前編では久住を通るコースで鯛生金山(たいおきんざん)までやって来ました。
非公式ながら、私が日本最大の道の駅と言ったわりには、それ程巨大とは思えないと感じる人も多いのではないかと。
しかし、この道の駅の地下に眠る金鉱山の規模を聞くと、その理由にも納得するはず。
地下510m、鉱区は福岡県まで跨り、総延長距離110km、試堀鉱区まで含めた面積は129.6k㎡と言う超巨大な穴が存在するのである。
そしてなんと、この中を見学できると言うのだから当然GOでしょ!
この鯛生金山ですが、全国的に知名度を上げた事件が過去に起きていて、ご存知の方もいると思いますが純金製の鯛が盗まれた事があります。
その伝説の鯛は、この道の駅の地下に眠っているのだ!
■チケットを買って金鉱山へ
駐車場の目の前にある建物は、どこの道の駅にもある売店や飲食店となっており、入口付近には特に目立った案内もないので、とりあえず奥の方へ歩いて行ってみる。
奥の方に見える大きな建物が鉱山の見学チケット売り場を兼ねたスタッフルームになっているみたい。
この受付でチケットを買う事ができるのですが、鉱山の見学チケットの他、砂金採り体験のチケットと、両方がセットになった割引価格設定もある。
砂金採りには興味がないので、見学チケットのみ…って、まあ、金には興味がありますがね(笑)
ちなみに見学チケットなのですが、大人は1100円となっていて思ったより高いぜ!
しかし、この後に内部を見学すれば1100円の価格も納得の充実度となっているので、単なる洞窟だなんて思わない方が良い。
写真撮影の許可をお願いしたら快くOKして頂けたので撮り放題です♪
チケットを握り締めたら、更に奥へ進んで行こう。
チケット売り場から少し歩いた先に金鉱石が展示されていました。
こんな物で驚かなくてもこの先にいくらでもあるのですが、この時点では珍しい物だと思って撮影(笑)
ちなみに、金鉱石の中に含まれている金・銀・プラチナなどは含有率の高い石でも1t当たり5~10gと極僅かなものだと聞いた事があるので、恐らくこのサイズの金鉱石から精製した程度の金では指輪一つも作れないんじゃないかと。
自然界ではそれくらい貴重な物なのに、みなさんが握り締めているスマホの方が金の含有量が多いんですよ(笑)
金鉱石の先には入坑口と書かれた通路が。
いよいよ金鉱山へ突入だぜー!
…と思ったんだけど、あれれ?
ちょっとした展示物が置かれている部屋を抜けた先には既に使われていない旧博物館の建物があるだけ。
道は奥へ続いているので、もっと先にある様ですね。
道を歩いている間にも展示する目的で建てているのか、以前からあった物が放置されているのかわからない微妙な雰囲気の景色が見られます。
回っていない水車小屋の様ですが、秋に来れば紅葉していて綺麗かもしれませんね。
そしていよいよ目的の金鉱山入口を発見!
入口から約10mまで近付くと、扉の奥からすごい冷気が…
先程までの暑さが嘘の様に、急激に周囲の気温が下がります。
さあ、いよいよ内部に突入しますが、心の準備はよろしいですか?
ご存知の方も多いと思いますが、この鯛生金山は東洋一の金鉱山として知られているだけでなく、心霊スポットとしての面白い噂もある。
…と言うのも、現代の様に健康や安全に配慮したコンプライアンスなどほとんど無いか、軽視されていた様な時代。
危険の伴う鉱山ですから、殉職者も多いのでその様な噂も立つのでしょう。
中には、写真を撮ったら知らない子供が写り込んでいたなんて話も(笑)
マジかよ!?いいね、いいねー!かなりいいねー!
鉱山の見学ついでに幽霊まで発見できたなら、1100円のチケット代なんてタダみたいなモンだぜ!
行くぜー!!
■人工洞窟内部は博物館
ここから先の写真は全てフラッシュなしで撮影していますが、展示コーナー以外は結構暗いので画質調整で明るめに加工してあります。
真っ暗と言うわけではないのですが、見学の際は暗い場所が苦手な方はご注意ください。
内部へ入ると入口は金属製のアーチで補強されていて、十分な広さとなっています。
その先は左右に分岐が。。。
それにしても、もっと狭いのかと思ったら結構広いですよ。
坑内の気温は15℃前後でしょうか、かなりひんやりしていてちょっと寒いくらい。
最初の分岐点には見学ゾーンのマップが掲載されていて、順路としては右の通路から回る様です。
ちなみに、この見学ルートは1周で約1kmとの事で、展示物などをゆっくり見て回った時の目安は30~40分との事。
なんとなく振り返ると、早速何かあるぞー!
…って思ったけど、これは展示している物ではなさそう(笑)
順路に沿って進んで行くと、いたぜ!創設者のハンス・ハンターだ!
白人らしい色白で長身のマネキンですが、写真の本人とはそれ程似てはいない(笑)
ちなみに、鯛生金山でもらったガイドブックによると、日本生まれのイギリス人って事なんだけど、生い立ちについてそれ以上の詳しい事は書いていない。。。
ハンス・ハンターの本名はハンサブロ・ハンターって聞いた事があったのですが、実は日本人との間に生まれたハーフ(?)の様で、本名を範三郎(はんさぶろう)と言うらしい。
日本名を名付けられてるんですね。
入口付近ではマネキンなどで当時の事務所や休憩所などを再現している様子が見られますが、奥へ向かうと当時使っていた実際の機械なども残されています。
歩くのに差支えない程度には明かりが確保されていますが、壁の岩肌は剥き出しで、天井に防水シートは被せてあるものの、所々水がポタポタと落ちてきたりと洞窟感が凄い。
足元はきちんとコンクリートで平らに舗装されているので心配は要りません。
かっけー!!なんだこのトラック!
これで金鉱石を運び出していたのでしょうか、潰れたルーフなど、危険な鉱山の仕事で使われていた感じが出ていて良いですね。
ボディは全体的に青錆を吹いている様にも見えますが、痛んだ塗装がそう見えるだけでしょうか?
暗いので判別は難しいです。
ヘッドライトの電球は展示用に差し替えられている様ですが、当時はどれくらいの明るさだったんでしょうね?
現在ではHIDやLEDなどの明るいヘッドライトもありますが、時代を考えると十分な明るさだったのかどうか疑問です。
ここから先は本格的な展示コーナーとなります。
大きく3つのゾーンに分かれていて、それぞれの展示物で当時の作業風景や機械・技術紹介の充実した資料の他、後半では江戸時代の風景まで再現されていたり、おまけのコーナーまであります(笑)
さすがに全ては紹介しきれないので、一部だけお見せしましょう。
一番最初に展示されているのは、200馬力の立抗巻上機とか。
立抗とは何なのかと言うと、地下へ向かって立体的に掘られている鉱山なので、坑道内の各所に数百メートルの縦穴が掘られているそうです。
深い階層から上階へ鉱石などを運搬するエレベーターの様な役割があるそう。
んじゃ、その縦穴はどこにあるの?
おう!ここだぜ!
覗いてみてくださいと書かれていますが…
マジかよ、先が見えねえ。。。
誤って人が転落しない様に金網が張られていますが、撮影する場合はスマホやカメラを落とさない様にくれぐれもご注意を。
万が一スマホを落としたら回収は不可能ですよ。
なんつっても、この穴は510mある(笑)
見えている部分で約200mだそうです。
ところで気になるんだけど、何らかの工場とかで働いている人とか詳しい人はいないかな?
どこかの工場を見学した時もそうだったけど、日本国内も外国の工場も大型の機械が大体こんな緑色に塗られてるよね?
この色は何か決まりでもあるのかね??
他にも興味深い物がありました。
これ、金鉱石を運搬していたバッテリー機関車らしいのですが、バッテリー機関車って事は電気で走っていたって事ですよね?
最近ではEV(電気自動車)が徐々に普及していますが、こんな昔にもバッテリーの電力で自走する乗り物が存在していたんですね。
このゾーンの出口付近には鯛生金山の歴史や鉱山全体のマップなどが掲載されていました。
…が、この透視図だけでも複雑に見えるけど、実際の坑道はこんなに単純なマップで紹介出来る程小さくはないのだ。
それについては後半でご紹介しましょう(笑)
■恐るべき当時の作業風景…
ここから先は採鉱場ゾーン。
急にここまでとは通路の雰囲気も変わり、天井も低く狭い通路になっていきます。
ゾーン入口付近の壁には、天井や壁を支える支柱の紹介が。
実際に通路を歩いていれば、壁や天井は先程のパネルで紹介されていた支柱で補強されているのが良くわかります。
いいねー!鉱山っぽくなってきたよね~!
このゾーンでは、当時の作業風景が再現されているのですが…
これね、良く観察すると…
ほら、違和感ありません??
展示用のマネキンだからなのか、当時は実際にそうだったのか。
ヘルメットや手袋などの保護具は着用しているのに、どのマネキンも防塵マスクをしていませんよね?
このマネキンの姿が事実に忠実なら、昔のトンネル工事や鉱山関係者に塵肺症(粉塵などが原因の呼吸器障害)の方が多かったと言うのも頷けますよね。
おまけに、この頭上の岩を掘削する様子など、大ケガで済めばマシですが、最悪の場合は生き埋めになる恐れもある極めて危険な作業。
こんな職場だとケガ人続出の労災祭りですよ!
他には展示された金鉱石のサンプルで鉱脈の見方など興味深い物も。
しかし全くわからんね(笑)
わざわざ矢印で鉱脈を指してくれているのに、じっくり観察しても全くわからない。
こりゃ、その辺に転がっていてもただの岩としか認識出来ませんね。
こんな石、近所にいくらでもあるぜ?
それにしてもこんな穴をよく掘ったよねえ。
機械を使ったとは言っても、こうやって人が歩き回れる程の広さの穴を掘るだなんて。
それに、これだけ歩き回っても全体の極一部に過ぎないなんて、全体の広さが想像もつかない。
見学コースから外れた脇道も沢山あるので、どこまで続いているのか。。。
真っ暗で何も見えないですね。
見学コースも更に地下深くへ潜って行く。
手摺付きの階段で整備されていますが、この急傾斜を当時はどんな感じで上り下りしていたんでしょうね。
ここから下層までの高低差も結構あるので、一気に10mくらい下るんじゃないでしょうか。
このゾーンの終盤には福岡県へ続く穴も。
柵が付いていて通れませんが、遥か先まで続いています。
ここから先はおまけコーナーみたいなもんですが、この洞窟内に突然現れるイルミネーションの通路(笑)
違和感がすごい。
テーマパークの様に、若いカップルが来て「うわ~きれい~♪」とか言うんでしょうか。
とても若いカップルが来る様な場所とも思えないので、どう言う層に向けた物なのかは謎。
この通路には所々隠された物があって、その一つがこれ。
何か扉の付いた小部屋が。。。
ちょっと覗いてみましょう。
うおー!
お宝だぁー!!
輝きを見ればわかりますが、純金の鯛を盗まれると言う大失態を晒したさすがの鯛生金山でも、こんな不用心な所に本物は置いていません(笑)
ただ、展示コーナーにあった作業用のダイナマイトは本物の可能性が高そうで怖い。。。
そんなバカな!って思うでしょ?
普通はね。
でも、ここはあの鯛生金山ですよ?(笑)
■渦巻く欲望
イルミネーションの通路を抜けると、いよいよ3つ目のゾーンに。
ここは初期の作業風景が再現されている。
初期とは…?
それがどうやら江戸時代にまで遡るらしい。
この頃はさすがに機械など振り回していないので、鑿と金槌を使って手作業の様です。
超アナログな測量の様子なども。
大分県中津市の耶馬溪にも、禅海和尚が1人で掘ったと言われる青の洞門とか、イタリアのマテーラみたいに”街”を掘ったりなんて規模のすんごい場所も存在するので、昔の人って現代人より遥かに賢くてパワフルだったんでしょうね(笑)
沢山の展示資料を見た後は、いよいよ欲望の渦巻くエリアへ突入です(笑)
ここは金鉱山。
人間たちが、富を求めて欲望の赴くままに大地をほじくり返してできた穴なのだ。
穴の深さは人間の欲深さを表していると言っても良いだろう。
伝説の黄金鯛も、この欲に塗れたエリアに鎮座している。
ここは資金洗浄コーナー(笑)
お金を水で洗い、1回洗えばそれなりに。2回洗えばほどほどに。
3回洗えば一生お金に困らない!!
お金を清めようと言う、要は縁起担ぎですね。
ふん!そんな根拠もない非科学的な事…
やりますとも!!もちろんですよ!!
洗って清めたお金は縁起が良いそうなので、財布に戻しておきましょう。
目の前には神社もありましたので、お賽銭を投げ込んで拝んでおきました。
奮発して100円も入れてやったんだから、俺様を大金持ちにしろよな!しっかり頼むぜ!(上から目線)
ここに掛けられている絵馬は、神を前にしても謙虚さなど微塵も感じられない。
「宝くじが当たりますように」「大金が欲しい」「金持ちになりたい」
商売繁盛や出世など、自分の努力が実る事を願うヤツなどここには一人もいない。
稼ぐと言うプロセスを無視して、神に向かってストレートに金!金!とにかく金だ!!金をよこせ!!
欲望に忠実な願いばかりがぶら下がっている。
潔くて素晴らしい。
神社を後にして少し歩いたその先には、お目当ての黄金鯛が!
見よ!中津江村が誇る、この厳重なセキュリティ!!
頑丈そうな柵まで付いていますね。
過去に、この警備の網を潜り抜け、黄金の鯛を盗み出した凄腕の盗賊がいたなんて信じられます?
現在はレプリカに置き換えられてありますが、展示方法は純金製を展示していた当時とほぼ同じだそうで。
暗闇の洞窟内で妖艶を放つ鯛。
多くの人間は黄金が放つこの怪しい輝きに魅了され、宝飾品としての需要からその価値も非常に高い。
しかしこれ、レプリカとは言うけど輝きが明らかに塗装のソレではない。
まぎれもなく”金”の輝きである。
ベースは樹脂やブロンズかもしれないが、少なくとも表面を覆っているのは純金箔である事が容易に窺い知れるので、レプリカでも数万~十数万円の価値はありそうだ。
2006年に発生した盗難事件についても書かれていました(笑)
2匹で50kgもの純金塊が、こんな不用心な所に置かれていたわけですよ。
多くの人が”本物の純金製とは気付かなかった”なんて書かれていますが、気付かなかったんじゃなくて、本物の純金の塊をこんな不用心な方法で展示するはずがないと思っていた、と言う方が正しい気がします。
盗まれた30kgの鯛は当時の時価で約6000万円と言われていますが、現在の金相場だと1g当たり約9500円(2023年5月末現在)となっているので、被害額は2億8千万円を軽く超える計算になります。いや、ヤバ。。。
ちなみに、ここには保管場所を移転したと書かれているとおり、残った黄金鯛は金庫で保管されていると言われていましたが、2012年に三菱マテリアルに売却されているはずなので、現在はオリジナルの黄金鯛は残っていません。
余談ですが、盗難に遭った当日は宿直の警備員もいて、夜間に警報も作動したそうですが、普段から野生動物などを検知して誤報が頻繁に出ていた事もあり、この日も深刻には考えられていなかった様です。
博物館になっていた建物を覗いただけで確認を済ませてしまい、後から黄金の鯛がなくなっている事に気付いたのだとか。。。
尚、黄金鯛の池には、コインを投げ入れるなと注意書きの看板があるにも関わらず、大量の小銭が投げ込まれていた。
欲に塗れた絵馬をぶら下げる様なヤツに、注意書きを読むヤツなど一人もいない。
金が欲しいと拝みながら、平気で金を投げ捨てて帰る姿勢には脱帽である。
黄金の鯛を拝んだ後、更に奥へ進むと再び広いエリアに出てきました。
頭上の電線とパンタグラフが付いているこれは、電車の様ですね。
更に奥へ進むと…
お?また何かあるぞ!
あれ?これ見覚えがあるな…と思ったら、どうやらこれで見学コースを1周してスタート地点へ戻ってきた様です。
うっ!まぶしい!
暗い地下から地上へ戻ってきました。
見学コースはたったの1kmしかないのか~なんて思っていましたが、実際に歩いてみると結構長いですし、写真を撮りながら展示品や資料を読んでいたら、中に1時間ほど滞在していた様です。
1100円のチケット代もちょっと高いなって思っていましたが、これについても内容を考えると満足度は高いですよ♪
撮った写真をチェックしても、残念ながら幽霊は写っていませんでしたが(笑)
最後になりますが、出口は再び建物内に入り、博物館となった内部を見学出来ます。
ちなみにこの模型ですが、複雑に枝分かれした黄色い部分が鯛生金山の正確な坑道マップですよ!
わかります?このアリの巣の様に複雑な通路は、地下迷路と言っても差し支えない。
奥まで進んで行ったら二度と出て来れないかもしれませんね。
んで、この日に私が見学したコースがどこかと言うと、ココですよ!
ほら、こんなに浅い入口付近のほんのちょっとだけ!
全体の1%にも満たない、極僅かな部分だけであのボリュームなんですよ。
これ本当に凄い穴ですよね。
個人で許可は得られないだろうし、そもそも危険でしょうけど、我々に代わってGoogle Earthなんかで内部を全部見れる様になりませんかねえ(笑)
さあ、それではこれで本日の旅は終了です。
帰る前に忘れず道の駅のご当地ソフトは食べておきましょうね。
道の駅 鯛生金山のソフトクリームは「わさび」味です!
また面白いドライブスポットを見付けたら紹介しますのでお楽しみに♪
ではでは~