■目次
■タワーバーとは?
ボディ剛性を上げるど定番の補強パーツなので、知らないと言う人は少数だと思いますが、まずはタワーバーとは何なのか改めて確認してみましょう。
ストラットタワーバー、またはサスタワーバーなどと呼ばれるつっかえ棒の様なパーツで、単純な一本棒の形状の他、バルクヘッド側へ接続されるセパレートタイプまたは台形、三角形などの形状をした物。
より複雑で堅牢な作りになっているタイプはタワーブレースなどと呼ばれる事もありますが、基本的には同類の物です。
若干主目的は違いますが、後者だと箱に蓋をして、ボディを全体的に固めるイメージでしょうか。
タワーバーに分類される物はどれも、サスペンション上部のアッパーマウントと接続され、ボディを挟む様に取り付けられるのですが、このアッパーマウントが接続される部分を、ストラット式ではストラットタワー、ダブルウィッシュボーン式などではサスタワー(サスペンションタワー)と呼び分ける事から若干呼び名が異なると言うだけで、略してタワーバーと言ってしまえばどちらにも当て嵌まります。
そしてこのタワーバーが何をしている部品なのかと言うと、路面からの入力があれば力はアームを伝わり、車体の傾斜に伴いショックアブソーバが動きます。
この際、吸収しきれなかった分の力が最終的に行き着くアッパーマウントと接続されたボディが歪む事で、ダイレクト感や追従性の低下、乗り心地の悪化などなどと言った不都合が出てくるわけです。
サスペンションがストロークしているのに、ボディが歪んで逃げてしまっては、足がしっかり仕事をしてくれませんので、この歪みを抑えようと働きかけるのがタワーバーの仕事と言う事になります。
まあ、ボディをガチガチに固め過ぎても良いわけではないのですが、少なくともサーキットなどのスポーツ走行であれば、それなりの剛性が欲しい部分です。
■タワーバーの原理と効果
これについては、実際に付けてみると「激変した!」と言う人もいれば「全然効果がわからない。。。」と言う人もいます。
私も過去にお決まりの様にタワーバーを取り付けていましたが、着脱で変化を感じる車と、違いがわからない車があるのは事実です。
ベースとなる車の剛性が高いと、少々の負荷を掛けたくらいでは違いが分からないと言う事もあると思いますが、主な違いはサスペンション形式による場合が多い様です。
実のところ、バーの取り付け写真を比較しても違いがわかるわけではないのですが(笑)
こちらはストラット式の車にストラットタワーバーを装着した例となります。
ストラット式とは?
すっごい簡略化した図ですが、右側の黒い四角はハブです。
ボディから伸びる赤い線がアームで、ハブからストラットタワーに繋がる緑色の線がサスペンション。
この構造の足回りでコーナーリングをすると。。。
もちろんですが、実際にはもっと複雑な力の掛かり方と動きをしますが、イメージとしては図の様な感じになります。
アームの長さは一定ですので、サスペンションがストロークすればハブは弧を描く様に動こうとします。
この際、ハブに固定されたサスペンションは、ハブが弧を描く様に動く事から軌道が内側に移動しようとします。
しかしハブに対するサスペンションの角度は固定である事に加え、アッパーマウントの位置は固定されているため、梃子でこじる様にストラットタワーを外へ開こうとする力が生じるわけです。
ここにタワーバーが取り付けられて左右のストラットタワーを接続していれば、掛かる力を分散すると共に、開こうとするストラットタワーを引っ張る事で変形を抑えられます。
変形を抑え、力がボディ側へ逃げなくなった分、サスペンションの動きは靭やかになり、ダイレクト感の向上や、スプリングが少し柔らかくなった様な変化を感じると思います。
サスペンションの構造を工夫する事である程度改善する事もできるため一概には言えませんが、元々ストラットタワーバーは、ストラット式のこの弱点を補うために作られた物なので、ストラット式のサスペンションに対しては効果が大きいのです。
続いてダブルウィッシュボーン式に装着した例です。
写真のタイプでは、どちらかと言うとタワーブレースに近い物なので、縦方向のボディの捻じれなども意識した作りになっていますが、その辺は無視してタワーバーがどう働くのか確認してみましょう。
こちらが大雑把なダブルウィッシュボーンの構造です。
ダブルと言うだけあって、上下に2本のアームが存在します。
また、基本的にサスペンションはハブではなくロアアームに接続されています。
では傾けてみましょう。
ストラットと同じようにアームは弧を描く様に動くのですが、ハブを起こそうとする力はアッパーアームに掛かるので、サスペンション自体はサスタワーに対してほとんど垂直に縮みます。
つまり、ストラット式と比べてサスタワーを変形させる力が殆ど発生しません。
強いて言えば垂直方向に対する剛性は必要になりますが、タワーバーで抑える力の方向とは異なるため、ダブルウィッシュボーン式ではストラット式の様に大きな効果は得られ難いと言うわけです。
もちろん、ダブルウィッシュボーンだからと言って全く効果が無いと言うわけではありませんが、車両側の基本剛性がしっかりしていれば、取り付けるメリットは少ないでしょう。
これらはあくまでも傾向の話なので、ストラット式だからと言って効果を体感できるとは限りませんし、逆も当て嵌まります。
万が一ぶつけた時にダメージが逆側にも及ぶ恐れがあると言ったデメリットはありますが、それ以外は特にこれと言ったデメリットもないので、とりあえず付けてみると言うのもありだと思いますよ♪
ただし、可能であれば溶接された一体型の物で、ストラットタワーに接続する補強板がしっかりした物を選んでください。
実はバーを取り付けなくてもストラットタワーの剛性を上げる方法があるのですが、板厚や力の支点が及ぼす影響があります。
■バーを用いない補強について
最近の車だと、ほとんどの車種に取り付けられているのですが、ストラットタワーの補強プレートと言う物があります。
タワーバーが構造的に取り付け困難な車種向けに、アフターパーツメーカーが用意している物も見られますが、純正だと車種によっては周辺の配線をクリップ留めしていたりする(一例ではNDロードスターなど)ので、単なるステーと考えている人も多いかもしれません。
こちらはBK3P型マツダ・アクセラの例となりますが、ストラットタワーに3mm程の厚さの鉄板が取り付けられています。
このマツダスピード・アクセラの場合は、更にバルクヘッド側にもネジ留めされていますが、単なるプレートだけでも板厚を増す事が出来るので、変形を抑える効果があります。
つまり、無いより有った方が良いって事ですよね。
だったら最初から分厚い鉄板で作っちゃえよ!って言いたくなるところですが、製造上の都合などもあるかと思います。
ただ、やはりタワーバーに比べると効果は感じ難いと思うので、実際どれくらい効いている物なのかはわかりませんが、私が勝手な想像で言っているわけではなく、自動車メーカーはこのプレートを補強板と明言しています。
そしてもう一つ小ネタのおまけですが、実はこのプレートについてトヨタがある特許を発表しているのをご存知でしょうか?
じゃーん!
アッパーマウントを留めるナットです。
左側は昔から使われている一般的なフランジナットで、トヨタが特許を取得しているのが右側のナットです。
結構前からですが、ここ10年くらいの間に製造されたトヨタ車の多くは右側のナットを採用しているのに気付いた方はいますか?
そして、この新しいナットを採用している車種の多くは、先程説明した補強プレートが取り付けられていません。
このナットは、下に簡単な断面図で示した通り、下段はただのスペーサーになっていて、途中からネジが切られています。
補強プレートなどを付けた場合や、単純にワッシャーなどを噛ませても同等の効果があるそうですが、ネジの掛りの位置を上方にオフセットする事で力の掛かる支点が変わり、力を分散する範囲が広くなる(つまり歪み難くなる)のだそうです。
より詳しい特許の内容はこちらを読んで頂くとして、トヨタはストラットタワーの剛性は確保しつつ、補強プレートを取り付ける手間やコストを省くための手段としてこのナットを考案したとの事。
つまり、プレートでストラットタワーの剛性が上がる事は間違いないと言う事が1点。
もう1点は、ワッシャーなどでネジ留め位置を嵩上げすれば、プレートを省いても剛性が確保出来ますよって事を意味している。
どの程度効果がある物かはわかりませんが、興味があれば是非試してみてください♪
追記(2022.07.17)
実際にタワーバーを着脱して実走行で比較検証してみましたので、興味のある方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:タワーバーでフィーリングや挙動の変化を体感できるのか 実走行で比較検証してみた
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