まず始めに、今回の記事はさすがに気軽には”おすすめは出来ない”ので、対策の一例として参考程度にご覧ください。

過去にNDロードスターに15インチのTE37Vは履けるのかと言う記事で、ブレーキキャリパーとの干渉回避にホイールスペーサーを使用する方法を紹介しています。

しかし、可能であればスペーサーなしで直履き出来るに越した事はありませんし、セッティングの観点から見ても、スペーサー付きが標準となる仕様では外すと言う選択肢がないのに対し、直履きの場合は必要に応じてスペーサーの有無を選べると言う強みもあります。(ホイールスペーサーの効果についてはこちらの記事を参照)

NDロードスターに15インチのTE37Vを直接履かせる場合、一部のサイズを除きブレーキキャリパーのサポートブラケットとホイールが干渉してしまいますが、スペーサーを使わずに直履きを可能とする方法はあるのでしょうか?

今回は、ちょっと際どい部分もありますが、実際にその方法を試してみたいと思います。

◆キャリパーを加工する前に…

◆干渉する位置の確認方法

◆キャリパーサポートの切削加工

◆直履きの仕上がりは?

■キャリパーを加工する前に…

NDロードスターにTE37Vの直履きを試みると、一部のサイズを除きブレーキキャリパーのサポートブラケットと干渉します。(今回の例では15インチの7.5J +25)

それを回避するためには前述したホイールスペーサーを併用するか、キャリパーサポートの干渉部分を削るかの2択となるわけです。

しかし、重要な保安部品となるブレーキ周りの加工は保安基準上の問題はないのでしょうか?

これが一番気になる部分ですが、保安基準の制動装置の項を確認すると、主には制動力が判定基準を満たしている条件の他、社外品や他車のキャリパー流用については性能証明が必要だったり、一部が損傷しても容易に機能を失わない事が求められたりと、やや曖昧な条件こそあるものの、摺動部を除きブレーキ周辺部品の”加工”そのものについて触れている記述は見られません。

ネット上でキャリパーの加工について検索してみると、少数ながら民間の指定工場や一部のディーラーでさえ「ホイールと干渉した部分を削ったぜえ!」と、派手に削ったキャリパーの写真を堂々とブログに掲載している例も見られるので、特に問題はないと考えても良いのでしょうか?

法律と言うのは解釈の問題もあるので、書いていないから大丈夫とも言い難いのですが、実際に加工してはダメなのか?と確認を取ったところ、加工と広義に言えば、キャリパー塗装に伴うサンドペーパーによる足付け作業や梨地を整える研磨も厳密に言えば”切削加工”に当たりますし、ディーラーでも普通に受け付けてくれるキャリパーペイントさえもブレーキの加工と見なされるそうですが、2023年11月現在、これらの”加工”を直接禁止する法律はないそうです。

では、仮にキャリパーの形が変わっちゃうくらいガンガン削っちゃっても法的には問題ないわけ?

…と言うと、そう言うわけでもなく、間接的に前述した”損傷しても容易に機能を失わない事”と言う条件が参照される場合があるとの事。

どう言う事かと言うと、これはサポートブラケットを切断してしまうとか、キャリパー本体に穴を開けたり、形状や構造が変わっているなど明らかに機能や強度に大きな影響があると思われる加工(損傷)が見られる場合に、検査員の判断によって指摘されたり、強度証明を求められる場合があると言う事らしい。

んで、通常はロゴやバリを削り取ったり、干渉部分を少々削る程度では問題ないとされる場合が多い様ですが、明確な基準があるわけではないので、あくまでも現場の検査員の判断次第となり、どれくらいまでなら大丈夫と言い切れるものではないそう。(厳しい検査員だったり、横暴な態度で機嫌を損ねたりすれば、極端にはただ色を塗っただけでもNGと言われる可能性が0ではないと言う事)

と言う事で、少々際どいですがキャリパーサポートの切削加工は常識の範囲内なら法的には問題ないが、安全性も考慮すると当然削らないに越した事はないので、ここから先は各自の判断で慎重に検討してください。

もちろん、予備部品を持っていれば、万が一車検時に指摘を受けても原状復帰は出来ますが、いずれにせよ最小限の加工に留める事を念頭に置きましょう。

保安基準上の問題はなくても、やはりブレーキを削るのは不安…と言う方は、スペーサーで解決する方法もありますので、用途や好みに応じて選択してください。


■干渉する位置の確認方法

TE37Vがキャリパーサポートに干渉すると言う事はわかっても、実際にどの辺りがどれくらい干渉しているのか確認せずに削るのはまずいです。

当然ですが、まずは干渉位置を確認してみましょう。

実際にホイールを履かせた状態で確認しようと思っても、キャリパーがスポークなどの裏側に隠れてしまって直接干渉位置を確認するのは困難ですよね。

ちなみに、フロントは直履きしても干渉は僅かなので、ホイールナットの増し締めまでしても手でホイールを回す事は可能です。

対してリアは直履きするとキャリパーサポートに思いっきり当たるので、ホイールの着座面がハブに密着せず、ナットの増し締めさえ出来ません。

リアは5mmのホイールスペーサーを使えば干渉が回避出来ますが、それでは干渉位置のチェックが出来ないので、まずは3mmのスペーサーを使用してホイールを取り付けてみましょう。

3mmスペーサーを使用すれば、ホイールナットの増し締め後も手で回せる程度の軽い干渉となりますので、キャリパーサポートにマスキングテープを貼り付け、手でホイールを少し回してやります。

すると、赤丸で示した通り、干渉している部分のテープが削れているのが確認出来ると思います。

これが干渉位置です。

リアはちょうどキャリパーサポートの中央が干渉しているのがわかりました。

フロント側はホイールスペーサーを使用する必要はありませんが、リアと同様にキャリパーサポートにマスキングテープを貼り付けてからホイールを取り付け、手で少し回してやりましょう。

一見するとフロント側は結構余裕があって全く干渉していない様に見えるのですが、どうも下側の角が僅かに触れる様です。

これは左右とも同じ位置が干渉しているので、個体差やキャリパーの取り付け状態が問題ではなく、そもそもキャリパーがハブに対して微妙に傾いた構造となっているのでしょうね。

前後共に干渉する位置が確認出来たら、ここを中心に切削加工を行います。

少し削ったら再びキャリパーサポートを取り付けて、同様の干渉チェックを繰り返し、干渉がなくなるまで削ると言う面倒で地味な作業となります。

ちなみに、ホイール側はどの辺りが干渉しているのかと言うと、こんな感じで塗装面が擦れる程度の軽いものであり、下地を貫通して金属部まで削ってしまう様な当たり方ではないので、中には気にせず履かせてしまう人もいるみたいですが、熱による膨張も考慮するとさすがに対策せずに履くとダメージが大きくなるのは確実でしょう。

尚、RSやNR-Aなどの大径ブレーキ装着車の場合は、キャリパーサポートがホイールのセンター付近に干渉するのではなく、キャリパー本体がリムの内側に当たる場合があるので、ホイールスペーサーで回避出来ない場合はキャリパー本体の角を削る必要があります。


■キャリパーサポートの切削加工

干渉位置がわかったので、キャリパーの切削加工を始めたいと思います。

赤丸の位置が干渉している部分で、ここを中心に左右3cm程の幅に、切削の深さとしては2~3mm削る事になると思います。

必要なら削る範囲を油性ペンなどで塗っておいても良いですが、削り過ぎにだけ注意しておけばそれ程シビアにならなくても大丈夫でしょう。

車に取り付けたまま削る人もいる様ですが、キャリパーの着脱自体はブレーキパッドの交換が出来る程度のスキルさえあれば難しい事ではないので、取り外してから作業する事をおすすめします。

分解して作業台の上で削る方が楽で仕上がりも良いと言う作業性のメリットもありますが、後から錆止めの塗装をする事や、何より周辺部品のブレーキローターハブボルトを誤って傷つけてしまう恐れもあるので、車に取り付けたまま作業するのはおすすめ出来ません。

ただ、キャリパー本体の角を削る場合はそのままでも問題なく作業出来る場合もありますので、必要に応じて判断しましょう。

キャリパーサポートの材質は鋳鉄ですが、これを棒ヤスリサンドペーパーで削るのは大変…と言うより無謀なので、電動工具を使用します。

削る範囲や形状によって最適な工具は異なると思いますが、ベルトサンダーディスクグラインダーを用意しておくと良いでしょう。(安全のために保護メガネ防塵マスクの着用を推奨します)

車のメンテナンスではグラインダーなどまず使う機会はないので安物で十分だと思いますが、万が一砥石が外れて飛んだりすると大ケガに繋がる恐れがありますので、国内メーカーか、それなりに名前を良く聞くメーカーを選ぶ事をオススメします。

今回私が用意したのは、安価な家庭向け電動工具を多数ラインナップしている高儀(ブランド名EARTH MAN)ディスクグラインダー(DGR-110SC)と交換用の鉄鋼用砥石ですが、鉄鋼用の砥石は本体に1枚付属しており、思った程摩耗はしない様なので替えは無理に買わなくても良さそうです。

安価ですが、回転速度の調整機能まで付いているので、回転を抑えて作業すれば不慣れな素人が扱っても削れ過ぎる心配も少なく失敗し難いですよ♪

それでは本番の切削加工を始めましょう!

まず、ディスクグラインダー使用時の注意ですが、保護メガネマスクを着用する事と、砥石の回転方向に注意してください。

保護カバーに回転方向が書いてありますが、時計回りに回転するので、砥石は中央よりなるべく”右側を使用する”様に意識しておきます。

回転速度を抑えていればそれ程強く弾かれる事はないのですが、中央から左よりでは、万が一引っ掛かって弾かれた際に反動でグラインダーが自分の方に飛んでくる恐れがあり大変危険です。

削り方自体は単純に”当てる”だけですが、回転する砥石の”平らになっている部分”を対象物へ触れさせて、削りたい部分の表面を少し広めに撫でる様に削っていきます。

砥石の角や側面を使用したり強く押し付ける様な当て方をすると、削れ過ぎたり切削面がガタガタになって見栄えが悪くなってしまうので、力加減は道具の自重で乗っけるくらいのイメージで少しずつ、浅めに少し広い範囲を往復して慎重に削りましょう。

リアの方はそれなりに削らなければならないので、とりあえずざっくりと荒削りを済ませたら一度車に取り付けて、ホイールスペーサーなしでホイールが直履き出来るまで干渉チェックを繰り返しましょう。

この時点では多少削った部分が波打っていても気にしなくて大丈夫です。

切削面の形を綺麗に整えるのは最後の仕上げとなります。

少し削れば3mmスペーサーでは干渉しなくなりますが、写真の状態ではまだまだ直履きでは干渉が起こる様なので、干渉位置を中心にもう少し削っていきます。

この作業を何度か繰り返して干渉しなくなった事が確認出来たら、最後に鉄工用の棒ヤスリでバリを取り、切削面の形を整えておきましょう。

鋳鉄なので錆びても内部まで腐食は起こり難いですが、錆びたブレーキでは見栄えが悪くなるので、加工後の仕上げには必ず塗装をしておきましょう!

ガイドピンとダストブーツに塗料が付着しない様にマスキングテープを巻き、パーツクリーナーで切削部分の周辺を脱脂洗浄します。(キャリパーサポートを丸ごと塗り直す場合は全体を洗浄しましょう)

使用する塗料はキャリパー用ペイントでなくても耐熱塗料なら何でも構いませんが、特にこだわりがなければ純正のキャリパー色と近いKUREの耐熱ペイントコート(シルバー)がおすすめ。

塗り直すなら、同じKUREの耐熱ペイントコートには艶消しブラックのラインナップもありますし、他のメーカーには鮮やかな色が用意されていたりしますが、シルバー以外の色を塗るならキャリパー本体も含めて全部塗り直さなきゃ見た目のバランスが悪くなるので、色変えするならキャリパーのO/H時の方が良いでしょう(笑)

天候や気温にもよりますが、薄塗りすれば塗料自体は5分程度で触れる程度には乾燥しますので、3~4回程度重ね塗りして、見た目の斑が目立たない程度に整えておけばOKです。

耐熱塗料なので、焼き入れはしばらく走らせている内にブレーキの発熱で勝手に完了しますが、気になる場合はヒートガンなどで10~15分程度加熱してやれば大丈夫でしょう。

切削部分の形を整え、塗装まで完了したら車に取り付けて最終確認を行います。

ご覧の通り、ホイールスペーサーを使わずに直履きしていますが、キャリパーサポートとホイールのクリアランスが十分に確保出来ているのがわかると思います。

実測で2.4mm程のクリアランスとなっています。

フロント側のキャリパーサポートは、干渉していた部分の角をディスクグラインダーで2~3回軽く撫でてやる程度で干渉しなくなるので、あまり削らなくても大丈夫。

左右で見た目のバランスが気になる場合は、アーチ状の部分を均等に撫でて削っておけば良いでしょう。

リアと同様に切削後の干渉チェックが問題なければ、棒ヤスリでバリを落とし、塗装まで済ませて取り付けます。

こちらもホイールとのクリアランスは実測で2mm程度に調整しました。

ちなみに、使用した耐熱塗料はKUREの耐熱ペイントコート(シルバー)ですが、塗装後は塗っていない部分に比べて明るいシルバーに見えるものの、少し走っている内に熱によって艶感も落ち着き、ブレーキダストで丁度良い感じに汚れて目立たなくなってきます(笑)

いずれにせよ、ホイールまで取り付けた状態では全く違和感は出ないので、よほど神経質でなければ部分塗装でも気にならないと思いますよ。

昔から初回キャリパーO/Hの度に愛用している耐熱塗料ですが、色褪せも少なく、10年程乗っても剥がれた事はないので、耐久性の面でもおすすめです。


■直履きの仕上がりは?

無事に干渉しなくなり、遂にNDロードスターへRAYS Volk Racing・TE37Vを直履きする事に成功しました!

…が、見た目の変化はどうなのか?と言うと、ホイールスペーサーを使用した時に比べて大きな差はありません(笑)

当然ですが、サイドビューに至ってはホイールスペーサーの有無による違いなど全くわからない。

同じTE37Vにスペーサーを併用して履かせているNDロードスターを見て、密かにほくそ笑むくらいの楽しみしかないのである。

しかし、TE37Vを履いたロードスターは多そうな印象があるだけで、実は大勢集まるイベントにでも足を運ばない限り、街では全くと言って良い程見掛ける機会がない(笑)

ツラの具合に関しては、最低限必要となるホイールスペーサーのサイズが、フロント3mm、リアは5mmとなるので、スペーサーの厚さ分引っ込む。

それでも7.5J+25なので十分ツライチ感はあるが、スペーサーなしなら辛うじてフェンダーに収まっているかな?くらいの印象になります。

まあ、実際にはこれでも際どくアウトな気がするので、サーキットを走るユーザーでなければわざわざ直履きするメリットはないかもしれない。

強いて言えば、例えしっかりしたメーカーだろうと1mmであろうと、スペーサーは安全面での不安要素となる事は間違いないので、使用しないに越した事はないですよね。

そう言う意味では、直接履けると言う安心感は得られるかもしれない。

現に私は、いくら入念にホイールナットの走行前点検をしても、リアの5mmスペーサーで高負荷を掛けるのが心配でサーキットでの使用を控えていたので、今後は気にせずガンガン使用できます♪

同じ様にスペーサー併用で不安を感じていた人は、1つの選択肢としてキャリパーサポートの切削加工を検討してみては如何でしょうか。

ただし、冒頭でも言った通り”おすすめ”はしませんので、くれぐれも慎重にご判断ください。