前項ではCX-3のデザインや装備、ベースとされるマツダ2との違いをチェックしてみました。
次はいよいよ実走行をレビューしてみたいと思います。
今回お借りしているCX-3は比較的新しい車ではあるものの、試乗車ではなく代車として貸し出されている車両です。
走行距離は11000km程度でしたが、車内も微妙に汚れていたし、撮影のためにボンネットを開くと苔まで生えていて”愛されている印象は受けない(笑)”ので、少々なら鞭入れて走らせてみても良いかな??
もちろん、お借りしている車両なので何かあっては困りますし、サーキットなどへ持ち込むわけにはいかないので、当然無茶はせず、常識の範囲内で出来る限りの事を試してみましょう。
事前に「楽しんできます」とはお伝えしているので(!)
まあ、いつも代車を借りても10kmも走らずにお返しする事が多いので、今回、いきなり500kmオーバーの旅に出掛けるとは予想もしていなかったかもしれませんが…っと、その前に、まずは車内の清掃とエンジンルームの苔を綺麗に拭いてから出掛けよう。
■一般道の乗り心地や使い勝手は?
ハッキリ言って、ショールームへ出向いて試乗車に乗っても、その辺をちょっとぶらぶらした程度で車の良し悪しがわかるわけないのだ。
おまけに、妙な運転をするわけではないが、助手席に営業担当者を乗せて走れば気を遣わずに”普通に乗り回す”のさえ躊躇してしまうし、炸裂する営業トークを聞き流しながらハンドルを握るとなれば細かい部分には注意も届き難いので尚更である。
やはりその車の動きや特徴、使い勝手を入念に確認したければ数日…、せめて丸1日掛けて”普段通り”に使ってみるに尽きる。
乗ると言うより、使ってみるのだ。
今回はディーラーの店休日を挟んで4日間お借りできたので、丸1日休暇を取って約500kmの旅に出掛けて来た。
室内では排気音の差まではわからないが、加速時に車内に響くエンジン音も差は感じない。
前項でお伝えした通り、内装もほぼマツダ2と同じなので違和感はないし、市街地を普通に走らせる分にはSUVらしさは全くない…と言うより、良くも悪くもマツダ2との差も全く感じない。
MTとATの違いを除けばシートの座り心地から視点まで何一つ違いはないので、借りた代車である事さえ忘れそうになるくらい馴染む(笑)
強いて言えば、マツダコネクトの画面に一回り大きなサイズが採用されており、カーナビの画面や360°モニターが見易いのはちょっと嬉しいポイントか。
この車種は後方の視界の悪さに加え、マツダ2よりノーズも長いのにボンネットが全く見えず、慣れるまでは前方の距離が掴み難いので、今回の様にちょっと借りた際には狭い場所での切り替えしなどでカメラの映像があると非常に助かる。
フィーリングについては、SUVは動きがふわふわしていると言ったイメージは誤解なのか、単純にCX-3がSUV風のマツダ2に過ぎないのかは定かではないが、少なくともタウンユースでの乗り心地は悪くないし、交差点などで意図的にやや素早く大きく舵を入れてみても、重心の高さを感じる様な不快なロールも起きず、舵を戻して直進姿勢に戻るまで非常にスムーズな旋回挙動である。(シャシー性能ではなくGVCの働きによるものかもしれないが)
また、ATの変速は素早くショックもほとんど感じないものの、1速発進直後のロックアップのタイミング(?)で少しショックがある事と、何なのかは良くわからないが2速から3速へシフトアップする時だけ「ピューンッ」と変な音がする(マニュアルモードでも音は鳴る)のはちょっと気になる(笑)
ただ、市街地とは言え田舎なので、道路が空いていれば50~60km/hで巡航するシチュエーションが度々あり、その際にやや直進安定性で劣る印象は受ける。
マツダ2に比べて大きな18インチで幅広のタイヤが影響したワンダリングなのか判断に迷うところですが、ハンドルを取られると言った手応えはほとんど感じないので、SUVの重心の高さからくる横揺れなどの影響が多少あるのかもしれない。
いずれにしても、意識していないとそれ程気になる様なフラフラ感ではないので致命的な欠点とは感じません。
尚、市街地走行がメインの間はAT任せにして、平均燃費はおおよそカタログ値通りの15km/h前後で推移していた。
サイズ感も手頃なので駐車場でも困らないし、SUVやミニバンで気を遣う立体駐車場の高さ制限を気にする心配もないので、運転に不慣れな初心者の方が選ぶSUVのエントリーモデルにもピッタリかもしれない。
■高速道路の走行に違和感あり
必要十分な快適装備もあり、一般道の走行から駐車場での取り回しの良さなど、日常使いでのデメリットは感じないし、ハンドルの手応えや足の硬さも適度で乗り心地も悪くないが、高速道路の走行はどうだろうか?
まず最初に走った高速道路は東九州自動車道の佐伯IC~延岡ICまでの区間。
中央分離帯のある片側1車線道路なので、厳密には高速道路ではなく自動車専用道路となりますが、ここのルートはちょっと路面に問題がある。
80km/h制限で、現実として平均速度はメーター読みで90~100km/hで走る車が多いが、所々路面の荒れている区間があり、スピードを出していると上下に大きく揺さぶられたり、轍にハンドルを取られる様な場所もある。
特に佐伯ICから宮崎方面の本線へ合流した直後の数百メートルの区間は、有料だったら文句を言いたくなる様な素晴らしいクオリティなので、舗装をやり直せと言いたい(笑)
ここで一気に加速して本線へ合流した直後に、足のストロークの短さとバウンス特性にちょっとがっかりする。
SUVならではの余裕のストロークを期待していたら、意外と短足である。
想像以上に伸び切りが早い様で、ふわっと大きく持ち上がった際に下から引っ張って止められる様な動きが出るので、マツダ2とほとんどストロークが変わらない印象を受ける。
対して、沈み込んだ際にはバンプラバーが適切なのか、圧側のストロークには余裕があるのかわからないが、妙な突っ張りや突き上げ感が出る様な事はないので、乗り心地としてはそれ程悪くないが、縦揺れの減衰が遅く、おおよそ2~2往復半と言ったところ。
車重の問題なのか?スプリングとダンパーどちらの影響が強いのかわからないが、SUVにイメージしているフワフワ感が出るので、高めの速度域では”ちょっと怖い”と感じるユーザーもいるかもしれない。
オフロード車に多いバネ下が動くフラットな乗り味ではなく、バネ上の車体がフワフワ揺れる様な乗り味なので、足の柔らかいマツダ2と言った感じ。これはSUVとしてはどうなのか?
ちなみに、マツダ2は1往復半程度でピタッと減衰するのでスポーティーなフィーリングですが、その分荒れた路面ではゴツゴツ感が出易いので、乗り心地の快適さで言うならCX-3の方が良いと感じる人が多そうです。
あと、高速道路の走行でいくつか気になる点がある。
直進安定性がやや劣ると言うのは一般道の項でも触れましたが、クルーズコントロールがあるので試しに使ってみると、ふと気付いたのだがキープレーンアシストが付いていない。(マツコネの設定項目にもありませんでした)
意図的にセンターラインに寄せてみると警告灯と音は鳴るのだが、自動でハンドルを切ってくれる様な制御はないのでハンドルの微調整もドライバーが確実に操作する事となる。
すると、ある違和感に気付く。
只管真っ直ぐに走り続けている間の微調整など、ほとんどハンドルを切っているのかどうかわからない程度の”極小舵角”である事が多い。
この際に、ハンドルのど真ん中を境とした超極小舵角領域で、砂の粒でも噛んでいるのではないかと言う僅かな引っ掛かりの様な手応え。
まるでハンドルのセンターナットが緩んでスプラインの嵌合部に僅かなガタが生じている様な、カクカクとした手応えがある。
極端な表現をすれば、ハンドルが絶対に真っ直ぐにならない(笑)
振動などがあるわけでもなく、真っ直ぐ走らないわけでもないので、思い切ってハンドルから手を離してしまえば気にならないだろうが、ハンドルに手を添えている間は常にこのカクカク感を味わう事となるので、何か妙にモヤモヤして若干苛立ちさえ感じる。
この耐え難い不快感よ!!
過去にはミニバンのCMでさえ「ロードスターのハンドリング」などと理解し難いアピールをしていた様な”ハンドリングに拘るメーカー”が、こんな物を世に送り出すとは到底考えられないので、何らかの不具合である可能性が高い。
返却時に伝えたところ、どうやら特有の持病と言う事で、ネットで検索してみると電動パワステの制御の問題らしく、同様のトラブル報告がいくつか見られる。
本来のフィーリングではないが持病と言われている以上、乗っている間に同様の症状が出る可能性があると考えておいた方が良いかもしれない。
ちなみに、この症状は~60km/h程度の速度域では全く感じなかったし、ハンドルを動かしている間も違和感はない。
高速道路などで真っ直ぐ走っている時に、おおよそ80km//hを超えた辺りから出てくる症状である。
■唸るエンジン!気持ち良いワインディング走行
やはり車に乗っていて最も気持ちが良いのはワインディングを颯爽と流している時であろう。
退屈な高速道路や信号の多い市街地なんてクソ喰らえだぜ!!
やたらとハイパワーな車でブンブン飛ばす必要はなく、控え目な速度でもいつもより下のギアを積極的に使って、やや高回転でアクセルのレスポンスやハンドリングの良さ、エンジンサウンドを聞きながら車と一体となって走る感覚。
もちろん無茶な運転はダメですが、車の運転を楽しもうと思ったら、時々で良いから燃費など気にせずアクセルを踏み込んでみて欲しい。
カーブの多いワインディングに於いては、やはり積極的に下のギアを使って高めの回転数を維持して走るのに都合の良いマニュアルモードが最適。
最低でも3000rpm以上をキープして走ると、街乗りでは味わえない様なアクセルに対するレスポンスの良さを体感できるはず。
最近のATはシフトラグもほとんどないし、ロックアップも速いので、まるでMTの様なフィーリングで走る事が出来るのも魅力です。
マニュアルモードにレバーを入れると、レーシングカーの様に前方へ倒せばシフトダウン、後ろへ引けばシフトアップと言うパターンになっており、他社の主流とは逆となっているので慣れるまでちょっと違和感はあるかもしれない。
ただ、これが優れていると感じるのは、本当にMTの様に扱えると言う点である。
マニュアルモードを使用すると、手動でシフトチェンジの操作をしてやらない限りギアは固定となる。
レブリミットまでキッチリ回してみたが、レブに当たっても自動では変速しないので欠点と感じる人もいるかもしれないが、私は”さすがマツダ!”と言いたい(笑)
どこぞのメーカーの高級スポーツセダンを運転させてもらった時は、マニュアルモードと言いつつ、レブに当たった瞬間に勝手にシフトアップはしちゃうし、シフトダウンの操作を加えてもオーバーレブの心配がない回転数でもなかなか変速の命令を受け付けないクソっぷりであったが、コイツは違う!
オーバーレブの危険性がある場合は絶対に受け付けないが、2速4000rpm付近からでも、先のヘアピンカーブに備えて1速(レブリミット寸前の6500rpm相当)に落とせと命令すれば確実に応えてくれる。
しかも、MTの様にアクセルを煽って回転を合わせてやる必要も無く、ブレーキ操作のみで減速に集中していれば、勝手に回転は合わせてくれるので実にイージー。
また、アクセル操作に関しても良く言われる電子スロットル特有の違和感などなく、踏力に比例してリニアな反応を示すし、僅かな開度変化にもレスポンス良く反応を示すのでロードスターと遜色ないのはマツダ2と同様。
加速感や実際の加速力については、マツダ2のMTと比較して1・2速だけややギア比がクロス気味でステップ比は良好、全体的にローギア寄りでタイヤ外径の違いがあっても実用域の各ギアトップスピードでは10km/hほど低い。
その分、加速力に振っている様にも見えますが、車重に加えてホイールの重量が影響しているのか、マツダ2に比べると加速はやや遅い印象を受ける。
ハンドリングや旋回性能に関しては申し分ない。
ダイレクトなフィーリングで過渡特性やインフォメーションにも優れるので適度なロール角を維持し易いし、バタつく様な動きはないのでボディ剛性がしっかりしている証拠とも言える。
SUVである事を忘れるクイックな動きに加え、旋回中の足の動きに関しては重心の高さや柔らかさなど感じず、まるでスポーツカーに乗っている様な感覚である!
旋回中のスムーズな動きに加え、アクセルを加えてもまるでLSDでも装備しているかの様に旋回加速する様などGVCの恩恵が強いのかもしれないが、電子制御が違和感なく介入しているのであればむしろ歓迎だし、そこまで含めた走行性能と言って差支えないだろう。
ハッキリ言おう。
コイツはSUVではない。
SUVを装ったスポーツカーである(笑)
スタイリングでコンパクトなSUVが欲しいと言うのであればオススメしても差し支えないが、乗り心地や悪路の走行に期待してSUVを買うのであればオススメは出来ない。
何度も言うが、コイツはSUVではなくスポーツカーである。
尚、今回の約500kmの旅では、市街地よりワインディングの方が多いものの、マニュアルモードを多用して平均3000~4000rpm、時々1速でレブリミットまで回してやる様な運転でも、カタログ値を超えて18km/L弱の平均燃費となっている。
ここまでのレビューを総合して評価すると。。。
グレードにもよりますが、マツダ2と比較してCX-3は70万円程の価格差があります。
エクステリアのデザインは好みの問題として、インテリアのデザインや質感には大きな差もなく、快適装備こそやや充実しているものの価格差程のお買い得感はない。(実際には、マツダ2が価格の割に出来が良過ぎる)
しかし走行性能まで含めて考えると、マツダ2と同程度に軽快な走りが出来るSUVと言うだけでも価値はあり、サーキット走行まで問題なくイケちゃいそうな手応え。
流行のSUVは気になるけど、鈍そうだし安定感もなさそうで心配…と言う層なら尚更、このSUV風のスポーツカー「マツダ・CX-3」でどうだ!?