マツダスピードアクセラの定番チューン、封印解除とは一体どのような内容なのか。

通称、封印解除と呼ばれているMSアクセラのメニューだが、内容はECU書き換えである。

点火時期調整の例(ロードスター)

ECU書き換えと言っても、ハードに燃料噴射時間や点火時期まで詰めて行くユーザーは少数派の様で、ある制限をキャンセルしてしまおうと言うのが、MSアクセラに於ける封印解除と呼ばれるメニューになる。

もちろん、中にはより高出力を求めてMAPなども現車合わせで追及するユーザーもいるが、これはここで言う封印解除の範疇になく、あくまでも一般的なECUチューンの領域となるので今回は省かせて頂く。

さて、MSアクセラに施されている制限とは一体何なのか…?

MSアクセラのレビューにもヒントを記載したが、2.3Lに低速重視のターボチャージャーを装備していながら、どこかトルク感の稀薄な発進、加速時もスペック程強烈な印象も受けない。

しかし、3速以降は紛れもなく高トルク、高出力エンジンのフィーリングである事からも、1・2速のフィーリングがいまいちではないか?と感じるユーザーが多い様である。

いや、十分速いには速いのだが、2速と3速の加速感がほとんど変わらないと言うのは何かおかしい。

これには理由があり、単なる噂ではなくマツダ技報の中で明記されている。

1・2速ギアを使用している際は、意図的に出力を抑えていると言うのである。

方法としては、アクセルレスポンスを鈍らせたり、スロットル開度の上限に制限を掛けたり。

ターボはブースト圧を抑えるために、ウェーストゲートバルブをコントロールしてトルクセーブしている。

加えて、ステアリングを45度以上切り込んだ際も、1~6速共通で同様の制御によって出力を抑えると言う。

これらは安全に配慮した制御として説明されているのだが、より刺激を求めるユーザーや、サーキットを走るユーザーにとっては邪魔な制御、即ち、本来の力を封印されていると言う考えである。

この封印を解き放ち、秘めたる力を引き出してやろうと言うのが、MSアクセラに於ける封印解除の目的である。

◆封印解除の方法は?

◆体感は出来るのか?

◆全開走行インプレッション

■封印解除の方法は?

調べてみたところ、MSアクセラのECU書き換えのメニューは、いくつかのショップが手掛けている様です。

ロータリーエンジンで有名なRE雨宮、ナイトスポーツなどをはじめ、オーデュラ、オリエントワークスなどの名前が見られます。

ただ、RE雨宮に関しては、あくまでもロータリーが専門なのか、MSアクセラについてはスピードリミッターの解除に留まる様です。
もしかすると、直接お店に出向いて現車合わせをお願いすれば細かく対応してもらえるのかもしれませんが、詳細は不明。

次にナイトスポーツですが、BKアクセラはメニューに記載なし。
BLアクセラに於いて、4-Beat(純正ECU書き換えメニュー)の取り扱いと、アクセスポートと言う機器を販売している様です。

アクセスポートについては、ECU制御に補正を掛けるサブコンの類かと思ったのですが、どうやら内蔵したいくつかのデータを使用してECUを書き換える装置と説明されていますので、フラッシュエディタと言う事になります。

もしかすると、他の車にも使えるのかも…?まあ、調べてみない事には何とも言えませんが。

ちなみに、乗っている間に限界に近い書き換え回数に達する事は稀だと思いますが、ECUのメモリーの書き込み回数は大凡上限が決まっているため、無限に行える作業ではありませんので注意は必要です。

アクセスポートは、気軽に用途に合わせたセッティングに切り替えが出来る点が魅力で、BL系のユーザーには定番の様です。

BK型とBL型は外観の特徴の違いからも、ユーザー層が随分異なりそうな印象は受けますので、BL系はそう言った多機能、演出などの新しい物を好む方が多いのかもしれません。

対して、BK型に主流なのはバシッと書き換え一本と言った感じで、シャシダイ300馬力を謳うオーデュラに人気が集中している様です。

ちなみに、BL系に人気のアクセスポート、BK系に人気のオーデュラ、そしてオリエントワークスも、1・2速のスロットルとブーストの制限を解除すると言う点に於いては同様です。

異なるのは、アクセスポートとオーデュラ(ベーシックはスピードリミッター解除のみ)はMAPも手を加えると言う点で、オリエントワークスに至っては制限解除のみのスタンダードと、他社と同じくMAPにも手を加えるVer.2の2種をラインナップしています。

どのショップも、理想なのはお店に持ち込んで現車合わせのセッティングだと思いますが、通販対応の場合、チューンの内容や個体差を直接確かめずにMAPへ手を加えると言うのは、少々リスクが高過ぎる気がします。

もちろん、各ショップもノウハウでトラブルを防ぐ策は講じていると思いますが、通販購入の場合は、敢えて余計な事はしないと言う選択が最善ではないかと考えます。

そもそも、ノーマルで持て余すような車ですから、違和感を取り去るだけでも十分でしょう。

そこで今回は、情報の少ないオリエントワークスのスタンダードを選択しました。
純粋に、封印解除のみでどれくらい変わるのか?と言うレビューです。

尚、各社の封印解除メニューの取り扱いをまとめると。

ナイトスポーツ:BL系のみ
オーデュラ:BK系のみ
オリエントワークス:BK・BL共に取扱いあり

となります。

 

■体感は出来るのか?

今回は、比較的情報の少ないオリエントワークス・リザルトマジックECUのSTDを選択。

ちなみに、価格はどこも大凡10万円程と相場は決まっている様ですが、何かしらプレミアム的な位置付けのメニューは価格差がある様です。

例えば、ナイトスポーツのアクセスポートは装置の価格もあると思いますが約13万円、オリエントワークスは書き換えメニューのVer.2で15万円程もしますので、BL系は迷いなくアクセスポートでしょうか。

ちなみに、このプレミアムに該当するセミオーダーを比較した場合は、オーデュラが一番安価な約10万円となる様です。

それでは、一番気になるであろう、ポン付けで体感は出来るのか?と言う疑問について。

これは、NAの車と異なり、ターボの場合はブーストアップだけでも容易にパワーアップが可能ですので、踏み込めば激変したと感じるのは十分にあり得るでしょう。

しかし、ブーストの掛からない低速域や、街乗りくらいでは激変とまではいかないのでは?と考えていました…が、発進しただけで体感出来ます(笑)

これが、一概に良くなったかどうかと言われると、この時点では判断に迷うところですが、スロットルレスポンスの制御が如何に介入していたのかとわかる部分でしょうか。

もしかすると、サイトにはもっともらしい言葉を並べているだけで、実はスロットル特性を書き換えて過剰演出しているだけかもしれません。

これだけで評価は難しいです。
何より、僅かに踏んだだけで反応が良過ぎる点が少々気に掛かります。

不用心に今まで通りに操作すると、不意を突かれてドンッと発進してしまいますが、本当に余計な制御を解除しただけで、こんなに変わる物なのでしょうか?

確認のためにOBDIIにアダプタを接続してスロットル開度の変化を観察してみましたが、ペダルストロークに対しては大凡比例しており、少ないペダルストロークで一気にスロットルを開けていると言うわけでもなさそうです。
…となると、やはりノーマルのスロットル制御が過剰と言う事でしょうか。

凄いトルクのエンジンですよね。これは、確かにある程度は抑えると言うのが正解なのかもしれません。

とりあえずこのまま発進してみます。

すると、明らかに低速のトルク感、加速感が異なるのをハッキリ感じる事が出来、ここでアクセルを少し開けてやると、軽くブーストが掛かってグイグイ加速します。

流石に市街地で全開加速のテストなんて出来ませんので、高速道路へ。

チャンスは料金所と合流点、SAの出口などですが、料金所から緩やかに発進した後、1速からアクセル全開で加速させてみる。

封印解除前とは明らかに異なる、強烈な加速感!
あっと言う間に吹け上がり、そのまま2速へシフトすると、強烈なトルクステアと、意図せずホイールスピンを起こしてしまう。

いくら高速道路の制限速度内でも、こんな運転は問題ありです。

何より、2速シフト時にホイールスピンを起こす程、考えていた以上に強烈なパワーがある様で、これ以上のテスト走行は慎重にならざるをえません。

その後、SA出口で再び2速低回転から加速させてみますが、低速ギアでガツンとブーストも掛かり、加速感は3速の比じゃないです。
これは体感出来ないなんて事はまず有り得ない激変振りですよ。

扱い易いかどうかと言う問題は別として、確実に変化は感じます。


■全開走行インプレッション

確かめるにはサーキット以外にもはや方法はないでしょう。

扱い易くなったのかどうかと言う点ですが、出力に関しては確実に持て余します。
ただし、大きく異なるのは余計な制御が解除された事による、ブーストの立ち上がり特性、スロットルレスポンスです。

ストレート加速は今まで以上に強烈な物となりますが、コーナーに関してはスピードそのものが上げられると言う事にはならないです。

ノーマル制御ではアクセルをパーシャルにしていい感じの旋回をしている途中、遅れて立ち上がるブーストが急に襲い掛かる印象でした。
それにより、一定速で旋回しているつもりが、突然ドカンッと発生するパワーで不意を突かれたアンダーに襲われると言った怖さがありました。

対して、封印解除後はアクセルに対して反応がリニアなので、ペダル操作こそ繊細にコントロールを要求されるものの、突然高出力が発生すると言った急激な変化は発生しません。
そう言う意味では、結果としてコーナーリングスピードのアベレージは上がりますので、タイムにもフィードバックされると言う事になります。

ただし、これはパワーそのものがアドバンテージになるのではなく、コントロール性が増すと言う部分の恩恵が大きい様に感じます。
むしろ、このMSアクセラと言う車に於いて、コーナーでのパワーは仇にしかならない気がしてなりません。

ある程度ペダルのコントロールが出来るなら封印解除はありだと思いますが、オンかオフかと言った大雑把な操作しか出来ない場合は、ターンインからアンダーに襲われる可能性が増すリスクもありそうですから、注意は必要です。

まあ、DSCに頼るなら、とりあえず封印解除しておくと言うのも一つの選択としてありかもしれません。

ちなみに、今回選択したオリエントワークスのスタンダードは、あくまでも封印解除に留まる書き換えです。
実際に3速以降の変化は感じませんし、5000rpm付近を境に加速感が落ち込むのもノーマルと同様です。

5000rpm以上はタービンの容量的限界なのか、意図的にブースト圧を抜いているのか定かではありませんが、恐らくこの辺りの回転域からシュゴーッと音がしているのはウェーストゲートバルブからの音ですよね?

ソレノイドで制御されている様ですから、ブーストコントローラーやサブコンを併用すれば、もう500~1000rpmくらいはパワフルな領域を拡張できそうな印象を受けますので、慣れて来た頃にステップアップとして試してみたいと思います。