ノーマルのショックから車高調に変更すれば、サイズの違いこそあるが、ほとんどの場合は直巻きスプリングが使用できる。
と言うより、大体の場合はキットになっている事が多く、仮に直巻きでなくても同封されている物を組み立てて使えば、所謂吊るしの仕様で問題なく使用可能だ。
しかし走り込み、セッティングを詰めて行く上では、走るステージや自分の運転スタイルに合わせてスプリングレートを変更する必要が出てくる場合がある。
こんな時に、自分の車高調のスプリング形状が特殊だったり、サイズが限定的だったりすると、かなりセッティングの幅を制限される事になり、試したいレートが使えないと言う事がある。
追記(2019年8月24日)
スプリングの対応内径の変更方法や実例の紹介は「車高調のスプリングの内径を変える方法とは」に記載していますので、興味のある方は合わせてご覧ください。
■RX-8のリアスプリング
RX-8やNCEC型ロードスターなどの場合、リアのアッパーマウントは純正をそのまま使用するキットが多いのだが、これらの車高調キットを使用した場合、主流のID60~70(内径のサイズ)の直巻きスプリングが使えないと言う問題があり、多くのユーザーを悩ませている。
RX-8はアッパーマウント側の受けがφ100となっており、テーパースプリングが使用されるのが一般的だ。
ショックのスプリングシート側の内径は、主流のID65や70となるが、アッパーマウント側をどうにかしないと選択肢が少ないのだ。
例えば、アラゴスタの車高調キットであれば、専用のアッパーマウントを有しており、前後共にID65のスプリングが使える様になっている。
対して、オーリンズの車高調キットは、リアのみ純正のアッパーマウントを使用するので、ID70-100のテーパースプリングが設定される。
ラインナップされているのは、標準の5kg/mmに対して6kg/mmまたは、レートの低い4kg/mmの3種類から選択する事になる。
また、レングス(自由長)が30mm長くなるため、嫌でもプリロードが掛かってしまうが、それを良しとするなら8kg/mmまではどうにか使えると言った感じだ。
その他、社外品となればテインなどからも適合するテーパースプリングが販売されているので、10kmg/mmまではどうにかならない事もない。
ただし、テインのスプリングと、オーリンズ純正のアイバッハでは特性が異なる様で、仮に同レートでも外径や重量が随分違う。
テインのスプリングを使用すると、アッパーマウントの枠から大きくはみ出してしまう問題があり、スプリングの座りが悪い。
ただ、ここまで見れば、それ程レート選択に困らないのでは?と言う気がしなくもない。
何故なら、RX-8やNCロードスターのリアのレバー比はほぼ1と、スプリングレートがそのまま実効レートとなるため、2桁台のハードなスプリングは特に必要性を感じないからだ。
ただ、多くの人が気にしているのはテーパースプリングと直巻きスプリングの特性の差の様で、レートがバリアブルになると言う噂もあるが、巻き径の差は、どちらかと言うと反発に影響が出ると言う話もある。
検証したわけではないので無責任な事は言えないが、直巻き等レートのスプリングの方がダイレクトで、リニアな動きと評価する人も多く、そしてメーカーに関わらず規格スプリングなら何でも使用可能と言うメリットを得ようと、直巻きに対応させたいと考えるユーザーは多い様だ。
■スプリングアダプターを使う
これらの問題を解決する方法として、公式戦のNクラスなどで変更の認められていないアッパーマウントのレギュレーションをクリアする目的で発売されている、スプリングアダプターを使用すると言う手がある。
スプリングアダプターは上下のバネの受け皿に取り付ける、または車高調のスプリングシートに対して、変更されていないアッパーマウント側の内径を合わせる目的で取り付ける。
安価な樹脂製も存在するが、原則として金属製を用いるのが望ましい。
ちなみに、RX-8やNCロードスターの場合は、構造上、リアアッパーマウント内側とショック本体の干渉が問題となるため、内径を絞れず、ID対応ではなくOD(外径)対応となる。
そのため、使用するスプリングアダプターは、使用予定のリアスプリング外径を採寸し、それに対応したサイズで製作する必要があり、ちょっと取っ付き難い印象は否めない。
オーダーメイド、ワンオフと言うと高額な印象を受ける事からも、なかなか手を出し難いと言う人も少なくはないだろう。
しかし、実はそうでもない。
ジムカーナで実績のある、埼玉県の(株)アルファのブランド「RIGID」は有名だ。
リジッドの商品ラインナップ内に、スプリングマウントシートと言う商品名で販売されている。
主にはジムカーナで人気のある車種となるが、なんとRX-8用が存在するので、これを利用しない手はない。
フロント用の品番は「SS-302」となり、ID65に対応する。
リア用の品番は「SS-312」となるが、リアは外径に合わせる必要があり、標準仕様ではOD91まで、特注仕様では最大でOD100までは製作してくれる。
ちなみに、自分がリアに使用しているのはスウィフト製のID70だが、レングス178mm、レート8.0kg/mmではOD94.5となる。
そこで、95mmで製作してもらったが、標準品が9000円に対して特注品は11000円と、大した金額差ではない。
もちろん、左右セットでの価格なので安心して欲しい。
ただし、競技用途で使用される事が多いためか、シーズン前や季節の変わり目など、納品までかなり待たされる事があるので、仕様変更を考えている時はササッと測って、バシッと注文を掛けた方が良い。
加えて、仕様変更用に数種類のアダプタとスプリングを所有しているが、主に使う同じくスウィフト製のID70、レングス152mm、レート10.0kg/mmは95mmアダプタでそのまま使用できる。
極端にサイズが異なり、ガタガタするとか、そもそもスプリングが入らないと言ったサイズでなければ、ある程度は許容して使用可能なので、余裕を持って少し大きめに特注するのもありかもしれない。
■干渉対策を施す
実はRX-8のリアスプリング問題は、単純にスプリングの受け側の問題だけではない。
アラゴスタの様な特殊なアッパーマウントは別にしても、直巻きスプリングの使える専用アッパーマウントを有した車高調キットがないわけではない。
ただ、比べてみるとわかると思うのだが、ストロークを犠牲にしてショック長も非常に短い物や、ショックの径を細くして容量を減らしている物が多く見られる。
これにより、強引に干渉を回避しているわけだが、これは望ましくない。
オーリンズやアラゴスタなどは、ショック長も径も大きく、その辺りを妥協していないのが窺える。
ただし、ここを犠牲にせず、直巻きスプリングを使用するとどうなるのか?
車高の下げ幅や、アライメントのセッティングにもよるが、マルチリンクの構造上、単純な上下運動とはならず、ショックが大きく寝る動きが生じる。
この時、スプリングが一度くの字に撓る事で、ショック本体との干渉とまではいかないにしても、スプリングシートとスプリングの内側が接触する場合がある。
掠る程度と、激しく当たるわけではないので、即座に大きな問題が発生するわけではないのだが、結構大きな音がするのであまり気分の良い物ではない。
実はこれ、後からオーリンズが正式に対応策を発表している様なのだが、自分の場合はショックの付け根、アップライト側にスペーサーを追加した。
車両の標準状態でも元々1枚取り付けられているスペーサーなのだが、これをもう1枚追加する事で、ショックの角度を起こしてやると言う方法を取ったのである。
オーリンズの発表している方法も同じ(厳密には厚いスペーサーに替える)なので、狙いは当たっていると思う。
ストローク時にショックが寝るのであれば、事前に少し起こしておいてやると言うシンプルな発想である。
これらの対策により、余程極端なキャンバーを付けたり、車高を下げ過ぎたりしなければ、まず干渉は起こらなくなる。
どうしてもスプリングアダプターの都合で、何でもかんでもそのまま使えると言う気楽さにはならいものの、かなり選択肢は広がるので、悩んでいる人は是非参考にして欲しい。