四代目マツダ・ロードスターが登場してから6年が経過しました。

歴代のモデルチェンジを考慮すると、既にND型もモデル末期に近付いていると思われますが、一足先に兄弟車であるアバルト・124スパイダーは生産終了となりましたね。

どんな車種でも上位グレードや兄弟車種からの部品流用だったり、共通して使用可能な部品の互換性が気になるユーザーは多いと思います。

今回比較する2台も、NDロードスターのハイパフォーマンスバージョンとも見れる124スパイダーからの流用は気になるところですし、逆にロードスターで流行っているパーツを124スパイダーに流用できないかと考える方は多いのでは?

そんな2台の共通点を探りながら、共通して使えるパーツや流用の可否をリストアップしてみたいと思いますが、その前に、124スパイダーのベースとなる、ロードスターと輸出仕様のMX-5に違いはあるのでしょうか?

まずはベース車両の日本仕様と輸出仕様を比較してみましょう。

◆ロードスターとMX-5は何が違う?

◆エリアで異なる装備やオプション

マツダ・ロードスターとアバルト・124スパイダーの互換性を探る >>

■ロードスターとMX-5は何が違う?

NDロードスターと124スパイダーを比較する前に、ちょっと特殊な展開となっているロードスターを確認してみましょう。

まず、NDロードスターは大きく分けて2通りがあり、幌の1.5Lモデルのロードスターと、ハードトップタイプの2.0LモデルとなるロードスターRFですね。

エンジンが違うとか、ルーフ構造が異なると言う点からも容易に想像が出来る通り、その辺りに絡む部品は流用できない、または流用に向かないと言う事はわかると思うのですが、輸出モデルのMX-5には幌でも1.5Lと2.0Lのモデルがあり、ルーフ構造を除いてロードスターRFとほぼ同じです。

左ハンドルのMX-5 US仕様

2.0Lモデルはブレーキサイズや標準の17インチホイールも共通となるので、ソフトトップかハードトップかと言った違い程度。

ハンドルの位置が逆と言う違いもありますが、UK仕様なら日本と同じ右ハンドル仕様となるのでダッシュボードまで共通です。

マツダコネクトが英語表記だったり、メーターがマイル表示、輸出仕様のアンテナは長いと言った違いはありますが、部品は全て互換性があります。

ただし、1.5Lと2.0Lでは完全に異なります。

大きな違いは前後ブレーキのサイズ、デフとそれに伴うプロペラシャフトとドライブシャフトが異なります。

尚、この部分は1.5Lモデルにそのままポン付けで流用可能である点と、日本仕様のRSではブレーキが、NR-Aではブレーキとデフが2.0Lと同じ仕様となっています。

ポン付け流用が困難な部分は単純にエンジン。

そして、それに伴う補機類関係全般と言う事になります。

言い換えれば、その他の部分はほとんどポン付け流用が可能なので、エンジン・制御絡みでなければインテリアやエクステリアはもちろん、駆動系から足回りまでどうにでもなると言うわけです。

ちなみに、詳細は後述しますが124スパイダーには2.0Lモデルの駆動系が使われていたりするので、どちらかと言うとRFないしは輸出仕様の2.0Lがベースと考えた方が近いかもしれません。

そして、それらとエンジン以外が共通しているのが、日本仕様の1.5LモデルにラインナップされているNR-Aとなります。

NR-Aのみ、ブレーキと駆動系が2.0Lと共通で、それらは他の1.5Lモデルにポン付け流用可能ですよ、と言う点だけ覚えておいてください。(デフ流用時はプロペラシャフトとドライブシャフトも一式交換が必要です)

後述する124スパイダーとの比較時は、このNR-Aを基準にお話しします。


■エリアで異なる装備やオプション

前項の情報から言える事は、ロードスターMX-5も同じと言って差支えないと思いますが、各国のニーズや法律などに基いた仕様の違いは多少あるので、異なる点を以下にリストアップしておきます。

国によって法律が異なるため、流用時には注意が必要な物もあります。

各国でオプションが異なる

各国の特徴やニーズに合わせたオプションがラインナップされており、一部日本とは異なります。

例えばトランクルームやフロアのマットに、汚れに強く水洗い可能なゴムマットが用意されていたり、冷蔵庫がオプションで付けられたり、アルミホイールのラインナップが豊富だったり、オイルフィラーキャップ一つにしても日本とはデザインの違う物がいくつか選択可能だったりと言った違いがあります。

比べてみると、明らかに日本仕様より便利だなと感じる物や、作りの良いオプションも存在しますし、その逆もあります(笑)

例えば、オプションのウィンドブロッカーなど、同じアクリルタイプでも輸出仕様の方が穴あけ加工不要で取り付け可能(標準装備のメッシュタイプ同様に気軽に着脱可)な上、しっかりしたフレームも付いていて明らかに高級感があったり、ヘッドライトウォッシャーが選択可能だったりします。

ただ、オプションに関しては販売店や各国のオリジナルも存在するため全ては書ききれませんので、興味のある方は調べてみてください。

また、オプションではありませんがオーナメントの違いや、燃料キャップに注意書きが書かれていたり、オイルフィラーキャップの表示アイコンの違いや指定オイルの粘度が表記されていたりと国毎にいくつかのバージョンが存在しますし、当然ラベルやコーションプレートなどの言語も国毎に異なるので、輸出仕様風の流用カスタムも人気があります。

アンテナ長が異なる(EU仕様)

日本仕様は約40cm、欧州仕様は約55cmとなっています。

互換性がありポン付け交換可能ですが、短くしたがる人はいても長くしたがる人は珍しいですし、理論上、受信する電波の波長によって適切な長さが決まるため長ければ良いと言うわけでもなく、受信感度への影響がどれくらいあるのかは不明。

はたして交換するメリットがあるのか謎です。

サイドマーカー

日本仕様はオプションで前後バンパーに反射板が選択可能ですが、保安基準の都合で点灯不可のため、あくまでも反射板です。

輸出仕様はサイドマーカーが点灯またはウィンカーとして機能する装備があり、日本仕様にそのままポン付け流用可能。

もちろん点灯機能を生かす事も可能ですが、日本仕様にはバンパー裏の専用カプラーがないため、配線加工が必要となります。

ただし、反射板として利用するのは問題ありませんが、点灯させた場合は日本の保安基準上は違反となりますので注意が必要です。

トランクオープンスイッチ(US仕様)

アメリカ仕様には運転席にトランクオープンスイッチが装備されています。

日本仕様ではボンネット開閉レバーの横に四角いフタが付いていますが、この部分にスイッチが付きます。

このスイッチはNCロードスターに装備されていた機能と同じ物で、トランクの開閉スイッチではなくリモコンや開閉ボタンの操作の有効・無効を切り替えるためのスイッチです。

OFFにしているとトランクを開ける事が出来なくなると言う防犯機能。

カプラーの有無は未確認。

熱線付きドアミラー

輸出仕様のドアミラーには結露・凍結対策のヒーターが付いています。

ブラインドスポットモニタリング機能の有無毎に用意されており、鏡面パネルは日本仕様と互換性があります。

ヒーター用配線の有無は未確認。

フロアアンダーパネル(EU仕様)

欧州仕様のみフロント側のフロアアンダーパネルが装備されています。

ミッション後方には黒い樹脂パネルが付いていますが、エンジン下のオイルパンガードと、ミッション下を繋ぐメンバーブレースの間だけぽっかり開いています。

「S」グレードのみネジ穴がなく、その他グレードは共通してボルト穴とクリップ用の穴が存在するため、初めてフロア下を見た時は付け忘れたのかと違和感を感じると思いますが、欧州仕様のみの装備となります。

完全に互換性があり、S及びSE-Lグレードを除くアメリカ仕様、ロードスターRFアバルト・124スパイダー含め全車にポン付け流用可能です。(オイルパンガードとメンバーブレースも同時交換すればS及びSE-Lグレードにも装着可)

リアフォグランプ(EU仕様)

欧州仕様にはリアフォグランプのオプションがあり、定番の流用カスタムとなっています。

また、イギリス仕様のリアフォグはクリアレンズバージョン(赤色点灯)もあり。

バックランプと入れ替えになるためポン付け可能ですが、日本仕様にフォグランプ用の配線はありませんので加工が必要です。

スイッチ及びリレーは欧州仕様の物を流用可能。

保安基準上、リアフォグランプの点灯条件が少々ややこしいので、自作する場合は複数のリレーを使って少々複雑な回路を組む必要があります。

保安基準を満たす点灯条件は以下の通りです。

・ヘッドライト点灯時のみONに出来る構造。(単独で点灯可能な構造はNG)

・ヘッドライト点灯時でもリアフォグのみON/OFF可能である事。(ON/OFFスイッチは独立して機能しなければならない)

・リアフォグ点灯状態でヘッドライトをOFFとした際に連動して消灯し、そのまま再度ヘッドライトを点灯した際に連動して点灯してはならない。(リアフォグはヘッドライト点灯後に、スイッチを操作しなければ点灯しない構造である事)

一見、フロントのフォグランプと同じ様ですが、3番目の条件が意外と厄介ですのでご注意ください。

デイタイムランニングランプ(UK仕様)

通称デイライトは日本仕様のオプションにもラインナップされていますが、イギリス仕様にLEDではなく21Wハロゲンバルブタイプがあります。

カプラーはLEDタイプと共通となっているため、ポン付け流用可能です。

LEDの様な視向性が無いので、どの角度からも同じ様な明るさで見える利点がある反面、LEDを正面から直視した時の様な鮮烈さはありません。

埋め込み式のLEDと異なり、バルブ交換でLED球への交換や色変えなども気軽に出来るので、ファッション性や汎用性は優れるかもしれません。

スロットルバルブ(後期RF及び輸出仕様)

輸出仕様は1.5Lと2.0Lのモデルがあり、前期型は共通してφ55、後期型から2.0Lモデルのスロットルバルブ内径がφ60に拡大されています。

日本仕様でもRFの後期からφ60となっており、この安価な純正ビッグスロットル(社外品や加工品相場の半額程度)を1.5L(前期RF含む)に流用可能です。

ただし、加工品と異なりスロットルボディの厚みが違い、パイプ外径も大きくなるため、後期2.0L用のエアクリーナーBOX、サクションホース、スロットル固定用のボルトも同時交換が必要です。

また、前期型に流用する場合はカプラー形状が異なるため、2018年10月のMC以前のモデルは配線加工または変換ハーネスが必要となります。

スロットルのモーター制御に違いはないため、ECUなどに手を加えなくても交換による警告灯点灯などは発生しませんが、吸気流量が変わるため一度リセット後、アイドリング~走行に於いてしばらくの間は学習走行が必要です。

スタビライザ(RF)

リアスタビライザの装備されていない日本仕様の「S」グレード及び、欧州仕様の「SE-L」には、他グレード全車からポン付け流用可能で、全車共通の中実φ11となっています。

また、フロントスタビライザは重量や重心の差に合わせて、幌モデルが全車中空φ22.2、RFモデルはMTが中空φ22.7(t=2.6)、ATは中空φ22.7(t=2.3)となっています。

これらは外径差によるブッシュ同時交換を伴いますが、全車共通でポン付け流用可。

 

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