■練習のポイント

○一見、相反する行為の意味を理解する

○見ない勇気

○ハンドルを戻す勇気

○ブレーキを離す勇気

 

■目次

◆とにかく見るな!

◆ハンドルを戻せ!

◆ブレーキを離せ!

■とにかく見るな!

世の中には見なくて良い物がある。

例えば、ここの怪しいドラテクの記事とかですよ!

あ、いや、ちょっと待って!ちょっとくらい見て帰ってくださいよ。お願いしますよー(笑)

とにかく見るな!と言うのは、まだ車の趣味を始めて間もない頃に、周りのおっさんドライバーから口を酸っぱくして叩き込まれた、走る上での最重要理論。

今度は、自分が「おっさん側」になったところで、若い世代へ伝えなければならない。

危ない場所、飛び出したくない場所、その様なリスクの高いポイントに注意しないと言うのは無理がある。
これは注意して走らなければならない…が、その様な場所を決して「見てはいけない」と言うものだ。

気になる場所と言うのは、ついつい視線が向いてしまいがちだが、例えばエスケープの狭いコーナーでアウト側に飛び出したくないな…と、狭いエスケープを意識しているとどうなるか?

答えは、あろう事か、そこへ突っ込む。
単純にミス云々と言う話ではなく、むしろ自分から、わざわざ突っ込みたくない所へ突っ込むと言っておこう。

そんな、まさか!と疑う人もいると思うが、この「まさか」が実際に起こるのである。

現実として、飛び出すまでに至らないにしても、何故か気になるコーナーで飛び出しそうになったり、ミスしてしまうと言うリスクが、意識しない時と比べて数十倍へと跳ね上がる。

実はこれ、忘れている人も多いかもしれないが、自動車学校でも習っているはずで、JAFや警察署が催す安全講習や、教本にも載っている事が多い。

人間の脳の働きから起こる錯覚の一種であり、絶対に避ける事の出来ない現象となるが、これを「視覚吸引作用」と言う。

人間は意識が向いている方向、見つめている方向に、自分の意志とは無関係に吸い寄せられると言うものだ。

つまり、怖がって行きたくない所ばかり見ていると、嫌な想像が現実となる。

なので、気になる場所は注意しつつも、意識と視線は「行きたい方向だけに向ける」様にする。
これがリスク回避の鉄則である。

シチュエーションについての話は、信頼性の高い統計のデータがないので本当かどうか信憑性に欠けるが、リラックスしている時には起こり難く、一種の興奮状態にある時には視覚吸引作用が働き易いと言う話がある。

スポーツ走行中は、一種の興奮状態。
ここでミスなど起こせば、軽いパニックに近い状態に陥る事もある。

この様な時に、思わず迫りくる壁やタイヤウォールなどに意識が行ってしまうと、高確率で激突すると言う結果を招く。

なので、この様な時こそ「行きたくない所は見ない」と言う事を徹底したい。

もちろん、立て直せないミスで衝突を回避出来ないと言う事もあると思いますが、嫌なイメージだけを増幅させるドライバーと、コース内に留まる理想をイメージするドライバーでは、同じクラッシュでも結果が変わってきますよ。

何事にも当て嵌まる事ですが、常にポジティブである事が大切です。
あ、くれぐれも「過信」は禁物ですがね…。


■ハンドルを戻せ!

思った通りに曲がらねー!って事は、初級者から上級者まで共通して起こる事です。
所謂、アンダーステア、また詰めた話になるとオーバーステアも曲がらない症状の一つ。

大雑把に言えば、アンダーステアは舵角に対してフロントが外へ向かう「曲がらない」と言う現象で、オーバーステアは舵角に対してリアが外へ向かう「曲がり過ぎる」と言う現象なので、オーバー=曲がると言うイメージに陥り易いが、コーナーリングと言う意味に於いては、どちらかと言うとアンダーの方が曲がると言える。

コイツ何言ってんだ?って思うかもしれないが、この話はいずれするので、今日はとりあえずアンダーやオーバーの挙動が出た時の基本対応について考えてもらいたい。

どちらも共通して言える事は、意図的に挙動を発生させた場合を除いて、前後いずれかのタイヤがグリップの限界を超えている、または超えつつあると言う状態。

つまり、この状態であればアクセルは踏めないし、ハンドルも切り足せない状態。

駆動輪が滑っているのであれば、アクセルを緩めると言う方法もありますが、そうでない場合はアクセルオフだけではすぐに挙動が収まらない場合もある。

こんな時はどうすれば良いのか?と言う事ですが、実はオーバーの挙動が発生している場合に於いては、ほとんどの人がハンドルを戻す、またはカウンターステアを当てると言う方法で無意識に対処出来ている事が多いです。(初級者がスリップで事故に至る理由は、グリップの回復を感じ取れなかったり、当てているカウンターステアを戻せないため)

これは、言い換えればフロントのグリップを人工的に低下させて、擬似的にリアとフロントのアングル差を埋めて、ニュートラルステアに近付けると言う方法。

厄介なのはアンダーの方で、車が意図に反して外側へ向かっていくため、心理的にどうしてもハンドルを切り足したくなるのです。

ここがポイントで、フロントのスリップアングルが大きい状態、つまり、フロントがグリップ限界を迎えて滑り出している状態でハンドルを切り込むと、より状況が悪化すると言う事態に陥る。

現実的には、明らかなアンダーを感じてアクセルを踏み込む事は少ないと思うので、失速も加わって現状より外へ向かうと言う事は稀ですが、少なくともすぐにはフロントのグリップが回復しない。

そして、この症状によりコーナーリングスピードを犠牲にしてしまうだけでなく、切り過ぎたハンドルは、当然戻しも遅れる傾向になるので、コーナーの立ち上がりが遅れたり、お釣りを貰ったりすると言う悪循環に陥る事も少なくはない。

なので、曲がらないと感じた時こそ、ハンドルを戻すと言う操作が求められる。

当然戻し過ぎると、今度はグリップに余裕があるのに自ら余力を放棄する、所謂手アンダーに陥って外へ行く可能性があるので、スパッと一度戻した後に、もう一度内側に向かって切り直すと言った動作を素早く連続的に行う「ソーイング」と言う操作で、フロントのグリップするポイントを使ってやる。

一見、頭では理解している様で、実際に初級者の方が気付かぬ間に陥っているパターンが多いので、このロスを抑えるだけでも飛躍的にタイムが良くなるはずです。

毎回同じコーナーで発生する様であれば、ターンインの時点で既に操作に問題がある可能性がありますので、進入速度やラインを調整して、そもそもの発生頻度を抑える努力をした方が良いかもしれません。


■ブレーキを離せ!

フルブレーキの項目でも同様の説明をしましたが、重要な事なのでもう一度復習も兼ねて。

オーバースピードで進入して、曲がらない!って時に、パニックを起こしてブレーキを床まで踏み込んだままハンドルをいくら切り込もうが壁へ向かって行くって経験はないだろうか?

そう、ブレーキでタイヤをロックさせてしまっては、舵は効かないし、グリップも失っているのでそのまま慣性に任せて滑走するしかない。

もちろん、立て直せないと思ったら余計な事はせずに堪えると言う選択肢も出てくるが、間に合う場合も多々あると言う事を覚えておいて損はない。

どう言う事かと言うと、案外多いのが、オーバースピードで飛び出しそうと言うよりは、ブレーキを詰めて行ったが故に、思わずペダルを踏む足に力が入ってしまったケース。

タイヤがロックして、滑り出した事に驚いて、そのまま必死にペダルを踏み込んだり、無暗にハンドルを切り込んだりするパターン。

この様な場合に、実はまだ十分リペアが間に合うのに、恐怖心からブレーキをリリース出来ずにコースアウトしてしまうと言うシチュエーションだ。

曲がらない!と感じたら、怖がらずに一度ブレーキをリリースしてみて欲しい。

普段とそれほど変わらない位置から減速を開始しているのであれば、ロスにはなっても高確率でリペア出来るはずである。

しかし、明らかなオーバーランではリペア出来ない事もあるので、ある程度覚悟は必要となるが、どうせ飛び出すのであれば、一か八か、一瞬ブレーキを抜いてみる価値はある。

また、同様に進入でオーバーの挙動が出た際に、驚いてブレーキを踏む人もいるが、これもなるべくなら避けた方が良い。

ドリフトなど、パワーオーバーでターンインを開始しているような特殊な例を除いては、減速から前に荷重が載ってからのアクションで滑り出しているわけで、大凡ブレーキングに原因がある場合が多い。

ここでブレーキを踏めばどうなるか?と言うと、よりオーバーの挙動を助長すると言う結果を招くので、少しハンドルを戻すか、そのまま堪えるか、自身があればアクセルを入れて安定させると言うのが望ましい。

必ずしも、滑った時にブレーキを踏むと言う回避が適正とは限らないと言う事を、予備知識として持っておいてほしい。

最初はわからなくても、徐々に慣れて来た頃に、何が正しい回避なのかと言う判断要素の一つにはなるはずである。