RX-8のブレーキが結構強力なのは有名な話。
現在はどうかわからないが、2004年に国土交通省のブレーキ性能試験で歴代最短の制動距離を記録して、長い事更新されていない。
まあ実際のところ、これって単純にブレーキのサイズが云々とか、そう言う話じゃなくて、ABSなどの電子制御や、効率よく前後のブレーキを利かせる様に足回りやシャシー構造などが優れるって事だと思いますが。
慣性の法則に従えば、理論上は軽い車の方が短い距離で止まるはずですが、必ずしもそうならないのは色々な条件が複雑に関係しているからですよね。
それはともかく、サーキットでフルブレーキしてみてもわかる通り、RX-8のブレーキ性能は確かに優秀です。
正直、制動力自体に不満はないのですが、もっと良く止まるなら、それに越した事はないよね~って欲も出てくるわけですよ。
■リアブレーキを大径化する企画
2年程前からリクエストがあったのですが、安価なブレーキキャリパーオフセットキットが作れないかと言った話。
ポイントは”安価な”って所にあります。
パーツ製作を検討するにあたり、数社の金属加工業者に話を持ち込んでみたのですが、ブレーキキャリパーをオフセットさせるための金属製アダプターは、ワンオフでも2~3万円程度で製作可能で、それなりの数で量産などとなれば2万円以下でも可能だと言う事でした。
ただね、安価と言うには単純にパーツが安いからって話では済ませたくないんですよ。
使用するブレーキローターが専用品だったり、キャリパーを変更したり加工したりなんて事になると、トータルで見て安いとは言えないと思うのです。
そして何より信頼性です。
部品の耐久性と言うのはもちろんですが、この場合消耗品であるブレーキローターやパッドと言った物が誰でも容易に入手出来るか、部品供給が止まらないかと言った心配があるので、サーキットなどを走る方はもちろん、普段使いの方でもすぐに交換が必要なんて事態に陥った際、必要部品がすぐに手に入るかどうかと言うのは車をメンテする上では一番不安な部分だと思います。
なので、うちで買うしかないよ~みたいな事は絶対にしたくない。
例えば、あるショップのキャリパーオフセットキットが14万円程で売られていますが、どうも中古でゴロゴロ出てくると思ったら、勢いで買ったは良いが、ブレーキローターが摩耗して交換する際に、専用品なのでこいつが2枚セットで8~10万円程するって話です。
これではキットで買い直すよりは安いにしても、気楽な気持ちで手を出したライトユーザーの期待を裏切る様な形になってしまいます。
じゃあどうするのか?って話ですが、ブレーキローターの外径が大きくなっても、ハットの寸法(ボルトのPCDやハブ径など含む)がRX-8と一致して、尚且つ容易に、そして安価に入手可能な物を使う。
また、ブレーキホースやサイドブレーキワイヤーの加工などしなくて済む様に、キャリパーはそのまま使えるのが理想なので、ディスク厚も18~20mmの物が必要。
って事で、色々とリサーチした結果、FD3S型RX-7の後期17インチ用がこれらの条件を満たし、そのまま流用出来そうだと言う結論に至る。
このブレーキローターが使用可能であれば、ノーマルφ302からFD用φ314と外径12mmアップとなる事と、ディーラーで純正部品の手配も可能だし、ディクセルなどアフターパーツメーカーでも安価に純正同等品からスリット入り、焼き入れディスクなど入手する事も可能だ。
■キット製作過程と結果は…
先に結論から言っちゃいますけど、大失敗に終わりました(笑)
前項で言った通り、社外のオフセットキットを使っていて、専用ブレーキローターが高いとか、一部の方からはメーカーが製造・販売を終了してキットがただの鉄くずにって話があったので、やはりこう言う部分がアフターパーツの消耗品を使う最大の欠点だよねって思います。
さて、情報収集が終わったところで、次は部品を手配する必要があります。
幸いにも、RX-8のハブ周りの部品は倉庫に予備部品としてストックしてある物がゴロゴロあるので、惜しみなく使っちゃいましょう。
問題はFDの17インチ用ブレーキローターですが、これが中古でも意外と高いし、寸法チェックのためだけに新品を買うのもちょっと…と躊躇していたのですが、たまたま1枚しかありませんってジャンク品が安価に売られていたので購入。
とりあえず、RX-8のリアハブASSYにFDのブレーキローターを取り付けてみます。
ちなみに、ハットの寸法は確認済みで、実際にキャリパーを被せてみてもセンターで掴めます。
また、ご覧の通りφ314であれば、標準のバックプレートの内側に収まり、元々このサイズだったかの様な佇まいでしょう?(笑)
ただ、ここから問題が発生する事となる。
今回使用するブレーキローターは、ノーマルのφ302からφ314へ12mmアップと言う事になる。
キャリパーの外側へのオフセット量は6mmと言う事になるので、単純に外側へ延長しただけではボルト穴がかぶってしまうので、円周方向へ角度もオフセットしてやる必要がある。
信じられるかい?
この時点で、まだ気付いてないんだぜ?(笑)
さて、キャリパーブラケットの角度をずらすと言う事は、バックプレートの一部切削加工が必要になってくる。
パーツが完成した際に正確な、最小限のカット寸法を確認すれば良いとして、設計段階ではとりあえず邪魔になりそうな部分をテキトーにざっくりとカットしてしまう。
どちらにずらすべきかこの時点では判断できないので、両側をグラインダーで切断した。
んで、キャリパーブラケットをブレーキローターに被せてみる。
…ん?
少し右に回したところで嫌な予感がする。
とりあえず、ボルト穴のかぶらない位置まで回してみるが、これ、わかりますかね?
ハブ側のボルト穴と、ブラケットが被るのでオフセットブラケットを製作したとしても、固定する事が出来ません!(笑)
極端な話、ハブ側にタップを切り、ナットを使わずにボルトで直留めって方法もありそうですが、さすがにナックルを加工するなんて愚行ですからね…。
じゃあ他の方法は?となると、全然かぶらない位置までぐるりと移動させるって方法ですが、これだとブレーキホースやサイドブレーキワイヤーの寸法が変わってくるので論外。
では、やはりハットが浅く、ディスク部が外へ出る専用のブレーキローターか?となるが、これじゃリクエストに応えた事にはならない。
唯一現実的な方法としては、ロングハブボルトに打ち替え、ハットの内側に8~10mmのスペーサーを仕込む事で外側へオフセットしてやる方法だが、これだと浅いハットとは異なりホイール自体も外側へオフセットする事になる。
つまり、現状でホイールサイズをぴったりコーデしている人にとっては、このバランスが崩れる事になるわけで、あまり良い方法とは言えないし、そもそもハットの内側に1、2mm程度ならともかく5mmを超えるスペーサーなど安全面で不安がある。
これらの理由から、リクエスト頂いていたキャリパーオフセットキットの企画は断念せざるを得ないと言う結果となりました。
ただね、リクエストを頂いている以上、諦めはしません!
同等のハブ径となると原則マツダ車と言う事にはなりますが、三菱も同じPCD114.3-5Hのハブ径φ67となるので、RX-8より大径でハット高が低いブレーキローターを探してみます。
あまり期待せず、リベンジをお待ちください!
■ベースグレードのフロントブレーキを大径化
失敗談だけで終わるのも切ないので、ちょっとおまけネタを。
RX-8のベースグレード、後期型ではTypeGと言ったモデルがあります。
このグレードだけフロントブレーキローターのサイズが小さく、φ303と言うサイズが付いています。
他のグレードはφ323、リアは全グレード共通のφ302です。
まあ、ダートラ競技など特殊な条件を除いては、ブレーキを小さくしたいと言う人はなかなかいないと思いますが、大きくしたいと考える人は多いと思います。
RX-7なども後期の17インチ用の流用が定番で、ハブこそそのまま使えますがブレーキローターにキャリパー、パッドまでまとめて交換で結構良い値段になります。
しかし、RX-8の場合はすっごい安価にグレードアップが可能です!
ここがポイントなのですが、実はキャリパー本体は全車共通だと言う事。
ナックルの交換も必要ありません。
キャリパーブラケットが違うだけ、です。
通常、上位グレードのブレーキを流用するにしても、中古で少しでも安価にグレードアップしようと思えば、ピストンの固着がないか、変形がないかと心配するところですが、RX-8の場合はキャリパーブラケットが無事なら後は気にする必要がありません(笑)
上に掲載してあるキャリパーセット(ブラケットは外しています)ですが、なんとヤフオクで300円です(笑)
送料の方が高い…。
もちろんピンキリですが、安い物だと500円以下で普通に出回っているので、こいつをゲットすれば、後は上位グレードのブレーキローターを買うだけで”ポン付け”流用が可能です。
これがキャリパーブラケット、キャリパーサポートと呼ばれる部品。
ブレーキローターを用意すれば、これを入れ替えるだけでブレーキのサイズ変更が可能なので、小ネタとして覚えておいて損はないです。
例えば、マツダスピードアクセラなんかも、中古で安価に出回っている標準のアクセラのブレーキを移植すれば15インチまで一気にインチダウン可能なので、走らないからランニングコスト重視でって人や、ダートラやラリーで使いたい人にはお勧めです。
標準のアクセラにマツダスピードアクセラのブレーキを移植しようと思うと、希少価値のせいか部品代が高いですが(笑)
この様に、キャリパー自体が共通でなくとも、さすがにグレードや前期・後期程度の差でナックルまで違うと言う車は稀なので、キャリパーブラケットとナックル側のボルト穴は共通で使える物が多く、下位・上位グレードで流用が可能です。
物によってはバックプレートを交換する必要があるかもしれませんが、他車から強引に流用する事に比べたら難易度はそれ程高くありません。
丁寧なご回答どうもありがとうございました。
リヤブレーキのオフセット大径化し純正ローターが使えるブラケットならコストパフォーマンスいいので購入したいと思いますが、製品化されず残念です。
ブレーキ流用はZ32フロントキャリパーを使うものでしょうか。ただ純正パッドは使えず他銘柄になるのでロングハブボルトでもFD純正リヤローターのブラケット移植キットを個人的には欲しいです。
残念ながら、こちらの企画は現状でボツ案となったものです。。。
当初の予定では、私も価格面や供給に不安のある専用部品は避けたいと考えていたため、純正部品を上手く組み合わせる方法を検討していました。
記事に記載の通りですが、他車のキャリパーは使用しません。
具体的にはローターのみFD3S後期から流用した場合、ディスク厚及びハット寸法がRX-8のリアローターと一致するため、拡大された径の分だけRX-8のリアキャリパーをそのままオフセットさせる案となります。
ただ、この場合はオフセット量が少な過ぎるため、外側へのブラケット延長でボルト固定が困難と言う事が判明したためお蔵入りとなりました。
ナックルに取り付けるボルトの頭を回避出来る様に、10mm程度のロングハブボルトを使用してローターのハット内部に8~10mmのスペーサーを挟めば外側に動かせますので、延長ブラケットの形状が少々複雑にはなりますがRX-8の純正キャリパーをそのまま固定する事は可能だと思います。(ただし、ハット部が外側にオフセットした分、ホイールのツラ位置も外側へ移動します)
製作コストに対して需要の低い部品ですので、今のところ製作の予定はありません。
1つの案として、ワンオフ依頼などされる際の参考情報としてお考えください。