昨年の6月にクスコ製の車高調に付属しているブルースプリングの塗装品質に難有りと言う記事を投稿しました。
2023年1月に問題の車高調をマツダ2に取り付け、慣らしの間は悪路など走っていないのに2ヶ月経過後の点検で既に塗装がズタズタになっていると言うもの。
塗装の剥げ方を見る限り直接の原因は飛び石によるものだと思われますが、過去に使用してきた他社製のスプリングではもっと過酷な条件で5年以上使用してもこれ程酷い症状は見た事がないし、飛び石を受け易い場所に使われる前提で設計されるべき部品である事からも、塗装品質まで含めてスプリングの性能ではないかと持論を述べています。
ただ、アタリハズレもあると思うので、たまたまハズレを引いちゃったのかな…とも。
しかし、過去に投稿したブログに「たとえハズレだとしても、品質管理まで含めて商品である」と言うコメントも見られたので、確かにその通りだと思います。
今更遅いですが、もしかするとメーカーに問い合わせたら何らかの保証対応が受けられたのかもしれませんね。。。
さて、今回のレビューについてですが、塗装剥げの記事を投稿してから数ヶ月後に読者の方からお問い合わせがあり、部品を提供する代わりに長期レビューをお願いしたいとの依頼がありました。
提供者のY・Mさんには毎月メールで報告しておりましたが、実際に使用を開始してから約1年が経過したのでみなさんにもお伝えしたいと思います。
■ブルースプリングの耐久性
今回、アッパーマウントのピロにガタが出てきたため、ピロボールの交換作業ついでにスプリングの銘柄も変更する事にしました。
その際に取り外したブルースプリングを観察してみます。
こちらは使用開始から2ヶ月でズタズタになって、更に約3ヶ月後にブログにも投稿したフロントの様子です。
ちなみにリアも同様にズタズタの状態なので、このスプリングは塗装の品質が悪すぎるとコメントしました。
尚、リアの方に関しては今から約1年前に、読者のY・Mさんよりご提供頂いた新品のブルースプリングに交換しています。
レートやレングスなども同じ物ですが、恐らく製造時期が異なります。
私は2022年の12月末に届いた車高調に付属していた物を使用していましたが、今回提供を受けた物は更に1年程前にY・Mさんが購入した車高調に付属していた物だそうで、取り付けの時点で他社製のスプリングに交換したため未使用のまま保管していた物だとか。
実際に取り外した物を確認してみましょう。
こちらがフロントに使用していたブルースプリングです。
フロントは一度も交換していないので、使用期間は約1年10ヶ月となります。
ズタズタになってしまったら諦めもつくので、その後は小石の散らばったワインディングも普通に走り回りますし、工事中の未舗装路でも特に気にする事なく走行していますが、前回記事を投稿した頃に比べて塗装剥がれも増えてはいるものの、それ程悪化はしていない様子。(錆自体も表面の錆色程度で、腐食と言うほど酷い症状はなし)
まあ、ここまで剥がれる事自体が問題だとは思いますが、最初の2~3ヶ月程で一気に剥がれて、その後は落ち着いている印象を受けますね。
新品時は塗膜が完全に硬化しておらず、落ち着くまでに時間が掛かるとか…?
そんなわけないよねえ。。。
対して、提供を受けたリア側のブルースプリングなのですが、これは「返却不要」「むしろズタズタにするつもりで使って!」と仰っていたので、遠慮なく約1年使わせて頂きました。
街乗りはもちろん、ワインディングや落ち葉などの多い林道、工事中の道路も気を遣う事無く走行していますし、ミニサーキットも何度か走らせていますが、これ、ピカピカですよね…?
取り外した直後は泥汚れでくすんでいましたし、両端の線間密着する部分は塗装面のキズや剥がれも見られますが、洗ってから拭き上げたらこの通り、目立ったダメージは見られません。
ちなみに、周りでブルースプリングを使っている数名の方にも話を伺っていますが、みんな塗装剥がれは起きていないと言うので、やはり私が使用した物がたまたまハズレだった可能性が高そうです。
これらの結果から判断すると、僅か2ヶ月で発生した塗装剥がれは初期不良と言えそうで、たまたま不良品が…って前後の4本とも同じ症状なんて落雷に遭うより遥かに低い確率でしょうから、製造ロット全体の問題である疑いが濃厚でしょう。
不良品の可能性が高い以上、もし同様の症状が発生した場合は早い内にメーカーに問い合わせてみる事をおすすめします。
ダメ元でも、交換などの対応が受けられたらラッキーですしね(笑)
余談ですが、数年前に自動車メーカーのスズキは一部の車種で「スプリングの塗装が剥がれる」と言う不具合をリコールとして届け出ている例があります。
スズキの説明では、スプリングの塗装が剥がれると”長期的に見ると”錆腐食によってスプリングが折れ、走行不能になる可能性があると言う事で交換対応をしています。
長い事乗っていたらスプリングの塗装くらい多少は剥がれてくると思うので、あくまでも明らかな塗装の不具合で早い時期からバリバリ剥がれる様な症状の事だと思いますが、そもそも簡単に塗装が剥がれてはまずい重要部品である事を示唆した届け出と言えますよね。
社外品だからと言って簡単に塗装が剥がれて良い部品ではないので、今後もより一層品質管理に力を入れて頂ける事を願います。
■ブルースプリングのフィーリング
過去に投稿している記事の中でも何度か”同レート、同サイズ”でも銘柄によって乗り心地や手応えなど、フィーリングに差があると言う話をしています。
先日投稿したスプリングの音で判断すると言うネタの中でも少し詳しく書いていますが、材質や設計によって”傾向”があると言うのは事実です。
ただ、正反対のタイプなら感じ取り易いのですが、同じコンセプトで作られた”同タイプ”のスプリング同士では大きな違いを感じない事が多いです。
クスコ製のブルースプリングを大別すると、メーカーのカタログ説明にもありますが、太めの線を長く巻いた”低反発”タイプに属するので、ハイパコやアイバッハなどのスプリングに近いフィーリングの物だと予想出来ます。
実際に使用してみると、過去に愛用していたスウィフトの”高反発”タイプとは異なり、分かり易い部分ではハイレートのわりに乗り心地が良い、かと言ってハンドルを切った時の反応など鈍いのかと言えば、体感で鈍いと感じるほど大きな差はない印象で、メリットの方が大きい気がします。
ただ、スウィフトのスプリングになると、ブレーキを放した途端にフロントに載っていた荷重が抜ける様な印象(ハイパコなどに比べて)を受ける反面、S字などの切り替えしでは一瞬のタイムラグもなく即座に反応して向きを変える様な鋭さはあるので、車のタイプやコースレイアウトによってはどちらのタイプが優れているとも言えない。
乗り心地の面でも、ステアリングレスポンスなどの手応えに於いても、特に不満のないブルースプリングでしたが、今回銘柄変更で見掛け上は”同タイプの設計”であるKYBのスプリングに交換したところ、単なる色の好みで交換しただけのつもりが思わぬ変化がありました。
減衰力などは一切触れていないので、たまたま現在の減衰設定とKYBのスプリング特性がドンピシャ良い具合にハマっただけなのか、同サイズ・同レートのスプリングですが明らかな差を感じるくらい乗り心地が良くなりました(笑)
一応、ブルースプリングのレングスはmm単位で150mmの設定となっているのに対し、KYBのスプリングはインチ単位で6インチ(約152mm)と差があって、巻きの長さもその分僅かにKYBの方が長い。
その僅かな差が効いていると言う可能性もあります。
フロントに至っては、単純な乗り心地の差(全体的にソフトに感じる事に加え、細かい振動なども激減している)はもちろんですが、ハンドリングが鈍くなった印象はなく、むしろブルースプリングよりもクイックな印象さえ受けます。
もちろんフィーリングに対してはそんな気がするだけかもしれないので、参考程度に考えて頂きたいのですが、乗り心地については明らかに違うので、多くの人が違いに気付く可能性は高いです。
リアについては、通常は乗り心地に直結するとも言われるリアの跳ねる感覚も、実のところFFでセッティングしているとFRと違って普通に乗っている分には良くわからない部分が多い。
コーナーリングなどのリアの動きについてはセッティングの余地を感じても、乗り心地の面では人でも乗せていない限り意外にも欠点に気付かない。
以前、娘を後部座席に乗せて走行していたところ、段差で飛び上がって天井に頭をぶつけると言う事が何度かあって、リアが思った以上に跳ねている事に気付いたのですが、前方の座席に座っていると乗り心地の悪さをほとんど感じていなかったんですよね。
そして今回、リアのスプリングもKYBに変更してみたところ、なんとなくソフトになった印象は受けても大きな違いはないと思っていたのに、同じ道路を走っていても後部座席の人が天井に頭をぶつける事がなくなったのである(笑)
この差は結構大きい。
スプリングを交換した事など知らないはずなのに「なんだか乗り心地が良くなったね」と言うので、運転しなくても違いに気付く程度の差がある事は明らかです。
クスコのブルースプリングは”低反発”を売りにしているので、実際に使ってみると高価なハイパコには及ばない印象を受けるものの、確かにマイルドで乗り心地も良いタイプである事がわかります。
しかし、遥かに価格が安くても同等かそれ以上に乗り心地の良いスプリングが存在するのも事実であると言うのが、今回のスプリング交換で感じた結論です。
そして何より、KYBのスプリングは過去にも使った事があるが、塗装剥げのトラブルも全くないしね(笑)
KYBのスプリングは低反発と謳っている商品ではないものの、見掛け上の設計からはブルースプリングと同タイプである事は良くわかるので、跳ね難さ、乗り心地を性能と捉えて判断するならば、ブルースプリングよりKYBのスプリングの方が高性能と言えるのかな?と。
所詮は素人の個人的な意見を述べたレビューなので、この2社に限らず、複数の銘柄を試せる環境にあるなら同レート・同サイズのスプリングを何度も交換してみて好みのフィーリングを探してみてください。
同じ様に見えても、結構違うもんですよ。
最後になりましたが、耐久性レビューのために部品を提供してくださった読者のY・Mさん、ご協力ありがとうございました!
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