車好きな人なら、庭先でのタイヤローテーションやホイール交換は結構頻繁に行う作業ではないでしょうか。

車に付属の車載工具で作業する方もいると思いますが、それなりの頻度になってくると作業を楽にするための油圧ジャッキクロスレンチくらいは揃える方も多いはず。

特に、社外ホイールなどに交換しているとナットサイズが小さくなる例が多いので、純正工具では対応できない場合もあり、複数のサイズに対応出来るクロスレンチは重宝するツールの1つです。

…とは言っても、クロスレンチって結構嵩張るので、庭やガレージで使う分には良いですが車載工具としては普段邪魔になると言う欠点がありますよね。

その欠点を克服できる折り畳み式などがありますが、何より分解してコンパクトに収納できる高機能クロスレンチは、特にサーキットを走る方や走り屋さんには超お勧めの必須ツール!

今日は特に人気のある二大高機能レンチを比較レビューしたいと思います。

◆小寺製作所・スパーダの特徴

◆ストレート・スピーダーレンチの特徴

◆使い勝手と耐久性を比較

■小寺製作所・スパーダの特徴

まずは比較するクロスレンチをご紹介しましょう。

1つは圧倒的シェアを持っている小寺製作所の「スパーダ」シリーズ

スパーダは通常のタイプスパーダTypeSの2種類があり、通常タイプは17・19・21に加えて12HEX(六角)となっているので、昔のスパルコやアドバンの専用ナットにも対応出来ます。

対してTypeSは12HEXの代わりに9.5sqのソケットに対応した物で、汎用性が高くホイールの着脱以外の目的でも使用可能となっています。

尚、スパーダはクスコなどのアフターパーツメーカーでも採用されるなどOEM供給もされている様で、全て含めるとカラーバリエーションも豊富です。

それでは、実際に外観と特徴を見てみましょう。

まずはこちらが小寺製作所のスパーダTypeSです。

このモデルは私も昔から愛用しており、初めて買ったのが通常のスパーダ、後に車を乗りかえる度にスパーダTypeSを購入して車に積んでいます。

折り畳みや分解式と言った特徴に留まらず、なんと刀を鞘に納める様に一本になっちまうと言う驚きの構造で、本体も軽量に作られています。

日本製と言う事もあり、精度もなかなかのもので、専用ケースが付いているのも嬉しい。

ロードスターに乗っていた頃、限られた収納スペースを有効に使うために、とにかくコンパクトな物を探し求めてこれに辿り着いたわけですが、ただコンパクトなだけではありません。

見掛け以上に頑丈だし、メッキの腐食や剥げも起きないのは驚かされます。

鞘から引き抜いて組み立てると、お馴染みのクロスレンチの形状に変身!

何より、カッコイイでしょう?(笑)

冒頭でも説明しましたが、通常のスパーダは17・19・21・12HEXに対応し、TypeSは17・19・21・9.5sqとなっています。

通常、ホイールナットを外す場合は全く問題なく対応しますが、特殊なナットを外すためのソケットを組み合わせたり、他の用途で使用したい場合にはスパーダTypeSがお勧めです。

その他、後から紹介しますがキズ防止のソケットを組み合わせる場合など、ホイールナット用のソケットは差し込みが12.7sqの物が多いので、欠点としてはこれを使用するためには変換アダプターが必要だったりと煩わしい面もあります。


■ストレート・スピーダーレンチの特徴

もう1つは早回しに特化したモデルで、KTCなどの工具メーカーからも同様のタイプは販売されていますが、今回用意したのは安価なストレートのスピーダークロスレンチ

こちらは特に有名なモデルと言うのはない様で、工具メーカーの信頼性や精度に左右されると思いますが、ホイールナットを緩める事に重点を置くのでソケットさえ一定水準を満たしていれば特に気にしなくても大丈夫だと思います。

こちらのクロスレンチはスパーダ同様に完全に分解可能な構造となっていますが、1本に収納する事はできません。

かなりしっかりした作りで、ずっしりと重い印象です。

構成は軸とハンドルに分かれており、あくまでもこれは本体なので、単体では何も出来ません。

組み立てるとこの様にごついクロス形状となり、軸の先端に12.7sqの差し込みのみの構造。

ここに使用するソケットを差し込む事でクロスレンチとして機能する工具となっています。

そのため、スパーダの様に単品でホイールの着脱は出来ないため、ソケットを一緒に積んでおく必要があります。

これがデメリットになるかどうかは、どんなソケットを使うかによると思います。

私が愛用しているホイールナット用のソケットは、アストロプロダクツの薄口ソケットセットですが、これの特徴はアウターに樹脂製のカラーが付いているためホイールのキズ防止に役立ちます。

スパーダを使用する際も、敢えてこのソケットを使っていたので、私の場合だとむしろ9.5→12.7sqの変換アダプターが不要になる分、車載しておく道具の数は減る方向ですのでメリットとなっています(笑)

ちなみに、この樹脂カラーを取り外せば薄口ソケットとなるので、純正の21mmナットを社外ホイールなどに使う場合でも着脱は可能です。

まあ、そう言う事ならスパーダも標準で薄口となっているので着脱可能ですが…。


■使い勝手と耐久性を比較

単純な対応ナットや部品点数などで言えば、スパーダの方が優勢と言えますが、実際の使い勝手や耐久性はどうでしょうか?

まず、ホイールナットを緩める一発目は力が要りますよね。

ご覧の通り、スパーダは差し込み穴を変える事で梃子を利かせる事が出来るので、固く締まったナットも緩め易いです。

他のサイズのナットにも、こんな感じでハンドルの長さを変えてやればOK。

ナットが緩んだら中央で固定して早回しモードに変形させてやれば、通常のクロスレンチの様に素早く回せます。

ただ、メッキされた方を軸にして17mmやソケットを使用する場合は問題ないものの、鞘側を使用して19・21を早回しする場合に、遠心力でハンドルが抜ける場合があります。

これ、恐らく新品時はそれ程問題にならないのですが、長年使っていると差し込み穴にガタが出て抜け易くなり、一度顔の方へ飛んできそうになって怖い思いをした事があります。

また、メッキされたハンドルの中間と端にボールが付いており、これの引っ掛かりで固定されるだけと言う構造からも、勢い余って抜けてしまったり、差し込み過ぎてしまったりと位置合わせに少し手間取る場合がある事、軸の形状が六角である事から、急いで差し込もうとすると引っ掛かって上手く組み立てられないと言う事があります。

それ程大きな問題ではない様に感じるかもしれませんが、意外とこれが良く起こるので、便利な反面やや使い難さが気になるところです。

実は私、これを数年置きに買い替えているんですよ(汗)

個人的には一押しのクロスレンチなのですが、最大の欠点がここだと思っています。

ホイールナットの着脱だけで3~4年が寿命と言ったところですし、月に何度も作業する人なら2年持つか怪しいと言うのが正直なところ。

正しい使用方法で~、適切なトルクで~などとお決まりの言葉が聞こえてきそうですが、実際、例を出せば12キロのトルクで締めなさいってナットをクロスレンチで締め上げるわけではなく、トルクレンチで増し締めします。

緩める時はクロスレンチを使いますが、ホイールナットの締め付けトルクを想定したギリギリの所でしか使えない強度設計なのか?と疑問に感じますよね。

もちろん常識の範囲を超えた使い方は論外としても、通常は、ある程度のオーバートルクまで見越した余裕のある設計で作るのが普通だと思うので、耐えられないのであればこれは工具としてどうなのかな?と。

アイデアやデザインは非常に優秀な商品だと思うので、是非この辺りの欠点を見直して商品改良に努めて頂きたいです。

スピーダーレンチもハンドルの位置を2段階で固定出来るので、ナットを緩める一発目も楽です。

この点はスパーダと同じと言えますが、ソケットと併用する前提の設計なので、軸とハンドルの役目が明確に分かれています。

ナットを緩めたら、軸に付いている黒いボタンを押せばハンドルがフリーになるので、そのまま差し込みましょう!

ハンドルに切ってある溝でロックされるので、素早く早回しモードへ。

これ、かなり優秀です。

ハンドル自体も丸棒形状なので、スパーダの様に角度など気にせず素早く差し込んで組み立てが出来ますし、ハンドルにグリップが付いているのも結構嬉しいポイントです!

さあ、このタイプのクロスレンチですが、メーカーによって特徴が異なります。

ストレートのクロスレンチはこのグリップを握り締めたままハンドルをスナップすればくるくると回ってくれる…

…はずなのですが、なんじゃこりゃ!?

ベアリングなどが入っているわけではなく、軸の上にグリップを被せて抜け止めしてあるだけなので、回り方がかなり渋い。

グリップ内側の摩擦が強いのかスムーズに回らないが、通常のクロスレンチの様に掌で軸を支えてハンドルを回すとグリップ部分が手の上で回ってくれる程きつくもない。

全然早回しできない(笑)

こんな時、スパーダなら軸にしてある方を手で掴んでグルグル回してやれば、ハンドル側が慣性でサポートしてくれるところですが、こちらはグリップ部分だけ回って軸が回せないので使い勝手が悪い。

そこで、グリップ部分の軸受けに5-56を吹き付けてやりました!

これにより、ブンブン回ってくれるようにはなりましたが、どうも掌で軸が回っていないと感触的に違和感が凄くてモヤモヤします。

この辺りの感覚は慣れるしかないと思いますが、比較としては以上です。

カッコよくて、作業していて気持ちが良いのはスパーダ

クイックな組み立てと耐久性ではスピーダーレンチと言ったところでしょうか。

どちらも一長一短あると思うので好みで選べば良いと思いますが、現状の耐久性が改善されなければ、私個人としてはスピーダーレンチの方をお勧めしたいです。

何より、本体がガッチリしているので、一発目のブレーカーバーとして使用する際の安心感はスパーダを圧倒的に凌いでいる印象です。

クロスレンチ選びに悩んでいる方は参考にしてみてください。