■練習のポイント

○アプローチのタイミングを意識する

○一歩先を見る

○操作を「連動」させる

 

■目次

◆原因はアプローチにあり!

◆一歩先を見る

◆実例紹介

■原因はアプローチにあり!

例えば、以下のラインを目標にして走行すると仮定する。

ちなみに、本当にこの図のラインで走るとロクな結果にならないので注意(笑)

あくまでも例なので、アプローチを仕掛けるタイミングの話として読んでほしい。

このラインを走ろうと思ったら、ラインが直線から曲線へ移行するポイントが紛れもなくターンイン開始のタイミングである事は感覚的にわかると思う。
つまり、この例では黄色の矢印を振ってある位置がターンインのポイントである。

ターンインとは、コーナーリングに於ける初期の初期、まさに入口の処理区間を言うのだが、アプローチと言うと少し違う。

アプローチとは、コーナーリングを開始する「アクションを起こす位置」と言えば分かり易いかもしれない。

はて?って疑問に思う人もいるかもしれないが、経験としておおよそ2つのパターンがあるのではないだろうか。

中・上級者に教わった通りにコーナーリングを開始したのに、上手くインに付けないパターンと、逆にイメージより早くインに付いてしまい、後半がキツくなるパターン。

自分の車は曲がらない。足回りのセッティングが悪い。

ちょっと待ってほしい。それ、本当に車が原因かな?
一度冷静になって、少しペースを落として走ってみよう。

不思議な事に、狙ったラインを簡単にトレースできるし、車もしっかり曲がるでしょう?

じゃあ、車速が速過ぎるのか?

いやいや、それもちょっと違う。

もちろん、車速が速過ぎたり、ブレーキングを詰め過ぎて減速方向にタイヤのグリップを使い切ってしまっていると言うパターンもあると思うのだが、何よりその前に重要なのは車はどのタイミングで曲がるのかと言う事だ。

ロールを極端に嫌ってサスペンションスタビライザをガチガチにしてしまう人もいるが、車はある程度ロールしないと曲がらない。

この例の様な左コーナーであれば、まずハンドルを左に切る→荷重移動が起こり、右側のタイヤが路面に押し付けられる→車が左に曲がりはじめる、と言った感じだ。

つまり、ハンドルを切っても、実際に車が曲がりはじめるまでにはタイムラグが存在する。

これは車種やセッティングによってタイミングが異なるが、速いにせよ遅いにせよ、実際の操作とはタイミングにズレが生じると言う事に変わりはない。

悪い言い方をすれば、この反応遅れに対して、どのタイミングでアクションを起こせば狙ったタイミングで車が動いてくれるのか。
これを見極める必要があり、その遅れを考慮した上でアプローチするタイミングが、青い矢印で示したポイントとなる。

何度も言うが、あくまでもこれは「例」なので、現実としてクヌギの1コーナーで露骨なタイミングのズレは起こり難い。

単純に、速度に対するコーナーの形状で支配される傾向が強いためであり、例えばオートポリスの1コーナーなどはクヌギの1コーナーより広くて緩やかだが、車速が倍以上となるので起こり易いと言える。

クヌギの中でも起こり易い場所と言えば、3コーナー、最終コーナーなど車速が乗っているところからのヘアピン進入などだ。

インに付けない人は減速に集中し過ぎてアプローチが遅れている傾向にある。
後半がキツくなる人はコースアウトへの恐怖心か、速く曲がろうと言う焦りから来る早すぎるアプローチが原因である事が多い。

…なので、上手く行かない時は熱くならずに、一度冷静になってペースを少し落としてみると良いと言うのはそのためである。


■一歩先を見る

これは初歩の初歩として解説した「行きたくない場所は見るな!」と言う内容と繋がってくる部分もあるのですが、その中で行きたい方向を見ようと言う話をしました。

この「行きたい場所」と言うのが何なのか?と言うのが「一歩先」の事である。

初心者の方は、とにかく一つの事に集中し過ぎる傾向が強い。

あくまでも傾向ですが、減速中はブレーキに全神経を集中させ、とにかく速度を落とせ落とせ!と必死になる。
今度は、ハンドルを切って曲がり始めたらそのコーナーをとにかく上手く速く!と曲げる事だけに集中する。
その結果、立ち上がる頃に外に飛び出しそう!とか、コース幅が余っちゃった!とか、そんな事態に陥るわけだ。

つまり、各操作が上手く連動しておらず、それぞれの操作開始タイミングが遅いと言う事である。

例えばコーナーの100m前から曲がらなければならないのに、100m前にブレーキングを開始したのでは、当然間に合わないと言う事は誰でもわかると思う。
それと似た様な事が要所要所で起こっているのだ。

その原因が、1つの事に集中し過ぎると言う事で、解決方法として一歩先を見る、イメージすると言うわけだ。

この一歩先と言うのは、次の到達地点、ないしは次にアクションを起こすポイントの事を指している。

例えばコーナーリングを開始したら、自分が狙っているクリップを意識し、クリップに到達する頃には出口方向、立ち上がりたい場所を意識する。

意識を一歩先に向ける事によって何が起こるのかと言うと、自然と次の操作準備、連動した操作が出来るのだ。

この意識の働きはタイヤのグリップを説明する時に使われるフリクションサークルに似ている。

減速しなきゃ!って意識を1つに集中させていたら曲がる事が疎かになり、切り遅れるが、アプローチのタイミングを意識して、減速体勢から向かうべきクリップの方向を意識すると、自然とハンドルを切り込み、意識の薄れたブレーキからは自然と足が離れて行く。

次に立ち上がり方向、そして加速までを意識していれば、切り込んでいるハンドルも自然と力が抜け、戻す準備が始まる。

そしてもう一つ重要なのは、集中し過ぎない事。

集中するなと言うのはちょっと極端な言い方ではあるが、少し楽な気持ちで、リラックスして走る事で心にゆとりが生まれるのだ。

自分の能力の100%で走ろうとすれば、そこに余裕は残らないわけで、不測の事態が起こった時に対処が難しく、また、決まれば速いが再現性の低いドライビングになってしまう傾向がある。

なので、自分が100%だと思っている走りに対し、80~90%で走るくらいが案外、突っ込み過ぎていた部分などが解消され、楽に速いと言う結果を残す事がある。

いつも怖い思いをしているのに全然タイムが伴わないと感じている人は、ちょいと騙されたと思って気楽に走らせてみよう!


■実例紹介

アプローチの遅れを感じた体験談を、余談として書いておこうと思う。

自分は長い事マツダ・ロードスターに乗っており、2台も乗り継いだ程。

そのロードスターからRX-8に乗り換えた直後の話だ。

3コーナーの入り口で上手くインに付けず、その先のインフィールドS字の切り返しもとてつもなく鈍い。
更に悪い事に、曲がらない、反応が鈍いと言う事でついつい舵角が大きくなってしまい、戻し遅れる事によるアクセルオンのタイミング遅れを誘発する結果に。

車両重量が一気に300kg増加と言う事に加え、急激に長くなったホイールベースにより、ロードスターに比べて全然曲がらない車だと思っていた。

インターネット上の情報を集めても、極低速の多いジムカーナなどでも不利とされ、車重に加えてエンジン特性も低速トルクの低さが問題で、ミニサーキットには不向きな車種と言う意見が多い。

これは燃えますよね!って事で、自分なりの解決策を考えていたのだ。

その結果、導き出した答えが「反応が遅いなら早めに操作すれば良いんじゃね?」ってアホみたいにシンプルな答えだ。

ブレーキング開始そのものを早めに始めてみたり、ハンドルを切り込むスピードをパキッと速く回してみたり、色々と試してみた結果、通常の操作を行いつつ、ハンドルを切り始めるタイミングだけ早くする(ロードスターと比べて)と言う方法で現在の走り方に至る。

S字は右コーナーを曲がり終える前に、既に左に切り込む準備が始まっている。

逆のパターンも有り得るわけで、もしRX-8からロードスターなどのクイックな車に乗り換えた場合は、操作を遅らせてやる必要も出てくるってわけだ。

その後、ちょいとお遊びにホンダの軽トラ、アクティトラックを走らせてみた時の話だが、これも何て言うかRX-8とは違った意味で曲がらない。

限界が低いとかそう言うのとはちょっと違い、もっとレベルの低い領域での話をしているのだが、プッシングアンダーが出易いのか、スムーズに鼻が入らない印象。

MRと言う都合上フロントが軽いのでブレーキを強めに残してハンドルを切り込むと言う、なんとなくのイメージで運転していたためだ。

全てのMRに言える事ではないが、フロントに荷重が載り過ぎると言う事が原因の様で、アクティに至ってはハンドルを切るタイミングを早くするのではなく、ブレーキを抜くタイミングを早くすると言う操作が求められる。その他はのんびりで問題ない。

場合によっては、載り過ぎた荷重を抜くために、舵を入れる瞬間に一瞬だけアクセルを入れると言った操作で、少しフロント荷重を抜いてやる操作をしたりと言った感じ。

明らかにデフがガチガチに効いているとか、極端な足のセッティングでなければ、曲がらない車は無いと言うのが僕の持論だ。

FRだろうと、FFだろうと、4WDだろうと、どこかに必ず曲がるポイントが存在する。

その見極めこそがスムーズなコーナーリングのカギではないかと考えている。