■目次

◆サーモスタットの交換は有効?

◆ラジエター強化の必要性は?

◆ラジエターキャップの働き

■サーモスタットの交換は有効?

夏になると気になるのが水温や油温など、エンジンの保護に係る部分ですよね。

今日は多くの人が気にする水温について。

私が以前乗っていたロードスターは、真夏の渋滞で120℃近くまで水温が上がる事も多かったですが、意外なのは良く熱害がキツイなどと噂されるロータリー、そう、私が現在乗っているRX-8なのですが、真夏でも100℃をちょっと超える事がある程度で、大体はそれ以下に収まり、走り出すと気が付けば80~90℃の範囲。

対して、一本クヌギなどを走ると真冬でもタイムアタックの3周で100℃を超えますし、真夏だとクーリングに入る直前で120℃に達している事もしばしば。

しかし、クーリングラップを終えてピットに戻る頃には高くても100℃を少し超える程度まで下がっています。

冷却系の強化と言えば、ファンを動かしたり、風通しを良くしたり、そして一番効果的なのはラジエターその物を大きな物や熱交換効率の良い材質に変更すると言った方法です。

良く真っ先に交換対象として言われるサーモスタットには、冷却効果はありません。

まずはその点からお話ししましょう。

サーモスタットは、効率よく暖機が出来る様に一定の温度まではラジエターに送る水を制限し、ある程度温まった所で開く弁として働きます。

それがそのまま理由となりますが、極端な例として最初から開いている、つまり取り外してしまった場合などは水温が上がり難くなる、と言う事を意味しています。

対して、水温が上がってしまった後は、仮にサーモスタットが付いていたとしても開いているわけですから、暖気が済んでしまった後では、サーモスタットの有無による水温への影響はありません。と言う事になる。

それどころか、サーモスタットを無暗に低温で開く物に変更したり、取り外したりと言った場合、オーバークールで走る時間が長くなる恐れがあり、むしろ水温が低い事による害が発生する恐れがある。

なので、原則としてローテンプサーモへの交換はお勧めしない。

じゃあなんで売ってるの?って疑問についてですが、一概には言えないが設定温度は必ずしも全開となる温度ではなく、開き始める温度である点から、ある程度温度が上がり始めた辺りから少し早めに冷却を開始する事で初期の温度上昇を抑えられる…かもしれない、くらいのメリットを狙った物だと思われます。

例えばジムカーナなど、連続周回するレースに比べ、短時間で走行を終える事に加え低速コーナーが多くてラジエターに効率よく風の当たる時間が少ない競技などでは、多少の恩恵が得られるかもしれない。

でも、ジムカーナに出た事のある人ならお気付きだと思うが、並んで待機している間に完全に暖機が完了してしまうので、これも正直効果は疑問と言うのが私の意見です。


■ラジエター強化の必要性は?

ラジエターの容量アップや熱交換率アップについては非常に効果が大きい。

ただし、必要かどうかと言った点については注意が必要である。

先程のサーモスタットの例でもそうですが、水温が高過ぎる事も問題であるが、低過ぎる事も問題です。

水温がそのままエンジンの温度と言うわけではないので、一概に水温だけで判断はできないものの、内燃機関は可能であれば熱い程効率が良い。

ただし、材質や構造的な限界があるので止むを得ず冷やしていると言ったところだ。

難しい話は置いといて、水温を一つの目安としてコンピュータも制御を行っている。

水温が高過ぎると、オーバーヒートと判定して出力を落とし、発熱を抑える様に制御されるが、それと同じようにオーバークールでも各部の適切なクリアランスが保てなかったりと言った問題によりダメージが生じるため、仮に直接の故障原因にならなくとも出力を下げる方向に制御される。

時々、俺の車は水温が70℃以下だぜー!などと大喜びしている人を見掛けるが、低過ぎである(笑)

90~110℃を理想の目安として、少なくとも70℃以上、上は120℃を超えない範囲で使用するのが良いでしょう。

実はこの温度、ピンと来た人もいるかもしれないが、純正の水温計が動き出す前後の温度である。

各社設定は多少異なるので一概には言えないが、65~70℃付近で水温計の針が真ん中辺りで停止し、115~120℃を超えた辺りで再び上昇を始めると言った感じだが、下限も上限もその範囲外ではエンジンによろしくないと言う危険信号だと考えて良いでしょう。

さて、ラジエター強化の必要性についてですが、走行目的の使用範囲内で、上記の範囲に収まっているのであれば強化の必要はないと言えます。

例えば、街乗りで強化が必要だとすれば、寒冷地仕様を真夏の九州で走らせると言った以外はほぼ必要性はないだろうし、ジムカーナやショートコースを数周回る程度なら純正のラジエターでも十分持つ事が多い。

対して、サーキットを連続周回するレースや、ラリーなど長距離を全開で走り続ける場合は水温が上がり過ぎる可能性があるため、必要に応じて強化した方が良い。

その他、単純に水温が上がり過ぎるだけでなく、上がった水温がなかなか下がらないと言った場合もラジエターの冷却性能が足りていないと言えるので、熱交換の効率が良い物に変更するのが望ましい。

また、反対に水温が下がり過ぎる場合は、板などでラジエターの一部を覆う方法もあるが、ラジエター自体を小さくすると言う方法でもオーバーハングの軽量化にも繋がるので有効と言えます。

最後にもう一点。

水温についてですが、追加メーターの場合はどこで見ている数値をどう活かすのかで情報の信頼性は変わってきます。

追加メーターの場合、後付のセンサーを取り付けるわけですから、センサーの位置で表示される水温は変わります。当然そうなります。

例えば、ラジエターの前後では、通過する前の水温と、通過後の水温では当然異なるわけで、単純に水温の指標が取りたいのであれば、純正センサーと近い位置やOBDの信号から拾うか、ラジエターのアッパーホースに割り込むのが一般的です。

対して、ラジエター通過後のロアホースなどに割り込ませたりする場合は、純正センサーが返す水温との比較で冷却効率を知る事も出来ます。

参考までに。


■ラジエターキャップの働き

ある意味こちらが本日の本題です。

上の項を読んでいる間に、モヤモヤした気分になった人もいると思います。

水温が100℃を超えたらヤバい!って言う人が多いですもんね(笑)

何故なら、小学校で習う常識中の常識なわけですよ。水は100℃で沸騰するって…。

でもね、ちゃんと高校まで理科の授業を居眠りせずに受けている人なら、必ずしもそうではない事を理解しているはず。

雑ですが、次の図を見たまえ。

火に掛けた鍋に水が入っています。下向きの矢印は気圧です。

温度が上がると水は蒸発し、水蒸気となって大気中に逃げ出します。

更に温度が上がると、熱膨張で水の体積も増え、100℃を超えると沸騰と言う現象が起こります。

ご覧の通り、水がブクブクと泡立って、バンバン水蒸気が外へ逃げ出しているのが分かりますねー!

分かりますね?

図はテキトーですが、分かってください(笑)

このブクブクなっている気泡ですが、沸騰によって発生した水蒸気の泡で、これが水の中に発生する事で密度が下がってしまいます。

ところで水の冷却性能ですが、実は仮に150℃まで上昇したとしても、熱伝導率自体は大きく変わりません。

つまり「エンジンの温度>水温」が成立している限り、冷却性能が失われる事はないのである。

ただし、液体の状態で密度が保たれていると言う条件が必要ですが。

つまり、沸騰して気化が始まっている場合、気体の水では冷却出来ないので、沸騰は即座にオーバーヒートに繋がります。

ほ~ら!じゃあ100℃を超えたらヤベーじゃん!って思うかもしれませんが、100℃で沸騰させなかったら良いのです。

飽和蒸気量や飽和蒸気圧なんて言葉を授業で習ったと思いますが、水の沸騰には飽和蒸気圧が関係しています。

授業みたいに細かい事まで語り出すと拒絶反応が出る方もいると思うので、シンプルに分かり易く言うと、水の沸点は水に掛かっている圧力で決まります。

100℃で沸騰すると言うのは所謂基準であり、極々一般的な環境下に於いて、やかんなどでお湯を沸かした場合、地上の1気圧では大凡100℃前後で沸騰しますよと言った話である。

これを富士山の頂上に持って行った場合、気圧は大凡0.63~0.64気圧まで下がる。

この時の水の沸点は、ざっくりと計算して85~87℃程度と、かなり低くなる。

では逆に圧力を高くした場合はどうだろうか?

ラジエターキャップに記載されている圧力表示を見た事はありますか?

一般的なキャップには0.8~0.9kgf/cm^2とか、ターボ車などでは1.1kなどと記載があると思いますが、この圧力は加圧分の圧力が記載されている。

0.9のキャップの場合、大気圧1に対して0.9を加算した、1.9まで圧力を掛ける。

圧力を掛けると言っても、取り付けただけで加圧されるわけではありませんが、一応この値を参考に沸点を求めた場合、約119℃となります。

1.1のキャップを使用した場合をざっくりと計算した場合、約122℃が沸点となります。

実際の冷却水にはLLCが含まれますし、他の外乱もありますが、単純な理論としてはキャップが正常に機能していればこの温度まで沸騰せず、水は液体の状態を保っています。

110℃を超えると警戒域と言えますが、少なくとも100℃を超えたからと言って慌てる必要はないと言う事がわかると思います。

さて、ラジエターキャップで圧力が掛かる仕組みについてですが、水の熱膨張や一部の気化した水蒸気が関係しています。

キャップを取り付ける事により、ラジエターを含むウォーターラインは密閉状態となります。

先程と同じように温度が上昇すると、水自身も熱膨張で体積が増し、一部は気化して水蒸気となりますが、密閉されているため外に逃げ出せず内部の圧力は上昇します。

圧力が上昇すると言う事は、それに比例して加圧されている水の沸点も上がると言う事です。

更に水温が上がり続けるとどうなるでしょうか?

これ以上は水も全く蒸発出来ない状態となり、更に温度が上昇して行きますが、ラジエターキャップは限界の圧力を迎えるとそれ以上圧力を逃がして加圧出来なくなるので、設定された沸点が変わる事はありません。

そのため、上限を超えたところで沸騰が始まり、オーバーヒートと言う事になります。

また、加圧する事による沸点上昇は単純に水面に掛かる圧力だけでなく、ウォーターポンプの羽の裏で発生する負圧によるキャビテーション(局所的な圧力低下によって発生する理論沸騰)発生を抑える働きもあります。

対して、ターボ車のタービン周りの冷却水に発生する沸騰もキャビテーションと呼ばれる事がありますが、あちらは厳密にはキャビテーション現象ではなく、タービンの熱による単純沸騰です。

こちらを防ぐ方法も、沸点の高い液体を用いるか、同様に圧力を上げるしかないため、ターボ車のラジエターキャップは一般的にNA車より高圧なハイプレッシャーキャップが採用される事が多いです。

…で、キャップをハイプレッシャータイプに交換する必要性ですが、これは無いと言っても良いでしょう。

特に、100℃を超えてすぐにクーリングに入る人なら尚更、全く不要のパーツです。

まあ、市販のハイプレッシャーキャップに変えたからと言って実害が発生する事は稀なので、オシャレパーツと考えるのもアリですが、古い車など、劣化したホースが圧力に耐えられずに破裂したりと言うトラブルが起こる可能性はあります。

なので、基本的には純正のキャップか同等の圧力のキャップを使用するのが良いでしょう。

ちなみに、オーバーヒートはエンジンの温度が上がり過ぎた事を知らせるサインではなく、水が冷却性能を失った事を知らせるサインなので、ここで即座にエンジンがパーと言うわけではないです。

言い換えれば、もしラジエターキャップが機能していない場合などは、水温が低いからと言って安心は出来ないと言う事も意味していますので、水温は目安でしかないと言う事を頭に入れ、普段から状態はチェックしておきましょう。

意外と定期交換しない人が多いラジエターキャップですが、メーカー推奨は1年で交換と言われています。

流石に毎年交換はどうかな?とは思いますが、大して高い部品でもありませんので、2~3年に1度、車検の度に交換など、定期的に交換をした方が未然にトラブルを防げますよ!

沸点が上がっているから120℃までは大丈夫!と言うわけでもありませんし、大事に長く乗ろうと思うなら多少神経質なくらいが良いかもしれませんが、100℃を超えたからと言って大慌てする必要はありませんよ!と言う事が伝えたかった内容です。

何より、メーカーはある程度ハードな使用も想定して設計しているはずですので、極端に怖がって色々と強化にお金を掛けるより、日頃の点検と、しっかり整備してコンディションを保つ事が最も重要です。


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