボルトを取り付けたら、ここで初めて増し締めして完全に固定します。

最後に、シートベルトのカプラーを差し込んで、ベルトの着脱でメーター内のランプが点灯・消灯する事を確認しておきましょう。

今回の場合はシートベルトのバックル単品を別で用意したので写真の様な差し込みとなっていますが、シートに付いている物を再利用する場合は、集合カプラーをそのまま元通りに接続すればOKです。

純正シートにエアバッグが内臓されていたり、シートヒーターなどが付いている場合は、集合カプラーとなっている例では分離が難しい可能性があるため、最近の車だと、どちらにしてもバックル単品を事前に用意しておいた方が良いかもしれませんね。

これでバケットシートが付きました!

最後に座ってみて、レールのスライド状態や座面の角度などを確認しておきましょう。

また、シートにもよりますが座面のクッションが固い場合や、高い、低いと感じる事もあると思います。

例外作業となりますが、クッションがいまいち合わないと感じる場合は、簡単に中身を出し入れできる構造になっている物が多いので、好みに調整してしまいましょう!

単純に中身のスポンジを撤去したり、カットして薄くしたりするのを通称「あんこ抜き」などと呼んで、定番の加工となりますが、逆に中身を追加したり、クッションを柔らかい物や固い物に変更すると言った事も可能なので、もし体に合わない場合は試してみてください。


■実際の激安シートのクオリティは?

今回、実際に買って使ってみた感想です。

あくまでも個人的な意見なども含まれるため、参考として考えて頂ければ幸いです。

まずは質感から評価してみますが、RX-8に使っているブリッド製のバケットシートに比べると、やはり生地の質感は劣ります。

見るからに化繊感が凄いと言うのは、レカロブリッドも同様なのですが、何と言っても粗悪なジャージ生地の様な感じです。

ただ、生地は厚いので、触った感じがややゴワゴワするものの、レカロブリッドに比べて破れ難そうな印象は受けるため、ポジティブに考えるならメリットと思っても良いかもしれません。

もう一点は、ディテールが微妙にダサい(笑)

腰回りや肩のホールド周辺に滑り止めだったり、高負荷の掛かる部分の生地の厚さを変えたりと、色味や生地が異なる部分がありますが、これらの面積や形状、継ぎ方など、何かとりあえずブランド品を模倣してそれっぽくしている感が凄い。

何か良くわからないですが、微妙にデザインがダサいです(笑)

ただ、シートのベースカラーとほぼ同色である事が救いで、じっくり見なければそれ程気にならないかと思います。

また、生地の縫い目や飾りのステッチも荒く、クッションの角の部分など皺が寄っていてもお構いなしに製品として出荷している感じなので、ロットによっては多少の当たりハズレがありそうです。

そしてクッションは大変有り難い事に、やわらかいスポンジがパンパンに圧縮してたっぷり押し込んであるので、座り心地がとにかく硬い!

私は中身を取り出して、カッターで2/3程スライスしてボリュームを減らしました。

ただ、この辺りは有名メーカー品と厳しく比較した場合の話なので、シートの性能に直結する部分ではなく、値段などを考慮すると十分なクオリティは有していると思います。

ぶっちゃけ、ダメだこりゃ!ってオチになるのかと思っていましたが、お世辞は抜きにして十分だと思いますよ。

そして肝心な、バケットシートとしての実用性について。

実際に座って、ぶっ壊すつもりでシートに背中で思いっきり体当たりをしてみます(笑)

20年前に買った粗悪なシートと違って、ブリッドのシートと遜色ないくらいガッチリしてます!

肩のホールドに向かって左右に揺らしてみますが、シェルが捻じれてぐにゃぐにゃ動く様な事もない!

これ、結構しっかりした立派なバケットシートですよ、マジで。

それでは実走行でテストしてみましょう。

車の振動はもろに伝わってきますし、旋回した時の腰から肩にかけてのホールド感は申し分ない。

インフォメーションもしっかりしていますので、車の挙動はしっかり掴めます。

これくらいしっかりしたシートなら、車検適合でFIAの公認なども取れていれば、有名ブランドでなくても全然構わないじゃないかと言うのが率直な意見です。

ただ、この値段を実現しているのが、強度試験や各種公認取得にお金を掛けていないと言う点なのかもしれないので、この辺りをクリアしてくると、やはりメーカー品の様な高価なシートとなってしまう可能性があるかもしれません。

実際、有名なメーカー品でも、スパルコなどは車検に非対応のシートなどがラインナップされていたりしますが、ノーブランド程ではないにしろかなり安価に販売している事からも、色々な試験や公認取得で上乗せされる金額と言うのはバカに出来ない印象ですよね。

言い換えれば、どこのコストを削減しているかと言った問題に過ぎず、安価でも十分な性能を有している商品は存在すると言えるのではないでしょうか。

ノーブランドのバケットシートも、背面のリブ補強入りで高剛性を謳っている物であれば、十分に実用に耐えうる物だと思って良さそうです。