前項ではシートレールとバケットシートの組み立てや、後部座席付きの車で必要となるバックレストカバーを綺麗に取り付ける作業を紹介しました。
完成したシートAssyが準備できたら、あとは車に取り付けるだけです!
とは言っても、昔の車と違ってシートに内臓されたエアバッグだったり、助手席の座面センサー(シートベルトリマインダー)の問題を解決しなければならなかったりと、単純にシートを取り外して交換するだけとはいかなくなっています。
これについては、以前作業したロードスターの例でも詳しく説明していますが、今回はマツダ2の作業例で改めて確認してみましょう。
■座席の取り外し
それではシートの交換作業を開始しましょう。
早く取り付けたい気持ちもわかりますが、まずは作業準備から。
車種やグレードにもよりますが、最近は座席にシートエアバッグの装備された車が増えてきました。
ステアリングの着脱作業もそうですが、何かの弾みにエアバッグが誤作動してしまうと重傷を負う恐れがありますので、まずはボンネットを開いてバッテリーのマイナス側ターミナルを取り外しましょう。
残留電力を消費させるために5分ほど時間を開けてから作業を開始するとか、ブレーキペダルを何度か踏むと言った手順を取る事が推奨されていますが、どんな作業にも”絶対大丈夫”なんて事はありませんので、不必要にエアバッグのコネクタをいじくり回したり、不要だとしても取り外した座席を投げたり悪ノリして蹴ったり叩いたりと言った乱暴な扱いはしない様に。
気休めかもしれませんがブレーキペダルを数回踏んだ後は、5分程度の待機は特に必要ないと思います。
コネクタなどに触れる前に、フロアに固定されているシートレールのボルトを取り外す作業がありますので、その間に5分程度はあっさり経過しますね。
まずはシートを後ろにスライドさせてから、前方のボルトを取り外します。
車種によって使用されるボルトは異なりますが、マツダ2のレールはトルクスE12が使用されています。
私は前回ロードスターのシート交換をする際に購入しましたが、トルクスのソケットなんて持っている人は少ないと思いますので、作業予定日までに準備しておく事をおすすめします。
前方のボルトを取り外したら、シートを前にスライドさせて後方のボルトも取り外しましょう。
ロードスターと違って前後の足元も広いので、長めのスピンナハンドルも楽々振り回せるため作業性は良いです。
強烈なトルクでは締まっていませんが、そこそこ固いのでボルトの頭をなめない様に注意!
無事にボルトが取り外せたら、座面したの集合カプラーを分離しましょう。
矢印で示した位置にある白いロックをマイナスドライバーなどで引き上げて、その下に隠れている爪を押さえながら引っ張れば簡単に抜けるはずです。
こんな感じね。
シートヒーターなどは装備されていないグレードなので、集合カプラーにはエアバッグとシートベルト警告灯のカプラーのみとなっています。
これでシートが取り外せましたので、あとは慎重に車室外へ運び出しましょう。
ちなみに、私はリアのハッチから引っ張り出そうと思って、バッテリーのターミナルを取り外す前にハッチを開けておきましたが、実際に作業してみるとドアを全開で開いておけば難なく取り出せました。
ダッシュボードやドア内張り・開口部周辺にレールが当たるとキズを付けてしまう恐れがありますので、確認しながらくれぐれも慎重に。
心配な方は車室外へ運び出す前にレールの四つ角にタオルなどを巻き付けておくと良いでしょう。
■バケットシートに必要部品を移植する
純正シートを取り外したら、あとはバケットシートAssyを取り付けるだけ!…と言いたいところですが、その前にシートベルトのキャッチを移植したり、エアバッグ警告灯の対策をしなければなりません。
シートベルトのキャッチは単品で購入可能な車種も多いので、ディーラーなどで部品を購入して準備しておくのも良いでしょう。
車種によって相場は異なりますが、5000~1万円程度で入手可能だと思います。
ただ、取り外しは簡単なので特に理由が無ければ純正シートから移植するのが良いでしょう。
シートレールまたはシート本体のフレーム部にボルトで固定されているだけなので、14mmか17mm辺りのメガネレンチで取り外せます。(マツダ2は14mmが対応)
シートベルトのキャッチも集合カプラーも、大き過ぎてレールとシートの隙間から取り出せないため、集合カプラーから各カプラーを分離する必要があります。
まずは集合カプラーをシートから取り外しましょう。
シートのフレームに付いているステーに爪で引っ掛けてあるだけなので、マイナスドライバーを使って軽く爪を持ち上げてやれば簡単に引き抜けます。
こんな感じでステーから集合カプラーが外れます。
このままではバケットシートへ移植できませんので、集合カプラーから各カプラーを分離します。
これも、爪で引っ掛けて固定されているだけなので、挿さっているカプラーの爪をマイナスドライバーで起こしながら引き抜きましょう。
各カプラーが上手く分離できたら、必要な部品をバケットシートへ取り付けます。
まずはシートベルトのキャッチを、シートレールに付属のボルト・ナットとスペーサーを使用して取り付けましょう。
間にカラーが入っていて締め付け後も動かせますので、増し締めまで完了させて大丈夫です。
シートレールの可動部にハーネスが挟まらない位置を確認しながらシートの座面下へ通し、集合カプラーに挿しましょう。
運転席側はシートベルト警告灯のみなので、これで完了です。
シートエアバッグは無くなるので、カプラーの代わりにエアバッグキャンセラーを取り付けます。
車種別カプラーオンタイプのキャンセラーが手に入らない場合は、シートに付属の抵抗を車両側のエアバッグの配線にエレクトロタップで割り込ませると言う方法でも構いません。
その他、シートヒーターや電動パワーシートなどが装備されているグレードでは複数本のカプラーがありますが、バケットシートにそれらの機能が付いていない場合はシートベルトとエアバッグの警告灯対策のみで完了となります。
過去にロードスターのシート交換を行った際に、純正シートヒーターを移植する方法を解説していますので、シートヒーターを使いたい方はこちらの記事を参考にしてください。
部品の移植が完了したら、組み立てた集合カプラーをテープや結束バンドでシートの座面裏、またはシートレールのメンバー部分などに上手く固定しましょう。
完成したシートAssyを車室内へ運び込み、忘れずにカプラーを接続すれば、あとは固定するだけで取り付けは完了です。
シートレールの固定方法も車種によって若干違いがある様ですが、そのままボルトで固定するだけだったロードスターと異なり、マツダ2は付属のスペーサーを使用する様です。
スペーサーの配置は説明書に記載されていますので、間違えない様に取り付けましょう。
シートレールの下に敷き込むスペーサーは4ヶ所全てに使用する様になっていますが、恐らくカーペットを挟まない様にするためだと思います。
指定の位置にスペーサーを取り付けたら、あとは純正ボルトを再利用して固定します。
仮留めしてレールがスムーズにスライドする事が確認出来たら、最後に4ヶ所のボルトをしっかり増し締めしましょう。
これでバケットシートの取り付けは完了です!
さあ、もう一脚…(汗)
■助手席側の座面センサーについて
助手席側も作業方法は同じですが、車検時にチェックされるシートベルトリマインダー(座面センサー)があるので、部品の移植、または配線加工など少し面倒な作業があります。
現行モデルのレカロのバケットシートは、ほぼ全モデルで座面センサーが内臓された保安基準適合品となっていますが、ブリッドのバケットシート(マツダの純正オプション含む)はセンサーが内臓されていないため、助手席側は保安基準不適合となっています。
ただ、シート自体に問題があるわけではないため、座面センサーの付いていないシートを保安基準に適合させるためには、正常に機能するセンサーを取り付けてやれば良い。
純正シートから座面センサーを取り出して移植する、または単品販売されている座面センサーを用意して取り付けてやれば助手席も保安基準を満たせる。
センサーの移植方法については以前ロードスターの作業でも解説していますので、必要な方はこちらの記事を参考にしてください。
さあ、それでは助手席側の作業を始めましょう。
既に取り外した写真ですが、作業手順は運転席側と同じなので、シートの取り外しまでは問題ないと思います。
続いて、必要部品の移植作業です。
シートベルトのキャッチとシートエアバッグのカプラーを分離するまでの作業も全く同じですが、助手席側には先程言ったシートベルトリマインダーのカプラーがあります。
車種にもよるので、場合によっては思い切って切断する必要があるかもしれませんが、幸いにもマツダ2のセンサーのカプラーはショートコードでシートから分離出来る構造となっていました。
いずれにせよ、このショートコードも切断して加工する必要がありますが、このコードは単品でも販売されている(マツダ純正品番:DA6T-88-129)ので、後に純正シートに戻す場合でも配線にダメージ無く元通りにできますから気にせず加工しましょう!
配線をカットしたら、ぎぼし端子や別途用意した2極カプラーなどを取り付け、バケットシートの座面から出ているセンサー、または別途用意したセンサーの配線に接続します。
一応赤黒で+・-がある様ですが、座面センサー自体に極性は無いので気にせず接続してください。
あとは運転席と同様に、集合カプラーを元通りに組み立て、シート裏にテープなどで固定します。
最後に、完成したシートAssyを車室内へ運び込み、フロアにボルトで固定すれば助手席の取り付けも完了となります。
シートの交換が完了したら、バッテリーのターミナルを取り付け、エンジンを始動しましょう。
この際にエアバッグの警告灯が消灯する事、助手席に座ってみてシートベルトリマインダーが正常に機能する事を確認します。
また、エンジン始動後、パワーウインドウのオートスイッチの学習を完了させます。
マツダ車の場合は運転席の窓全開の状態からオートスイッチを一番上まで引き上げたまま保持し、全閉状態で2~3秒待機、続いて一番下まで押し下げて全開状態で2~3秒保持でOKです。
次に、GVC等が付いていなければ不要な場合もありますが、ステアリングを左右一杯まで据え切りする操作を数回繰り返して、舵角センサーの学習もしておきましょう。
■おまけ シートで印象は激変!
さあ、バケットシートを取り付けて車の印象はどう変わったのでしょうか?
高いけど、やっぱり2脚セットだとカッコイイですよねー!
私が毎回バケットシートを2脚揃えるのは、統一感を損なわないためと言うのが理由ですが、単純に左右が揃っているだけでなく、ボディカラーや車室内全体の雰囲気もまるで標準仕様の様な自然さを出したい。
もちろんサーキット走行を前提としたシートなので、座った時のフィット感が最優先ですが、選択する色への拘りもある(笑)
私のマツダ2はブラックトーンエディションと言うグレードで、純正シートの色は黒となっています。
なので、当初は黒いバケットシートを検討していたのですが、シートカバーで生地の質感や配色のコーデをすれば、他の色でも統一感を損なわずにカスタム出来そうだと考えました。
以前、シートカバーの取り付けを紹介した記事を書いていますが、実のところこの色のRS-Gを取り付ける事を想定して、事前に準備していたと言うのが本音です(笑)
パッと見た感じ、まるでリアシートもセットかの様な仕上がりでしょ?
どちらも赤い生地に黒いメッシュ生地を重ねてあるので、正面から見れば赤く、角度を変えると暗転して黒っぽく見えると言うのは、ボディカラーのソウルレッドクリスタルメタリックの印象にも似ていて相性が良い。
ちなみにこのクラッツィオのシートカバーは青色のラインナップもありますし、レカロのRS-Gにも青色の設定があります。
青系のボディカラーの場合は、そちらの組み合わせと言うのも良さそうですね!
また、前項の組み立ての記事で紹介したバックレストカバーも、ただ貼り付けるだけでなく綺麗に取り付けてやればこんなに見た目の印象も良くなるんですよ♪
どんなにカッコイイパーツでも、いい加減な取り付けでは残念な仕上がりになる事も珍しくはありません。
せっかく取り付けるなら、時間をかけて丁寧に、しっかり取り付けるだけでも随分印象は変わるものです。
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