HKSやトラストなどのアフターパーツメーカーや、ユピテルなどのレーダー探知機のオプションにも設定されている、OBD2アダプタを利用した追加メーターがある。
OBD2端子は近年の市販車両には原則、標準装備されている統一規格(実際には数種類のプロトコルが存在する)の通信端子で、ECUや各種センサーと通信して、故障時のエラーコード診断や、リコール時のECU書き換えなどに利用される。
この端子は主にCAN通信でデータのやり取りを行うもので、特定のリクエストに対して必要な情報を返してくれるため、これを読み取り、モニターに表示させる事が出来れば、そのままECUが認識している情報、制御内容を確認する追加メーターとして利用する事が出来る。
つまり、車に標準装備されているセンサーの類であれば、ほぼ全ての情報を表示する事が出来るわけで、一般的な追加メーターの様に、信号配線への割り込み加工や、センサーアダプタの追加は必要ない。
故に、つまらないトラブルに見舞われる心配も極めて低いのだ。
これを利用しない手はない。
■OBD2アダプタを使う
今回使用する通信機器は、定番の「ELM 327」アダプタ。
USBやWi-Fiを利用した物もあるが、Androidのインストールされたスマートフォンやタブレットで手軽に扱える、Bluetooth通信の物を選択。
OBD2端子は、主に運転席の足元上部に設置されているが、車種によっては分かり難い場所に設置されている物や、年式によっては端子が装備されていない車両もあるので、事前に下調べしてから購入する事をお勧めします。
とは言っても驚くなかれ。
このアダプター、送料込でも1500円程度から入手可能なので、万が一使えなかったとしても、懐に大したダメージはないので、とりあえず買ってみると言うのも一つの選択しかもしれない。
また、計測してみると、数か月放置でも特に問題ないレベルの電流値なので心配は要らないと思うが、OBD2端子は常時電源が入力されている。
つまり、このアダプタを端子に差し込んでいる間は、常に電力を消費していると言う事になる。
心配な場合は分解してACC電源などに配線加工するか、スイッチ付きのタイプをお勧めします。
尚、こちらのアダプタは比較的大きめのケースとなっているため、延長ケーブルで邪魔にならない位置へ配置。
気になる方は、常時装着でも邪魔にならないコンパクトモデル(1/3程度)もあるので、そちらを選択するのも良いかと。
ただし、この手の機器に共通して言える事ですが、小さいほど通信が不安定だったりするので、この辺りは各自のご判断で。
追記(2019年5月3日)
常時電源の供給されているアダプタを、ACC電源に連動してON/OFFさせる方法を掲載しました。
■端末の準備
1.Bluetoothのペアリング設定(機器の認識)
使用するスマホ、タブレットの機種や、Androidのバージョンによって、多少表示に違いがある可能性がありますので、詳細は使用する端末の説明書などをご確認ください。
今回の例は、auキャリアの京セラ・URBANO V01(KYV31)/Android Ver.4.4.4での操作となります。
その他、SONY XPERIA SOL21・HUAWEI MediaPad M2 8.0などでも動作確認済。
原則、Bluetooth対応のAndroid OSなら使用可能です。
まず、端末の設定より「Bluetooth」の項目を開きます。
OBD2アダプタに通電しており、端末のBluetooth設定がONになっていれば、機器一覧にOBDIIまたは、見覚えのないアドレスなどが表示されると思います。
端末の設定方法に沿って、ペアリングを試みます。
基本的には、リスト内から目的の機器をタップすれば、自動的に接続を試みるはずですので、必要に応じてパスワードを入力します。
「0000」または「1234」で認識するはずですが、それ以外の場合は同封されているELM327の説明書などに記載されています。
パスワードが通れば、ペアリング完了です。
しばらくすると、使用可能機器一覧または、ペアリング済みのデバイスとして一覧表示されますので、必要に応じて設定メニューから分かり易い名前を付けておいてください。
今回の場合は、自動的に「OBDII」と言う名前が割り当てられましたので、このまま使用します。
2.アプリケーションの起動
GooglePlayストアから、OBD2通信用のアプリをダウンロードします。
OBD2に対応したアプリは、追加メーターとして使用出来る物から、故障診断のみに使用する物まで、多数のアプリが配布されていますので、好みの物をインストールしてください。
今回は、最もメジャーな「Torque」と言うアプリを使用します。
Playストアの検索フォームにて「OBD2」や「Torque」などで検索すると出てきます。
フリー版の「Torque Lite」と、有料(500円)の「Torque Pro」がありますが、特にこだわりが無い場合はLiteで十分です。
主な違いは、エラーコードの確認だけでなく、消去が出来る事。
また、計器の表示を好みのデザインに変更出来ますが、使用できるスキンの種類が増えるだけです。
その他、撮影した動画などにメーターの情報を合成したり出来る様ですが、この辺りは高度な使用方法となるため、Liteで慣れてきて、気に入ったら有料版を購入と言う形で良いかと思います。
尚、今回の説明では有料版の「Torque Pro」を使用しております。
■Torqueの初期設定
1.
アプリを起動したら、右の様なホームが表示されます。
まずは、左下のアイコンをタップして、設定メニューを開きます。
2.
最初に、車両プロフィールを登録しますが、出力測定(理論値)や、燃料の残量表示などを使用しない場合は、車両名だけ入力して、後はテキトーに飛ばしても問題はありません。
3.
車両プロフィールを登録するには「新しいプロファイルを作成」ボタンをタップします。
既にいくつかの車種が登録されており、内容の変更を行う場合は、車両名の右に表示されている「編集」ボタンから、内容の変更が可能です。
4.
車両総重や排気量の設定項目がありますが、出力測定その他機能を利用しない場合は飛ばしても問題ありません。
タコメータを利用する際に、自動的にリミットを設定してくれるので、下記の「エンジンの最高回転数」のみ設定して「セーブ」ボタンを押せば、車両プロフィールの登録は完了です。
5.
同じく、ホーム画面より、左下のアイコンをタップして設定メニューを開きます。
次はアプリの設定を行うため「設定」の項目をタップしてください。
6.
一番下の「Layout Settings」をタップします。
このアプリは、日本語表示でも部分的に英語や、おかしな日本語が混じっていますが、少しずつ対応している様なので、気になる方は今後のバージョンアップに期待して待ちましょう。
7.
初期設定は主に2つあります。
メーターのデザインや背景を変更したい場合は「テーマ」を。
必須項目は「OBD2アダプタ設定」となります。
まずは、テーマの設定から解説します。
8.
Liteでは若干制限がありますが、メーターデザインを変更したい場合は、テーマの選択をタップしてください。
9.
数種類の使用可能なテーマが自動的にダウンロードされ、一覧表示されます。
左のサムネイルのサンプルを参考に、好みのテーマをタップしてください。
実際の表示は、メーターを表示させてから確認する事になるため、後から設定した方が良いかもしれません。
いつでも、何度でも変更は可能なので、悩まず直感で選んで、気に入らなければ変更と言った感じで良いでしょう。
メジャー所のメーターパネル風や、オリジナルの近未来的な物、デザイン重視で見難い物まで。
尚、メーター表示はデジタルやアナログ、グラフ表示などを選択出来ますので、選択するテーマによってはイメージと随分異なる場合があります。
10.
次に、OBD2アダプタ設定に移ります。
まずは「接続の種類」ですが、恐らく標準で「Bluetooth」が選択されていますので、そのまま「Bluetoothデバイスの選択」や「自動On/Off」「BTをOFFに復帰」などが選択出来る状態になっていると思います。
下記項目が選択可能な場合は「自動On/Off」及び「BTをOFFに復帰」にチェックを入れて下さい。
その他のBluetooth機器を使用しており、特にOFFにする必要がない場合は「BTをOFFに復帰」にはチェックを入れる必要はありません。
尚、確認の意味も含めて一度タップして開くのが望ましいですが、以上の項目が選択不可の場合は必ず「接続の種類」をタップしてください。
11.
接続の種類が「Bluetooth」にチェックされている事を確認します。
選択されていない場合は「Bluetooth」にチェックを入れ、先程の「自動ON/OFF」などの項目を設定してください。
ここまでの設定が完了したら、次に「Bluetoothデバイスの選択」に移ります。
12.
Bluetoothデバイスの選択を開くと、現在認識され、利用可能な状態にあるBluetoothデバイスの一覧が表示されます。
今回表示されている「747PRO GPS」は、GPSセンサーの物ですが、ヘッドフォンやその他入力機器などをペアリングしている場合は、ここに一緒に表示されます。
この中から、OBD2アダプタの機器を探し、チェックを入れて下さい。
最初に、Androidの設定で行ったペアリングリスト内の名前に対応しますので、必ずしも「OBDII」と表示されているとは限りませんのでご注意ください。
一覧から探すのが困難な場合は、ペアリングしている他の機器の電源を一時的にOFFにするなど、一覧に表示される物を最小限にすると見付け易いかと思います。
ここで一度設定すれば、今後は基本的に再設定など不要な項目ですのでご安心ください。
ただし、端末を変更した場合はここまでの設定を最初から再度行う事になります。
お疲れ様でした。
これでアプリの初期設定は完了となります。
次は実際にアプリの使用方法の説明に移ります。
■Torqueを使ってみる
初期設定が完了したら、次はTorqueの基本機能を確認します。
1.
チェックランプなどが点灯して困ったら、エラーコードの確認機能を使ってみます。
「Fault Codes」をタップして起動します。
2.
今回は何もエラーが出ていないので、実際の画面でお伝えする事が出来ませんがご了承ください。
Fault Codesを起動すると、失敗ログマネージャと言う画面が出てきます。
キーONで車両と通信した状態になったら、虫眼鏡の検索アイコンをタップすると、数十秒~1分程度で車両の故障診断がスタートします。
この時に何らかの異常がある場合は、画面内に対応したコード(例:P0352)と、大凡のエラー内容(例:Powertrain Ignition Coil”B” Primary/Secondary Circuit)が表示されます。
表示されたエラーが、内容を見ても良くわからない場合も多いため、詳細を確認したい場合は項目をタップすると、ウィンドウ内に「Web lookup」のボタンが表示されるので、そのボタンをタップすれば詳しい内容が確認出来ます。
ただし、英語表記となりますので、苦手な方は表示されたエラーコードをメモして、ディーラーなどに確認すると良いかと思います。
その他、エラーコードを直接Googleなどで検索すれば、メジャーな故障の場合は日本語のサイトで情報が見付かる可能性も高いです。
修理後、復帰する場合は右上の「…」アイコンから「コードを削除」をタップすれば、この時点で復帰出来たエラーは項目から削除されます。
以上が、エラーコードの確認と削除の方法ですが、Liteの場合は確認のみで削除の機能はありません。
次は、メインの機能であるメーターの使い方に移ります。
追記(2020年3月5日)
エラーコードのスキャン方法と使い方について、実際の故障をスキャンして原因特定する記事を掲載しました。
1.
直感でわかると思いますが、メーターのイラストが入った「Realtime Information」をタップして起動します。
2.
バージョンによって多少異なりますが、サンプルで数種類のメーターが既に表示されている場合と、右の様に真っ黒の画面で何も表示されていない場合があります。
サンプル表示されている物で不要なメーターがある場合は、表示の上を長押しすると「Item options」のウインドウが開き、その中に「項目を削除」と言うメニューがありますので、それを選択すれば画面から消去する事が出来ます。
新たにメーターの項目を追加したい場合は、何もないエリアを長押しするか、左下のメニューをタップして「画面を追加」を選択します。
3.
画面の追加を選択すると、次に「画面種類の選択」と言うメニューが表示されます。
表示させる項目によって適した表示方法は異なると思いますが、基本的には好みで選んで問題ありません。
1画面に、大きめの表示で2~3種類に絞る場合はダイアル(ニードル)と言った、アナログメーターでも良いかと思いますが、4~6種類を一度にモニターしたい場合などは、デジタル表示の方が良いかもしれません。
また、ハーフダイアルなど、デジタル表示とアナログ指針の両方を備えた表示や、軌跡を確認出来るグラフ表示などもあります。
4.
表示タイプを選択したら、次に何の項目を表示させるかを一覧から選択します。
当然ですが、センサーが装備されており、車両のECUが認識している物しか表示する事はできません。
対応している項目は緑に色分けされて表示されています。
例えば、RX-8の場合は水温や吸気温度を表示する事は出来ますが、油温センサーはないためOBD2で読み込む事はできません。
この様な多少の制限はありますが、実際に必要十分な情報を得る事ができるため、ハイチューンでなければ特に困る事もないかと思います。
5.
表示項目を選択したら、次に表示サイズを選択します。
この表示サイズがちょっと分かり難いのですが、最初はとりあえず選んでみるしかありません。
機種によって、画面に対する割合が全く異なるため「大」でも小さい場合や「小」でもやや大きい場合があります。
恐らく、ディスプレイ側の解像度に依存する物かと思われますが、正確な事については不明です。
ちなみに、今回は「デジタル表示」で項目「吸気温度」表示サイズ「中」を選択します。
6.
ここまで選択すると、画面内に位置合わせ用のグリッド線と、先程選択した項目に従って、メーターが表示されます。
このまま表示に触れ、指を動かして好きな場所に配置します。
表示から指を離すと、その位置に固定されます。
7.
これでメーターが固定されました。
位置を変更したい場合は、再び表示の上を長押しし、表示されたメニュー内から「表示を移動」をタップしてください。
先程と同じように表示の位置を調整できます。
また、表示タイプやサイズを変更したい場合や、ウォーニング設定を行いたい場合は、表示を長押しした後、表示されたメニュー内から「Display configuration…」をタップします。
Change display type…画面種類の選択
Change display size…表示サイズの選択
Set High Warning…設定値以上で表示点滅
Set Low Warning…設定値以下で表示点滅
タイトルの変更を選択した場合は、項目名(右の画面では「Intake」)を変更(例:吸気温度など)できます。
更に項目を増やしたい場合は、手順2.からの操作を繰り返します。
8.
一通りの作業が完了すれば、右の様に好みの項目を、好みの配置で表示させる事ができます。
操作の例として表示しておりますが、比較的画面の小さいスマホでは、本当に必要な水温・油温など、大きめのサイズで2~3種類に抑えておいた方が見易いと思います。
また、無線通信の都合上、OBD2アダプタと端末間の障害物や、端末の処理能力などに依存しますので、古い端末を使用している方は表示の遅延や、接続が不安定になったりと言う可能性もありますのでご注意ください。
9.
縦画面表示となっておりますが、横画面表示にしたい場合はホーム画面の設定項目内に、テーマの上に表示されている「基本設定」の項目があります。
基本設定の中に「画面の自動回転」と言う項目がありますので、そこへチェックを入れて下さい。
先程の画面をそのまま横画面に適用すると以下のように表示されます。
以上がTorqueの基本的な使用方法となります。
他にも走行中の記録が取れるロガー機能や、追加プラグインで機能を拡張したりと、より高度な使い方も可能です。
是非色々とお試しください!
面白い機能や、便利な使い方を見付けたら教えてくださいね!
■総合評価
並レベルでコンピュータやスマホの操作、用語が理解できる人であれば、直感的に設定も難なくこなせると思いますが、年配の方や、コンピュータの操作が苦手な方は初期設定が難しく感じるかもしれません。
最大のネックは、恐らくBluetoothのペアリング設定だと思うので、DoCoMoやauなど、端末を契約したキャリアのお店で教えてもらう方が早そうです。
ただし、アプリの使用方法まではサポートしてくれないと思いますので、どうしてもわからない場合は使っている方に設定してもらいましょう。
Torqueはユーザーも多いので、サーキットなどへ行けば、比較的若い方なら情報を持っているかと。
HKSなどのOBDメーターを買うと数万円掛かるところ、わずか1500~2000円程度で同等の機能が手に入るので、よほどメーカーに拘りなどがなければ間違いなくELM327+Torqueです!
個人的な価値観ですが、ダッシュボードにメーターを並べる必要もなく、面倒な配線加工も不要なので、手軽に追加メーターが手に入るのは高く評価できると思います。
もちろん、アナログメーターを並べたいと言う人もいると思うので、この辺りは好みで。