■練習のポイント

○リラックスして無駄な力を抜く

○クラッチの繋がるポイントを感じる

○日頃から練習だと思って意識する

 

■目次

◆意識と認識

◆クラッチ発進をマスターしよう!

◆シフトノブを握らないのがコツ

◆ヒール&トゥを習得するには

■意識と認識

運転が上手くなりたい。速く走れるようになりたい。
そう言った向上心があり、真面目に頑張っていれば必ず上達します。

多くのドライバーは車を移動の手段や物を運ぶためのツールとして考えるだけで、上手な運転と言っても、精々車庫入れやスムーズなレーンチェンジと言った技術に留まります。

真の意味で、車がどう言う状態にあり、どう操作したらどの様な挙動を示すのか、それを知ろうと言う気持ちさえ無いのが一般的です。

対して、サーキットを走る人、競技に参加する人は、これら一般的な人達に比べて車の動きを感じようとする意識は強いと思います。
しかし、意識していても誤った認識で練習していては、上達を妨げる事にもなるので、一つ理解して欲しい事があるのです。

スポーツ走行とは、アクション映画などで加えられる過剰な演出とは異なり、激しく、乱暴な運転ではありません。

自動車学校でも習う、安全に走行すると言う目的から大きく外れる事はなく、より高速域で、より高回転域で、普段の運転と同じ事をしているだけです。
そこに、少しの応用を加えて、上手に、そして速く走る。

決してサーキットに行かなければ練習が出来ないわけではなく、普段からスピードを出さなくても出来る…いや、やらなければならない”基本”が一般道での運転には沢山詰まっています。


■クラッチ発進をマスターしよう!

自動車学校でMT免許を取得する場合でも、なかなかここまで詳細に教える教官はいません。

ただ、今だから言える事として、クラッチの操作方法を良く理解しない者に対して、自動車学校の教官が言う様に、クラッチを踏んでレバーを操作して~半クラでアクセル踏んで~クラッチ繋いで~などと雑な教え方で満足に操作など出来るはずがないのです。

こんな”出来て当然”と言った様な、強引な教え方で坂道発進をスムーズにやってのけろと言うのには無理があります。

これらの壁にぶつかって、AT限定免許へ切り替えたと言う残念な話も耳にするくらいで、本来ならクラッチの操作方法から徹底的に教えるべきなのです。

ただ、自動車学校と言うのは免許を取得させるための教育を行う場所であり、また、教習時間を長く取れば生徒に経済的な負担や時間の制限を強いる事となり、止むを得ない部分も確かにありますので、一概に悪い事とも言えないです。

ならば、幸いにも家にMT車がある人は庭先で、そうでない人は頑張ってMT免許を取得した後に、是非とも徹底的に練習して欲しいのが、クラッチ発進です。

まず、パーキングブレーキを解除し、ブレーキを踏み込みます。
次に、クラッチを踏み込んでレバーを1速ギアへ。

ここまでは問題なく出来ると思います。

次に、クラッチを踏み込んでいる左足を、ゆっくりと緩めて行ってください。
決して焦らず、ゆっくりとです。

あるポイントに差し掛かると、エンジンの回転が少し下がり、車体へ伝わる振動が大きくなる事に気付くと思います。

ここがフライホイールとクラッチプレートが接触を始めた”半クラッチ”の開始位置です。

この状態では、あくまでも摩擦で駆動力が少し伝わっているにすぎず、アクセルを踏めばクラッチは滑りますので、あまり負荷を掛けるとクラッチが焼け、嫌な臭いがします。
アクセルを踏まないにしても、これはあまりよろしくないので、半クラッチはなるべく短時間に留めるのが理想ですが、少々の事でダメになってしまう物ではありませんので安心してください。

この、半クラッチの開始位置が感じ取れたら、ブレーキからゆっくり足を離し、車が前進を始める事を確認してみてください。
車が前進しない場合は、焦らず、ゆっくりとクラッチペダルを緩めてみてください。

ある程度クラッチを戻したところで、徐々に車が前進を始めるはずです。

そう、これがクラッチ発進と言って、アクセルを踏まなくてもクラッチを繋いだだけで車は動くのだと言う事が理解出来たと思います。

車がゆっくりと進み始めたら、焦らずに、もう少しクラッチを戻してみましょう。ガツンと繋がずに、あくまでもゆっくりです。
少しスピードが上がってくるのが分かると思います。
それならば、更にクラッチを戻してみます。

それを繰り返している内に、気が付いたらクラッチペダルから完全に足が離れていないでしょうか?
これが一連のクラッチ操作の流れです。

この操作が成功したら、半クラッチの感覚と、クラッチ発進の方法は理解出来たと思うので、繰り返し練習してこれらの操作をよりスムーズに、なるべく短時間にこなせる様に努力してください。

私が免許を取得して間もない頃、誰に教わる事もなく、ただ一人で只管走っていたので、ブレーキングやシフトチェンジのタイミングなどは全く理解していませんでしたが、少なくともクラッチ操作と、シフトレバーの操作だけは、こう言った練習方法で習得しました。

冗談ではなく、初めて一本クヌギを走った時は自動車学校で習った知識しかなかったので、3000rpmくらいでシフトアップなどをしていて、ホームストレートで4速や5速に入れていたくらいです(笑)

それでも、シフトアップ、シフトダウンの操作を完璧にこなしていたのは、確実なクラッチ操作が出来たからと言えます。
クラッチ発進に至っては、仕事が終わったら毎日、近所の空地へ行って何時間も繰り返していました。

そこまでやる必要はないと思いますが、少し広い場所があればどこでも練習できる方法なので、駐車場から発進する時、周りに車がいない時は信号が青に変わってからの発進時など、機会を窺ってチャレンジしてみてください。


■シフトノブを握らないのがコツ

シフトノブを握る…この言葉には違和感を感じます。

手綱を引く…と言うのも、乗馬をやっている自分にとっては凄い違和感があり、それに似ています。

自分で馬を走らせた事のある人はどちらかと言うと少数派だと思うので、簡単に説明すると、手綱ってアクセルと思っている人が多い様ですが、実はブレーキなんですよ(笑)
ハンドルも担っていますが、両手で手綱を引くと馬は止まります。と言うより、これも強く握って操作する物ではないのですがね。

それと同じように、シフトノブを握ってしまうと、スムーズな操作は困難であり、また、ついつい力を入れてレバーを押し込んでしまう事になります。

以前公開しているシフトチェンジの解説でも語っていますが、シフト操作に力は必要ありません。
握り込まず、掌で転がすイメージで良いです。

そこで推奨するのが、とりあえず初期の段階では、徹底的に力を抜いた優しい操作を覚えるために、指先で操作する事をお勧めしたい。
いかにシフトレバーが簡単にゲートに入るのかを理解するには、これが一番分かり易いです。

FR車の様にレバーが直接ミッションに直結されている様な、やや渋い動きの物は”多少”の力は必要になりますが、指先で摘まんでも操作は可能です。

まず、親指で押すか、3本指でシフトノブを摘まむ方法で1速へ。

発進して、スピードが上がって来たら、同じ様に指だけで2速へ向かって操作してください。

以前説明した通り、アクセルオフのタイミングでバックラッシュのポイントから難なくニュートラルには戻せるはずです。
クラッチ操作も加えているので、まず抜けないと言う事はないはずです。

ここから、そのまま2速のゲートへ向かって、レバーを軽く押し付けておきましょう。
少し回転が下がったところで、意図も簡単に2速へ吸い込まれると思います。

いや、全然入らないよ!と言う場合は、操作が遅い可能性がありますので、もう少し素早く行うか、もう少し1速で引っ張ってスピードを上げてから試してみましょう。

1速と2速はギア比が離れている事も多いので、どちらかと言うと入り難い傾向はありますが、そんなに難しくはないはずです。
どうしても出来ないと言う場合は、とりあえず飛ばして2速から3速、3速から4速などで試してみてください。

次にシフトダウンですが、これも同様に指先の操作で簡単にシフトチェンジが可能です。

4速から3速へシフトダウンする場合、シフトアップと同様にニュートラル方向へ向かって軽く押さえておけば、クラッチを踏んだ瞬間にあっさり抜けると思います。

ここから3速のゲートへ軽くレバーを押し付けておき、軽くブレーキを加えるか、少しスピードが下がったところで、アクセルを軽く吹かしてみてください。
回転が同期したタイミングで、驚く程あっさりとゲートに吸い込まれると思います。

入らない場合は、もう少しだけアクセルを多めに吹かしてみると良いでしょう。
これがシフトチェンジのコツです。

入らないタイミングでは何をしても入らないので、力任せに操作したり、勢いで叩き込もうとすればミッションにダメージを与えてしまいます。
力を抜いて操作する事で、大人しく待つ事や、ギアの抜けるタイミング、入るタイミングを自然と感触や音などで判断出来る様になってきます。

1日や2日でどうにかなるものではありません。
かと言って、焦って習得しようとしても難しいです。

だからこそ、常日頃の運転でクセとして自然に習得するのが一番良い方法だと思います。

ふと気付いた時にでも、シフト操作に力が入っていないか、意識してみると良いでしょう。


■ヒール&トゥを習得するには

これはサーキットで練習するものではありません!
普段やらない事を、スピードを出して走るサーキットでやる余裕などないはずですよ。

クラッチやシフト操作を含め、これらの操作は日常の運転の中で身に付ける、最低限の基本テクニックとなります。

一般道を走っている時、シフトアップはするのにシフトダウンはしないと言うのは、自動車学校ではほぼ教えないから、そのままの流れでクセになっている場合が多いです。
しかし、回転が上がってきたらシフトアップをするのですから、同様に回転が下がってきたらシフトダウンもしないとおかしいですよね?

ただ、シフトダウンと言う操作は、もし失敗した場合にエンジンブレーキが強く働いて急な減速を伴う場合や、ちょっとスピードが出ている時はスリップしてしまうと言ったリスクもあります。
そのため、免許を取得するために勉強している段階の生徒さんに、これらの”危険”を伴う可能性のある操作はさせないと言うのが当然の選択なのかもしれません。

しかし、スポーツ走行に於いてはこのシフトダウンは非常に重要なテクニックとなるため、なんとしても習得したいところです。

先程も言った通り、シフトダウンをミスすると急激なエンジンブレーキや変速ショックによる、意図せぬ挙動が発生する場合があります。

最近の車では、一定以上の減速Gが発生した際にブレーキ灯を点灯させる機能が付いている車もありますが、やはり周りに車がいると迷惑を掛ける可能性もあるため、好ましくありません。
なので、周りに車がいないタイミングを見付けて練習してみてください。

ただ、いきなりブレーキで減速しながら踵でアクセルを煽ってシフトダウン…なんて上手く出来るはずがありません!
まずはアクセルで回転を合わせられる様になる事から始めましょう。

手前の信号が赤になったら、加速する必要はないのですから、ブレーキを踏んで減速を開始してください。
そこで、シフトダウンを行いますが、この時、とりあえずブレーキから足を離してアクセルを煽ります。

シフトの操作方法については、前項で説明した通り、力を抜いてレバーをゲートに軽く押し付けておけば、勝手にシフトダウンは完了します。
レバーがゲートに入ったら、後はブレーキで停止するだけです。

この操作が出来る様になってきたら、シフト後にクラッチをバシッと繋いでしまう操作を加えて、更にもう1段下のギアへ下げる操作に移るなど、シフト操作とブリッピングのセットを確実にこなせる様に繰り返し練習してください。

これらの操作をマスターしたら、次はいよいよヒール&トゥの練習に移ります。

これはあくまでも、ブレーキを踏むと言う減速操作を行いながら、これまでに練習してきたブリッピングで回転を合わせると言う操作を加えただけに過ぎません。
ただし、今までと異なるのは、ブレーキを踏んでいる右足はそのままに、踵でアクセルを煽ると言う操作になるので、今までつま先で操作していたアクセルの感覚とは少々異なる点です。

また、ブレーキを踏み込んでいると言う事は、アクセルペダルの位置が少し高く感じるかもしれませんので、思わず踏み過ぎると言う場合や、怖がってしまい、回転が思う様に上がらないと言う症状だと思います。

これこそは慣れと言う他にないので、だからこそ、チャンスがあれば日頃からとにかくクセを付けて繰り返し、繰り返し、通常の運転の中に取り込んで体で覚えるのが一番と言うわけです。

これをもし日常でやっていないのならば、サーキットへ行ってその時だけやろうと思っても、簡単には出来ないと言うのが良くわかると思います。

ここまでに説明した練習は、日常の中で行う基本操作となりますが、慣れていない内は意図せぬ挙動を起こす可能性があるため、ある程度身に付くまでは周りに車がいない時だけチャレンジするようにしましょう。

また、余計なお世話かもしれませんが、初心者さんでもちょっとエアクリーナーやマフラーを換えちゃおうかな~なんて人も多いと思います。

でもね、まだまだへたっぴな内は失敗しちゃうと、大きな音だとすぐ周りにバレちゃうので恥ずかしいですよ~(笑)
大丈夫かな~?

バリッと習得して、かっこいいシフトダウンが出来る様になってから交換するのがお勧めです♪

実はね、普段から練習しようと思ったら、車の少ない夜の方が向いてるんですよ。
でも、大きな音が出ちゃうと、なかなか街中では気が引けちゃって練習しにくいって事もあると思うんです。

こんな時は、やっぱりノーマルの吸排気が静かで練習向きなんですよ!
メカニカルノイズやエンジンの音も聞き取り易いですしね♪