手頃な価格帯のスポーツカーが少なくなった現在、手頃に楽しめるラインナップはスイフトスポーツや86/BRZ、ロードスターなど、かなり限定的になっていますよね。
もちろん価値観も経済力も人それぞれなので、複数台所有したり、500万円1000万円の車でもポンと買って平気でサーキットでガンガン走り回る人もいると思いますが、多くの人はなるべく安くて楽しい車。できれば普段使いも兼ねて利便性も重視したいと考えるのではないかと。
そんな層に流行っているのがコンパクトカーで、代表的な車種ではトヨタ・ヤリスやマツダ・デミオ(マツダ2)などがあります。
最近ではいかにもスポーツカーと言った車でなくとも、思いっきり走らせればどんな車でも楽しいと気付く人も多いようで、軽やコンパクトカーでサーキットを走る人が昔に比べて多くなった気がしますね♪
私もマツダ2を所有していますが、最近ヤリスをお借りしてミニサーキットを走る機会があったので、購入を検討される方や迷っている方向けに、乗り比べた印象をお伝えしましょう。
■ヤリスとマツダ2はどちらが速い?
今回はサーキットを数周走って感じた内容となるため、比較的短期間の試乗レビューとなります。
短時間で完全に車を理解する事は困難ですし、どちらもフルノーマルと言うわけではなく車高調と機械式デフは装備されているので、ベースの標準車とは印象が異なる事を予め断っておきます。

どちらがカッコイイと思うかは好みの問題ですが、高級感のある落ち着いたデザインのマツダ2に比べてヤリスはスポーツカーらしい攻撃的なデザインをしていますね。
車格はどちらも同じ5ナンバークラスのコンパクトカーで、駆動方式はFF、エンジンも1.5LのNA(レブリミットは7000rpm弱とほぼ同じ)となっていますが、カタログ値を信じるなら車重で約30kg、出力で約10馬力、いずれもヤリスの方がスペックで上回っています。
10馬力の差はともかく、非力なこのクラスで30kgも違えば体感でも結構ハッキリと違いを感じる程度の差があるので無視できないですよね。
加えて、トランスミッションは最終減速比も含め全体的にマツダ2よりヤリスの方がローギアに振ってあり、タイヤ外径も小さいので加速で有利な条件が揃っている。
私の車両はタイヤ外径を一回り小さくしてあるので多少はマシですが、2速3速では同じ6800rpm換算で10km/hほど差があるので、単純な加速ではまず勝てないと思って間違いないでしょう。
ただし、モータースポーツ向けのグレード15MBを選択している場合は車重も軽く、最終減速比が他のグレードより低く設定されているので、ヤリスを上回る可能性は十分にあります。
セッティングの問題なのか乗り方の問題なのか、アンダーがキツいので乗ってみて原因を探って欲しいとの依頼を受け、実際にコースを全開でアタックしてみる事に。
クリアラップを確保するために1周目は様子を見て、2周目から飛ばしていきますが、確かにヤリスの方が加速も速いしコーナーでも軽いと感じます。
フィーリングについても加速感は滑らかで良好、ステアフィールもマツダ2とは特徴が異なりますが好感触ですよ♪
ECU書き換えでスロットルMAPに細工はされているようですが、トヨタ車全般で良く言われる電子スロットルの違和感も特に感じませんでした。
いきなり負けた気がしますが、マツダ2の方が遅いのかと言うとそうとも言い切れない。

乗り比べてみればすぐに気が付くのですが、ヤリスに比べてマツダ2の方が前方視界が広く運転しやすいです。
これ、単純な慣れと言った話ではなく、現実として視界がかなり広いのだ。
厳密にはフロントウインドウ自体の大きさやピラーの角度と言った部分に大きな違いはなさそうなのですが、ドアミラーの構造の差なのか斜め前方の視認性が抜群で、特にタイトなコーナーにアプローチする際は狙った位置を見失い難い。
また、足回りのセッティングの違いかもしれないが、ヤリスに比べてマツダ2の方がハンドルを切り込んだ時の初期応答性がマイルドですが、大きくロールさせていても舵が利く。
ヤリスはクイック過ぎる感じで、旋回中の入力に対してやや不安定な印象を受ける。
単純な速さより、コントロール性に優れる事で乗り易くミスし難いと言う点では、一発のタイムよりアベレージでヤリスを上回る可能性は高そうです。
ストレートで勝負したいならヤリス、コーナーで勝負したいならマツダ2と言った感じでしょうか。
■挙動の違いについて
前項で触れていますが、今回はヤリスのアンダーの原因を探ってほしいとの依頼を受けて乗ったわけですが、実際に走らせてみるといきなりですがオーバーが強い印象を受けました。
ホイールベースの差はわずか20mm程度ですが、マツダ2の方が広いので見掛け以上に差が出るのかもしれません。

特に違いを感じるのが最もスピードの乗る1コーナーで、進入から慣性でリアが滑り出します。
進入角度を調整して飛び込めば大きな修正舵も必要なく、早めにハンドルを戻せるのですぐに加速体勢には移れるのですが…

マツダ2はリアが安定方向で鼻先が入って行くし舵も利くので、ターンインで進入角度が決まったらそのままアクセルを踏んで行けるため加速距離はヤリスに比べて5~6メートル長く取れる。
重量とパワー差はあっても、2コーナーまでの到達時間や減速開始直前の速度に大きな差は見られない。
しかし1速を使用する極低速のヘアピンコーナーで大きな差がある事に気付く。
ヤリスで3コーナーのヘアピンにアプローチすると、初期応答性の良さからクイックに向きを変えるので”圧倒的に速い”と感じるのですが、それはあくまでも入口に限定した話で、立ち上がりに向けてアクセルを踏み込んで行くと言われた通りの”アンダー”が突然出てきてアクセルを緩めざるをえない。
対してマツダ2では、入口は緩やかですがアクセルを踏み込んで行くとリアを据え置いたまま鼻先がインに切り込んで行く。
結果として、ヘアピンコーナーはマツダ2の方が圧倒的に速い。
ただ、注意して欲しいのは、この動きはどちらの車も”標準車”とは違うと言う事。
どちらも車高調と機械式デフを装備しているので、セッティングの差はあれどノーマル車両に比べてクイックである事や、旋回中の加速に有利な構造を有しています。
なのに、ヤリスは肝心な旋回中の加速がイマイチ。いや、加速がイマイチと言うより、小回りさせようとすると踏めないのだ。
この1周目の違和感から、2周目にヘアピンコーナーのアプローチを変えるとグイグイ曲がり始めたので、そこで気付いたのがフロントの追従性の差である。
これが”アンダーの原因”と見てまず間違いないと言うのが私の回答です。
■フロントの追従性が”良過ぎる”のが欠点
路面への追従性が良いに越した事はない、と言うのは常識である。
余裕のストロークで4つのタイヤがしっかり接地してグリップしてくれるのが理想。
しかし、曲がらなければ本末転倒である。

今回お借りしたヤリスはフルノーマルではないので、これから説明するのはあくまでも”この仕様のヤリス“の欠点と言う事になりますが、試行錯誤しながら煮詰められたセッティングで、非常に良く出来ていると思います。
私はオーバーが強いと感じたものの、リアには柔らかめのスプリングで安定感を狙いつつ、フロントにはヘルパースプリングを使用して中立位置を調整し、十分な伸びストロークを確保。
ギャップにも強く、大きくロールしても接地が切れる事なくしっかりと路面を捕え続ける安心感もある非常に優れたセッティングだと思います。
オープンデフや舵角が浅いコーナーの多い大きなサーキットでは問題ありません。
明らかにメリットの方が大きいはずです。
…ですが、ミニサーキットやジムカーナのように大きく舵を当てて1速で小回りをするようなシチュエーションでは、機械式デフが大きな抵抗となってスムーズに旋回できなくなる場合がある。
しつこいように何度も言っていますが、機械式デフで立ち上がりのトラクションを稼ぐのはオマケに過ぎず、主な目的は旋回速度を上げる事です。
強い旋回G、大きなロールで内輪が浮き上がっても、機械式デフで左右の駆動輪を直結に近付けると、外側の車輪を効率よく使えるわけですが、逆に内輪が浮き上がらなかったら?(あくまでも”浮く”は荷重を抜く事の極端な表現)
内側の車輪がスムーズな旋回を妨げると言うわけです。
今回は追従性の良さが仇となって内輪がしっかり接地してしまうため、ターンイン後のアクセルオンでアンダーの挙動が現れると言ったもの。
2周目でアプローチを変えたと言うのは、進入速度を上げ、入口のラインを少しコンパクトにする事で意図的に強い旋回Gを掛ける方法で、内輪の浮き上がりを誘発しました。
この方法でアンダーが出ずにグイグイ曲がると言う事は、駆動輪の追従性が良過ぎる事が欠点と言う事です。
ただ、強い旋回Gを掛ければグイグイ曲がるとは言っても、その状態を維持し難いとも感じました。
僅かな修正舵やアクセルの加減をすると、ちょっとした事で再び内輪が接地してあっさりアンダーに移行するのです。
勘違いしないで欲しいのですが、冒頭でも言った通り足の追従性が良いに越した事はありません。
圧側のストロークが不足しない範囲で、可能な限り伸びストロークを確保するのが理想です。
…が、曲がらなければ本末転倒。
この場合、自在に曲げられるなら追従性を確保し、曲げられないなら曲がらなくなるギリギリまでストロークを抑えると言うのがヘアピンコーナーで機械式デフを活かすコツと言う事になると思います。
ストロークを抑えると言うのは、単純にストローク量を抑えるだけでなく、減衰力調整でストロークスピードを抑えると言う方法もあります。
ただし、ストローク量を抑え過ぎると片輪走行の時間が長くなり、トータルグリップに期待したい高速コーナーで不利になる可能性もありますし、減衰で絞り過ぎると低μ路面やギャップに弱くなる恐れもあるので、どちらで調整する方が良いのか、またはそれぞれのさじ加減を探る必要がありますね。
本当に答えが合っているのかどうかは実際にオーナーさんが試してみた後でなければわかりませんが、コースを4周ほど確認した後、私はフロントの”追従性の良さがアンダーの原因”だと回答しました。
偉そうに語ってきましたが、残念ながら私がアドバイスできるのはここまでです(笑)
原因がわかったとしても、それを改善する手段はオーナーが自ら数パターンを乗り比べてみて、それぞれのメリット・デメリットを天秤に掛けた上で好みや妥協点を見つける他にありません。
もっと具体的に、何を、どう変えたいと言った目的がわかれば、素人なりにももう少し具体的なアドバイスができるかもしれませんが、それでも結局のところは”他人”が最良と思うセッティングにしか辿り着かないので、指標をほとんど持たない初級者さんならともかく、それなりに走り慣れた人にとっては全てのオーナーが納得するセッティングにはならないと言うのが現実です。
次回お会いした時に、何を試して、どう変わったのか期待して待ってみましょう!
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