以前、RX-8を車検へ出した直後にミニサーキットを走行して、ホイールナットが緩んだと言う記事を投稿しました。

お店で車検をした直後だから、当然ナットも増し締めされているものだと過信して走行前の自主点検を怠った結果であり、自業自得だと言う結論で締め括っています。

当時は、一応車検に出したお店にもナットを締め忘れた可能性がないかと確認の連絡を入れ、お店が自主的に録画しているカメラの映像から該当のホイールだけ増し締めを忘れていた事実は判明しているのですが、一応直前に4輪ともインパクトレンチでの締め付けは行っている事も確認出来ています。

適正トルクに達していなければ確かに緩む可能性も十分にありえるのですが、その後にダメにしたホイールを調べていると、ちょっとハブリングに気になる点が出てきました。

ただ、この時は可能性の域を出なかったため記事にはしていなかったのですが、先日、身近な所で同じ様な例が出て来たので注意喚起として報告したいと思います。

◆ハブリングって何?

◆安物の社外ハブリングに注意!

■ハブリングって何?

今更ですがご存知でない方のために、まずはハブリングとは何かご説明しましょう。

中には、あまり意識して見た事がないと言う人もいるかもしれませんが、ホイールを取り付ける際にブレーキなどが組み付けられているボルトの突き出した”あの部分”を全体としてはナックルだとか、ハブだとか呼んだりします。

厳密にはナックルと言えばアームが接続されて、ハブベアリングやブレーキなどが組み付けられている部品の事を指しますし、ハブと言えばブレーキローターの裏側にあったりしますが、そんな細かい事はどーでも良いので、ホイールを取り付ける部分がハブだと思ってください(笑)

ホイールを選ぶ際に当然みなさん注意していると思いますが、穴の数とボルトの間隔がマッチした物でなければ取り付けは出来ませんよね?

国産車だと主に4穴と5穴があり、それぞれP.C.D.(ボルト間距離)で100mmと114.3mmの2種類が主流ではないでしょうか。

ボルトが5本突き出したハブに4穴のホイールが取り付け出来ないのはもちろんですが、PCDも一致しないと取り付けは出来ません。

わざわざ社外ホイールを買うユーザーなら、そんな事くらい知ってるよ!と言う声が聞こえてきそうですが、それではハブ径は意識した事がありますか??

そうなんです。

純正ホイールだと分かりやすいのですが、実はボルトに囲まれた中央にある出っ張った部分。

ここをハブセンターと呼びますが、純正ホイールの裏側の中央の穴はこのハブセンターの径とピッタリに作られています。(一部、オプション品などを除く)

なので、穴の数とPCDが一致するからと言って、他社の純正ホイールを流用しようと思ったらハブ径が合わず取り付け出来ない場合があります。

国産車の主流サイズで恐らく一番大きいのが、マツダと三菱の5穴に採用されているφ67、小さい物ではトヨタとマツダの4穴に採用されているφ54辺りではないかと思いますが、あくまでも私が知る範囲の話なので、もっと大きな物、小さな物はあるかもしれません。

この様にメーカー毎にハブ径が異なるため、アフターパーツの汎用ホイールは各自動車メーカーのサイズにいちいち合わせて製造するのは大変だし、コストも掛かるので、車種を選ばず取り付け出来る様に予め大きめのハブ径となっている物がほとんどです。

例えばエンケイはφ75が多い様ですし、レイズだと4穴にはφ65、5穴にはφ73と言うサイズを採用していたりする。

そのまま社外ホイールを取り付けると、純正ハブよりホイールのハブ径の方が大きいので気にせず取り付ける事ができますが、隙間が開いている事になりますよね。

例えばφ54のハブにφ65のホイールを取り付けると、半径当たり4.5mmもハブから離れているわけで、ハブボルトのみで荷重を支えていると言う事になります。

ハブリングはその隙間を埋めるためのパーツで、純正のハブ径をホイールのハブ径に変換するアダプターだと思えば理解しやすいと思います。

こちらはDJデミオの例ですが、ハブセンターにこんな感じで取り付けてハブ径を拡大してやると言うわけ。

リング外径に適合するハブ径のホイールを取り付ければ、純正ホイールの様に隙間なく密着すると言うわけですね。

さあ、ここから意見が分かれるところですよ!(笑)

一部の外国製自動車の様にハブからボルトが突き出しておらず、表からホイールボルトを取り付けて締め込むタイプは、穴の位置合わせに苦労するのでハブリングがあった方が作業が楽だと思います。

…が、主に意見が分かれるのはホイールのセンター出しだとか、ハブセンターで荷重を支えるか否かと言った部分。

一応、ホイールナットはテーパーになっている物が主流なので、全てのナットを均等に締め込む事で勝手にセンターは出ると主張する人が多いですが、これはその通りだと思います。

このセンター出しと言う部分に関しては、私もハブリングは要らない派です。

んで、ハブリング推奨派の意見に、本来はハブセンターで荷重を支えるものだと主張する人もいますが、これについても、まあそうかも…(笑)

自動車メーカーがハブで支えるものだと明言しているのは見た事がありませんが、純正ホイールはハブ径が一致してガッチリ嵌っているし、間接的には過去にハブボルトの耐久性の記述を読んだ事がありますが、連続して繰り返し微小角度の曲げ方向に力を加え続けて数億回だったか数十億回だったか…。

走行中に高速回転する車輪は常にあらゆる方向から力が掛かり続けているので、15~20万kmを超える頃には一応交換しておいた方が良いんじゃね?くらいの話だったと思います。

この話を基に考えれば、ハブで支えずボルトのみで荷重を受け続ければ、すぐに何かが起こるわけではないけど、10万km以下でもハブボルトの寿命が来るのかな?とも考えられますよね。

ただ、ハブリングを使わなくても、ちゃんとナットさえ締めていれば過酷なラリーダートトライアルで何シーズンか走っても車輪が脱落したなんて話は聞かないので、ぶっちゃけハブリングなど使わなくても大丈夫だと思います。

…が、私が使用する理由は”念のため”と言うのが1つ。

もう1つは、仮に効果は無くても何一つデメリットがあるわけではないので、とりあえず使っておけば安心でしょ?と言う気持ちの問題(笑)

稀に付けない事をやたらと強く推奨する人もいますが、少なくとも付けておいてメリットになる可能性はあっても、デメリットになる事はないのだから、気になるなら付けておくに越した事はないのです。


■安物の社外ハブリングに注意!

さあ、ハブリングが何なのか理解したところで、気休めでも安全のために取り付けておきましょう!

…と言いたいところですが、安心を得るために取り付けたはずのハブリングが仇となる例があります。

私が以前経験した例では、車検直後に新品のホイールを僅か数分の走行でパーにしてしまった悲劇です。

車検時にお店の整備士さんが増し締めを忘れたためだと説明されましたが、私自身はハブリングが原因である可能性も疑っていました。

ただ、可能性の域は出ないので記事にするべきかどうか迷っていました。

ところが先日、知人の車で何度増し締めしてもナットが緩むし、ハブボルトホイールナットを新品に替えてもダメ。

校正済みの高価なトルクレンチを使ってしっかりトルク管理もしているのに毎日締め直さないと緩むので、悪質ないたずらの被害に遭っている可能性も疑って警察に相談しようか…とか、駐車場に監視カメラを付けたりなんて事まで(笑)

ですが、取り外したホイールを見て気が付いたんですよね。

これは私が以前ダメにしちゃったホイールの写真ですが、矢印で示した部分にハブリングが嵌っています。

ちなみにこのホイールはエンケイPF01EVOと言うモデルですが、取り付けてあるハブリングはヤフオクで買った”エンケイ用”の社外品です。

ご存知の方も多いと思いますが、レイズエンケイ純正ハブリングって結構良い値段するでしょう?(笑)

エンケイのハブリングだと、定価は1個1800円くらいです。1個、ですよ?

必要数は4個なので、揃えたら8000円くらいって事になる。

対して、ヤフオクやメルカリで売っている社外ハブリングなら、安い物では2個1500円~と言った物まであるわけですよ。

ハブリングなんてサイズさえ合っていれば隙間を埋めるだけだから問題ないだろ?と思っていたのですが、実はそうとも言い切れない。

単純に内径・外径のサイズだけでなくリングの高さも気を付けないと、厚すぎる物ではホイールのハブ当たり面からはみ出して、ホイールがハブに密着しない恐れもあります。

こちらはリングを取り外した状態の写真ですが、矢印で示した穴の縁は斜めに切削加工されている様です。

ハブリングは、ただパイプをカットしただけの様な形状や、鍔付きの物もありますが、鍔付きの場合はこの斜めに削ってある部分に収まる様になっています。

ホイールメーカーの純正ハブリングなら、当然自社のホイールに完全適合する様に製造されているし、実際に嵌め込んでみればわかりますが、完璧にフラットと言うわけでなく極僅かにホイールの面より引っ込む(~0.1mm程度?)物が多い様です。

対して、社外のハブリングだと完璧にフラットなら良いが、爪が掛かる程度にホイールからはみ出しているとか、鍔付きで粗悪な物では角度や深さが合わず、明らかにはみ出している物も見られます。

もう一度先程の写真を確認して頂きたいのですが、実はこれ、鍔のサイズが合っておらずはみ出しているんですよ。

ハブにはハブリングしか当たっておらず、ホイールが密着していなかった様なのです。

このはみ出し分の高さを計測すると、約0.3mmとなっていました。。。

0.3mmって…これ、誤差のレベルじゃないです。かなり大きいですよ?(汗)

先にホイールへハブリングを取り付けて装着すれば気が付いた可能性もありますが、ハブ側にリングを取り付けてからホイールを装着していたので完全に見落としていた様です。

この状態でナットを締め付けても一応適正トルクで締め付ける事は可能で、このまま高速道路を1時間ほど走っても異常は感じませんでしたから、事が起こるまで気付きませんでした。

当然、目視で点検しても全くハブからホイールが浮いている様にも見えないのです。

しかし現実には、リングの僅かな面積でしかハブに接触していないし、リング自体もアルミ製で変形しやすいと言う条件も重なったのか、サーキット走行によって強い力が掛かりナットが緩むと言う症状に至った可能性が高そうです。

ちなみに、先日不具合を発見した知人の例では鍔なしタイプのハブリングですが、厚すぎて僅かにホイールからはみ出している状態。

目視点検では完全にフラットに見えますが、触ってみると爪が掛かる程度の僅かなはみ出しがあり、これは注意して確認しなければ本当に気付き難いです。

とりあえずハブリングを取り外してホイールを装着したところ、毎日増し締め作業を繰り返していたのが嘘の様に、今のところ約1週間、全く緩まなくなったらしい。

これは原因確定でしょう!

フリマサイトで販売されている安物が全てダメと言うわけではないと思いますが、やはり確実な純正品を使用するのが望ましいのは言うまでもないです。

もし値段に釣られて安物を買ってしまった場合は、実際に車に取り付けて使用する前に、ホイールからのはみ出しなどがないか入念に確認する事をお忘れなく!

走行中にナットが緩めば、僅かな緩みでも結構大きな音や振動が出るので気付かないと言う事はないと思いますが、ハブボルトやホイールがダメージを受けますし、最悪の場合は車輪が脱落して大事故に繋がる恐れもあるので、くれぐれも注意してくださいね。

ホイールナットがよく緩むな~と心当たりのある人は、一度ハブリングを確認してみた方が良いかも?

追記(2024.3.29)

メールとX(旧Twitter)で、安物や社外品が問題なのではなくサイズや形状を見誤った結果ではないかと言うご指摘がありました。
確かに仰る通りだと思います。
ハブリングを使用する時は、浮きなどなく正常に嵌っているか入念に確認しましょう。