昔程ではないにせよ、モータースポーツは誰でも気軽に始められるものではないと考える人が少なくはありません。

自動車学校で交通ルールや運転技術を学び、晴れて運転免許を取得しても、通常は一般道を走らせる交通手段としての利用で生涯を終える方の割合が圧倒的多数だと思います。
運転テクニックと言っても、精々スムーズな車線変更や上手な車庫入れと言ったもので、車を自由自在に操る、速く走らせると言った所に重点を置く者は少数です。

それが故、モータースポーツはいまいち理解されていない部分が多い。

また、始めようと思ってもサーキットへ行く必要があり、また、競技へ出場するにはライセンスや保護具も必要だし、ルールがややこしい、料金が高いと感じる人も多いでしょう。
普及させるには、まず入門の時点ではそれらの敷居を可能な範囲で取り去り、気軽に参加できる環境作りが必要であると考えるのですが、実はそれだけではないのです。

当サイトのイベント紹介の中では、上記の環境を整えて初心者さんを歓迎していると配信しておりますが、それだけではない。

本当の問題はどこにあるのか。
それを少しお話したいと思います。

◆本当の問題とは

◆主催に求められる事

◆みんなが憧れるプロとは

■本当の問題とは

勉強のつもりで、過去に公式戦や他のイベントへの参加も経験しています。
また、クラブに所属して公式戦の主催側も見て来ておりますが、それらに限らず初期の頃のクヌギランナーでも同じ事が言えるのです。

会場の雰囲気が初心者さんには馴染み難い環境である、と。

どう言う事かと言うと、どのイベントも初心者さん大歓迎、みんなで仲良くと表面上は謳っているのですが、実際の会場はどうかと言うとやや排他的な部分が見られると言うのが正直な感想です。

とは言え、モータースポーツを続けるにはこう言った雰囲気に慣れる事が必要で、自分から積極的に周りの人達と関係を築いていくわけですが、ここに大きな問題が生じていると考えています。

私の場合は人見知りをせず、余程敵意を剥き出しにしている人でなければ、誰にでも話し掛ける事が出来ます。

しかし、全員がそうとは限らないのです。

中には、初対面の人や普段接しない人には自分から話し掛ける事が出来ないと言う人もいます。

これらの人に対して、周りはコミュニケーションも出来ない人だ、なんだか性格の暗い人だと考える人も少なからず存在しており、仲良くなりたければ自分から話し掛けるのが当然だと考える人さえいます。

そう、自分からコミュニケーションが出来ない事を悪と認識しているばかりか、仲の良い少数のグループだけで固まってしまう傾向が見られ、なかなか他のグループや個人と接しようとする人が少ないのです。
そのため、もし知り合いも居ない中1人で参加しようと思った時、誰も周りに話せる相手がおらず、1人で寂しい思いをしてしまう事になり、その結果、楽しくないと感じて辞めてしまう事にもなり兼ねません。

これに対して、努力が足りない!自分の責任だ!とSNSなどで非難する人がいますが、それは違うと思います。

話し掛け難い雰囲気を作っているグループや、それらを改善していこうと配慮しない主催に責任があると思うのです。

テクニカルアドバイスの初級編の中でも少し語っていますが、これらの問題を解決するために、ドライビングテクニックやチューニング以上に、まず、1人でも2人でも良いので、一緒に活動出来る仲間を作る事が大切になってくるのです。

しかし、いくら親友であっても趣味が共通するとは限らないので、通常は難しいところです。

ただ、これはモータースポーツに限った話ではありません。

私自身、自動車だけでなく乗馬やファッション、麻雀(あくまでもゲームとして)などの趣味がありますが、ライセンスやお金と言った敷居は存在しており、それらを除いても共通して言える事があるのです。

やはり、どの趣味も人との繋がり、コミュニケーションが最も重要な課題であると。

そう言った認識が出来た時、走行会を主催するに当たり最も気を付けなければならない点が、人と人を繋げる雰囲気作りやサポートだと考える様になりました。


■主催に求められる事

特に、元々少数のグループで活動されている若い方など、イベント会場に来ても仲間内だけで盛り上がり、他のグループと積極的に関わろうとする人が少ないです。
そのため、1人や2人ではまず参加しないと言う構図が出来上がってしまいます。

これらのグループや個人を繋ぎ、知り合いを増やせる様に積極的なサポートして行けば、全日本大会や国際競技を除いては、九州圏内に限られた数のサーキットしか存在しませんので、どこのイベントへ行っても、必ず誰か知り合いがいると言った環境が出来上がって来ると考えています。

知り合いさえいれば、クヌギランナーに限らず初めて参加するイベントでも、1人で寂しい思いをしたり、不安な気持ちになる事もなく、モータースポーツを純粋に楽しむ事が出来ると思うのです。

だからこそ、主催者が積極的に話し易い雰囲気を作る様に努力したり、それぞれのグループや個人の間に何か共通点を見出して、間に入って繋がりをサポートして行く事が重要です。

それらには、洞察力も求められます。
自分や、身近な人だけが盛り上がる環境ではダメなのです。

実際にクヌギランナーに限らず、走行会などのイベントに参加した事のある方はどう思いますか?

本当に楽しめるかどうかは、単純に沢山走れたとか、良いタイムで走れたとか、そう言う部分ではないと思うのですよ。

やはり何と言っても、共通の趣味を持つ人達との交流や新しい仲間との出会い。
それこそが、趣味を充実させ、楽しく続けていくための前提になっていると思うのです。

参加費が安かったり、難しい規約を排除するのは呼び込みには有効だと思いますが、モータースポーツを普及させようと思ったなら、如何にまた参加したいと思ってもらえるか、他のイベントにもチャレンジしようと思わせる事が出来るか、モータースポーツへのリピーターを確保する事が重要です。

モータースポーツ人口が減少していると嘆く主催は多いですが、初めてイベントに参加した方が、あなたのイベントで失望してしまうかもしれません。
そうならない様に、主催が受け身ではなく、積極的に楽しめる環境構築を進めて行く事が求められるのです。

もちろん、全員を満足させる事は難しいでしょう。
ただ人を集めて、どうぞ走ってください、ではイベントに価値はない。

クヌギランナーでも、参加人数が多い時は全員に万遍なく話し掛ける事が出来ない時もあります。
それでも、可能な限り多くの方とお話をし、特に初めて参加する方には積極的に接触しています。
それでも2度目が無い方もいるので、まだまだ努力が足りない部分もありますが、少なくとも雰囲気作りを意識する事は絶対条件だと考えています。

是非クヌギランナーに参加して頂けると嬉しいですが(笑)、別にうちのイベントである必要はないです。
平日休みの方は、ELAN de 走行会などのイベントもあり、主催のELANさんの人柄も良いので馴染み易いと思います。
個人が主催する、小さなイベントでは小回りも利くので、主催者の方が参加者のみんなへ配慮してくれる事が多いです。

そう言う意味では、始めたばかりの頃は、まず実績のある個人主催の小さなイベントに何度か参加してみるのが良いでしょう。
知名度が低く小さ過ぎるイベントは、外部歓迎を謳っていても事実上は身内開催の場合があるので、安易にはお勧めできません。


■みんなが憧れるプロとは

自動車メーカーの主催イベントなど、非常に規模の大きなイベントでは、有名なプロドライバーの方や、本物のレーシングカーが目玉として登場する事も珍しくはありません。
この様なイベントでは、ドライバー、もしくは車両にも多くのファンがおり、黙っていても人は集まるレベルだと思います。

でも、一人一人に配慮していないのに、どう言うわけか大きなイベントって楽しいでしょう?

ある世界的に有名なプロのマジシャンが、テレビでこう言った事があります。

世界トップレベルのテクニックと賞賛されているが、テクニックだけなら自分より上手な素人も大勢いる。
大きな違いは、人を楽しませるテクニックがあるかどうかだ、と。

プロの凄さはドライビングテクニックだけではないのです。
一定水準以上のドライビングテクニックを有した上で、エンターテイナーとしての素質があるかどうかがプロと素人の境界線だと思っています。

私自身は元々車に興味があったわけではなく、有名と言われるプロドライバーやレーシングカーも全く知りませんでした。

単純に、ストレス解消のつもりでモータースポーツを始めたわけですが、この時、テレビで初めて見たプロドライバーの土屋圭市氏。
私は、テレビ越しに彼のトークを聞いていて、後から経歴が紹介されるまでの間、彼をコメディアンだと思って見ていた。
それくらいトークに魅力があり、非常に面白いのだ。

プロドライバーは会場の雰囲気作りや、周りを楽しませると言う能力に非常に長けている。
個人イベントの主催でも、雰囲気作りや、人を楽しませる能力を磨き、主催のプロフェッショナルとして、多くのファンを獲得出来る様に努力が必要ではないだろうか。