NDロードスターが発売されてから随分経ちますので、既にカスタムのバリエーションも豊富で、定番とされるスタイルも見られる様になりました。
ネオクラシック系のホイールで、旧車風のカスタムが似合うのもNDロードスターの魅力の1つですが、ちょっと気になるのがRAYS VolkRacingのTE37Vシリーズ。
このホイールも発売されてから随分経つのに、NDロードスターに履けるとか履けないとか、3mmスペーサーで干渉が回避出来るとか、いやいや5mmは必要だなどなど、どうも情報が不鮮明で安定しないND+TE37Vの組み合わせ。
実際に履けるのか履けないのか、ホイールスペーサーで回避出来るのか、試しに現物を買って試着してみる事にした。
■まずはスペーサーの限界を知ろう
ホイールスペーサーを組み合わせるのはTE37Vを履かせる事に限らず、セッティングとして微調整に用いたり、他のホイールでも干渉を回避するためだったりと、事情や用途は様々でも使用する機会は多々ありますので、そもそもスペーサーは安全なのか、どれくらいまで許容なのか知っておきたいところです。
一般的には5mmまでは大丈夫!なんて言われていますが、何の根拠も無く、なんとなくそれくらいなら大丈夫じゃなかろうかと言ったイメージだけで語っている人も多いのではないでしょうか。
しかしよ~く考えて欲しいのですが、5mmって結構大きいですよ?
ハッキリ言えば、例え1mmだろうがホイールスペーサーなど挟まないに越した事はありません。
当然です。
でも、スペーサーを使う事を前提で話をするなら、どこまでが限界と言えるのか実際に確認してみようではありませんか。
車種によって多少の差はありますが、国産車を例に挙げるとハブから突き出しているボルトの長さは平均して25mm前後となっています。(長い車種、短い車種もあり、一概には言えないので注意)
ハブボルトを部品単体で見た際に車種によって長さがバラバラなのは、ハブのフランジ部の板厚やその上に被せるブレーキディスクのハット部の板厚などが車種によって異なるため。
ハブボルト全長からそれらを差し引いた分が表に突き出しているボルト長と言うわけです。
その部分が大凡25mm前後となっています。
じゃあそこにホイールを取り付けるとどうなるのか?
これもホイールによって差がありますが、ナットホールの座面はどんなに薄い物でも確実に5mm以上はありますし、エンケイや純正ホイールだと平均7~8mmと言ったところです。(マセラティの純正ホイールなど、凄く厚い物もある)
この値を差し引くと、この時点で有効ネジとなるボルトの長さは17mm程しか残らない計算になるわけです。
この様に数値にして考えてみると、凄い力が掛かるはずの場所なのに、思った以上にネジの掛かりが浅いと感じたのではないでしょうか。
ちなみに、17mmの長さにホイールナットを捻じ込んだ場合、日産やスバルなどはネジピッチが1.25mmとなっているので14山弱と言ったところ。
トヨタやマツダなどはピッチが1.5mmなので11山強と言ったところです。
しかし、実際にはボルトやナットの端は不完全で無効なネジ山が存在するため、ざっくりと見積もって1~2山少ない計算となります。
段々冷や汗が出てきましたね(笑)
ここに5mmスペーサーを挟んだ場合、有効なボルト長は一気に5mm減るので残りは大凡12mm。
ピッチ1.25mmなら10山弱、ピッチ1.5mmなら8山しか掛からず、先程言った無効山を数えると、ここから更に2山減るって事です。
今回の例であるロードスターの場合は、僅か6山しか掛かっていないって事になるわけですよ。
数字だけではピンとこないと思うので、実際に目視で確認してみましょう!
こちらは実際にNDロードスターに5mmのスペーサーを取り付け、純正ホイールを装着した際のハブボルトの見え方です。
本当に大丈夫?って不安になる様な見え方ですよコレ(笑)
実測値からの計算上、ボルトは12mm残っていますが、先端は不完全なネジ山なので1山少ない見積りですね。
ちなみに、純正ホイールナットは袋タイプなので締め付けた際の状態は確認出来ませんが、ネジ部の実測を行ったところネジ山が切ってある部分の長さは大凡12mmとなっていました。
純正ナットだと、一応計算上は全てネジ山が掛かる長さは確保出来ているって事になりますね。
袋ナットでは目視確認が出来ないので、貫通ナットを用意しました。
増し締めまでした状態では写真の様な見え方になります。
どうです?この写真を見て5mmスペーサーは安全だ!って自信を持って言える人ってどれくらいいるでしょうか(笑)
こちらの貫通ナットはナット全長が約16mmで、ネジを切ってある部分の長さが約13mmとなっています。
手締めで6山、増し締めまで行うと約7山半ほど掛かりましたが、ナット側はネジ山が1山ほど余り、ネジを切っていない部分には到達していません。
ネジを切っていない部分とは言え、なんとなく引っ込んでいると不安でたまらない見た目ですよね。
無効部分と余ったネジ山分の合計は実測で約3mmとなっているため、大凡13mm締め込んである計算となります。
専門家ではないので判断が難しいところですが、いくつかの参考書に目を通してみると大凡6山掛かっていれば強度は出るそうで、無効なネジ山を考慮した場合、目安としてボルトの直径と同等の長さ締め付けてあれば大凡問題ないと言えるそうです。
ハブボルトのサイズはM12なので、この理屈であれば5mmスペーサーまでなら問題なく使用可能と言う事になります。
とは言え限界ギリギリとなるため、スペーサーを使うとしても3mm以下に留めておいた方が無難と言えるのではないでしょうか。
このボルト長が割を食う分が不安と言う方や、5mmを超えるスペーサーを組み合わせる場合は、ロングハブボルトと貫通ナットを使うのが定番です。(写真のナットは袋ナット)
ロングハブボルトを使用するのは足りないネジ山を補うために延長すると言う単純な理屈ですが、貫通ナットを使用する理由はスペーサーを外した際や長くなり過ぎたボルトを逃がすためです。
ただし、十分なネジ山の掛かりが確保出来たとしても、スペーサーを挟んだ分ナットの掛かる位置が外側に移動する事になるため、ハブボルトやハブに掛かる負荷が増加するので、スペーサーを挟む場合はハブリングを併用して少しでもボルトの負荷を軽減しておいた方が良いかと思います。
■NDロードスターにTE37Vを試着してみる
スペーサーの限界を確認したところで、TE37VがNDロードスターに履けるのかと言う疑問の答えを探ってみましょう。
今回の検証に用いるのはRAYS TE37V、サイズは15インチ7.5J ET25です。
取り付ける車両はND5RC型マツダ・ロードスター、グレードはSスペシャルパッケージ。
同じNDロードスターでも、RS及びNR-Aはブレーキサイズが大きいため未確認となります。
まずフロントに取り付けてみたのですが、一応そのまま取り付けは可能でした。
ただ、クリアランスを確認してみると、写真では端は余裕がある様に見えますが、引っ込んでいる部分の方が際どいです。
この状態でホイールを回してみても干渉はしていない様なのですが、隙間にシクネスゲージを差し込んでみると0.3mmしかありません!
これ、実際に走行させて熱が入ると膨張して思いっきり干渉する恐れがありますし、そもそも真夏の炎天下では何もしなくても干渉する可能性があるってくらいギリギリのクリアランスです。
この日の気温は約22℃で、曇っているので日光でホイールが熱くなるような事もありませんから、たまたま干渉しなかったって可能性もあり…。
屋内に飾るだけならアリですが、実走行を考慮すると3mmスペーサーを使用した方が良さそうですねえ。
リアに至っては文句なく無理です(笑)
ガッツリ当たっているので、そもそもホイールがハブに密着しませんから、走行以前に取り付ける事が出来ません。
そこで、試しに3mmスペーサーを挟んでみたのが上の写真です。
3mmスペーサーを挟めばホイールを取り付ける事は出来ましたが、この状態で試しにホイールを回してみます。
手応えとして特に何かに引っ掛かっている様な抵抗もなく、スムーズに回るのですが、耳を澄まさないと聞こえないくらい小さなシャリシャリ音が…。
ホイールを外して確認してみると…おっと!こりゃ当たってますね(笑)
分かり易い様に写真のコントラストを上げているので激しく削れている様に見えますが、実際のキズは爪も掛からない程浅いキズです。
ソフトタッチながら3mmスペーサー程度では干渉している様なので、これでは走行は不可能です。
つまり、3mmスペーサーで回避出来ると言う噂の回答は「NO」って事になります。
そこで、今度はスペーサーを5mmに変更して再確認してみます。
ご覧の通り、写真ではクリアランスが分かり難いですが、3mmスペーサーを挟んだ写真より余裕がある事はわかりますね。
この状態だと干渉はおきないので、リアは5mmスペーサーを使用すれば装着可能と言う事になります。
実際にスペーサーを併用して履かせてみるとこんな感じ。
前後共にフェンダーとの干渉もありませんがギリギリと言った感じで、アライメントによってはフルストロークした時にフェンダーを曲げてしまう恐れもあるので実走行前に要チェックです。
多少の個体差などもあるとは思いますが、今回の検証結果では、フロントは3mm、リアは5mmのホイールスペーサーを使用する事で、NDロードスターに15インチのTE37Vが履けると言う事がわかりました。
尚、事前に確認した通り、5mmのスペーサーは純正ハブボルトで使用するには限界の厚さとなりますので、トルクレンチを使用して確実に増し締めを行う様に注意してください。
まあ、確実に締めるのはスペーサーを使用しない場合でももちろんの事ですが、掛かっている山がギリギリだと緩み易いのは間違いないです。
ただ、TE37Vはナットホールの座面が実測6mm厚となっているので、NDの純正ホイールに比べて1mmの余裕がありますので、多少マシだとは思いますが…。
NDロードスターにTE37Vを履かせようと考えている方は参考にされてください。