車を買って、サーキット走行をはじめよう!って際に、まずバケットシートを装備しようと考える方は多いと思います。
ただね、昔は単純に純正シートと入れ替えて、シートベルトのバックルだけ移設してやれば良かったのですが、時代が進むにつれて、運転席にシートベルトの警告灯が装備されたり…最近では助手席にもシートベルト着用を促すシートベルトリマインダーなどが標準装備されています。
それだけで済めばまだマシな方で、シートにエアバッグが内臓されているのも珍しくはない。
快適装備は原則廃止となるので気にしなくても良いですが、エアバッグは単純に撤去しただけでは警告灯が点灯したりと言った問題もあります。
さて、今回は着用センサー付きのシートベルトバックルの移設や、サイドエアバッグのキャンセルについてご紹介しましょう。
尚、快適装備のシートヒーターの移設などはこちらの記事(フルバケに部品を移設しよう! シートヒーター編)をご覧ください。(NDロードスターのシートヒーター移植の例です)
■純正シートの外し方と注意点
今回はNDロードスターの作業を例にしますが、実際のところどの車も基本的には同じなんですよね。
以前書いた記事ではアクセラの作業例を紹介しましたが、昔の車はあんな感じで凄くあっさりです(笑)
ただ、最近の車はなかなかそうもいかない。
まずはボンネットを開いて、バッテリーのマイナス端子を外しておきましょう!
いきなりなんで??って思うかもしれません。
絶対必要と言うわけではなく、シートにエアバッグが内臓されている場合のみで大丈夫です。
シートベルトのバックルを外すだけならこの工程は省いても構いません。
ただし、エアバッグ付のシートの場合は”必ず”マイナス端子を外して、数分待ってから作業を開始してください。
まあ、実際にそのまま作業してエアバッグが作動したなんて話を噂には聞いても、実例として見聞きした事はないのですが、何にしろ用心に越した事はありません。
本当に至近距離で誤作動を起こしたら、恐らく大ケガどころでは済まないのでね…。
さあ、ご覧ください!
シートの取り外しなど、レールのボルトを外してやれば簡単に外れるぜ!って事については変わりないのですが、星型の妙な突起が付いています。
そうです。これ、トルクスなんですよ…
いじり止めなんて呼ばれる事もある一種の”特殊ネジ”なので、なかなか普通の一般家庭には置いていない工具ですね(笑)
恐らくエアバッグが内臓されたシートなので、無暗に素人が触らない様にと言う配慮でしょう。
普通の人なら、ギザギザの変なネジが付いてる!って事で、触っちゃいけない物だと認識すると思います。
携帯電話のケースだってY字のネジやトルクスで留まっているから誰も開けようとはしないわけで(笑)
でも、そんな”変なネジ”を外せる工具が手元にあったなら、外しちゃいますよねー!
NDロードスターのレールを留めているトルクスはE12と言うサイズになります。
KTCなどの基本工具セットを持っていても、さすがにトルクスのセットは標準では付属していないと思うので、持っていない場合は買いましょう!
まずはシートを一番前へスライドさせて、後ろのボルトから外しましょう。
フロアから車外へ出す際に、レールを畳んでおかないと扱い難いですが、ボルトを外した後はスライドさせ難いので、前方のボルトを後から外した方が都合が良いためです。
尚、ロードスターの場合はシートを車外へ出す時は幌を開けましょう。
ちなみに、普通のボルトと違って角が多いためソケットの向きがしっかり合っていないと掛かり難いです。
シート後方は狭くて作業性が悪いので、ソケットがしっかり根元まで差さっているいる事を確認してから緩めてください。
トルクスネジ自体は舐め難いですが、よりによって舐めてしまった場合は非常に外し難いのでちょっと面倒な事になります。
無事にレールのボルトが外れたら、シートを傾けて底を覗いてみましょう。
昔の車はシートベルト用の配線が一本だけと言った物が多かったのですが、最近の車は色々と機能満載なのでゴツイ集合カプラーになっています。
NDロードスターのカプラーは、矢印の白い爪を引き抜く様に動かしてやればロックが解除されるので、ロックを解除したら後は引っ張るだけで簡単に抜けます。
はい、抜けました。
これでシートは完全に取り外せる状態になりましたので、幌を開けてから車外へ出しましょう。
レールの角など結構鋭いので、内装やボディに引っ掛けない様に慎重に運び出してください。
助手席側を取り外す際も、同様の手順で取り外し可能です。
ご覧の通り、見事に車内は空っぽになりました!
それでは、バケットシートへ移植する部品の確認に進みましょう。
■バックルの取り外しとエアバッグのキャンセル
シートベルトのバックルをバケットシートのレールへ移設する必要がありますので、純正シートから取り外しましょう。
バックル本体については特に悩む事はないと思います。
ご覧の通り、バックルの付け根にあるボルトを外してやれば、あっさり外れます。
次にシートの底に固定されている集合カプラーを分離します。
矢印の位置に爪で引っ掛けてあるだけなので、カプラーを掴んでグリグリと動かしてやれば、ポロッと外れると思います。
ほら、ポロッとね。
ただね、これだけじゃシートベルトのバックルを外すのは難しいんですよ。
センサーの配線を切るわけにはいきませんので、この赤丸の部分を通さないといけないわけです。
バックルを通すか、カプラーの方を通すかって事になるわけですが。
どう見ても通らないですよね。
純正シートを二度と使わないって場合は、生地をカットしてしまっても良いのですが、そんな事をしなくても大丈夫。
集合カプラーには、シートベルトのセンサーからエアバッグ、シートヒーターなどのカプラーも全部まとめられていますが、それぞれは完全に独立しています。
赤丸の部分に注目してもらいたいのですが、各カプラーは集合カプラーの爪に引っ掛かっているだけなので、精密ドライバーなどを使って爪を起こして裏側から押してやれば、写真の様に簡単に引き抜く事が出来ます。
本来は精密ドライバーをこんな事に使うのは好ましくありませんが、便利なので安物をこじり用に何セットかストックしてます(笑)
この小さなカプラーなら、先程の狭い穴を通せるので、シートを切る事無くバックルを取り外す事が出来ます。
もちろん、エアバッグのカプラーやシートヒーターなどのカプラーも同様の方法で分離出来るので、必要に応じて引き抜きましょう。
ブリッドやレカロのバケットシートには、サイドエアバッグキャンセラーが同封されています。
ただ、付属品は車種別専用設計ではなく、あくまでも汎用品となるため、エアバッグのカプラーを無視してエレクトロタップで割り込ませるか、直接結線する必要があります。
正直、純正の配線をキズ付ける方法など出来れば避けたいです。
写真の様なタイプの車種別専用カプラーを備えたキャンセラーは、2~5Ω程度のセメント抵抗と適合するカプラーがあれば自作も可能ですが、組み立て済みの商品も売られているのでそちらを活用するのが楽ですね。
自作時の定番になっていますが、間違ってもカーボン抵抗や金属皮膜抵抗は使わない様に。
発熱した際に、発火して車両火災に繋がる恐れがありますので、どうしても自作したい場合はセメント抵抗を強くお勧めします。
さあ、必要最小限でバケットシートを取り付ける場合は、上記の手順でバックルの移設、エアバッグのキャンセルは完了しますので、後は組み立てたシートAssyを車に取り付けるだけです。
シートヒーターなどの快適装備までバケットシートに移設したい方は次の記事もご覧ください。
快適装備も移設したい!「フルバケに部品を移設しよう! シートヒーター編」
■アクティブボンネットダンパーのキャンセル
今回、シートにエアバッグが内臓されているため、バッテリーのマイナス端子を外しています。
なので、この際にアクティブボンネットダンパーを同時にキャンセルしちゃいましょう。
正直言ってお勧めは出来ないのですが、アクティブボンネットキャンセラーと言った名前で普通に売られています。
これもエアバッグキャンセラー同様に、セメント抵抗と適合するカプラーがあれば自作は可能ですが、既製品を買うのが楽で良いでしょう。
そもそも、これって何なの?って疑問に思う方もいるでしょう。
万が一歩行者などと接触事故を起こした際に、ボンネット上に一定以上の衝撃を感知したら、瞬時にボンネットを浮かせて被害者へのダメージを緩和…できるかもしれない、程度の装備です。
まあ、無いより有った方が良いに決まっていますが、これが実は問題となる事がある。
スポーツ走行時の振動や衝撃で誤作動するとか、コンビニの輪留めに当たった衝撃で誤作動するとか、猫がボンネットに乗っただけで誤作動するとか、しないとか。
実際どのレベルで発生するのか謎ですが、私の知り合いが同様の装置が装備されたフェアレディZ(日産の呼称はポップアップエンジンフード)で工事現場の段差を越えた時に、マジに誤作動したのを見てしまった事があるので、ちょっと怖いんですよ(笑)
誤作動自体はともかくとして、交換費用が本当に高いので…。
尚、これは2021年現在では法的に義務化された装備ではないので、機能停止させても保安基準上は問題ありません。
一応、保険屋さんには保険の保証範囲など確認しておく事をお勧めします。
外し方自体は見たらすぐに理解出来るレベルです。
黄色いカプラーの爪を押さえて引っ張れば抜けます。
この様にカプラーを外したら、車両側のカプラーにキャンセラーを差し込んでやれば完了です。
あとはアクティブボンネット本体を残すか、取り外すかと言った悩みくらいでしょうか。
取り外すなら、表に見えている10mmのボルトを2本外すだけでご覧の様に丸ごと引き抜けます!
大穴が気になるなら、こんな感じでテキトーな板に穴開けしてボルトで留めておけば良いかと思います。
あとはキャンセラー付のカプラーを、どこか周辺の固定し易い場所にテープや結束バンドで固定しておけば、断線などの心配もありませんね。
何度も言いますが、一応安全に配慮した装備ですので、取り外し自体をお勧めはしません。
まあ、付いていない車の方が圧倒的に多いので、従来通りだと思えば何てことないですが、一応ね。