色々と自分でパーツを取り付けたり、整備をしていると、どう言うわけかクリップやボルトが余ってしまった…なんて経験をした事がある人も多いのではないでしょうか?
プロの整備士でも小物の取り付けやパネル類の着脱などで意外と良くあるそうですが、もちろん本当に重要な部分を整備する時には部品が余るなんて事は絶対に許されない。
なので、通常は外した場所毎に、パーツ皿などに小分けしたり、何らかの目印を付けてミスを防ぐそうです。
まあ、とは言っても作業するのは人間なので、絶対にミスをしないと言い切る事は出来ないため、作業後の再チェックが求められるわけですよね。
ただ、部品は余らなかったけど…と言ったミスが起こる事も有り得る。
そもそもの部品の紛失だったり、組み付けのミス、ボルト・ナットのトルク不足、増し締めを忘れる、などである。
■車両の点検・整備はユーザーの責任!
時々、無資格の者が車両の整備を行うと違法であると言う話を聞きますが本当でしょうか?
実はその逆。
意外かもしれませんが、整備士の資格を持っている人でも、他人の車をみだりに整備する事は許されない。
本来は、車の所有者が自分の車の点検や整備を行う”義務”があります。
しかし、義務とは言っても車の構造はわからないし、触るのも怖い!と言う人もいると思います。
その様な人のためにサービスを提供するのが、”条件付き”でユーザーに代わって点検・整備を代行する資格を有した整備士と言う仕事です。
ちなみに、整備士も含め、自分である程度整備出来ると言う人であっても、あくまでも自分の車の点検・整備義務であり、他人の車の整備を行う事は法律で”制限”されています。
“禁止”されているわけではありません。
細かく説明すると長くなるので省きますが、法律上”分解整備”に該当する箇所、主には不具合があると重大な事故や命に係る恐れのある重要な保安部品やドライブトレインに該当する箇所が焦点となる。
他人の車の整備は、無資格の者はもちろんダメ。整備士であっても”認証を受けた工場外で分解整備を行ってはならない”と言う事になっている。
ややグレーな部分もありますが、町工場からディーラーまで出張整備のサービスを行っているお店であっても、庭先や路上で止むを得ず行う応急処置を除いては、原則としてレッカーなどで工場へ持ち帰って作業を行うはずである。
JAFなどが、路上や駐車場などでサクッとやってくれる作業は、分解整備に該当しないから出来る事なのだ。
上記の理由からも、自分が乗っている内に発生した事故やトラブルは、原則自分の責任と言う事になる。
もちろん、お店で整備してもらった後に、ブレーキが効かずに人身事故を起こしてしまったなどと言った場合、お店や担当した整備士の責任も問われるが、発生した事故その物に関してはユーザーが責任を負う事になる。
なので、いくらお店に整備を任せているからと言って、日常点検を怠って良いと言う事にはならず、少しでも不具合を感じたら自分で点検、出来なければ即座に車を停止させ整備工場に連絡をする必要があると言う事である。
それでは一例として、自主点検を怠ったがために起き得るトラブルを紹介しよう。
■ホイールナットが緩んでしまうと…
さあ、ちょっと見てくださいよ!
おニューのホイールを履かせて一本クヌギスピードウェイへやって来ました!
直前にお店に預けて車検を済ませ、油脂類や冷却水の交換、ブレーキキャリパーのオーバーホールなど、必要な整備も行い、コンディションはバッチリ♪
この日は天気も良く、路面コンディションも良好。
タイムアタックに最適な日和です。
今日は張り切って、予備のタイヤも持って来たので、Sタイヤとラジアルの両方で自己ベスト更新を狙います!
こんな調子でやる気満々だったわけですが、ここに来る道中はもちろん、この時点でもまだ不具合に気が付いていません。
…と言うのも、自分でユーザー車検に持って行ったわけでもなく、お店に任せて整備込みの車検を受けた直後だったため”当然”完璧な状態だろうと疑いもしなかったわけです。
と言っても、実際この時点では何も問題は起きていません。
準備と言っても、計測器の設置と、荷物を降ろす程度の話で、精々タイヤの空気圧を調整するくらいでしょうか。
ホイールナットも定期的にトルクレンチで締め付けの確認などはしていますが、それは月に1度か2度の話。
ましてや、車検を終えた直後なので、しっかり締まっていて当然だと考えていた、いや、全く意識さえしていませんでした。
まさか、ホイールナットの増し締めを忘れているなんて、思いもしなかったのです。
この後、実際に何本か計測を行い、新しいタイヤで好記録も連発!
なんと自己ベストも更新してゴキゲンですよ(笑)
しかし、この辺りからある不具合が発生する。
Sタイヤも熱ダレしてきたので、もう1本走って記録が伸びそうになければ、予備で持って来たラジアルに履き替えようと考えていた矢先の出来事でした。
1コーナーを曲がり始めた辺りで、少しゴトゴトと異音がするのです。
それ程大きな音ではありませんし、クヌギのコースはストレートが少ないので、常にハンドルを動かしている感じなので、僅かなブレだと気が付き難いと言うのもあるかもしれません。
ただ、今回履かせて来たタイヤは普段使っていた265/35R18ではなく、255/40R18と言うサイズで、外径が1cm程大きなタイヤになります。
元々、フェンダーライナーに少し干渉するかもしれないと考えていたため、恐らくそれが原因だろうと軽く考えていました。
しかし、各コーナーでハンドルを切る度に、大してロールしていない時でもゴトゴトと音がする。
そして2周目に入って1コーナーでブレーキを踏んだ時でした、ガツンッとかなり大きな音がした後、ゴトゴトと大きな音が出始めたため、すぐにスピードを落としてアタックを中断したのですが、バックストレートに戻っても音は鳴り続け、ハンドルにも振動が伝わって来ます。
一応、その場で降りて確認するものの、外観上は良くわからないので、アームのブッシュやボールジョイントの異常の可能性がありそうです。
徐行でピットに戻り、とりあえずぐるりと車の周りを一周して確認すると、右のフロントってこんなにキャンバー付いてたっけ??と違和感。
極端にキャンバーが付いているわけではなく、微妙な角度だが、比べると明らかに左よりネガティブキャンバーが強い。
そこでジャッキアップしてタイヤを外して確認してみようと考えたわけですが、ジャッキで持ち上げ始めるとすぐに異常に気が付く。
ゴトッと音を立ててタイヤが動いたのである。
恐る恐るクロスレンチをホイールナットに引っ掛けようとするが、なんと簡単に回るではないか!
5本とも、指で回る程緩いのである…(笑)
念のため、他のホイール3本を確認するが、他のホイールはナットもしっかり締まっている様で、右フロントだけ緩んでしまった様だ。
ご覧ください!わかりますか?
ゴトゴトと音が出始めてからも1周はガッツリ走ってしまい、総距離にして約2周の1.2km程走行。
その間にハブボルトとの摩擦で、ホールの内側が削れてしまっています。
裏から見るとこんな感じ。
スペーサーなどは噛ませておらず、ネジ山の締め代も十分だったので、走行中に脱落には至らなかったものの、走行前の点検を怠ったがために新品のホイールがパーになってしまいました…。
とは言え、締め代が十分でも最悪の場合はホイールが割れたり、ハブボルトの方が折れてしまうと言う可能性もあるので、本当に危なかったと思います。
ハブボルトの方は強度も高くネジ山の潰れも発生していませんが、一本ずつ軽く叩いてみると5本中1本がガタガタします。
後から点検したら、ハブ側のスプラインが潰れてしまっていたので、ハブASSYで交換する事となりました。
どちらにしても、この様な事態に陥ったら念のためにハブボルトの打ち替えなどはしておいた方が良いかもしれません。
今回は、走行中の脱落には至らなかった、運の良い例です。
ホイールは1本ダメにしてしまいましたが、万が一脱落していたら車のダメージも、金銭的なダメージもこんなもんじゃ済みませんからね。
幸いにも、ホイールのテーパー部も潰れていないので締め直して、どうにか自走で帰れそうです。
一応お店の方にも報告を入れ、すぐに持ち込みで点検と修理をする事となりました。
お店の方が自主的に工場のカメラの記録を確認してくれたそうで、実際に右フロントだけ増し締めを忘れている事が判明しました。
お店と担当した整備士の方から謝罪や保証の話もありましたが、責める気はありません。
前置きとしてお話しした通り、いくらお店に任せているからと言っても、走行前の自主点検を怠ると思わぬ事故に繋がる恐れがあります。
みなさんも他人事と思わず、常日頃から愛車の点検を怠らない様にしましょう!
しつこい様ですが、本当に走行中に外れなくて良かったです。
この程度の授業料なら安いもんだと思って諦めがつきますが、万が一街中で外れて他人にケガをさせてしまったり、車が壊れてしまったら大変です。
考えただけでゾッとしますよっ!
本当に、みなさんもご注意ください!