NDロードスターに乗り始めて、もうすぐ1年です。

まだ大して乗っていない気がするのに、1年点検の案内が来て気付きましたが、時間が経つのは早いもんですね~(笑)

超カッコイイ私のNDロードスター(笑)

既に自分の中ではある程度仕上がった手応えはあるので、微調整の段階に入っていますが、細かい部分に活かしたい利点や、スポイルしたい弱点と感じる部分があります。

まあ、何の車にしろ100点満点の完璧な物を作るのは極めて困難な話なので、色々なシチュエーションでデータ収集しながら、車高のバランスや減衰力を調整したり、タイヤの変更やコースによってはスプリングスタビライザの変更でバランスを取ったりなんて事をやるわけですが、目を瞑れるレベルの小さな不満なら、テクニックでカバーするか減衰調整程度でオールラウンドに使える80点くらいの万能型セッティングで納得するのが、我々の様に趣味でやってるアマチュアにはベストと言えるかもしれません。

1年間乗って、十分にNDロードスターの動きは理解したので、後程ロードスターがどんな車なのか紹介記事を書きたいと思いますが、今日は現状に至るまでのセッティングの考え方や、残っている不満などについてお話しようと思います。

走るステージやカテゴリ、ドライバーのクセなどで異なる部分も多いと思いますので、ジムカーナ~ミニサーキットに特化した話だと思って参考程度にご覧ください。

現状で乗り心地が悪いわけでもなく、むしろ快適ですが、街乗りやワインディングでのドライブは一切考慮していませんのでご了承ください。

◆NDロードスターは演出過剰?

◆進入時の前傾姿勢を抑える

◆クリップから立ち上がりの動きは要検討

■NDロードスターは演出過剰?

これ、結構多くの人が口を揃えて同じコメントをするのですが、ノーマルと言えどNDロードスターはスポーツカーのわりにロールが過剰ではないかと言う話。

ご存知の通り、ロール(ローリング)とは旋回中に発生する車の傾きの事で、当然どんな車にも発生する自然な動きです。

ロールしなければ車は曲がらないので、いくら不快に感じてもこれを完全に消す様なセッティングでは限界が下がるだけでメリットはありません。

とは言え、ロールが大き過ぎると比例してロールスピードが遅くなる傾向にあり、ステアリングのレスポンスやダイレクト感、S字などの切り返しで鈍くなる傾向があるのですが、ではNDロードスターが切り返しで鈍いのかと言うとそうでもない(笑)

RX-8アクセラと比べると、異常な程クイックです。

ただ、この動きは”人馬一体”と謳っているだけあって、低い速度域でも車を操ってる感を演出した初心者向きの挙動と言った感じで、何も考えずテキトーにハンドルを切っても当然の様に曲がります。

しかし、それはあくまでも常識的な速度域の話であって限界はそれ程高くはないので、過信して調子に乗ると痛い目に遭う恐れがあるので注意。

特に気になるのは単純な左右のロールではなく、対角に働く”ダイアゴナルロール”ってヤツです。

参考写真(ノーマルショックではありません)で示す通り、ブレーキング時に発生するピッチング(前傾姿勢)と旋回中に発生するロール(左右傾斜)が同時に発生するシチュエーションとして、ターンインのタイミングなどがあります。

この際に、フロント外側のタイヤに最も荷重が乗り、その対角に位置するリア内側の荷重が抜けて捻じれる様に傾く動きがダイアゴナルロール。

この動きもごく自然な動きなので、当然どんな車でも発生するし、悪い事ではありませんが、これが”過剰に起きるとどうなるのか?”と言うのが上の写真で確認出来る通り、リアが完全に浮くと言う最悪のパターンです(笑)

ストロークの長いノーマルの足で完全に浮くと言うシチュエーションは稀ですが、思いっきり持ち上がって荷重が抜ける事に違いはありません。

足が良く動くと言うメリットが、シチュエーションによってはそのままデメリットとして返ってくるわけです。

例え短時間でも一時的に3輪走行の状態となり、リアは外側のタイヤだけに負担が掛かるので、早い話、このタイミングで強いオーバーステアの挙動が発生し易い。

この動きが控え目に”メリットとして働いている内は”ワインディングなどをスイスイ走らせている際に、初心者でもアクセルを緩めてハンドルを切れば異常なほど曲がる → ロードスターは良く曲がると言う構図が出来上がるわけですが、過剰過ぎるためか最新のアップデートでKPCと言うリアのアンチリフト制御が追加されて安定性が増しました。

前期から乗り換えた方の話では、制御をONにしている間はリアの不穏な気配もなくなり、気持ちよく走れるそうで、やはりリアの過剰な動きは好ましくないって回答なのかも。

ただ、この制御もDSCをOFFにすると同時にKPCの制御も停止するので、ボタン1つで”素の動き”を感じる事は出来ます。

その素の状態でスピードを出してコーナーを曲がるとどうなるのか?って言うのが、慣らしを終えて初めてサーキットに持ち込んだ時に感じた最大の弱点です。

厳密には慣らし運転の時点でリアから伝わってくる不穏な動きに嫌な予感はしていましたが、KPCが付いていないモデルでもDSC制御が働いていればそうそう滑り出す事はないので危険はありません。

しかし、それらの電子制御を切った途端に勝手にドリフトを開始する様な危うい挙動が現れます(笑)

不安定な挙動の理由に違いはあれど、歴代のロードスターもリアの限界が低く、中級〜上級者が走らせるとあっさり滑り出してしまい、ノーマルのバランスのままでは速く走らせるには不向きと言う意見は多く、ND型も「ヒラヒラ感」などと言っている演出が仇になっている気がします。

滑っても動きは分かりやすいし、車は軽いし、アクセルとハンドルだけで挙動を自在にコントロールできると言うおもちゃ感覚の楽しさはあるのですが、速く走ろうと思ったらもっと安定してくれないと都合が悪いのです。

もちろん進入時のブレーキングを詰め過ぎない様に調整して、ターンインの過剰なアクションを抑える様に運転すれば安定はしますが、ノロノロとコーナーリングをしても仕方がないので、過剰演出になっている足の動きをもう少し抑えて、進入速度を保てる様に調整してみましょう。


■進入時の前傾姿勢を抑える

どちらにしてもスポーツラジアル~Sタイヤなどのハイグリップタイヤを履かせて走る事を考慮すると、前後共にノーマルと比べてスプリングレートを上げるのは通常の流れです。

レートを上げれば、過剰なロールもピッチも自ずと抑えられますね。

早々と車高調を導入して車高バランスの調整や、いくつかのスプリングレートを試してデータ収集を開始です。

まずはオーリンズの吊るしのレートでF9kgf/mm・R4kgf/mmとなっていますが、レバー比を考慮すると前後のレートバランスはこんなもんかな?と言った感じではあります。

過去に乗ったNB8Cと車重も近いので、レバー比を考慮した実効レートで見ると、このスプリングレートでも若干固いくらいではないか?と思ったため、そのまま吊るしで走らせてみる事にしたのですが…。

事前に、NDロードスターはボディ剛性も上がっていて、固いバネでも思ったより良く動くとアドバイスを貰っていました。

実際に走らせてみるとボディ剛性が高いのか、足回りの構造の関係なのかは定かではありませんが、確かにノーマル比で見ても結構レートが上がっているはずなのに良く動きます。

写真で見ると、レートのわりにはしっかりロールして、適度な感じで良いじゃない♪って思うでしょう?

これ、純正のノーマルタイヤなんですよね(笑)

ノーマルタイヤで適度なロールとなっていては、ここにSタイヤを履かせた場合にどうなるかはご想像の通りで、これでは柔らか過ぎます。

思った以上に良く動くので、確かにもっと固いスプリングでも良さそうです。

って事で、手持ちのスプリングを掻き集めて色々と試してみたのですが、車が軽くて変化が分かりやすいためか、オマケで面白い事にも気が付きます。

良く”理論上”語られるスプリングの特性に於いて、同じレートでも自由長の変化や材質・巻き数(主にメーカー毎の特徴として)でフィーリングが変わると言う話です。

線形が太くて全長の長いスプリングより、線形が細くて全長の短いスプリングの方が弾きが速くてクイックな反面跳ねやすいとか、そんな類の話ですが、実際に短時間に比較する様な事って滅多にないと思うので、本当に動きや体感として変化を感じるレベルの話なのかどうか疑問に思うでしょう?

これ、本当に結構違うんです。

正直、同銘柄の同レートで1インチ伸ばしてみた程度ではハッキリとした違いまでは良くわからないものの、クイックと言われるスウィフトと、マイルドと言われるハイパコの同じレートを比べてみると結構違うのがわかります。

初期舵角の領域では確かにスウィフトの方がクイックに反応する印象を受けるのですが、クリップに向かって舵を切り足して行く様なシチュエーションで鈍い気がします。

対してハイパコは初期の反応は鈍い気がするものの、旋回中に舵を切ると良くも悪くも鋭く反応する。

言い換えれば、むしろマイルドなのはスウィフトの方なのでは?と言った感じですが、インフォメーションが希薄とも言えるかもしれませんね。

好みもあると思うのでどちらが良いとは言い難いですが、私は今までスウィフト派でしたが、この特性から今回はハイパコを選択する事にしました。

話が逸れましたが、スプリングレートを吊るしのレートから更に上げてハイグリップタイヤへ対応させていきます。

この際に、吊るしで得たデータからもっとフロントを固めて進入時の前傾姿勢を抑えて良いと判断し、いくつか試した上で、暫定ですがF16kgf/mm・R6kgf/mmとしました。

また、車高バランスはフロントに対して8mm程リア下がりに。

リアウイングを装備したり、デフの効かせ方によってもレート選択の程度は変わってくると思いますが、フロントを固めて過剰な前傾姿勢を抑えつつ、リアを予め下げておく事で浮き上がりを抑え、進入時のオーバーステアが発生し難い様にと言う狙いですね。

ただ、試乗させてみた内の何人かは「曲がり難い」と言うので、運転のクセやスタイルによってはもっとフロントが柔らかい方が良いのかもしれません。

ロードスター最大の利点はハンドルを切れば素直に反応する気持ちの良いステアフィールや、少々滑ってもコントローラブルでイージードライブの楽しさが味わえる事だと思うので、あまり動きを抑制し過ぎるとロードスターの旨味はゼロになってしまいます。。。

私はこれでもオーバーがキツいと思っているので、突っ込み過ぎなのでしょうか(笑)

ちなみに、この暫定の設定もあくまでスポーツラジアルに合わせた形なので、後にSタイヤを履かせた際には1~2割程度高めのレートに替えてみようと思います。


■クリップから立ち上がりの動きは要検討

現状のセッティングでは、全体的に悪い部分はほとんど無いと感じており、実際にラップタイムもかなり良い。

また、中速~高速コーナーなどのRが緩やかなコースでは若干フロントが固くてギャップで逃げやすいと感じるものの、一番のウィークポイントだと思って警戒しているリアの動きは平穏そのもの。

まあ、アンダー方向にセッティングすればリアが安定するのは当然なのかもしれませんが、ジムカーナ的なタイトなヘアピンコーナーではちょっと話が変わってくる。

進入時の過剰なダイアゴナルロールを嫌って、フロントを固める事により3輪走行を抑えているわけですが、ヘアピンコーナーの進入では一気に旋回Gを立ち上げて外側のタイヤをグリップさせるので、これでも内輪が一瞬浮きます。

このタイミングを逃さず、デフを利かせて外輪だけで小回りさせる様にアクセルでコントロールしているのですが、クリップから立ち上がりに掛けて安定して欲しい場面でも浮きっ放しで立ち上がる事が多々あります。

この状態で軽く滑ると内輪もすぐに接地しますが、その際に外側に掛かっている荷重が抜けてバランスを崩す。

瞬間的にカウンターステアを当ててスピンを回避しても、一瞬のアクセルオフも加えてロスに繋がるわけですから、ここを踏みっぱなしで立ち上がれるとより良い結果に繋がるわけですよ。

まあ、この辺りからは贅沢を言っている領域になるのだと思いますが、リアの減衰を緩めて追従性を上げるとクリップから先で接地はしている様ですが、それを試すと今度は進入時にリアのロール剛性が低下する印象で、コーナーリングの前半にロールオーバーが出易くなります。

ではリアスタビライザを少し太くしてみるか?と考えてみたのですが、基本的にスタビライザは少し限界を下げる事に繋がるので、私が求めている答えとは何か違う気がする。

スタビライザに頼らず、素直にリアのスプリングレートをもう少し上げるか?

単純にレートだけ上げると伸びストロークが少し減りますし、リアは出来るだけアクセルオンで沈む様にしておきたい。

では、フロントのロール剛性を少~しだけ下げるのか?って言う話になると、ある程度決まったレート刻みになっているスプリングレートで調整するには加減が難しいですし、ちょっと細いフロントスタビライザなんて都合の良い物もないわけで。。。

そこで昨年末くらいから迷っているのがフロントのサスタワーバーです(笑)

そもそも、ダブルウィッシュボーン構造にタワーバーの効果はほぼ無いと思っているのですが、マツダ技報などに目を通すと、先代のNCロードスターまではメーカーが剛性確保のために装備していた様で、NDは構造を見直す事で”タワーバーが無くてもNCのタワーバー有りに匹敵する剛性を確保”と言う記述が見られます。

では、無くても十分だけど、付けたら更にフロントの剛性が上がるって認識で良いのでしょうか?

まだ付けていないので寂しいエンジンルームですが、純正タワーバーは黄色の線で示した様に左右のサスタワーとバルクヘッドを接続する構造となります。

サスタワーとバルクヘッドに距離があるので、本当に気休め程度な気もしますが、どうなんでしょう?

参考:MX-5 Global Cup仕様のタワーバー

グローバルレース仕様のタワーバーはガセット補強入りの溶接一体型で、シリンダーヘッドの真上でクロスする構造を取っているので、擬似的にバルクヘッドとの距離を縮めていますから効きそうですけど。

これが標準装備されているNR-A関連の記事でタワーバーの狙いについての記述が見付からなかったため、追加された狙いが何なのか不明ですが、これを付けてフロント側の剛性が上がるなら、理屈上はフロントのスプリングが少し柔らかくなったような…つまりボディ剛性が上がった分、僅かにロール剛性が下がると考えられます。

って事は、現在フロント寄りのバランスをタワーバーで微調整して、リアの接地を促すって考えを試してみる価値はあるのかな?なんて考えているところなのですが、ただロールが増えたとか、あまりにも控え目過ぎて単なる重量増になったなんてオチになりそうで躊躇しています(笑)

タワーバーくらい試してみろよって思うかもしれませんが、ワイパー下のカウルパネルを分解してバルクヘッド側に付いているブラケットを交換したり、ステーを外すためにバッテリーを外したりと、結構着脱作業が面倒なので、ちょっと試しに…なんて気分になれないのが難点なんですよね。

付けてみるかどうするか、もう少しゆっくり考えてみたいと思います。