■目次
■分相応な車を選ぼう
使用する自動車については、何もスポーツカーでなくてはならないとか、MTでなければならないと言った決まりはありません。
ただし、一部の自動車については、安全面その他の理由により公式戦には参加出来ない場合もありますのでご注意ください。
車は、やはり気に入った車、好きな車に乗るのが一番ですが、車両価格だったり維持費の問題から所有が難しい車もあるでしょう。
予め、具体的にどれくらいのお金が掛かるのかを知っておくと、予期せず手放す羽目にならずに済むでしょう。
若い人に多いのですが、いきなりGT-RやRX-7、S2000などを購入し、早速ぶつけてしまいましたなんてかわいそうな話も良く耳にします。
ぶつけないにしても、この手の車は維持費も高い部類に入るので、なかなかベテランドライバーでも所有している方は少数派です。
非常に人気もありますし、何しろかっこよくて速いのですから、欲しくなるのはわかるのですが、維持するのに精一杯で、走る為の費用が捻出出来ない様では本末転倒です。
また、比較的安価な車両を所有しても、良くわからない内からマフラーや足回りを交換したり、ターボを付けたりなんて事をしていては、最初は良くても段々とお金が底を突いてキツイ思いをする事にもなりかねません。
実際、20代半ばがボーダーラインと言いますか、この辺りで辞めてしまうか、生涯続けるかの差がハッキリしている様に思えます。
もちろん、年齢的にも結婚などを理由に退く方も多いのですが、半数はお金が理由だったりと言う現実があります。
ちょっと怖い話ですが、極端な例では私の師匠だった方は、全日本ラリーにも出場するほど勢いのあった方ですが、20代半ばで借金まみれ。
遂には何の連絡もなく、ある日突然消息を絶ち、未だにどこで何をしているのかわかりません(笑)
他にも、同時期に始めてチューニングにばかりお金を掛け、結局ほとんどサーキットを走る事無く辞めてしまった知り合いもいます。
人生は一度きりですから、どちらが良いかは価値観の問題ですが、長く楽しみたいのであれば分相応な車を買って、余裕が出てきてからステップアップする事をお勧めします。
■気になる基本維持費
例えば軽自動車の場合、自家用乗用タイプで7200円(初年度登録平成27年4月以降は10800円)が、乗らなくても毎年必ず発生する税金です。
後はユーザー車検で通すにしても、2年に1度の車検で自賠責21970円、重量税6600円、印紙代1400円の、合計29970円(2017年2月現在)が必ず発生します。
トヨタ・86など、2Lクラス(~1500kg)の乗用車の場合は、自動車税は年間39500円、車検費用は最低でも合計54240円。
これにガソリン代と、任意保険、加えてオイルやタイヤなどの消耗品や、故障の修理などメンテ費用が必要なりますし、もし車をローンで購入している場合は、その支払いも上乗せとなります。
自分の車を例に挙げると、現在所有の車両はマツダ・RX-8で中古車を約240万円で購入しました。
ローンもなく、駐車場代も掛からないので、月に1000kmほどの走行距離、ガソリンを140円/L、燃費を5km/Lとして計算、任意保険で月10000円ほど払うと考えた場合に、月当たり約4万円と言う基本維持費が発生します。
これにタイヤ代や、約2か月に1度交換するオイル代、ブレーキその他の消耗品代を含むと、実際には月当たり1~2万円の上乗せで月平均5~6万円。
更に、もし車両をローンで5年払いとした場合は、単純計算で月当たり約4万円の上乗せとなり、月当たり10万円ほど払う計算となってしまいます。
上記の様に、車両価格云々より、月々の維持費がどれくらいになるのかで、所有できるか否かが分かれると思いますので、買う前に良く検討しましょう。
例えば、みんなの憧れフェラーリやポルシェなんかも、中古車だと300万円台で買えちゃう物もあります。
定職に付いていれば、若者でも手が届かない範囲じゃないですよね。
また、古くてボロっちい車が車検付き10万円などと言った物もあります。
…が、どちらも言える事は、買った後にどれくらい掛かるのか?と言う点は絶対に無視出来ないです。
50万円で買ったロードスターが特に故障なく何年も走ったのに対して、10万円で買ったミラが数か月でクラッチ交換だ、デフが壊れただ、エアコンが効かなくなっただのと、気が付けばメンテに50万円くらい掛かってしまいましたとなっては、どちらが安いのかわからないので、見掛けの価格だけで選ばないように注意したいところ。
気になっている車、所有している車の基本維持費が知りたい方は、以下の様なシミュレーション出来るサイトがありますので、そちらで確認してみると良いでしょう。
■気になるメンテ費用
基本維持費に上乗せとなるメンテ費用などはどうか?
目安ですが、主要メンテをリストアップすると以下の通りです。
○エンジンオイル交換
交換費用目安:3.5~4.0Lフィルター込 5000円~
エンジンオイルは3000~5000kmに1度が目安。後は必要に応じて。
金額は1L当たり、安い物では鉱物油で1000円程度、高くても化学合成油で2000円程度で十分な物が見付かると思いますが、もちろん非常に高価なオイルも存在します。
自分で交換される方は、20L缶などで購入すれば、単価をぐっと安く抑えられると思います。
お勧めは、ノーマルエンジンでジムカーナ走行を少々と言う程度であれば、ディーラー標準の物でも特に問題はないかと思いますが、スポーツ走行をする場合はエコオイルや、極端に安いオイルは避けた方が良いでしょう。
社外オイルであれば、実勢価格の安いBP Oilのバービススポーツシリーズ辺り。
5W-40のスポーツ&ストリートスペックや、レーシングスペックの0W-40、ターボ車向けには10W-50のラインナップもあります。
こだわる方は、モチュールやワコーズ、フックスなどの高級オイルを推す人もいますが、果たしてどれほど違う物か…。
この辺りは価値観や、僅かな差を敏感に感じ取れる感性の違いで選ぶと良いかと思います。
過去にレッドラインを使って、BPとの差が全く分かりませんでしたが、あくまでも個人的な感想なので、高価なオイルが必要ないとは思いませんし、逆に安いオイルが必ずしも悪いとは思いません。
また、エンジン保護の意味でも、RX-8でシンセレネシスを使い続けて10万km程でブローしちゃった人も見ましたが、オイルの差額と載せ替え費用がほぼイコールと聞いて、標準オイルで10万km目前の自分のRX-8がまだまだ元気なのを見ると、どちらが良いか…。
最近ではガソリンスタンド取り扱いのオイルも人気があり、昔から人気のある出光だったり、最近はエネオスのサスティナなども。
フィルターもたくさん種類がありますが、主目的は濾過ですので、きちんと交換すれば標準の物で良いと思います。
○ミッション・デフオイル交換
ミッションオイル交換費用目安:1.0~1.5L 3000円~
デフオイル交換費用目安:1.0~1.5L 3000円~
こちらは10000kmが目安となりますが、FR車など、ミッションレバーがダイレクトな物はシフトフィールの変化が露骨な印象です。
スポーツ走行をするなら、5000kmに一度は交換をお勧めします。
デフオイルの場合も同様に、特に機械式LSD装着車は3000~5000kmでの交換が必須です。
オイル量は大きな物でもFRならミッション・デフ各2L以下がほとんどで、FFや4WDでも3L程度です。
FR以外はデフオイルも担うので、機械式LSDを装備している場合はデフメーカーの推奨オイルが無難です。
こちらも、サービスデータで指定される粘度を守っていれば、特に銘柄を気にする必要はないと思うのですが、構造上、粘度でシフトの入り具合が変わったりします。主にシフトアップ。
柔らかければミッションが惰性で回りやすく、固ければ回転落ちが速いので、ギア比が離れている場合は、敢えて少し固めを選ぶなど、好みで味付けするのも面白いです。
LSDオイルなどでなければ、エンジンオイルより1L当たりの単価が300~500円ほど高めの設定ですが、こちらは鉱物油を推奨している場合が多いので、交換費用は比較的安価です。
お勧めはメーカー純正か、安価な社外品ではBP Oilのエナギヤーシリーズ、AT車には同社のオートランシリーズなど。
機械式LSDを装着した車両であれば、クスコにはクスコLSDオイルや、ワコーズRGシリーズの他、こだわる方には同社のWR-G、HG-Rなどのコンペティションオイルもあります。
○ブレーキパッド・ローター、フルード交換
パッド交換費用目安:前後セット20000円~
ローター交換費用目安:前後セット20000円~
フルード交換費用目安:8000円~
結構安い物も沢山ありますが、安全に走行するためには絶対に欠かせない部分となるので、ケチらずきちんとした物を。
ミニサーキットを少し走る程度でも、ノーマルパッドではフェードしてしまう事も多々あるので、スポーツタイプの車両なら、少なくとも純正オプションのスポーツパッドなどを選びたい。
とは言っても、純正オプションを買うお金があれば、社外品のブレーキ専門メーカーも手が届くので、どこでも人気のあるエンドレスや、安価で定評のあるアクレなどがお勧め。
・エンドレス・MX72(前後セット定価42000円/実勢価格32000円程度)
スポーツ走行の入門モデルで、初期制動が強めのため、ブレーキングに自信が無い初級者の人でもしっかり効かせられるので、安心感が強いとか。
自分は使った事がないパッドですが、SNSなどでの評判は上々です。
ワンランク上には温度域に幅を持たせたMX72Plusなども。
・アクレ・フォーミュラ700C(前後セット定価32000円/実勢価格21000円程度)
安価なパッドでしっかりした効きとコントロール性に優れた、それなりにお勧め出来るパッド。
温度域は常温~となっているが、実際には低温でのコントロール性が悪い。
効かないわけではないので、その点は安心出来るが、どちらかと言うとブレーキングの発熱で踏力が一定でも制動が勝手に強くなっていく印象。
完全に温まれば自然なフィーリングになるので、サーキット走行なら○、ジムカーナでは△と言った感じ。
・ウインマックス・ARMAシリーズ(前後セット定価43200円~/実勢価格30400円程度~)
シリーズ中でも、ARMA SPORTS AP2、AP3辺りが入門スペックに最適。
特にクセがなく、初期制動は弱い部類なので、低μ路でのコントロール性が良い。
制動は踏力に応じて立ち上がってくるので、それなりに踏み込まなければならないが、スピードに慣れ、2番目に選ぶパッドに最適。
その他にも、安くて人気のあるパッドや、高価で定評あるパッドも沢山あります。
ブレーキローターは極端な良し悪しは滅多に効かないので、ノーマルまたはノーマル同等品で良いでしょう。
中には、焼き入れやスリット入り、軽量化を目的とした2ピースローターなどもありますが、用途やレベルに応じて交換すれば良いと思います。
純正同等のローターでは、断然ディクセルPD(プレーン)が安価で人気があります。
ちょっと奮発したい方は、ディクセルSD(スリット入り)を。
フルードについては、一概にDOT4やDOT5とは言えません。
主成分がブレーキラインを痛める場合もあるので、特に理由がなければ純正同等のDOT3で問題ありません。
また、ホンダ純正などはDOT4を採用している場合もありますが、社外品を含め、沸点や耐久性を確認して選びましょう。
○タイヤ交換
交換費用目安:工賃1500円/1本~
サイズや銘柄で費用が激変するのがタイヤです。
スポーツ走行する上では、最も維持費に影響する部分と言っても過言ではありません。
月に1度程度のサーキット走行に加え、普段履きでも使用する場合は、遅くとも半年に1回の交換頻度となる事は覚悟しておいた方が良いでしょう。
予備のホイールを用意して、スポーツに限定する場合は、1シーズン使える場合もあります。
スライドコントロールが身に付くなどの理由で、安価なタイヤ(俗にいうローグリップ)を初心者に勧める無責任な方もいますが、走る上で重要となるブレーキングや荷重移動を覚えるためには、それなりにグリップしないとお話になりません。
また、唯一地面と接地している重要な部品となりますので、安全をお金で買うつもりで、少なくともミドルクラスのスポーツタイヤ装着を強く推奨します。
一般的なサイズでは、ロードスターやシビックなどで15~16インチ。
195/55R15~225/45R16など
RX-7やインプレッサなどで17~18インチ。
245/45R17~265/35R18など
195/55R15
ダンロップ・ZIIスタースペック 実勢価格38000円/4本
ブリヂストン・RE-71R 実勢価格45000円/4本
ブリヂストン・RE-11S 実勢価格64000円/4本
225/45R16
ダンロップ・ZIIスタースペック 実勢価格68000円/4本
ブリヂストン・RE-71R 実勢価格80000円/4本
ブリヂストン・RE-11S 実勢価格110000円/4本
245/45R17
ダンロップ・ZIIスタースペック 実勢価格92500円/4本
ブリヂストン・RE-71R 実勢価格101000円/4本
ブリヂストン・RE-11S(245/40R17) 実勢価格162000円/4本
265/35R18
ダンロップ・ZIIスタースペック 実勢価格106000円/4本
ブリヂストン・RE-71R 実勢価格142000円/4本
ブリヂストン・RE-11S 実勢価格192000円/4本
※2017年のヤフオク相場
外国産のタイヤで費用を抑える事も可能ですが、当たりはずれが激しい事や、競技でここぞと言う時に国産に及ばないと言う事も多々あるので悩むところです。
しかし、値段を考えると予算に合わせて上手く活用するのも良いかと思います。
一例ですが、オートウェイの取り扱う265/35R18のナンカン・AR-1では、実勢価格58400円/4本と、16インチのダンロップより安く購入できます。
恐る恐る使ってみた印象では、切り込んだ時のインフォメーションが薄く、修正舵が増えてタイムが奮わないのですが、グリップその物は国産ハイグリップに匹敵するので、上手く使えば十分戦えるレベルです。
値段を考えると、相当優秀なタイヤと言えます。
また、比較的舵の浅いサーキットでは、ブリヂストンのRE-71Rより上と評価する人もいるくらいなので、ステージによっては勝ちも狙えそうです。
■おススメの車は?
大凡の維持費がどれくらい掛かるか分かったところで、いくつか入門向けの車両を紹介したいと思います。
相場は2017年現在のカーセンサーによるデータです。
平均維持費は、20歳前後の比較的高い任意保険(月1万円)を掛け、年間10000km走行を想定した場合です。
駐車場代、車両のローンは含みませんので、参考程度でお考え下さい。
○マツダ・ロードスター(ユーノス・ロードスター)
NA6CE、NB6Cなどが狙い目ですが、少し余裕のある方は1800ccのNA8C、NB8C辺りを検討しても良いでしょう。
2シーターのオープンカーなので、実用性が極端に低い事が最大のネックとなりますが、このデメリットが気にならなければ、安価な維持費と豊富な中古パーツで車両製作も比較的容易です。
駆動方式はFRで、決してパワーのある車ではありませんが、クイックなハンドリングで比較的運転が楽です。
車両価格相場:30万円~
月間平均維持費:3万円~
○トヨタ・セリカ
ST20系は2Lエンジンで、その中でも4WDターボモデルのGT-Fourは、若手や初心者の方にはお勧め出来ない。
最終となるZZT23シリーズは、FFのみのNA1.8L。
残念ながらチューニングパーツの選択には頭を抱える事になるが、ベースが優秀なので期待できます。
ホンダのVTECに似た、可変バルブタイミングと可変リフト機構を併せ持つVVTL-iにより、約200馬力と言うハイパワーマシンがこのお値段で!
前期型はリアハッチ周りの剛性不足により、ボディに亀裂が入る事で有名なので、買うなら対策された中期以降をお勧めしたい。
車両価格相場:23万円~
月間平均維持費:3万円~
○スズキ・スイフトスポーツ
人気があるので中古のコンパクトカーにしては割高感は否めない印象ですが、乗ればわかります。
スペックを見ればセリカの方がお勧めですが、何より4ドアと言う点で実用性も兼ね備え、ジムカーナからラリーのベースにも最適な万能型。
そして何より、エキゾーストノートが官能的。
駆動方式はFFで、排気量は1.6Lです。
車両価格相場:35万円~
月間平均維持費:2.8万円~
◎勝ちも狙える比較的安価な車◎
○ホンダ・インテグラTypeR
未だ現役のDC2など、上級者も納得のFF最強クラス。
メーカーチューンの手本とも言える仕上がりで、非の打ちどころが見当たらない。
地味にセダンタイプまでラインナップされているので、実用性を求めるユーザーにもお勧め。
初期の通称96スペックはリアの限界が低く、ピーキーと言われているが、98スペック以降はその点が改善されている。
しかし、ジムカーナではタイトコーナーを重視してか、96スペックの人気が根強い。
車両価格相場:72万円~
月間平均維持費:3万円~
◎優秀だけど安易にお勧め出来ない車◎
○マツダ・RX-7
初期のFD3S型でも100万円近い上に、維持費が大変な事になるので、少なくとも学生が維持する事は無謀と言える車。
基本維持費は上記で紹介した車より少し割高程度だが、何よりオイル消費やスパークプラグの交換頻度は倍ほどとなるので、月当たり少なくとも5万円は覚悟した方が良い。
しかし、この車の速さは折り紙つきなので、維持が出来るなら最後まで一線級の活躍に期待出来る車。
車両価格相場:90万円~
月間平均維持費:4万円~
○ミツビシ・ランサーエボリューション
危ない。とにかく危ない。かっ飛ぶとは正にこの事。
4WDターボで、ノーマルでも実は300馬力を超えちゃってるとまで噂される車。
古いモデルなら50万円以下でも手が届くのですが、とても初心者にお勧め出来る車ではありません。
スバル・インプレッサも同様に、自殺行為と言っても過言ではないです。
少しレベルアップしてから検討するのが良いでしょう。
車両価格相場:44万円~
月間平均維持費:3.5万円~
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