■練習のポイント

○ざっくりと駆動系の仕組みを知る

○無駄な力を抜くように意識する

○バックラッシュのタイミングを見付ける

○原則としてクラッチペダルを使用するが、2度踏みは避ける

○一連の操作に慣れる

○半クラ操作の怪しい人は、クラッチ発進の練習を

 

■目次

◆シフトチェンジとは

◆特殊なクラッチ操作

■シフトチェンジとは

シフトチェンジの基本はクラッチ操作。
自動車学校でも習ったはずです。

じゃあ、何故クラッチの操作が必要なのか。
この点も自動車学校で軽く触れるはずなので、なんとなくイメージ出来る人はいると思います。

エンジンとミッションが繋がっているから、エンストしそうになったら切るとか、シフトレバーを操作する時に切るとか、あまりにも漠然とした話。
中には、エンジンの動力がミッションに伝わっているから、車が停止すればミッションがエンジン止めちゃうよとか、ギアが回ってるから、クラッチを切ってやらないとギアが抜けないし、入らないと、ちょっと分かりやすく説明してくれる教官もいると思います。

んじゃ、ニュートラルでクラッチを繋いだ場合にエンストしないのは、ギアが入っていないから?
もしかして、ミッションにエンジンの動力が伝わってないのだろうか?

答えから言えば、クラッチを繋いでいれば、どのギアだろうとニュートラルだろうと、エンジンの動力はミッションに伝わっていますし、ギアは全て(一部例外あり)ガッチリと噛み合って、ぜ~んぶ回っています。

回っていないのは一つだけ。
アウトプットシャフトと呼ばれる部品です。

それでは、非常に分かりやすい、綺麗な図を見てみましょう(笑

上の図Aは、超シンプルに動力の伝わり方を示した物です。
当然ですが、実際には遥かに複雑な構造ですので、詳しく知りたい方は専門書をご覧になられて下さい。

先程説明したアウトプットシャフトは、駆動輪に繋がっています。
ミッションから駆動輪を繋いだシャフトですね。

シフトレバーはギアを操作する…厳密に言うと、アウトプットシャフトに付いているスリーブを操作し、ギアとシャフトを固定するための装置です。
後で説明しますが、良く耳にするシンクロ機構は、このスリーブとギアの間にあります。

部品云々は操作を覚える上ではどうでも良いのでこの辺にして。

構造上、動く場所はエンジン・ミッション・アウトプットシャフトの3か所に分けて考える事が出来ます。
ここで言うミッションとは、アウトプットシャフトを除いた構造物の総称とします。
クラッチ以降、アウトプットシャフトの上で空転しているギアまでです。
この時点で説明に加えると、文章だとよりややこしくなるため、ミッション内部の構造はこの項の終盤で説明しますので、そこで全ての内容が噛み合えば幸いです…。

まず、完全停止時は全て止まっている状態ですが、エンジンを始動して、クラッチを繋いだ状態であれば、ミッションまでが動きだし、アウトプットシャフトは停止したままです。

ここで1速へシフトするためにレバーを操作しますが、当然クラッチを切らずには入りませんよね?
何故でしょうね?後から説明しましょう。

とりあえずクラッチを切ります。

クラッチを切るとエンジンのみ回転を続け、ミッションの回転が下がり、放置するとミッションの回転は止まる。

ここでは難なく1速に入ると思いますので…と、念のためですが、発進は問題ないですよね?(笑

半クラッチ操作が出来ないと、仮免の実技試験すら危ういので大丈夫だと思いますが。
スムーズなクラッチ操作は慣れるしかないので、操作の怪しい人は、広い平坦な場所でクラッチ操作だけで車を前進させる練習をして下さい。

それでは話を戻しますが、1速に入れたらクラッチを繋いで発進して下さい。

車が動き出せば、この時点でエンジン・ミッション・アウトプットシャフトの3か所が全て回っている事になります。

ここからが重要な話になりますが、このままアクセルを踏み込んで車を加速させます。

エンジンの回転が上昇し、同時に繋がっているミッション、アウトプットシャフトの回転も上昇してスピードが上がります。

ここでシフトアップ(上のギアへシフトチェンジする事)を行いますが、停車中とは駆動系の動きが異なります。

まず、アクセルオフにしてクラッチを切る。
この時点でエンジンとミッションの連結は解かれましたので、エンジンと、ミッション以降がバラバラの動きを始めます。

アクセルを閉じているため、放置するとエンジンの回転数は低下して行く。
このままではミッションの回転も低下していくのですが、ちょっと異なるのはアウトプットシャフトが回っていると言う点。

何故なら、車が動いている状態であれば、駆動輪が回っているので、それに繋がっているアウトプットシャフトは、駆動輪と地面に回されている状態で回転が維持されています。
このアウトプットシャフトと駆動輪の間にはクラッチの様に連結を解除する機構はないので、駆動輪が回っていれば、一緒にアウトプットシャフトも回ると言う事です。

つまり、ギアをニュートラルに戻さなければ、駆動輪が回り続けている間はスリーブでアウトプットシャフトとギアが固定されているため、ミッションも速度に応じた分だけ回っています。

ここでギアをニュートラルへ戻すと、この時点で初めて3点がバラバラに動く事になります。
このまま放置すると、ミッションの回転だけ止まってしまいますが、通常はそこまで放置しないです。

この時点では、エンジン・ミッション・アウトプットシャフトの回転が全く連動していない状態となりますが、シフトレバーを操作して2速へ入れようとすると、ギア鳴きを起こして弾かれる場合と、スムーズに2速へ入る場合に分かれると思います。

これが、停車時でもクラッチを切らずに1速に入らない理由とも繋がるのですが、回転差が大きいとギアが入らないのです。

これでどこの回転差が問題になるのかわかりましたね?

ミッションと、アウトプットシャフトの回転が連動していないと、ギアは入らないわけです。
ミッションとエンジンの回転差だと勘違いしている人がいるので、ここは意外と重要なポイントになります。

尚、クラッチを繋ぐ際は、エンジンの回転がミッション以降の回転と上手く連動していない場合に、変速ショックとして現れます。
シフトアップ時は、エンジンの回転をなるべく下げない様にしたいのですが、次のギアに連動するためには、どうしても回転を下げておく必要があります。

この辺りの繋がり方は、ギア比によって決定されるステップ比と言う物に依存しますが、現時点では気にしなくて良いです。

ちなみに、最初の方で説明したシンクロ機構ですが、これは名前の通り回転を同期させるための機構で、ミッションとアウトプットシャフトの間に生じた回転差を半クラッチの様な理屈で連動させるための機構です。
これにより、少々の回転差なら難なくシフトが決まりますし、回転差がやや大きくても少しラグがありますが、回転が連動してギアが入るわけです。

ただし限界があり、明らかに大きなトルク(エンジンの動力など)が掛かっていたり、あまりにも回転差が大きい場合にはシンクロ機構が上手く働かないので注意が必要です。

また、もう一つのポイントですが、シフトレバーをゲートに押し込む、または叩き込むと言う人がいます。

上記の構造を理解すれば、力任せにレバー操作を行う事が、どれだけ乱暴な事か良く理解出来るのではないかと思います。

回転さえ合っていれば、指一本で操作しても自然とゲートに吸い込まれていきますので、シフトが上手く決まらない時は、操作が遅すぎる、もしくは、操作が速すぎる事が原因だと言う事を覚えておきましょう。

尚、ミッションオイルの粘度などでも、ミッションの回転低下に影響したり、シンクロの効果に影響が出たりしますので、基本はサービスマニュアル記載の粘度を守り、好みで味付けをするのが良いかと思います。

ちなみに!!
今回の図Aが雑すぎるので、敢えて同期ではなく連動と言う言葉を用いましたが、アウトプットシャフトとミッションの回転が連動すると言うのは、アウトプットシャフトと、その外周に付いているギアが同じ角速度で回る事を意味しています。

そうすると、2速にシフトした場合は、ミッション内部の構造を簡単に示した図Bのインプットシャフトの回転は下がる事が分かると思います。

ちょっとおかしな図ですが、青い数字がギア比だと思って下さい。

シフトレバーでスリーブを動かし、左右のギアの組み合わせを変更しますが、ギアの回転はシャフト1回転につき、ギアも1回転ですので、左のローギアはアウトプットシャフトが1回転すればカウンターシャフトは2回転。
右のハイギアは、アウトプットシャフトが2回転しなければ、カウンターシャフトが1回転しません。

インプットシャフト側から見れば、カウンターシャフトを10回転させた時に、アウトプットシャフトを速度を回せる回数が違うので、どちらが1速・2速かわかりますね。

ちょっと強引ですが、この図の場合はカウンターシャフトを10回転させた場合に、左の1速にシフトしている時は、アウトプットシャフトと1速ギアが5回転しています。

この時、ミッションの構造上、ギアは全て噛み合っているるので、右の2速のギアもカウンターシャフトのギアに回されて、20回転している状態。

このまま2速へシフトする時に、クラッチを切ってスリーブのシンクロが働くと、アウトプットシャフトの回転数と2速ギアの回転数を同期させます。
つまり、この場合は減速方向に働きます。(ニュートラルに戻した時点でミッションは惰性で回っているだけなので、勝手に回転が下がる分も含まれる)

すると、噛み合っているカウンターシャフトの回転も同時に下がり、また、それと噛み合っているインプットシャフトまで回転が下がると言う事になります。

これで、低下したエンジン回転と、インプットシャフトの回転差が少なくなり、変速ショックの少ないシフトチェンジが可能となります。


■特殊なクラッチ操作

駆動系のざっくりした構造は理解出来たと思うので、次はクラッチ操作の必要性を考えてみます。

シフトレバーを操作する時は、原則としてクラッチ操作が必要になります。

先程からクラッチを切るだの、繋ぐだのと簡単に説明していますが、これは自動車学校で習った通り、クラッチペダルを踏み込めば、クラッチの連結が解除され、ペダルから足を離せば再び連結されると言うのは説明するまでもないと思います。

では、どの様な時にクラッチ操作が必要なのか、シフトチェンジの工程を見てみましょう。

1.クラッチを踏む
2.シフトレバーを操作してギアを切り替える
3.クラッチを繋ぐ

これだけです。
クラッチ操作は1回。踏んで、離すだけです。

表題が「特殊なクラッチ操作」なので、すでにフライング気味の方がいるかもしれませんね(笑

Wクラッチですか。そうですか…(笑

これは後で説明しますが、基本的にロスになるので、必要となるシチュエーションは限定的になります。

理想なのはノークラッチシフト…なのですが、これは結構難易度が高いので、基本的にはクラッチ操作を用いましょう。

まず、先程の基本的なクラッチ操作を見ると、最初にクラッチを踏んだ時点でミッション側には動力が伝わらなくなります。
この間に、エンジンの回転は降下を始めますが、同時に惰性で回っているアウトプットシャフト、また、ミッションの回転も緩やかですが降下を始めます。

次にクラッチを繋ぐまでの僅かな時間ですが、この間に「失速した分がロス」としてタイムに影響を及ぼします。

なので、初めの項で説明した構造を理解しておけば、回転が連動している内に、瞬時にシフトアップをするのが理想と言う事になるのですが、クラッチペダルのストロークは結構ありますし、これを踏み始めて床に付くまでの時間を短縮するのには限界があります。

ではどうやって短縮するのかと言う事ですが、クラッチを踏まずにギアを抜くテクニックを用いると言う事です。

この方法を用いると何が得なのか。

実際にはクラッチを踏まずにギアを抜くと言うより、踏み始める頃には既に抜き始めている、またはニュートラル(中央の意味ではなく、ギアが抜けている意味)に戻っている状態。
そのままペダルを踏み込んで、次のギアへ直行すると言った感じの流れになります。

あとは、バシッとクラッチを繋ぐだけでシフトチェンジが完了するので、クラッチは踏むと言うより蹴るに近い操作となりますので、ロスする時間を数分の1~十数分の1と言う非常に短い時間に抑える事が可能となります。

でも、クラッチを踏まずにギアを抜くなんて事が簡単に出来るのか?と疑問に思う人もいるでしょう。
初級編で説明するくらいですから、誰でも簡単に出来ますので安心して下さい。

最初の項で説明した通り、シフト操作に強い力は必要ありません。

加速時に、シフトチェンジ直前でレバーをニュートラル方向に向かって軽く力を掛けておきます。
そして、アクセルオフすると…あら不思議!

簡単に抜けちゃったでしょう?

抜けない人は、もう少しだけ力を加えてみましょう。

これがポイントなのですが、ギア同士が噛み合う機械部品には、バックラッシュと呼ばれる…簡単に言えばギアとギアの間に隙間があります。
ガッチリ噛み合っている様に見えても、0.1ミリ、または0.01ミリ単位と言った僅かな隙間があるんです。

これは、加減速方向のいずれかに力が掛かっている間は、ギア同士が強く噛み合っていますが、力の掛かる方向が変わる瞬間に、一瞬だけフリーになる時間が存在します。

このタイミングでギアを抜くと言う方法で、言い換えれば、ギアを入れる時にも同様の事が当てはまります。
ただし、抜くのと入れるのでは難易度が随分違いますのでご注意を。

このタイミングは、最初の内はレバーを抜く方向に構えておかないと抜けないと思いますが、シフト操作の一連としてクセを付けておけば、自然とアクセルオフと同時に手が動いてるってくらいにはなるはずです。

ちなみに、冒頭で出てきたダブルクラッチと言うテクニックは、最初の項で説明した駆動系の構造によるものです。

ちょっと勘の良い人ならわかると思いますが、エンジン・ミッション・アウトプットシャフトがどう言う関係にあるのかを考えると、必要なシチュエーションが見えてきます。

ミッションとアウトプットシャフトの回転が連動していなければギアが入りませんが、通常はシンクロが働いて同期を取ります。
これが間に合わない場合、ニュートラルの時点で一度クラッチを繋ぎ、エンジンの回転と、ミッションのインプットシャフト側の回転を連動させてやる事で、強制的にアウトプットシャフト側の空転ギアまで同期させると言うテクニックです。

わかると思いますが、操作の工程が増えるのでミスのリスクが増す事と、よほど慣れていなければロスになる行為ですので、素早いシフトアップを実現するのは困難です。

ただし、この理屈であればクラッチを使わずにギアを抜いた時点で、エンジン回転とミッションまでが同期していると言う理屈で、セミダブルクラッチなどと表現する方がいますが、ちょっと話は変わってきます。

ここで待ち時間を置く場合は、エンジン回転が下がりきってからシフトする事になるので、ダブルクラッチと同等の効果があると言えますが、下がりきる前にクラッチを切っているので、結局シンクロ機構に期待したシフトである事は言うまでもありません。